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側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

側弯症そくわんをもう一度基礎から(確定診断と発症率)

2017-10-19 23:25:12 | 側弯そくわんをもう一度基礎から
病気の治療方法を求めて、このブログに辿り着かれた方にとっては、そくわん症の発症率がどの程度か、というような内容は意味がないかもしれませんが、“病気”を考えていく上では、その病気の患者さんがどのくらいるのか、発症率はどのくらいなのか、というような「基礎的データ・情報」から、ひとつひとつ紐といていくことも大切ですので、興味のある方はどうかこのまま読んでみていただければと思います。また、このような内容は、どちらかというと医療関係者向けになるのかもしれませんので、下記に記した私august03のデータの読み方に誤解があるようなときは、コメントをお寄せいただけますと幸いです。

◇2015年 奈良市立病院・奈良医大他
Adolescent Scoliosis Screening in Nara City Schools: A 23-Year Retrospective Cross-Sectional Study.

Abstract
METHODS:
We selected Moiré topography as the scoliosis screening tool for schools in Nara City. We screened boys and girls aged 11-14 years and reviewed the school scoliosis screening results from 1990 to 2012.
RESULTS:
A total of 195,149 children aged 11-14 years were screened. The prevalence of scoliosis (defined as ≥10° curvature) was 0.057%, 0.010%, and 0.059% in fifth, sixth, and seventh grade boys and 0.337%, 0.369%, and 0.727% in fifth, sixth, and seventh grade girls, respectively. The false-positive rate of our Moiré topography was 66.7%. The minimum cost incurred for scoliosis detection in one student was 2,000 USD.
CONCLUSIONS:
The overall prevalence of scoliosis was low in the students of Nara City schools. Over 23 years, the prevalence of scoliosis in girls increased compared to that in the first decade of the study.

・1990~2012年間(23年間)に 11~14歳の児童をスクリーニング
・合計 195,149人
・10度以上のカーブを側弯症と定義
・小学5年男子0.057% (111名)
・小学6年男子0.010% (20名)
・中学1年男子0.059% (115名)
・小学5年女子0.337% (657名)
・小学6年女子0.369% (720名)
・中学1年女子0.727% (1419名)

・モアレ検査における擬陽性率 66.7% (本当は側弯症ではないが、モアレ検査で側弯症の疑いありと判断されたパーセント)
・側弯症と確定診断するに要した一人当たり費用 2000ドル (日本円として約22万円)

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(from august03)
・文献本体が入手できていません為、アブストラクト記載内容から憶測するだけとなりますが、合計195,149人を23年間で割りますと、年平均8485人のスクリーニング
・23年間に10度以上の側弯症と診断された合計が3042名ですから、これを23で割りますと、132名。年平均8485人を132名で割りますと1.6%
(11~14歳の男女児童100人のうち2名程が10度以上の側彎)
→→→→仮に1クラス30名とすれば、3クラスに2名ほどは10度以上のそくわんということになる)


◇2011年 北里大学
A 5-year epidemiological study on the prevalence rate of idiopathic scoliosis in Tokyo: school screening of more than 250,000 children.

METHODS:
A 5-year epidemiologic study was performed to determined the prevalence of idiopathic scoliosis, the curve magnitude, the distribution of this magnitude, and the sex ratio in school children. Between 2003 and 2007, a total of 255,875 children aged 11-14 years were screened.
RESULTS:
A total of 3,424 children were found to be positive as a result of Moiré topography. With radiographic examination, 2,225 (65.0%) children with a Cobb angle of 10° or more were detected. The overall prevalence rate in schoolchildren 11-14 years of age with Cobb angles of 10° or more was 0.87%. The prevalence rate in girls increased from 0.78% at the age of 11-12 years to 2.51% at the age of 13-14 years. For boys, the prevalence rates were 0.04% at the age of 11-12 years and 0.25% at the age of 13-14 years. The overall ratio of girls to boys with scoliosis was 11:1. The ratio of girls to boys was 17:1 at the age of 11-12 years and 10:1 at the age of 13-14 years.
CONCLUSIONS:
The majority of the curves fell in the range of 10°-19°. There was a slight increase in the prevalence rates of children with a curve of high magnitude (≥20°) as compared to the prevalence rate in 1988. We suggest that school screening for scoliosis is effective for early detection; however, it is first necessary to review and optimize the target groups.

・2003~2007年間(5年間)に 11~14歳の児童をスクリーニング
・合計 255,875人
・モアレ検査では 3,424名が疑いありと判断
・10度以上のカーブを側弯症と定義
・10度以上のカーブのあった人 2,225名 (2225/3424=65%) を255,875で割ると0.86%
・2,225名のうち大半は、10~19度のカーブ

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(from august03)
・文献本体が入手できていません為、アブストラクト記載内容から憶測するだけとなりますが、合計255,875人を5年間で割りますと、年平均51,175人のスクリーニング
・10度以上の側弯症と診断された合計2,225名 これを255,875で割りますと、0.86% (11~14歳の男女児童100人のうち1名程が10度以上の側彎)
→→→→仮に1クラス30名とすれば、3クラスに1名ほどは10度以上のそくわんということになる)
→→→→データの詳細がないので正確にはわかりませんが、2,225名の大半が10~19度のカーブということは、ほぼカーブ進行のリスクが考えられないということになります。
 
下記に示したのは2005年度の東京都の側弯検診結果です。
ブログ内の記事[側弯症はなくなることはありません]も参照ください。




2005年度に東京都は約5万人にそくわん検診を実施し、15度以上の側弯の疑いありと発見した率が、0.63% でした。

このように、3件の情報という少ない対象ですが、日本国内おける、つまり日本人での10度~15度以上の側弯が、スクリーニングで発見されるパーセントは約1パーセントほど、多く見積もっても2パーセント程度ではないかと思われます。つまり、100人に2名ほどの人たちには軽度の側弯カーブがあるということになります。
ただし、ここで大切なことは、軽度な側弯は自然に緩解する、あるいは進行のリスクは小さいということです。
下図は[側弯症治療の最前線(基礎編)]からコピーした表ですが、このデータにも示されているように、カーブが15度以下(20度以下)の場合、側弯症が進行する確率は非常に小さいことがわかります。

この点については、ブログ内の関連記事 特発性側弯症 マイルドカーブについてのQ&A も参照願います。
その中から1件をコピーして下記にお示しします。

Q: Dr. Bunnell, we've been told that one in ten persons has scoliosis but
we know that most curvatures will remain mild and never require treatment.
What percent of curves remain mild?
A: Ninety-five percent of the curvatures will not require treatment.
Q: 10人にひとりは側弯症だと言われています。しかし、多くの場合、カーブは
 マイルドなもので治療は不要だとも言われています。どれくらいのパーセンテー
 ジでマイルドなままなのでしょうか? 
A: 95%の患者さんは治療は必要とならないカーブです。


同じくブログ関連記事より 特発性側わん症 発見時からの進行の確率とリスク
......この839人のこどもたちを3年以上経過観察した結果、カーブ進行があったのは、14.7%でした。残り約85%は、自然治癒か変化なくそのまま何もしなくても大丈夫だった......





ですから、専門医にカーブを測定してもらい、コブ角15度以内であれば、慌てる必要はなく普通に生活していればいいのです。神経質にならずに、子ども達に普通の生活、普通の学校生活、運動・スポーツをしていることで、自然に緩解する。ということです。とある側弯整体の宣伝には、軽度そくわんなら側弯エクササイズで90%が改善した。と書かれているようですが、軽度側弯ならばそんな特別なことはしなくても、子供らしい運動をさせ、スポーツが好きならば、野球、サッカー、スイミングなど好きなスポーツに励めば、この程度のカーブは自然に治る、ということです。
.....90%は改善したとのことですが、では10%はどうなったのでしょうか? そのことにはこの側弯整体師は触れていないようですが......

考えるべき問題は、発見時にすでに20度とか30度とかになっていた場合です。
東京都予防医学協会の脊柱側わん症検診のページに、次のような記載があります。
「最近の検診では、きわめてまれに側わん度が30度以上のこどもが発見されることはあるものの、20度以上の側わん症の発見率は小学校で毎年0.1%程度、中学生でも0.25~0.41%とほぼ一定です。この数字は、検診が目指した「早期発見」という当初の目的は、十分に達したことを表しています」

これはどういうことかと言えば、日本整形外科学会の先生がたが、長年の努力によって、この日本国内にも「学校での側弯症検診」という制度を根付かせる運動と働きかけを行ってきた結果、その検診活動が毎年、毎年実施されることで、カーブのある子どもがその早い時点で発見されるようになってきたことを示しているわけです。この検診制度が根付く前は、ある日突然、学校の先生あるいは母親が、こどもの背中の異常に気付いて、病院で診察してもらったところ、すでに側弯症が進行していた、コブ角が30度、40度になっていた。という例が多数あったのです。

この検診制度により、例えば、15度で発見されて側弯症と専門医により確定診断された場合、しばらくは経過観察となります。病院に定期検査に行くことは絶対に必要です。そのまま数年を経て、15度~20度のまま進行がなく骨成長期が終われば、その後は大学や会社での定期健診(レントゲン検査)を欠かさずに受けていくことで、ご自分の脊柱に変化があるのか、ないのかが分かります。
小学4年生で側弯症15度で診察されたとして、中学生となり、高校生となったときに15度のままであれば、その後も進行するリスクは非常に小さい。と言えます。
小学4年生で側弯症15度で診察されたとして、小学5年生でカーブが進行して20度となったら、先生は装具療法もありえるかもしれないことを説明するかもしれません。小学6年でカーブがさらに進行して、30度になったら装具療法が指導されることでしょう。
これが一般的な流れだと思います。
そして、ここに側弯整体が登場することになります。15度のときから、側弯エクササイズをすれば 90%の患者で改善があります。なぜ、貴方はやらないのですか !!! と。
もう一度書きますが、“治せる”と言っているマイルドカーブは90%の患者です。100%ではありません、では残りの治せなかった10%の患者さんははどうなったのでしょうか ?


マイルドカーブの大半は時間の経過とともに自然治癒することが医学データから示されていることを多くの皆さんは知りません。ゆえに、あたかも彼らの施術・体操療法でカーブが改善するのだと「信じ切って」しまうのだと思います。それは、おそらくその事実を知らない側弯整体師自身が「自分が治した」と信じ切ったからこそ自信に満ちた宣伝ができるのでしょう。とある方は、学術的見識を身に付ける為に、米国のアダムスミス大学で勉強してその大学の理学博士も取得されていたようですが、やはり理学と医学とは異なりますので、情報収集にも限界があるのだと思います。

関連記事[米国型学位商法による弊害と側わん症]に記載していますので、ご興味のある方は、参考にされて下さい。

側弯症については、専門に学んだ医師でなければ、いかに「医者ドクター」とはいえ、他科の先生は知識・情報に乏しい。というのは、10年前も現在も変わりありません。まして、20年も前では、側弯症治療がまだ端緒についたばかりの時期ですから、他科の先生には対応するすべもなかったと思います。私august03は、いわば「グーグルが普及して医学論文・情報が自由に検索できる世界での後付けの話」をしているわけですから、その当時、その先生がどんなに努力されたとしても得ることができなかった何十倍もの文献をベースにしていることになります。ですから、その当時 Y医師が側弯整体はなんてすばらしいんだ、と感じたとしてもちっとも不思議ではありません。ただし、間違った知識・情報を広める役割を果たしてしまったのだと私は思います。日本国内に、側弯症の治療は整形外科(医学)ではなく、側弯整体が行うもの。という宣伝に積極的に手を貸してしまいました。 Y医師がすべきであったことは、あくまでも思春期特発性側弯症のこどもたちを医学の中で治療するには、この日本という国の中で、何ができるか、どうすべきか、ということを考え、日本整形外科学会あるいは側弯症学会の先生がたと討議する道がなぜなかったのか、そういうことが残念で仕方ありません。整形外科の先生がたが努力して、側弯検診を根付かせようとしているときに、横から側弯整体がでてきて、ネツト上で直接患者さんやお母さんがたに「整形外科は何もできない、そくわんを治せるのは整体だ」と言わせてしまいました。その宣伝に手助けをしてしまいました。今であれば、Y医師もグーグルで検索して、何が医学的事実であるのか、医学としてどうあるべきか、ということは知ることができます。おそらくそのように調べた結論として、側弯掲示板を廃止されたのではないでしょうか。

体操が不必要なのではありません。エクササイズすることも大切です。でも、その啓蒙方法、啓蒙手段として、実施主体として民間の側弯整体に手を貸したのは間違いです。“医療”をどういう形で学び、医学情報を交換し、医者どうしで研鑽し、たとえ試行錯誤があったとしても、医学に携わる様々な分野の大学、医療機関、国内にとどまらず世界中の先生がたと交流し、新しい知識・技術を学んでいく。そこに医療の日進月歩があり、それが患者さんへの貢献へと繋がっていく。
Y医師、貴方もそういう医学の道筋は分かっていたのではありませんか? でも、残念ですが、間違った道がこの日本の中では広がってしまいました。
ゆえに、私はたとえたった一人であっても、この間違った道を、本来のあるべき道に戻したいと考えています。

マイルドカーブが問題なのではありません。さらに進行していく患者を見つけて、その患者さんをフォローして、次にどうすべきかを考える。それが医師の役割になっています。その時に、考えなければならないのは、そのように進行していく患者さんというのは、パーセンテージでいえば非常に少ない。その少ないけれど、絶対に見逃してはいけない患者さんを見つける為の側わん検診であり、その検診システム上に流れている側弯症治療方針なわけです。


[側弯症治療の最前線(基礎編)]からコピーした表を下記に示します。




この項目の最後に、「皮肉を込めて」書きます。これは「皮肉」ですが、読まれる皆さんには、ぜひとも考えてみていただきたいことです。

 ・側弯検診はとてもお金のかかるやり方です。どこの地方自治体でも、
  予算のやり繰りには頭を痛めているのが現実です。
 ・思春期特発性側弯症は、側弯整体で「治せます」
 ・では、何も莫大なお金をかけて側弯検診をする必要はないはず。
 ・検診制度のなかった昔のように、お母さんか学校の先生が「あなたの背中、
  どうも変だよ。医者で診てもらいなさい」と注意して
  医者に行き、レントゲンを撮り、コブ角を測定して、15度以上あったら
 ・側弯整体に行けばいい。
 ・たとえ、コブ角が30度でも、40度でも安心して下さい。側弯症は側弯整体で
  治せますから。
 ・ゆえに、側弯検診は不要となります。
  これで、自治体のその予算を保育所や介護に回せば、税金はさらに
  有効活用できます。


お分かりいただけますでしょうか。
側弯整体が存在することで、日本の側弯症治療のあるべき姿から、大きく外れてしまっていることを。

  august03

2017年10月22日追記
メモ:❝データ❞というものは取扱が非常に難しいものです。特に医学データの場合は、人間がその対象である為に、個体差・個人差があり、また例えば「装具療法」と言ってもそこには装具のタイプ、装具の製作者の技術、家庭での装具の装着状態などに「差」があります。「体操療法」と言っても、その内容(方法・実施時間・ひとりでやるのか、指導の監視のもとでやるのか等)の「差」があります。対象となる患者さんにおいては、性別、年齢、初潮の有無、骨成熟度、初診時コブ角、回旋の強弱、側弯のタイプ、遺伝的リスクの有無、BMI等、それらのデータが全て網羅されているのか、何があり、何がないのか、というように、どこかに必ず十分とは言えない要素があるものです。しかし、それを突っ込みすぎては前進できなくなります。従いまして、いまここに入手できている❝データ❞を単純化した形で、コメントを書かせていただいておりますこと、ご了承下さい。データとは100%ではありません。しかしゼロでもなく、そこから「見えてくるものはある」という姿勢で書いております。


☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
 医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?



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