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側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

思春期特発性側弯症 - 早期発見 → 装具効果の維持 → 手術なしで健康な人生を送るために

2018-05-25 13:52:05 | 特発生側弯症と装具療法
どんなに現代医学が進歩したとしても、ベストシナリオは「手術とは無縁な一生を送ること」がもっとも幸せな人生です。病気になったとしても、クスリで治るならば、手術よりも先にクスリを選択します。

思春期特発性側弯症の難しい点は、この病気を治すクスリが存在しないことです。

側弯整体等はそこにビジネスチャンスを見つけました。 次のように....


  特発性側弯症は、医者では治せない。なぜなら医者は「手術」しか方法がないから

  この病気は「身体(骨、筋肉等の全身に関わる)の病気」である

  これを治療するには、脊椎を中心とした骨・筋肉等へ直接働きかけ

  その人の持つ自然治癒力を回復することが重要なのだ

  特発性側弯症は、“わたし” の療法で治すことができる

  側弯体操を行い、ユラユラと揺れるベッドのうえでxxx施術を行い

  「装具(ブレース)」療法を行う

     ↑
 装具療法には「医師の診断書」等が必要です。装具製作を担ってくれる専門の方も必要となります。コブ角の進行程度をチェックする為に、定期的なレントゲン撮影も必要となります。もっと基本的で重要な点は「側弯症」という症状の影に隠れた別の重大な病気の有無をまず第一に確認しなければなりません。(カテゴリ:側弯症と脊髄空洞症 を参照ください)


 この側弯整体のマーケティングの上手さは、「側弯体操」+「xxx療法」+「装具」 という組み合わせにあります。
 多くの場合、医師は「装具」の指導は行っても、「体操指導」は行いません。それは「側弯体操」による治療効果が医学データとしては否定されていることが背景にあります。医学データとして認められていないことを勧めることは、標準医療を原則とする日本の医療制度には合致しません。

 座視して結果を待つよりも、何かをしたうえで結果を得るほうが潔い。と考えるのは、人間の持つ良い意味での本性です。

 
     医師: 経過観察(何もしない)  ⇔  整体:「側弯体操」+ 「xxx療法」


 さらには、20~10年前はインターネットは存在せず、「検索」をすればどんな情報でも簡単に手に入る現在とはかけはなれた「情報不足」の世界でした。 どんなに医師側から、側弯症の90%以上は「経過観察中」に緩解・自然治癒するタイプであることを伝えたくとも、その声は広く普及することはありませんでした。

 そのような医学事実を知らない患者さん(その家族)は、〇塚整体の「施術・体操」で治った、と勘違いし、(後日広告宣伝に利用されることになる)礼状を出し、掲示板等で「善意からのアドバイス」を患者さん(その家族)に教えてあげる、という、いわば現在の SNSで拡散する「いいね!」が続くことになりました。

 彼らのマーケティングの成功を医学的に支えたのが「装具」です。「装具」を用いること、それを可能とする(処方をだす)医療機関と作製する技士がいたこと。そして、「口コミ」効果。

 当時から脊椎外科医師や、側弯症を得意とする医療機関は存在しましたが、その頃は「医療機関の広告宣伝」は禁止されていましたので、一般人からは、どこの病院も同じにしか見えません。 整形外科医と脊椎外科医の区別もつきませんでした。

 こうして、日本の思春期特発性側弯症治療にとっての不幸な20年が続くことになりました。側弯は整体等の民間療法で治す程度の病気という誤った常識が定着したことで、脊柱検診の実効性を高める為の二次検診率は上がりません。民間療法が治す程度の病気を、病気の概念でとらえることのできない一部の学校では、学校検診自体が形骸化しているとも聞こえてきます。

 何よりも、装具療法自体が、[医学の治療]ではなく[整体療法の一部]という目で見られるようになったことで、患者の装具療法に対する受け止め方も微妙なものになってしまいました。 整体に協力しているA装具社にはそういう視点で、側弯症治療における装具療法の在り方......自社のあるべき姿ということを考えていただきたいと切に願います。



 治療する為のクスリが存在しない現時点で、思春期特発性側弯症における医学的データが示す対応は、

 ①早期発見
 ②専門医に診てもらう事
 ③適切な時期からの装具療法の開始
 ④装具を卒業しても、健康管理(定期診断)を、 ということに尽きると考えます。

下図は、ノルウエーの John Emil Lange等「Long term results after Boston brace treatment in adolescent idiopathic scoliosis(思春期特発性側弯症に対するボストンブレースで治療した患者(138人)の長期フォロー-平均20年の-結果)」 Biomed Central Scoliosis 2009.4 から引用し、そのデータに私august03の知見を組み合わせたものです。

この報告からは、当時(1976~1988年)の装具療法が実態として何時間装着されていたものであるかは不明です。おそらく23時間/日を指示されていたと思いますが、例えば50人は15時間/日、100人は10時間/日であったというような正確なデータは読み取ることはできません。しかし、データの傾向は、これまでにブログ内で示してきた他の多くの医学報告と同じものを示していますので、例えば、一日13時間以上は装着していた。と仮定して推測することは可能と考えました。

下表はオリジナルのものです。

初診時平均33.4度 → 装具卒業時の平均28.3度 → 20年後の検査時平均34.2度




このデータをもとに、推測を加味しました。初診時コブ角が小さければ小さいほど、長期経過においてもその傾向は維持されていくことが他の多くの医学論文で報告されています。



個人差は当然ありますが、水枠で囲んだ程度の角度を維持できれば、将来ともに手術をすることなく、生涯を平穏に過ごすことができると予想することができます。


一方、早期発見が遅れ、コブ角がかなり大きくなっていた場合の予測が下表です。





       早期発見することがもっとも重要です

       その為にも、二次検診率を高めることが必須です




[カテゴリー: 特発性側弯症と装具療法 をご参照ください]



august03



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