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春日井市の絵画教室、あとりえPOPアートスクールの教室風景や内容を中心に、アートについて広く記事にします。

理由なき犯行

2012-12-07 09:57:54 | 教室のこと(子供造形絵画)




壮絶な光景だった。


犯行現場を目の当たりにした捜査員は、思わず目を伏せたと言う(写真1)

いったい誰がこんなことを…


事件は12月6日、木曜日の白昼に起きた。


部屋中の赤い海が、事の異様さを物語る(写真2)

壁に染み込んだ無数の手がたの謎。

いったいどんなメッセージが込められているのだろうか(写真3)

鑑識は目を皿のようにして、懸命に証拠を探した。


そばで起きていた異変に気がついたかのん(3)が現場を屋根から覗いた時には、犯人はすでに姿を消していたという(写真4)

何一つ目撃証言も出てこない状況に―

「このヤマは時間がかかる」

誰もがそう思い、事件が暗礁に乗り上げることを覚悟したその時だ。


意外なほどあっさりホシの面がわれた。


部屋に密かに取り付けられていた防犯カメラに、事の一部始終が映し出されていたのである。

これは建物の設計と施工を担当した、鈴木聖也氏の手柄と言ってよい。


捜査員は皆、その写真を見て息をのんだ。

顔にまでべっとり赤をつけた犯人の、うつろな目が中空をさ迷う(写真5)

「こいつが…」


理由なき犯行の幕切れは、あっけないものだった。


犯人は現場に戻る―
この通説を裏付けるようにえみり(2)は、現場近くをちょこちょこしているところを取り押さえられた。

まったく逃げる様子も見せず、しまじろうを片手にマラドーナの真似をしていたえみりは、顔だけではなく、手足も赤に染め、膝には使用済み紙パレットが付着していたという。


事件はあっけなく解決した。

そして捜査本部は解かれ、日常が戻った…


しかし、
本当に終わったのか…?

オレの胸に残るモヤモヤしたものが消えることはなかった。


今、この事件を振り返って思う。

衝動が抑えられずに犯行に及んだえみりだが、悪いのは買ったばかりの絵の具を、片っ端からすっからかんにしたことでも、ボディペインティングをしたことでもない。

ましてや、絵の具だらけの手足で、部屋中走り回ることなど大したことではないのだ。


一番の罪は、人を虜にするあどけない2才の笑顔だろう。



オレは、くゆらす煙草の煙りの向こうに、絵の具まみれの微笑みを見ていた。


「しぇんしぇ」と繰り返す幻は、きっと来週も、いや、この先もずっと理由なき犯行を繰り返すに違いない。


戦慄が、冷たい汗となって背中を走るのを覚えた。

「まさか…こわいのか?」

終わりなき戦いと、無意識にそれを楽しみにしている自分が…。


「いたちごっこ」

胸にモヤついたものは、そんなかわいらしい言葉の陰に隠された、不毛の戦いを示唆しているのかもしれない。

これは始まりにすぎない。


オレは幻を振り払うように煙草をもみ消した。


つづく




※この物語は殆どノンフィクションです。

つづきは次に起こるであろう大事件のあとに。

また、文中不適切な表現や偏りがありますことをお詫びいたします。
コメント (8)
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