真夜中のカップらーめん

作家・政治史研究家、瀧澤中の雑感、新刊情報など。

野田総理の言葉はどれか?

2011-09-14 04:38:12 | Weblog
野田総理の、所信表明演説。

デジャヴを見ているのか、と思った。
話している内容が、震災2か月後、今年5月の状況ならしっくりくる。
しかし、すでに半年たっている。

『「復興基本方針」に基づき、一つひとつの具体策を、着実に、確実に実行していくことです』

やっていないのか?

『まずは、歳出の削減、国有財産の売却、公務員人件費の見直しなどで財源を捻出する努力を行います』

2年前の政権交代時、マニフェストに書いていたことを、まだやっていないのか?

『「国家の信用」が厳しく問われる今、「雪だるま」のように、債務が債務を呼ぶ財政運営をいつまでも続けることはできません』

2年間、ずっとそうしてきたのか?
史上最悪の借金まみれの国家予算を組んだのは、どこの政党だ?

『昨年策定された「新成長戦略」の実現を加速する』

加速する前に、そもそも実績が上がったとはとても言い難い。
「国を開く」と大見えを切っている「新成長戦略実現2011」では、自由貿易促進を謳っているが、あれほど吼えていた、関税を撤廃するTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)はどこに行ったのか?
やるのか、やらないのか?
所信表明というのは、そういう具体的なことを言う場ではないのか?

『経済成長を担うのは、中小企業を始めとする民間企業の活力です』

野田政権が狙っている法人税の増税と、「民間企業の活力」は、
誰がどう見ても矛盾がある。
「冷房をつけて、熱射病にならないようにしましょう。あ、電気代は滅茶苦茶上げますけどネ」
では、わけがわからない。

『地球温暖化問題の解決にもつながる環境エネルギー分野、長寿社会で求められる医療関連の分野を中心に、新たな産業と雇用が次々と生み出されていく環境を整備します』

これも、たしか2年前、鳩山政権時代から民主党は言い続けているが、「新たな産業と雇用が次々と生み出されて」いるとは到底思えない。2年間、何してたの?

『福島に生まれて、福島で育って、福島で働く。福島で結婚して、福島で子どもを産んで、福島で子どもを育てる。福島で孫を見て、福島でひ孫を見て、福島で最期を過ごす。それが私の夢なのです』

ここは正直、ぐっときた。
しかし、これは高校生の演劇でのセリフで、考えたのも喋ったのも、野田政権関係者ではない。
結局、震災で犠牲になった役所の職員の話、
台風でご家族を亡くされ、それでも陣頭指揮に立つ町長、
そして高校生の演劇のセリフ以外に、感じた場所はどこにも無かった。

野田総理の言葉は、無いのか?

なぜ、この所信表明が虚しく聞こえたのか。
心がこもっている、とか、いない、とかは、本人ではないのでわからない。
しかし、評論家や物書きなら情緒に訴えるだけでもいいが、
政治家は何をするか、何をしたか、で評価される。

所信表明で喋っていたのは、これまで民主党が言い続けてきて、
しかも言ってるだけで実現していない話ばかり。
あえて言えば、増税に言及したくらいか。

さらに。以下の言葉を読んで戴きたい。

二年から三年以内に不良債権の最終処理を目指します」
五年以内に世界最先端のIT国家を実現するという野心的目標を設定しています」
「平成十四年度予算では、財政健全化の第一歩として、国債発行を三十兆円以下に抑えることを目標とします」
「地球温暖化問題については、二〇〇二年までの京都議定書発効を目指して、最大限努力します」

小泉純一郎総理、最初の所信表明演説。

これと対比しようと、野田総理の所信表明演説を熟読した。

ない。

数値で示した目標が、何も、ない。

ちなみに小泉総理時代の所信表明は、施政方針を含め、回を重ねるごとに数値で示した実績と、数値で示した目標が増え、演説の中で国民に示している。

数字を示せば、守れない時にやっかいだから出せない。

そして国会を、わずか4日しか開かない。
ドアに鍵をかけながら、「さあ、どうぞ遠慮なくお入り下さい」
と、人を招き入れる仕種だけしている、不愉快な内閣。

信用しろ、という方が、むずかしいのではないか。

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講演会のことなど

2011-09-11 23:55:17 | Weblog
震災直後、研修会や講演会での仕事が止まって、
それが最近、またご依頼を戴くようになった。

先日は、某県の農業関係団体におじゃまをした。

講演内容は、二宮尊徳について。
歴史と経済が混合した話で、しかも尊徳が実践した内容は今でも応用できるため、
聴衆のみなさんも、あまり退屈せずにお聴きいただけたのではなかろうか。

二宮尊徳は、飢餓などに苦しむおよそ600の村々を復興した、
農村経営のコンサルタントであった。

彼は徹底した現場主義で、
依頼された村に行くと、まず村人の家々に行き、台所や便所などを見て回った。
そうして、報告では上がって来ない、村の「現実」を把握していった。

真面目に働く、というイメージの強い尊徳だが、
彼は人間の弱さや性質をよく知っていて、どうすれば人々がやる気を起こすのか、
そのことを考えて仕事をさせた。

彼は、
「人間はサボりたい、という気持ちもあれば、真面目に働きたい、という気持ちもある。
自分だけ良ければいい、という気持ちもあるが、人の為に何かしたい、と思う心もある。
人間が持つ『良い方』を引き出せれば、物事は必ず成功する」
という考え方を持っていた。

会社経営でも、成功している社長や企業は、
従業員の「良い方の心」を引き出すことに成功している。

どうすれば、人々の「良い方の心」を引き出せるのか。
二宮尊徳は、色々な方法を使うのだが、詳しくは拙著で、
と書くと、何だか詐欺のようで気が引ける。

そこで一つだけ。

尊徳は、村で何かを決める時、今で言う投票を行った。
道を整備する時などにリーダーを決めるのだが、
そういう時も村民の中で、投票によってリーダーを選出した。

なんと。

江戸時代真っただ中の文化・文政時代である。
普通に「投票を行う」だけでも驚きだが、
男尊女卑どころか、一般にも身分のやかましかった時代に、
ただでさえ保守的な農村で、
女性まで参加をさせて、投票を行っている。

遠山景元、つまり「遠山の金さん」が北町奉行になるよりも前の時代、である。

尊徳は、参加意識こそが責任意識につながる、と考えた。
自分たちで決めたことだから、きちんとやり抜こう、と、人は思う。
そこを刺激すればいい、というのが、尊徳の「作戦」だった。

これ以外にも、欲望を刺激する方法、「自分を認めてほしい」という意欲を刺激する方法等々、
尊徳の知恵と実践の工夫には、凄まじい人間洞察力が感じられる。

ほかにも、たった三つのことを守れば、必ず復興できる原則や、
それを元にした、復興のためのシステムなど、
面白くてためになることがたくさんある。

ご興味を持たれた方は、拙著『日本で1番不況に強い男』(中経出版)
http://t-linden.co.jp/book/urabanashi/fukyo_man.htmlをご覧ください。
講演ご依頼の方は、以下までお問い合わせください。
http://t-linden.co.jp/book/osirase/index.html

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雄弁は人格

2011-09-10 23:56:23 | Weblog
憲政の神様、尾崎行雄は、ただ者ではなかった。
なにしろ、自分の演説会に木戸銭(入場料)を取ったのである。
それでも会場は毎回満員で、立錐の余地もなかった。

その尾崎が、

「雄弁は人格」

という言葉を残している。

「綸言汗のごとし」(君主が一度口にした言葉は、訂正できないほど重いもの)、
とニュアンスは似ていて、
政治家の言葉は、すなわち政治家の人格そのもの、
軽々しくあってはならない、といういましめである。

野田内閣の経済産業大臣が、最初の国会が始まる前に、辞任した。
「放射能をうつしてやる」と軽口を叩きながら、防災服の袖を
記者にすりつける仕種をしたらしい。

いま、中国は沖縄近海で、日中中間線を越えて日本側にわざと侵入し、威嚇をはじめている。
近年、フィリピンやベトナム相手に、中国が島を侵略していく前段階と、同じ動きである。

かと思えば、ロシアの爆撃機が日本列島を一周し、
宗谷海峡には20隻もの軍艦をそろえ、すでに4隻が海峡を通過した。
宗谷海峡は、稚内の目と鼻の先である。

一昨日も書いたが、覚悟も勉強も見識も足りない、二流の政治屋大臣など、
どうでもよい。
しかし、そういうくだらない大臣の件で、
限られた新聞の紙面や、テレビのニュース時間が割かれる。

というよりも、こんな内閣に果たして、中露の野望を防止する施策がとれるのか?
なにせ、防衛大臣は自他共に認める「素人」なのだから。

政治家の言葉は本来重いもので、だから明治の頃の政治家は言葉を大切にした。
そういう政治家の言葉を聴きに、人々は木戸銭まで払って、演説会を見に行ったのである。

しかし、今や民主党のおかげで、日本の政治家の言葉は信頼を失っている。

もう一度、尾崎行雄の言葉を記し、野田新総理に贈る。

「雄弁は人格」。

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増税の話の前に

2011-09-09 23:46:59 | Weblog
増税は、既得権者、民主党を支持する団体に、
大きな不利益をもたらすことなく、
当面の課題を解決できる。

逆から考えてみよう。
増税をせずに、お金をねん出する方法はあるのか。

たとえば。

民主党の選挙公約通り、公務員を削減し、公務員給与を下げ、
本格的な行政改革を断行する。

民主党は「徹底的に無駄を省けば、20兆円は出てくる」、と
はっきり口にしていた(藤井元・財務大臣)。

あの大騒ぎした政治ショー、「事業仕分け」も、
仕分けた通り、ちゃんと実施すればいい。

しかし。
公務員改革、行政改革は自民党時代よりもおざなりで、
無駄を省いて出てくるはずの20兆円は、まったく出てこない。

事業仕分けは、あんなに派手にパフォーマンスをやって、仕分けしておきながら、
実施していない項目も多い。

公務員改革を本気でやれば、民主党の支援団体である公務員の労働組合から、反発を受ける。
行政改革で公務員を減らしたら、民主党を支持してくれる人(票)を減らす。
事業仕分けをまともに実施したら、既得権を持つ人々と戦わなければならない。

しかし、彼らとは戦いたくない。
というより、戦う力も知恵もない。

そういう政権が選択する最も安易な道は、
「増税」
である。

増税してお金が、一時的でも入ってくれば、
一瞬、うまくいったように見える。
増税すれば、公務員改革や行財政改革など、
公務員の組合から睨まれるような改革をしなくて済む。

こうして、勇気も知恵も力も無い政権は、増税を選ぶのである。

私は、増税がすべてダメだと言っているのではない。
税制はメリハリであり、税を増やした分でどんな経済成長をもたらそうとするのか、
その青写真のないうちから、増税を認めるべきではない、と言っているのだ。

そして、「増税増税」と念仏を唱える前に、
痛くて、辛くて、一部の人から憎まれるかもしれない、
選挙で応援してくれる団体から嫌われるかもしれない、
けれども、やらねばならないことがあるのではないか、
と考える。

それが、支持基盤をも含めた、大胆な痛みを伴う改革である。

国民に増税を求めるならば、その前に、政府としてケジメをつけてもらいたい。
政治家の歳費を削る、などという、小さな自虐的行為ではなしに、
もっと国家的見地から大ナタをふるってもらいたい。


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「不完全な閣僚」って・・・

2011-09-08 22:46:35 | Weblog
増税について書くつもりだったが、
あまりにひどいので、閣僚について。

まず、法務大臣。
「大臣規範」で、閣僚や副大臣による大規模な政治資金パーティーは開催を自粛するよう定めているが、
彼は堂々と、地元で資金集めパーティーを開催。
「『大規模』じゃないからいいんだ」、という弁明。笑止。

防衛大臣。
「安全保障は素人だが、これが本当のシビリアンコントロール(文民統制)だ」
唖然。
ということは、素人なら彼でなくても、私でも、
近所のオバちゃんでも、誰でもいいわけである。

そして。
マルチ商法の業者やその業界団体から、合わせて254万円の献金を受けていた大臣。
この人、消費者担当大臣。
ブラック・ジョークか?

以前、自民党の1年生議員だったAから、こんな話を聞いた。
会社を経営していたAは、議員に当選後、社内の倉庫の二階に事務所を置こうとした。
会社は弟が継ぎ、Aは退職。
倉庫の借り賃もちゃんと払うから問題ないが、一応、ベテラン議員のTに報告をした。

Tの答えは、
「ダメだ。絶対にそんな場所に事務所を構えるな」
だった。

「たしかに、借り賃を払えば法的には問題なかろう。
しかし、国民はそれをどう見る?
『自分の会社に、タダで事務所を置いている』
『社員も、政治活動に利用している』
『会社に便宜を図るつもりだ』
こう、思われないか?
たとえ法的に正しかろうと、有権者から誤解を受けるようなことは、
政治家は絶対にしちゃいかん。
合法と信用は、イコールではない」

Tは、閣僚や党の要職を歴任した人物だが、彼は一度も金銭スキャンダルに巻き込まれたことがない。
無礼を承知で、「どうしてそういう問題を起こさないのですか」、と尋ねたら、
「自覚の問題だよ」、と答えてくれた。

結局のところ、大臣になるつもりの無かった二流政治屋が、
間違って大臣になったものだから、自覚も勉強も見識も足りないために、次々とボロが出る。

これは、私だけの意見ではない。

「不完全な内閣で、十分な答弁ができない」

こう言って、予算委員会を開こうとしないのは、
当の民主党の国対委員長である。

嗚呼、政権交代から2年。
「出来たばかりだから仕方ない」、「仮免許」、「経験したことがない」、「想定外」。
こんな言葉を、まだあと2年、聞かされるのか?

政権交代から2年たって、
「ノーサイド」でつくったはずの全党的内閣なのに、
「不完全」なものしか出来ないのなら、あと2年待っても一緒だ。
だって、所属議員は変わらないのだもの。

閣僚になった人たちには、怒りより憐れみを感じ始めた、
今日この頃である。

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野田政権は、支持してくれる既得権を持った人々を裏切れるか

2011-09-08 00:51:09 | Weblog
「それでも、前よりマシだし、珍しく信念のありそうな総理じゃないかな?」
と、友人が言った。野田新総理について、である。

まだ実質何も始まっていない段階で言うのもなんだが、
以下のことは野田政権の政策を見る上で参考になるかもしれない。

政治は背景であり、支える人や団体や組織を無視して、
政治家個人の性格や、信条だけを取り上げてもあまり意味がない。

野田グループは、党内にわずか30名しかいない。
これでは、政権基盤が強いとは言えない。

かつて自民党政権時代、自派の勢力が小さい総理大臣は、ほぼ例外なく政権基盤が弱かった。
古くは三木武夫、海部俊樹、宇野宗佑。
最近で言えば麻生太郎。

小泉純一郎は、個人としては「一匹狼」だったが、
その基盤は党内第2位(のち党内最大派閥)の森派であった。

また、政党を応援する団体や組織を無視したり、
支援団体に不利益になるようなことは、基本的にどの政党も行わない。
例外は小泉政権における特定郵便局との関係くらいである。

しかし、公務員改革を本気でやろうとすれば、必ず公務員の労働組合と利害が衝突するし、
教師の質を上げるために、無能な教師と有能な教師の給与に大きな差をつけようとすれば、
日教組出身の新幹事長が死んでも阻止するであろう。
外国人参政権問題では、これを棚上げにすれば、
民主党を応援していたらしい在日の外国人団体は、どう考えるであろうか。

小泉改革に迫力があったのは、
「え?そんなことしたら、自民党の票が減るぞ!」
と、関係者だけでなく周りが驚くほど、
旧来の支持団体に不利になることを推し進めたところにある。

はたして、国全体の利益を考えて、
野田政権は支持してくれる既得権を持った人々を裏切れるのかどうか。

かつて小沢一郎氏と党代表選を争う寸前、腰が引けて代表選から撤退、つまり逃げた野田氏は、
今度こそ、逃げずに国の為に既得権者を抑え込めるのか。

増税をかかげる野田政権には、その覚悟が薄いと見るが、
詳しくは明日、ブログにて。

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試される、国民の見識

2011-09-07 02:53:33 | Weblog
「野田政権に対する感想は?」
と、複数のメディア関係者から尋ねられたが、所信表明も行われていない段階で、良いも悪いもない。
だから、期待も絶望もしていない、と答えている。

世間では、外交も内政もぐちゃぐちゃにして辞めた鳩山氏や、
同じ民主党の仲間の多くから
「お願いだから早く辞めてくれッ」と、
悲鳴に似た辞職勧告を受け続けた菅氏と比べれば、
野田新総理はマシなのではないかと、そういう声が聞こえる。

そこで考えた。
たとえば。
入学以来2年間、100点満点で30点以下しかとれなかった子がいたとする。
その子が、100点満点で50点とった。
「よく頑張ったねえ!」と、先生は一応褒めてくれるかもしれない。

野田政権に対する期待値を間違えると、
まるで50点が素晴らしいかのような錯覚に陥る。

子どものテストなら、冷たいようだが、影響はその子だけのことである。
しかし、国政での50点は、国家国民全体が50点の中で生きていかねばならないことなのだ。
政治には常に100点を求めるべきである。
そうしてようやく、合格点の60点くらいになる。

要は、期待しつつ、厳しく監視すべき、ということである。
監視するには、監視するだけの見識を私たち自身が持たねばならない。
だいたい、見識のない国民が、どうやって見識のある政治家を選べるのか。

政治は政治家に丸投げしているのではない。
政治家に、一時的に権力を与えて、私たちの代わりに働いてもらっているのだ。

政治家には国家国民に対する責任があり、
国民には、見識をもって政治家を選び、見識をもって政治家を監視をする義務がある。

野田政権で試されているのは、
実は私たち国民の、政治に対する見識、そして監視義務でもあるのだ。

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