仕事の結び目

コンサルタント&ファシリテーターの朝尾直太が仕事に関係するテーマについて記すコラム。

eラーニング・ワールドに行ってきました。

2006年07月30日 | Weblog
先週、ビッグサイトで開催された「e-Learning World 2006」を見に行ってきました。現状eラーニング・サービスは提供していませんが、集合研修とは隣接・相互補完領域なので、ここ数年続けて行っています。

ブームは一段落し、何でもeラーニング化されるかのような期待はないが、一定の地位が定着した、という印象。展示スペースも昨年より縮小されていた。とくに感じた変化は、次の2点。

1)活用は成熟段階へ
単にコンテンツを配信して、学習履歴を管理するだけでなく、どういう能力を伸ばすべきかを診断するといった上流工程まで取り込もうというシステムがあった。これは現場への導入・展開の手法が成熟したという意味で、一つの完成形にたどりついたのかな、と思う。

2)コンテンツ発信元の拡大
オーサリング・ツール(教材作成用ソフト)を使いやすくすることで、知識の発信元を広げるシステムがあった。教育部門が専門家に依頼してeラーニングのコンテンツを開発する、というのではなく、組織内の各部署・個人に偏在するノウハウをそれぞれがコンテンツ化して、情報伝達・共有を促進するというものだ。

個人的には、後者に可能性を感じる。eラーニングのシステムではないが、こうした流れに位置するものとして、文書または画像に、音声とともに手書きで書き込みを加えると、そのまま録画されてフラッシュのファイルに変換される、というシステムが面白かった。ウェブのグリーティング・カードを、オンラインで作成できるようなもので、添削指導に用いられているという。
 日本リズテック株式会社 「かきこえメール

あとは、経営シミュレーション・プログラムを出展している会社があり、同業ということもあって、少し話を聞かせてもらった。この会社は学校向けに販売しているが、企業向けにも展開を始めているという。
 有限会社アントルビーンズ 起業家教育.com

起業をめざす者どうしの協力関係を築く

2006年07月24日 | 起業塾
週末は起業塾(*1)の合宿でした。アドバンスコースの塾生が10名弱参加。前年度上級を修了したOB(今年度から新設されたグラジュエイトコース)も数名参加してくれました。

1年間のコースの中でこの時期に合宿を催す目的は、起業をめざす塾生どうしの協力関係を築くこと。
互いに切磋琢磨、刺激し合いながら、起業に向かって歩む一つのチームだと位置づけるわけです。

チームビルディングという観点では、短いプロジェクトワークに取り組んでもらうのも一案ですが、そのチームで起業をするわけではないので、同じ種類だけれど別々の目標をもつ者どうしとして、互いの理解を深め合うことを企図しました。

また、どのような分野で起業をするかが定まっていない塾生も多いため、まずは自分の中にある価値観を浮き彫りにして、原点を確かめておくことも、合宿のテーマにしていました。

そこで、これらの2つを組み合わせて、自分の過去を振り返り、未来をイメージするというワークに取り組んでもらいました。いずれも発表して互いに質問し合ったりしてもらいます。

今年度の塾生は一見おとなしいタイプの人ばかりなこともあって、合宿終了時点で、成果がどれほど出たかはよくわかりません。しかし、昨年度は合宿後に塾生がしっかりしてしてきたという手応えを感じました。ほとんどが20代の若い人たちなので、将来が楽しみです。

*1: 起業塾については次の記事を参照:http://blog.goo.ne.jp/asaonaota/e/fd3a26882fc355d562aae74af5ff03c3


経営シミュレーションに必要なリーダーシップ(その2)

2006年07月20日 | 組織・リーダーシップ
前回、経営シミュレーションで「うまくいかないチームの特徴」をいくつか挙げた。しかし、「どのようなリーダーシップが必要とされるのか?」は、

「メンバーが(うまくいかないチームに見られる)問題を意識したうえで、互いに働きかければ克服できる。必要なのはそういうリーダーシップだ。」

と記しただけで、あまり具体的に示さなかった。実はこの問いに答えるのは難しいのだ。

いろいろなチームを観察していると、ぼそぼそと小声で話し合うだけで、誰が議論を仕切っているのか判然としないチームがあり、なぜかしばしばそういうチームがトップになることに気づいた。
しばらくはそういうチームもあるんだな、ぐらいにしか思っていなかったが、徐々に、それが一つの強いチームワークのスタイルだと確信するようになった。

そういうチームの特徴は、次のようなものだ。

1)とくに仕切る人はいないが、メンバーの発言力・発言量にあまり偏りがない。
2)議論に終始せず、分析や試算などの作業もきっちりやる
3)(分析や試算にもとづいたものも含め)意見や視点の違いは見られる
4)なぜか4名 (3名以下で実施することはまれ。5名以上でこのバランスを保つのは物理的に難しいのかもしれない)。

4名という点を除けば、「うまくいかないチーム」の特徴として挙げたa)b)c)d)の裏返しでもあるので、理にかなっているように思う。

考えてみれば、脳ミソも手も人数分あるわけだから、それを最大限活用する方が強いに決まっている、と言えないか?
明晰な頭脳に豊富な知識と経験の持ち主であっても、一人の脳ミソと作業量では、複数の脳ミソと作業量にはかなわない。おまけに一人では視点が限られやすい。

つまり強いチームというのは、 見た目のやりとり(コミュニケーション)の様子は違っても、

メンバー全員の脳ミソ(異なる視点を含む)と手(作業)を、うまく活用するチームワークスタイルをとるチーム

だと考えている。
そのために必要なリーダーシップは、結局やや抽象的になるが、メンバー全員の参加 を促し、力を引き出すタイプのものだろう。

経営シミュレーションに必要なリーダーシップ

2006年07月12日 | 組織・リーダーシップ
経営シミュレーション研修は、リーダー養成コースに用いられることも多い。経営シミュレーションの優れた点は、擬似的な環境ながら「経営者としての経験」を提供できるところだ。受講者は経験から学ぶことができる。

私を含めファシリテーターは、過去の経験からうまくいかないチームに一定の特徴があることを知っているので、受講者が自分たちの問題点に気づくように促したり、指摘したりする役割を担う。

うまくいかないチームの特徴をいくつか挙げてみよう。

a)発言しない人がいるチーム
メンバーは通常4-5名で実施するが、実質的に3名以下で議論しているチームは弱い。視点が固定されるせいだと考えられる。
ちなみに、テーブルの大きさなどの影響も受けるが、経験的に3名と4名の違いは大きい。4名と5名の違いはさほど目立たない。

b)強過ぎるリーダーがいるチーム
1人が数字に強く、発言力と説得力に優れている場合、独裁的になって、残りのメンバーがうなずくだけになりやすい。当初良い結果を出すものの、途中で失敗することが多い。早めに失敗した場合には、リーダーの発言力が低下したり、他人の意見を聞く姿勢に変わったりすることで、議論が活発化して、持ち直すことがある。

c)裏づけのない議論を続けるチーム
戦略的な考えや具体的な数値についての議論は活発なのだが、きちんとした分析と検証を行う人が誰もおらず、実は議論が前に進んでいない。

d)全員が社長になったつもりのチーム
一つの目標に焦点が合っているという点で、うまくいく局面もあるのだが、どこかでチェックが抜け落ちて、致命的なミスをしてしまうことが多い。目標を共有しつつも、各役割の責任を担うことの大切さを教えてくれる。

e)他社の動向についての想像力が足りないチーム
市場についての分析はきちんとできていても、他社の動きによって業績はまったく変わるということが本当の意味でわかっていない。他社の情報収集を怠るケースも含まれる。参入規制のある業種の会社に多いようだ。


こうしたケースは、メンバーが問題を意識したうえで、互いに働きかければ克服できる。必要なのはそういうリーダーシップだ。4-5名のチームであれば、つねに議論を仕切るようなリーダーが必要なわけではない。シミュレーションに限らず、実際の経営にもあてはまる部分が多いのではないだろうか?

会社法と会計ルール

2006年07月10日 | 会計ルール等
この5月に会社法が施行されて、決算書の表記ルールも変更された。
中でも最も大きな変更点として、「資本の部」が「純資産の部」になったために、初歩レベルの財務・会計分野の教材資料も全面的に改訂することに。

5月から順次、改訂作業を進めており、今月になってほぼ全部片付いたのだが、やっかいな点が2つある。

●その1 「資本」≠「純資産」

用語を換えるだけなら簡単なのだが、その内訳が変わり(*1)、「資本」という区分がなくなったために、
「負債や資本というかたちで調達してきた資金を、事業に必要なかたちに換えて資産として保有する」
というような説明がしにくくなった。

《資産》=《負債》+《資本》
という等式も、
《資産》=《負債》+《純資産》
では説明しづらい。

*1: 純資産の部の内訳
  (※の項目(名)は従来の《資本の部》になかったもの)
------------------------------
《純資産の部》
------------------------------
 株主資本           ※
   資本金
   資本剰余金
   利益剰余金
   自己株式
 評価・換算差額等       ※
   その他有価証券評価差額金
   繰り延べヘッジ損益    ※
   土地評価再評価差額金
   為替換算調整勘定
 新株予約権          ※
 少数株主持ち分        ※
------------------------------

●その2 ROEの定義

従来は、
 《資本》=《純資産》=《株主資本》=《自己資本》
だったが、定義上、この等式がくずれてしまった。
(上場企業以外では、実際の数字上、等式が成り立つ
ケースは多いと思われる。)

そのため、金融庁と東証(東京証券取引所)の開示ルールでは
《自己資本》= 《純資産》-《新株予約権》-《少数株主持ち分》
と定義した上で、とくにROEと呼ばずに
《自己資本当期純利益率》=《当期純利益》÷《自己資本》×100
としている。(*2)

*2: 詳細は東証の決算短信の様式についてのページ
からダウンロードできるPDFファイルのp.4に記載。

まぁ、いろいろ検討した結果だとは思うのだが、こと会計だけに、
もう少し誰にでもわかりやすい用語になるよう、今後の改善を期待する。

音楽配信ビジネス

2006年07月04日 | Weblog
音楽配信ビジネスがホット。起業講座でも音楽分野に関心のある人がいる。iTMS&iPodがこのマーケットを大きく成長させたのは間違いないが、すでに次のステージに入りつつあるようだ。

●ダウンロードではなくてストリーミング方式のネットラジオが登場。
7月3日付の日経新聞に「音楽専門SNS 日本上陸」という記事が出ていた。
「Jポップも聴き放題――「ネットラジオ」型音楽配信の可能性」
http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMITxw000029062006

実はそれ自体新しいニュースではなかったようで、2ヶ月ほど前のCNETにも出ていた。
「エキサイト、英国発の音楽SNS「Last.fm」と提携--今夏に国内でサービス開始」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20108347,00.htmp.s.

●こうした動きに対応して、著作権料の扱いも整備されつつある。
「ポッドキャスティングで楽曲を利用する際の新しい料金体系を、JASRACが発表した。1番組・1ダウンロードあたりで課金する新体系で、複数楽曲を使った音楽番組を作りやすくした。」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0606/01/news079.html

●友人の情報によれば、mixiに、iTunesで聴かれた曲を集計したりするサービスがあるらしい。

リース会計の「例外規定」

2006年07月01日 | 会計ルール等
リース会計のルールが変更される方向で動いている。 2006年6月29日付の日経新聞朝刊によれば、「企業会計基準委員会はリース会計見直しの原案を固めた」(*1)。

実務的には、通常のリース取引で調達した機械設備などは、貸借対照表(の固定資産)に記載しなくてよい。注記で欄外に記載すれぱよいことになっている。実はこれ、「例外規定」なのだ。

断っておくが、私は、経営分析のための読み方を教えることはするが、会計基準がどうあるべきかを論じるような専門家ではない。 しかし、ひとこと言わせてほしい。

リースについては初心者からも質問されるので、会計規定を調べたことがあるのだが、ふつうに読んだらリース取引は資産計上しなくてはならないはずだ。経験的な知識と異なるので、詳しく調べたらほとんど「例外規定」が適用されるらしい。なんじゃそれ?と思った。

米国基準/国際基準に統一するために、資産計上の方向で段階的に変更されるのだと思うが、いずれにせよ「例外規定がほとんど」というわかりにくい状況は正してもらいたい。会計というのは基本的に対外的に説明するためのものなので、その業界の「専門家」しかわからない規定運用は困る

*1: 「企業会計基準委員会」は、日経新聞の記事によれば「日本の会計基準を決める民間団体」で、「二〇〇一年の発足後は企業会計基準委が決議した会計基準を金融庁が承認する仕組みへ移行した」という。 リース会計については「中間報告」が昨年3月に出されている。