仕事の結び目

コンサルタント&ファシリテーターの朝尾直太が仕事に関係するテーマについて記すコラム。

マインドマップを使う

2005年09月30日 | Weblog
先週、FAJ東京支部の定例会で「マインドマップ」について勉強してきました。ごく簡単に説明すると、イギリスのトニー・ブザンという人が開発したノート法で、1枚の紙の真ん中にトピックを置いて、言葉(+絵)を放射状に伸ばしていくものです。最近注目されているようで、本も何冊か出ています。ドラマ「ドラゴン桜」で有名になった「メモリーツリー」もマインドマップの一種だそうです。

「コンセプトマップ」と似ていますが、少し違うようです。コンセプトマップはトピックを紙の一番上に置いて、要素分解していくので、より論理的なつながりが求められるようです。マインドマップはもっと直感的。右脳的とも言われます。

白状すると、ノート法としては個人的にフィット感抜群! まだ文字だけで色も使ってませんが、論理的でなくてよくて、連想的なところが気に入っています。論理的なのは強い方だと思っていますが、箇条書き/アウトライン形式やロジックツリーは、ものを考えるときには窮屈で苦労していましたので。

FAJの定例会では、グループワークのファシリテーション・グラフィックのツールとして使えるかを検討したのですが、ブレインストーミング的にアイディアや視点を広げるときや、トピックのイメージやカバー領域をチームで共有するときに、とても効果的だと感じました。

ノート法としてもグループワークのツールとしても、今後実践しながらノウハウを吸収しようと思っています。あなたもお試しになってはいかがでしょうか?

起業は目的か?

2005年09月25日 | 起業塾

最近は「起業したい」という人が増えているようです。先日会った人(学生)もその一人ですが、しかし何で起業したらよいか(どんな事業をすればよいか)分からないで少し悩んでいるようでした。

 「起業したい」人が増えているのは、世の中の風潮のせいもあるでしょう。一昔か二昔前(もっと前?)なら「脱サラ」や「独立」という言い方だったものが「起業」に代わっているだけかもしれませんが、最近の特徴は若い人の「起業」志向が目立つようです。

私も、自らが起業家の端くれであるだけでなく、仕事で「起業」講座をしていますから、こうした風潮に加担している一人ですから、若者の悩みに責任の一端があるかもしれません。

 私がアドバイスを求められたら、
「起業は目的(目標)ではないのでは?」
と問い掛けます。形としての「起業」にこだわる必要はないのではないでしょうか。

 「起業したい」という気持ちの背景には、何らかの生き方や価値観、欲求があるのだと思います。自ら事業を起こすことで世の中での存在感を得たり、事業の理念を通じて何かを世の中に訴えたり実現したり、あるいは事業の成功を通じて富や名声などを手に入れたりしたい、という願望です。

そうした願望を実現することが目的であって、「起業」という形にこだわらなくてもよいのではないでしょうか? ですから、「起業したい」理由を自分に問い掛けることが大切だと思います。「何で起業すればよいか」の答は出てこないかもしれません。でも「なぜ起業したいか」の答はどこかにあるはずです。カッコいいキャリアのスタイルだから、という理由であってもかまわないと思います(この場合は、もう一歩深く理由を掘り下げるべきでしょうけど)。

こういう考え方をすると「起業」できないかもしれません。少なくとも先延ばしになってしまうおそれはあります。しかし背景にある願望がかなえられるなら、べつにかまわないはずです。それに、より根っこに近い部分を大切にして育てれば、結果的にいずれ起業することになる確率は高くなるように思います。

 


「MBA式 面接プレゼン術」

2005年09月16日 | Weblog

翻訳した本が出ました。一人で訳したものとしては2冊目です。1冊目のIBMを世界的企業にしたワトソンJr.の言葉に続いて、なぜかまた黒い表紙です。

米国のビジネススクールで面接指導をしていた人による著書で、「就職」面接においていかに自分をプレゼンテーションするかという本です。米国のものなので、日本人の感覚では「アピールしすぎ」と感じる部分もありますが、実用書と言えます。

本を読む前、個人的には「自分を売り込む」のと「誠実な答え方をする」のを、どのように両立させるのかに関心がありましたが、とくに倫理的な問題を感じる個所はありませんでした。

例えば、失敗について質問されたとき、あまり最近の失敗の話を避ける、というアドバイスがあります。

・・・また、最近の失敗談よりも、かなり以前のものを選んだほうが有利なことが多いです。つまるところ、質問をすばやく方向転換して、失敗を通して学んだ教訓を、いかにその後の成功に結びつけたかをきっちり話すことが目標です。
 あまり最近の失敗は、そのあとでうまくいった話をするのが難しくなるので避けておきましょう。そうした失敗は、失敗をしてから成果を上げるだけの時間が経っていないに過ぎません。(pp.93-94)

 このように、ぎりぎりの裁量範囲で自分に有利な答え方をするように勧めていますが、基本的には誠実な答え方を求めています。「採用されなかったらどうするか」という質問に対しては、次のようにアドバイスされています。

・・・もしストレートに尋ねられたら、正直にどこの面接予定があり、最近どこの面接を受けたかを答えましょう。
 誠実さはビジネスの世界で非常に重要ですから、どこの面接を受けているかを正直に話さないなど、誠実さに疑問をもたれるようなことはやめておいたほうがよいでしょう。 (p.131)

就職面接を受ける人のための本ですが、採用側の人(経験豊富な人は除く)にとっても参考になると思います。また、間接的に米国のビジネス・プロフェッショナルに求められる人材像がよくわかりますので、そういう観点でパラパラと拾い読みするのも悪くはありません。

 「MBA式 面接プレゼン術」 英治出版 1,600+税 A5判ソフトカバー

 


ファシリテーターであること、相手を尊重すること

2005年09月09日 | Weblog

今週、2日間の「ファシリテーション・スキル修得セミナー」を受講してきました(※)。今回の研修は演習も充実していて、多くを学ぶことができたのですが、中でも印象に残ったのは、

「ファシリテーションにはスキルも必要だが、それよりも相手を尊重する気持ちと姿勢が重要である。スキルだけでは操作主義になってしまう」

 というファシリテーターのメッセージでした。

まさにその通りだと思いますが、同時に耳が痛みます。ファシリテーターが本当に相手を尊重するなら、会議や研修の場だけではおかしいはず。ちょっとした会話、電話一本、メール一本で、相手を尊重する姿勢を表せているか・・・振り返ると恥ずかしいものがあります。

 優れたファシリテーターであるためには、つねに相手を尊重する人間になることが必要だと感じました。これは私の信条である、デモクラティック(民主的、民主主義的)であることに通じます。ビジネスの場も、決してその例外ではないのです。

※補足
 ピープルフォーカス・コンサルティング社の大川恒さんという方が講師(ファシリテーター)で、開催は(社)日本能率協会です。
 ちなみに、7月に日本ファシリテーション協会(FAJ)の「ファシリテーション基礎講座」(1日)も受講しましたが、こうしたセミナーは「会議のファシリテーション」に焦点を合わせています。
 私は研修のファシリテーション、中でもビジネスゲーム/経営シミュレーション研修については10年近い経験がありますが、「会議のファシリテーション」の実践経験がほとんどないので、今勉強中です。もちろん両者には共通点も多く相互に活かせます。 ■


起業ファシリテーション

2005年09月04日 | 起業塾
起業塾の指導の仕事を請け負っています。ある会社が社員向けに月1回土曜日に開講しているもので、ベーシックとアドバンスの2コース、それぞれ1.5h×2コマです。私はベーシック1コマとアドバンス2コマ(うち1コマはペアで指導)を担当しています。残りのベーシック1コマは起業家を招いて講演を聞く形式です。

優れた事業計画を出したアドバンスの塾生は、卒塾後に会社の支援を受けて起業することができます。会社が社員に起業の後押しをするわけですが、起業分野に条件は付けられていません。ただし、まだ起業実績も支援実績もありません。

したがってアドバンスコースの仕事のミッションは、1年のコース終了後に、20名弱の塾生の中から何名か起業する人を出すことです。何名起業するが仕事の成果指標になりますから、当然そこに向けて指導計画を立てていきます。
※契約上、起業実績を出すことを請け負っているわけではありません。

しかし、起業は安易な決断ではできません。会社を辞めることも意味します。アドバンスの塾生は強い起業意欲を持っていますが、いつ、どのような形で起業するかは、起業塾の都合で決められません。それほど大げさな喩えでなく、起業は本人の人生の問題だからです。

私としては、過度に煽ったり、プレッシャーをかけたりするのではなく、できるかぎり本人たちの意欲を尊重するよう意識しています。起業のファシリテーターという立場です。

塾生は決して全員で1つの起業に取り組むわけではありませんから、互いに励ましあったり、刺激し合ったりする関係になるよう仕掛けています。また、逆にそれぞれ1人で起業する必要もありませんから、塾生どうしで起業チームを作ることも奨めています。8月には、塾生の自主企画という形で1泊2日の合宿も実施しました。


さて、この起業ファシリテーション、来年の3月時点でどこまで成果が出るでしょうか。とても楽しみです。ただ一方で、来年には起業に至らなくても、3年先、5年先、10年先になってもかまわないし、究極的には起業しなくてもかまわない、という思いもあります。起業を人生のあり方だと考え、1人1人の人生を尊重すると、最後はそういう気持ちで取り組むことになります。■

「できる」という感覚、効力感

2005年09月03日 | Weblog
「できる」という感覚(効力感)について、わかりやすい記事を見つけました。職業ファシリテーターの田村洋一氏のブログで、記事タイトルは“効力感と「解の存在」”です。

効力は英語で efficacy ですが、組織論の授業で self-efficacy (自己効力)と教わったので、後者が適切かもしれません。

いずれにせよ、その感覚は大切です。努力ができるかどうかに関わってきますし、自分の能力に対する無意識の壁(限界)を取り除いてくれるからです。

かなり昔の話になりますが、私が大学を受験したとき、2年上の兄と元同級生(私は海外生活で中学のとき1学年遅れていた)がその大学に合格・入学していたことが、自信を与えてくれました。幸い私も合格したのですが、合格できたかどうかよりも、受けるかどうかの判断に効力感が効いていたと感じています。

このように効力感は、必ずしも論理的である必要はないようです。連想でもよいので「できない」という思い込みをなくすことが大切なのかもしれません。裏返せば、私たちは本来の能力と別のところで、さまざまな可能性の道をふさいでしまっていることになります。■