仕事の結び目

コンサルタント&ファシリテーターの朝尾直太が仕事に関係するテーマについて記すコラム。

経営シミュレーションに必要なリーダーシップ

2006年07月12日 | 組織・リーダーシップ
経営シミュレーション研修は、リーダー養成コースに用いられることも多い。経営シミュレーションの優れた点は、擬似的な環境ながら「経営者としての経験」を提供できるところだ。受講者は経験から学ぶことができる。

私を含めファシリテーターは、過去の経験からうまくいかないチームに一定の特徴があることを知っているので、受講者が自分たちの問題点に気づくように促したり、指摘したりする役割を担う。

うまくいかないチームの特徴をいくつか挙げてみよう。

a)発言しない人がいるチーム
メンバーは通常4-5名で実施するが、実質的に3名以下で議論しているチームは弱い。視点が固定されるせいだと考えられる。
ちなみに、テーブルの大きさなどの影響も受けるが、経験的に3名と4名の違いは大きい。4名と5名の違いはさほど目立たない。

b)強過ぎるリーダーがいるチーム
1人が数字に強く、発言力と説得力に優れている場合、独裁的になって、残りのメンバーがうなずくだけになりやすい。当初良い結果を出すものの、途中で失敗することが多い。早めに失敗した場合には、リーダーの発言力が低下したり、他人の意見を聞く姿勢に変わったりすることで、議論が活発化して、持ち直すことがある。

c)裏づけのない議論を続けるチーム
戦略的な考えや具体的な数値についての議論は活発なのだが、きちんとした分析と検証を行う人が誰もおらず、実は議論が前に進んでいない。

d)全員が社長になったつもりのチーム
一つの目標に焦点が合っているという点で、うまくいく局面もあるのだが、どこかでチェックが抜け落ちて、致命的なミスをしてしまうことが多い。目標を共有しつつも、各役割の責任を担うことの大切さを教えてくれる。

e)他社の動向についての想像力が足りないチーム
市場についての分析はきちんとできていても、他社の動きによって業績はまったく変わるということが本当の意味でわかっていない。他社の情報収集を怠るケースも含まれる。参入規制のある業種の会社に多いようだ。


こうしたケースは、メンバーが問題を意識したうえで、互いに働きかければ克服できる。必要なのはそういうリーダーシップだ。4-5名のチームであれば、つねに議論を仕切るようなリーダーが必要なわけではない。シミュレーションに限らず、実際の経営にもあてはまる部分が多いのではないだろうか?