━━【日本一新】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
通巻第108号・2012/5/10
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顧問:戸田邦司
発行:平野貞夫
編集:大島楯臣
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☆本号は、無限拡散希望につき、よろしくお願い申し上げます。
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◎「日本一新運動」の原点―108
日本一新の会・代表 平野貞夫妙観
○消費税国会の攻防―平野貞夫衆議院事務局日記の公開について
野田首相が政治生命ならぬ「生命を懸ける」と言明した『消費
増税法案』等の国会審議がいよいよ始まるという5月、千倉書房
から『消費税国会の攻防』(副題・平野貞夫 衆議院事務局日記)
が刊行されることになった。週刊朝日の5月8日発売号に3ペー
ジにわたって採りあげてくれたので、読者諸兄のお目に止まった
かも知れないが、有り難いことだ。
口の悪い記者連中が、「平野さんのことだから、この時期を狙
ってぶつけてきたのだろう」と語っているようだが、決してそう
ではない。消費税制度がどういう人たちの努力で、どういう思想
でつくられたのか、その裏面史を出版したいと思っていたが、な
かなかその機会がなかった。
平成22年になって、菅首相が突然「消費税10%増税」など
と、政権交代の原点を冒涜したことを切っ掛けに、「売上税廃案
と消費税制度成立」の真実を国民に知ってもらいたいという衝動
に駆られていた。
丁度その頃、オーラル・ヒストリーの取材で、九州大学法学部
准教授の赤坂幸一氏と、京都大学大学院法学研究科准教授の奈良
岡聰智氏と定期的に会っていた時だった。私の構想を持ちかける
と、直ちに千倉書房に持ち込んでくれた。当初は平成23年5月
頃の出版予定であったが、いろいろな都合で1年遅れたわけであ
る。これを「必然の中の偶然」というか、「偶然の中の必然」と
いうか、私に説明は不可である。ただ一点、「神の配剤」といえ
ることは確実である。
ともかく、赤坂氏と奈良岡氏に感謝しなければならない。
率直に言って、消費税制度の立法過程について、日本中で一番
関わったのは小沢さんと私だ。然るに、消費税増税反対の小沢グ
ループからは何の相談もない。消費税増税の恐ろしさを知らない
からであると思う。彼らは租税制度と議会民主政治の歴史的つな
がりを考えたことがないからだ。本質的でない技術論で時間を浪
費し、党内手続きでの多数決を民主政治の原点のように喚く野田
総理や岡田副総理に反論しない国会議員は、最早、国民の代表者
ではない。国民生活を破滅させ、財政を逆に悪化させることが確
実な消費税増税に反対するのが、「国民の生活が第一」を約束し
て政権交代した民主党本来の責任であるはずだ。
(消費税制度についての基本的問題)
多くの近代国家は、歴史的に所得税や法人税などの直接税で国
家の財政を賄ってきた。19世紀にドイツのビスマルクが、マル
クスらの共産主義に対抗して考え出したのが、所得税を累進課税
として低所得者に所得の再配分する政策である。それが社会福祉
政策であり、そのため西欧での共産主義革命を防ぐことができた。
わが国でも終戦後の復興を経て、昭和30年代以降、所得税の累
進課税による再配分を中心とする社会福祉政策が成功した。しか
し、20世紀の後半になると、資本主義の高度化やグローバル化
などによるタックスヘイブン(税金避難地)現象により、企業か
らの国への直接税による収入が著しく減収するようになる。その
頃、わが国では占領時代に米国のシャープ勧告によって実施され
た直接税中心の税制度に問題が発生する。それはサラリーマンな
ど直接税を徴税される階層と、事業収入に課税される人たち等と
の不公正さが目立つようになったからだ。俗に「十五三」とか、
「十五三一」(とうごうさんぴん)といわれ、10割を捕捉され
るサラリーマン、5割捕捉の自営業者、3割捕捉の農業従事者に、
最後のピンには政治家が列して、不公平税制の代名詞でもあった。
西欧では積極的に消費税を整備し、社会保障の財源を確保する
とともに、税の不公正さを是正した。わが国では、1970年代
から消費税導入について本格的な論議が始まる。さまざまな困難
を経て、昭和62年(1979)に中曽根首相が政治生命をかけ
た『売上税』を廃案とし、昭和63年(1988)竹下首相によ
って『消費税』が導入された。
今回刊行する『消費税国会の攻防』は、昭和62年1月から同
63年12月までの2年間、私が関わった出来事を日記に記録し
ておいたものだ。それを赤坂氏と奈良岡氏という憲法学と政治学
の専門学者が「消費税制度成立の舞台裏と“平野貞夫日記”」と
して解題をつけてくれた。この中で「本書成立の経緯」などが書
かれている。しかし、本書の問題点や評価などは、新進気鋭の2
人の論に委ねたい。
昭和63年12月24日(土)、午後5時59分、参議院本会
議は「消費税法案等」を可決成立した。年が明けて、1月7日、
昭和天皇は崩御され、元号は「平成」となる。2月24日には、
「大喪の礼」が終わり、竹下内閣は長期政権かと誰もが思ったが、
その後のリクルート事件の展開で、4月25日、竹下首相は辞意
を表明した。中曽根前首相との権力闘争に敗北したのだ。竹下首
相にとっては悶悶の日が続くなか、平成2年秋から小沢自民党幹
事長発案で、「竹下登監修」と銘打って『消費税制度の沿革』の
執筆を、私が始めた。平成5年5月には「ぎょうせい」から刊行
した。その時、竹下元首相と私の2人で「消費税の将来」につい
ていろいろ話した。この話の中に消費税の基本問題がある。
「25年ぐらいすれば、消費税は税制の中核となろう。税収入
の半分以上となる時、余程の注意がいることになる」と竹下元首
相が語り始めた。私の記憶によれば3点あった。
1)消費税制度は苦労してつくった。税制の中核となるには「国
民の信頼」が絶対に必要だ。そのためには、売上税の時のように
国民に嘘をつくようなことがあってはいけない。国民に誠実な説
明をして国政選挙で理解して貰ってからでないと信頼を得られな
い。消費税制が信頼性を失うと国家財政は破綻する。
2)消費税の導入について、僕が「六つの懸念」をいったとき、
第一番が逆進性のことで、所得再配分機能を弱めることだった。
スタートは生活必需品も含めて3%の一律となったが、これをそ
のまま10%にすればどんな混乱が起きるか、これから抜本的な
政治改革が必要だ。
3)一律税率のため、税率の引き上げが安易にできる。財政赤字
を補うため消費税率を上げる「癖」をつけると大変なことになる
わなぁ・・・・。というものだった。
この時期、小沢一郎氏は『日本改造計画』(講談社)を刊行す
る。戦後政治家で総合的国家体制改革論を国民に提示したのは初
めてであった。超ベストセラーとなり、英語版も出版された。
この中に政治改革、行財政改革を前提に大胆な税制改革の提案
があった。「所得税・住民税を半分とし、消費税を福祉目的とし
て10%とする」というものであった。自分の判断で使える可処
分所得を増やし、生活必需品などは消費税の対象外とする構想で
あった。
私に言わせれば、『日本改造計画』は消費税を中軸税制にする
ための国家改造論であった。しかし、小沢氏の国家改造論は成功
するかに見えたが、既得権という特権を死守しようとする勢力に
よって実現されていないし、それどころか、危ういところで「罪
人」の汚名を着せられる寸前だった。
民主党への政権交代で「国民の生活が第一」の政治が行われる
かと国民は期待したが、菅政権とそれに続く野田政権は、ことご
とく裏切っている。その代表例が、何の抜本的改革もなく、生活
必需品も含めて消費税率を10%に上げることを強行しようとし
ている。
(消費税の21世紀における意義)
野田首相はじめ与野党にわたる消費税増税論者は、「社会保障
と一体的改革」といえば国民は増税を理解してくれると思ってい
るようだが、とんでもないことだ。社会保障の整備が大事である
ことはその通りである。しかし、21世紀の現代、消費税では社
会保障に対応できない時代になっていることを知るべきだ。竹下
内閣で消費税を導入して、4半世紀が過ぎた。この25年の人類
の歴史の変化を冷静に考えてみるべきである。率直に言って、資
本主義が変質、否、崩壊したのだ。
先進国ではいずれも経済や財政の破綻が危惧されている。大胆
な国家改造なくして国家の存立も危うい。消費税制度をどうする
かという問題は、社会保障という「部分」ではなく、国家全体の
あり方として、国民的合意が必要なのだ。20世紀の諸制度を継
ぎ接ぎする陳腐な政治的思想では、消費税への国民の信頼は生ま
れない。
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☆☆☆☆ 新刊書案内 ☆☆☆☆
書 名 消費税国会の攻防 1987―88
(副題 平野貞夫 衆議院事務局日記)
著 者 平野貞夫 校訂・解題 赤坂幸一/奈良岡聰智
☆赤坂 幸一/九州大学法学部准教授
憲法、議会法、憲法史
☆奈良岡聰智/京都大学大学院法学研究科准教授
日本政治外交史(政治史学)
出版社 千倉書房(http://www.chikura.co.jp/)
定 価 3.800円+税
発売日 2012年5月28日(店頭には24日前後)
―帯より転載―
本日記の特色は、衆議院委員部総務課長・同部長の地位にあった
平野氏が、竹下登総理や小沢一郎内閣官房副長官、公明党関係者
らに依頼されて執筆した大部のメモを、そのまま採録しているこ
とである。その多くは、公明党の政策・党運営に対する提言書、
および、与野党の議会運営担当者に対する戦術指南書といった性
格を有しているが、(中略)『消費税国会』から二十年余を閲し
た今日、実証的な政治史研究の資料となることが期待されよう。
(「解題より」)
徹底抗戦を叫ぶ野党、調整に奔走する国対、議会の内外を飛びま
わる記者たち。衆議院事務局職員として新型税制導入の現場に立
ち会った人物による迫真のドキュメント
――中曽根は、竹下は、小沢は、そのとき?
消費税導入をめぐる熾烈な駆け引き
☆本書は、維持会員で先着50名に限り書価3000円(送料込、
定価3800+税)で特別頒布する。購入希望の方はメール
でお知らせいただきたい。繰り返しだが、メール先着50名で
ある。
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☆☆☆☆☆☆植草一秀さん講演会のお知らせ☆☆☆☆☆☆
植草一秀さん「消費増税亡国論」(飛鳥新社刊)の発売を記念し
て講演会を開催いたします。
■講 演:天木直人氏、植草一秀氏
■日 時:2012年5月19日(土)
■時 間:19:20開演(開場は30分前)
■定 員:280名
■参加費:1.500円(書籍代1.000円含む)
■場 所:キャンパスプラザ京都 5F 第一講義室
■主 催:飛鳥新社
◆チケット販売店舗は以下の5店舗です。
京都ヨドバシ店・イオンモールKYOTO店
烏丸三条店・四条店・高槻店
◆お電話でのご予約は京都ヨドバシ店のみ受付いたします。
大垣書店京都ヨドバシ店 TEL 075-371-1700
※なお講演会は著者の都合により、変更・中止になる場合もござ
います。予めご了承ください。
皆様のご参加をお待ちしております。
Http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-d1d4.html
http://booksogaki.blog87.fc2.com/blog-entry-129.html
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事務局雑話
昨春から、オオカミ少年状態だった事務局にも、ひとまずは安堵
のご報告である。それは「消費税国会の攻防」上梓で、絶妙のタ
イミングと相成った。ご本人は「神の配剤」と嘯くが、この間の
事情を熟知する事務局でさえも「何でこの時期に?」という疑念
を払拭することはできない。週刊朝日は「策士として鳴らした御
仁」と上品に書いているが、田舎者の事務局がいう「野生の古狸」
と同義語である。この著作の学術的意義は帯の記述に要約されて
いるが、より以上に、現下の政治に対する警鐘、提言の解釈につ
いては本日(8日)発売の週刊朝日に委ねたい。繰り返していう
が、民主党所属で志を持つ国会議員は、この卓見を使いこなせる
のか、今正にそこが問われている。論説では「本質的でない技術
論で時間を浪費し、党内手続きでの多数決を民主政治の原点のよ
うに喚く野田総理や岡田副総理に反論しない国会議員は、最早、
国民の代表者ではない」と詰っているのだから、怒るなり、反論
するなりがあって然るべきである。それとも、「国権の最高機関
に所属している、否、それで禄を食んでいるという自覚の欠如で
すね」という某識者の指摘すらも黙認するのか。
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次回の定期配信は、5月17日です。
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日本一新の会
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