あろてあろあ日記

単なる日記です。特にテーマもありません。
目的地を定めない旅行もいいものです。

和解

2006-11-20 | Weblog
天気悪いっすね。
週末あたりどっかに行こうと思っていましたが,あんまり天気はよさそうではないようです。


裁判といえば,刑事事件で言えば,有罪・無罪の判決ですが,民事事件では「○○万円支払え」とか「建物を明渡せ」といった認容判決と「原告の請求を棄却する」といった棄却判決があります。

民事事件では,判決という紛争解決方法のほかに,『和解』という紛争解決の方法があります。和解では,判決によらずに,紛争当事者双方が譲り合って,紛争を解決するものであり,裁判所が関与する点で,一般に行われている和解とは異なります。


素人的にいうと,判決で決着をつけるというのが一般的かと思われるかもしれませんが,現実の裁判としては,和解で終わるほうが圧倒的に多いです。

それは,単に裁判所が判決を書くのが面倒というわけではありません。

判決で勝っても,相手が払ってくれなければ,別途強制執行をしなくてはならず,さらにお金と時間がかかってしまいます。
和解で終われば,相手方の任意の支払が期待できます。

また,判決で終わると,必ずどちらかに不満が残るので,上級の裁判所に不服を申し立てて,さらに裁判が長引く可能性があります。
和解で終われば,100パーセント満足とはいえないまでも,ある程度納得して裁判を終えることができるので,心機一転して生活できるようになります。特に,親族間や近隣者間での紛争などではこの点は重要です。


そういった観点から裁判所は和解を勧めるのですが,一般に裁判にまでなるような紛争は,みんな自分が正しいと思っているので,なかなか自分から譲歩するということができません。
弁護士が依頼者を説得できる場合は,結構スムーズにすすむのですが,中には弁護士がコントロールできないような人もいます。


そういう場合に裁判官の説得力の力量が問われるのですが,結構裁判官によってやり方が異なります。

一般に,一方当事者に和解室に入ってもらって,他方に外で待ってもらい,交互に話を聞く形をとります。

まず,当事者に水を向けるやり方があります。
「原告はどれくらいなら和解できますか」「80万円くらいです」「被告はどれくらいなら払えますか」「60万円くらいです」「被告は60万円くらいなら払えるといっているのですが,原告はどれくらいなら受け入れることができますか」「70万円くらいなら」「原告は70万円までなら妥協できるといってるだけど,被告は何とかできませんかねえ」「じゃあ70万円でいいです」「では,70万円で和解成立」という具合にです。

また,裁判所の心証をあきらかにして,双方に譲歩を迫る形もあります。
たとえば,原告に対し,「判決だと100万円のうち60万円くらいになる。ただ,和解となれば70万円くらいになるように被告を説得してみる」といい,被告に対しては,「判決だと100万円のうち,80万円くらいになる。ただ,被告が70万円くらい払うのならば,原告を説得してみる」といい,70万円で和解するという感じです。

さらに,双方当事者にそれぞれ,まず,不利な点をあげ,そのあとで有利な点をあげ,「裁判所はあなたの気持ちをわかっていますよ」という点をアピールし,譲歩を引き出すやり方もあります。弁護士が依頼者をコントロールできていないようなときは,このやり方は有意義だと思われます。

また,裁判官があらかじめ和解案を作成し,当事者双方に検討させる方法もあります。これは,双方の歩み寄りがなかなか期待できないようなときになされます。


このように,裁判官はいろいろ工夫をしているわけですが,弁護士にとっても,メリットがあります。
弁護士にとっては,判決で勝とうが和解で勝とうがそれほど報酬に差はなく,早めに解決して他の事件に取りかかることができます。また,依頼者の前では,なかなか自分のほうから譲歩できませんが,裁判所が和解を勧めていれば,「裁判所がああ言ってるんだから」と当事者を説得しやすくなります。


もっとも,あまり裁判所が強権的に和解をすすめようとすると,まとまるものもまとまらくなるし,裁判所が和解に消極的であったり,やり方が下手だったりすると,無駄に期日を重ねてしまうこともあります。


このように,微妙な点があるのですが,民事裁判修習の修習生は,両方の当事者の意見や両方の当事者に対する裁判所の説得を見ることができるので,大変勉強になります。



裁判といえば,判決ですが,和解にはこのようなメリットがあります。

ただ,当事者本人としては周りが見えなくなっていることが多いので,なかなか難しいのかもしれません