ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

島田裕巳【映画は父を殺すためにある: 通過儀礼という見方】

2012-08-03 | 筑摩書房
 
いくつかの映画を「通過儀礼」という視点から語った評論です。

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 映画は父を殺すためにある
 通過儀礼という見方


 著者:島田裕巳
 発行:筑摩書房
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とりあげられているのは有名作がほどんどなので、とてもわかりやすいです。
たとえば、『ローマの休日』、『スタンド・バイ・ミー』、『櫻の園』。
これらの作品に大人になるための通過儀礼を、『フィールド・オブ・ドリームス』、『スター・ウォーズ』、『愛と青春の旅立ち』、『いまを生きる』などに通過儀礼としての父殺しをみるとすれば、…ああ、なるほどねぇ、という感じがするのではないでしょうか。

ちなみに『櫻の園』は邦画。中原俊監督の作品です。
私にとっては印象深い作品ですが、一般的に有名かどうかちょっと判断できません。
創立記念日にチェホフの『櫻の園』を上演する伝統になっている女子高演劇部の1日を描いた作品。
原作は吉田秋生で、原作ファンも多いのではないでしょうか。
当時の若手女優さんたちが出演した作品で、瑞々しいってああいうことをいうんだろうなぁと、今にして思います。
数年前、リメイクされていましたので、多感な少女たちの美しい変化の時を、桜を背景に描くこと自体が魅力的なことなのでしょう。

本の後半の中心は黒澤明監督作品、小津安二郎監督作品。
ハリウッド映画とは異なる「試練」の設定や描かれ方の考察を経て、日本的な通過儀礼のあり方を「寅さんシリーズ」にみる試みに進んでいきます。
「徐々に変わるんだよ。いっぺんに変わったら、体に悪いじゃないかよ。」
少しずつしか変わらない寅さん。
変わるのは彼と出会った人のほうであることを思えば、寅さんが通過儀礼としての役割を果たすのかもしれません。

するすると読み進めることのできる本でした。
単行本時の書名は『ローマで王女が知ったこと ー 映画が描く通過儀礼』だったそうです。
文庫化に際して書名変更。
今のこのタイトルはとても気に入っておいでのようです。

あとがきの文書の中には、「中沢新一」の名前が登場してきました。
大学で同じゼミ出身なのだとか。
中原俊監督もそうなのですって。…東大?


[読了:2012-07-31]






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