シュガークイン日録3

吉川宏志のブログです。おもに短歌について書いています。

2012年10月26日 | インポート

短歌研究11月号を読んだ。

名前を二重線で消している人の「予言、〈私〉」10首に、


・才能を疑いて去りし学なりき今日新しき心に聴く原子核論


という歌がある。
これは、


・才能を疑いて去りし学なりき今日新しき心に聴く原子核論
                           岡井隆『斉唱』

まったく同じではないか。
目をこすって、何度も見直したが、やはり同じだ。

なぜこんなことをするのか、よくわからない。
何らかの意図があるのだろうか。
名前を二重線で消してあるから、〈私〉が消滅しているので、誰の言葉を取り入れても構わない、ということなのか。
原子力を歌った一連なので、人類が滅んだあとに言葉だけが残っている、ということなのかもしれない。
もしかして「斉唱」にオチがあって、「斉が唱う」という暗号なのだろうか?

岡井隆の歌は、わりと有名な歌なので、気づく人は多いと思うが、
知らない人には誤解を招くので、何らかの注記を付けておいたほうがよかったと思う。

実験的な試みなんだろうと思うけど、こういった形で〈私〉を揺さぶっても、あまり意味がないような気がする。

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