青草俳句会

草深昌子主宰の指導する句会でアミュー厚木での句会を主な活動としています。

「青草」第三号 2018年春季号発刊 

2018年03月08日 | 結社誌・句会報

『青草』第三号 2018年春季号が発行されました。

 

青草往来  草深昌子

 厚木市生涯学習の「俳句入門講座」を担当して以来、足掛け十年の歳月が流れました。ある年、〈夏座敷大きな闇の中にあり  虹子〉という句に出会って驚かされました。
 このたび、虹子さんの「巻頭によせて」を読んで、その時の共鳴が昨日のことのように思い出されます。まさに大きな闇の中で、子供なりに物を感じる心を培っておられたということでしょう。その心はすでに宇宙の自然の中にどっぷり浸かっておられたのでした。作者自身もそれと知らずに詠いあげてはじめて、嘘偽りのない私が出ていることにはっとされたに違いありません。
 私の初学の先生が「俳句は根生いを一生引きずりますね」とつぶやかれたことを覚えています。生まれ育ったところを離れても、いつしか懐かしい地に還っていくような温もり、天性の包み隠せぬことを、自身の俳句からも実感するようになってきました。
 「去来抄」に、「句においては、身上を出づべからず」という言葉があります。
 つまり、俳句においては身の上を偽ってはならない、あくまでも自分の本当のこと、自分の体験に基づくべきだというのです。まこと、真実ほど強いものはありません。
 「青草」の俳句は、初めて俳句を作る喜びに端を発したものです。
 これからも飾らない私、子供のこころを持った私の句でありたいと願っています。
 そうは言っても、ありのままに詠うということは、至難の業です。
 日々呻吟するばかりですが、ある時ふと、どこからか言葉が下りてきてピタッと決まることがあります。無心になったとき、大自然から言葉を賜るのです。
 そんな幸せの瞬間はだれにでもやってきます、ただただ一心に作り続けるほかはありません。その苦労こそが、俳句の醍醐味ではないでしょうか。

 

青山抄(3) 草深昌子

    秋風や長寿まんぢゅう二た色に

    紅葉して仏の貌の我のやう

    錠前に錆をつくしてつづれさせ

    墓打つて弾んで苔に木の実落つ

    主亡き襖の桜模様かな

    めいめいのことして一家爽やかに

    今朝冬の水無川の水綺麗

    神発ちて吊橋高くなほ長く

    引つ掛かるところかまはず木の葉かな

    雨を来て石鼎庵の白障子

    ここに柚子向かうに蜜柑人の庭

    町を行くやうに基地行く冬うらら

    一茶忌のもの食う列につきにけり

    踏みごたへあるは櫟の落葉かな

    マスクしてかしこさうまたやさしさう

    冬麗の女は背中見せにけり

    栓抜いて木の葉時雨にビールかな

    大山の晴れてマントの黒きこと

    はつきりと見えて遠くに山眠る

    晴れがましすぎはしないか干蒲団

 

芳草集  巻頭 菊竹典祥

     落ちてゐる梅の実を踏む下校かな

     鮎釣や頬張る朝の握り飯

     栗の花溢るる水のやうに咲く

     清流の里に謡へば南風

     青嵐水平線は弓形に

     青蜜柑太る力に揺れてをり

     背伸びして巨峰一房切りにけり

     

    次席 松尾まつを

     干し大根その影日日に長くなり

     驟雨去り三保清見潟富士の嶺

     水番の慌てふためく豪雨かな

     新聞を丸めきつたる蝿叩

     独り居の日日の気ままや秋の蝿

     ドナウ川漁夫の砦に懸る月

     曙や穂高は天に地に芙蓉

 

青草集 巻頭 佐藤健成

     葉桜や学食うまきAランチ

     連休の明けて河原の夏鴉

     蛍火や椿山荘の薄明り

     子育てを終へて世に出る白日傘

     風通ふ本丸茶屋のかき氷

     新涼のラジオ体操第二かな

     病窓の一つ一つに今日の月     

 

    次席 石堂光子

     白南風や希望峰より声来る

     小魚の群の過ぎゆく蛇苺

     初蝉やお堂に千手観世音

     蜩や大雄山の和合下駄

     数珠玉や風の立ち初む夕間暮

     バス一台乗り遅れたる夜寒かな

     濁流の逆巻くほとり秋の蝶

 

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◆ 連載 俳句閑談その三  松尾まつを

 

◆ 俳句講演会の報告「松尾芭蕉の俳句と文学」 松尾まつを

 

◆ 芳草集巻頭に寄せて  吉田良銈

 

◆ 青草集巻頭に寄せて  石原虹子

 

◆ 吟行記「秋の青草吟行句会から」  二村結季 


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