リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

著作権保護期間70年:著作権は「子々孫々を養う」ためのものなのか

2018-12-24 | 一般
著作権の保護期間が没後50年だったのが70年に延びる改正著作権法が12月30日に発効する。「作者のひ孫の世代まで著作権を存続させる必要があるのか」という反対論と「欧米に合わせて手厚い保護を」という賛成論の間で十分な議論が煮詰まることもなく、急に決まった印象を受ける。
だが延長を歓迎する漫画家・松本零士氏のコメントの「生涯をかけて描いた作品で、子々孫々まで養える安心感がある」(朝日新聞2018-12-24)というくだりを読んで強い違和感をもった。著作権というのは作者の「子々孫々」を養うためのものだろうか。「生涯をかけて描いた作品」で生涯に莫大なロイヤルティー収入を得るというのはわかる。だがそれがひ孫の代まで続くのを疑問に思うのは、凡才のひがみではないと思うのだが。

さらに、記事にもあったように、今回の決め方はTPP(環太平洋経済連携協定)という国際条約を口実に国内の議論を回避した「ポリシーロンダリング(政策洗浄)」という側面もある。しかも、本来米国の要求で延長をTPPに入れたのにその米国が離脱し、条約上の義務はなくなっているのにだ。現にニュージーランドなどは延長を見送ったのに、日本はろくに議論もせずに延長を決めてしまった。どうにも気持ちが悪い。

関連記事:
「著作権保護期間の70年への延長凍結はまだ間に合う」
「著作権保護期間70年への延長の施行が迫っている」

追記:そもそも、著作者の没後まで著作権を保護しなければならないのはなぜなのだろう。法律や条約(ベルヌ条約)で規定されているのは承知しているが、なぜそのような規定がされているのか、というそもそもの規定の趣旨がわからない。ネット検索してみたがどうもすっきりしない。

(1)「猶予期間」説
たしかに作者が亡くなったら翌日からフリーというのは違和感がある。自分の好きな作品の作者が死んでくれたらなんて思ってしまいかねない世はやはりおかしい。(現状でも、著作権問題でこじれまくっても作者の死後は相続人がビジネスライクに対応して利用が進むという事例はあるが、著作権のための殺人というのは聞いたことがないから、そこまで心配する必要はないだろうが。)
とにかく、作者の死後も一定期間保護する「猶予期間」が残るというのは理解できる。

(2)「子孫を保護」説
ネット検索した感じでは(Yahoo知恵袋やウィキペディアのレベルだが)、子孫2代まで保護しようという発想でベルヌ条約で没後50年と規定された、という説明が多い。だとすれば、上記で引用した松本零士氏のコメントは、氏の身勝手などではなく、定説を述べたものにすぎない。ただ、やはり私には子孫を保護するという発想が理解できない。

(3)「投資回収」説
ネットの登場で事情は変わったが、もともと書物や音楽を流通させるには莫大な投資を必要とした。その回収のために一定の期間、独占的に販売できる期間は必要だ。
作者の晩年の作品の保護期間が短すぎると出版社などが投資を回収できないので、やはり作者没後数十年の保護期間はあってもいいかもしれない。
もちろん、この考えでは公表後×年でなく、作者の没後×年とする理由を説明できないのだが、そのくらいは保護期間の特定をしやすくするため、ということで私は納得できる。

ちょっと検索した感じでは専門家による説明は見当たらなかった。専門家はどう思っているのだろう。



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