リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

幼児教育無償化を進めても待機児童解消はできるのか???

2017-11-26 | 待機児童
政府が進めようとしている幼児教育無償化について,待機児童解消が先ではないかと疑問を呈する投稿を続けている.11月24日には,「ただなら預けたい」という人が増えて待機児童が増えるので,待機児童解消の見通しが立たない中,無償化を進めるのは間違っていると書いた.
だが朝日新聞11月26日によれば,政府も幼児教育無償化で保育園の需要が増えることは考慮に入れているらしい.とはいえ,それを考慮に入れた結果は,2022年度末までに32万人分の受け皿を整備するという目標(6月発表の計画)を,2020年度末まで(9月の解散総選挙にあたっての首相会見)に前倒ししただけだ.これまで潜在需要の見通しの甘さが待機児童解消の先送りにつながってきたことを考えると,前倒ししたとしても「2020年度末に32万人分」というのは妥当な目標なのだろうか.
この数字の算定には,従来のような市区町村の需要を積み上げて算出することは時間的制約でできなかったので,女性の就業率の上昇による保育園申し込み率の上昇などを利用したマクロ試算を使ったという.一方,「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」は,アンケートでの「預け先があれば働きたい」との回答の割合などから,潜在需要を含めた待機児童は56万人と推計している.同様にアンケートでの「今,保育サービスを利用していないが,利用したい」との回答の割合などから野村総合研究所が試算した需要は「88万6千人分」だ.
政府目標の「32万人」と「56万人」「88万6千人」という民間試算との開きはあまりに大きい.このへんの差を埋める議論なくして無償化を進めるのは,やはり早計だと思う.厚労省は「32万人」の算出根拠を今月末に公表するとしているので,それを機に議論が活発になることだろう.
だが潜在需要の推定とともに,そもそも政府が言っている目標が,実現可能な政策になっているのかも検証してほしい.私は9月の解散・総選挙のため急遽2年前倒ししたという印象をもっているのだが,2年前倒しの根拠は何なのだろう.
待機児童の潜在需要を丁寧に見積もって,それに対応する具体的な政策を用意する.幼児教育無償化はそれから考えることだと思う.

追記:上記で引用した新聞記事では9月の選挙公約に幼児教育無償化を入れた時点で,無償化による待機児童増は考慮に入れて受け皿整備を繰り上げた,と読めた.(繰り上げで対策になるかはなはだ疑問ではあったが.)
だが28日の夕刊によれば,安倍首相は無償化で需要が喚起されたら待機児童がゼロにならない可能性を認識しているようだ.一方,28日朝刊によれば,首相は「まずは受け皿づくりを先行させているのは事実.その先に2019年に消費税の引き上げを行なった際に無償化がスタートする」と述べている.「その先」というのは,待機児童の受け皿整備が終わってから,と読めるが,目標は2020年ではなかったか.なぜ2019年に無償化がスタートできるのか.もともと選挙対策の急ごしらえの公約だったが,中途半端なことはやめて,待機児童対策に専念したほしい.

関連リンク:
「待機児童、見誤り続ける需要予測 教育無償化で疑念噴出」(asahi.com)

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