リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

キャッシュレス以上に画期的な「アリペイ」の信用スコア・システム

2017-11-25 | 一般
中国のネット通販大手の「アリババ」グループによる「アリペイ」はスマホを使って簡単に支払いができるシステムで,その爆発的な普及のおかげで今や中国はキャッシュレス社会のトップランナーになったという.日本でも普及を目指すというような報道が先日あったが,現金社会の日本では一筋縄ではいかないだろう.(中国は偽札が多く出回っていたこともキャッシュレスを後押ししたというから笑えない.だが一般に,伝統的な信用・金融システムが未発達な地域でむしろキャッシュレスが普及する傾向があるという.)
御多聞に漏れず現金派の私はあまり興味がなかったのだが,実は「信用」「与信」「クレジット」といったものに根本的な変革をもたらすものであると,「中国発のスマホ革命」(朝日新聞11月23日)で知った.たとえばクレジットカードの利用に基づく信用情報を集めたシステムはある.ヤフオクなどの「評価」のように取引実績で信用を高めていくシステムもある.だがアリババが作り出したのは,生活のあらゆる側面のデータを集めて信用データを築き上げるシステムらしい.スマホを用いた買い物の決済だけではない.きちんと宿泊費を払うとか,シェア自転車をちゃんと戻すといった日々の行動が信用を高め,優遇を得られる仕組みになっているらしい.しかも利用者が自分の信用を高めようとして,生活のあらゆる面におけるマナーが向上するという効果もある.その信用データを使えば,ローンや預金について個人ごとに異なる金利を設定するということもできる.

検索エンジンで調べてみると,数年前から注目を集めているシステムのようで,いろいろな解説記事がある.上記の信用システムはアリペイの子会社によるサービスで,「芝麻信用」(Zhima Credit)というものだそうだ.学歴や職歴,資産だけでなく,交遊関係などもポイント化して信用度を350~950点の範囲で格付けしているという.学歴や職歴の入力は必須ではないが,有利な人ほど入力する傾向がある.そしてそのスコアが高いとサービスで優遇されたり,逆にスコアが低いとサービスを拒否されたりすることもある.格付けのアルゴリズムは非公開だが,結果のスコアは本人には開示されるので,スコアを上げたりSNSで公開したりするのをゲームのように楽しみ,少しでもスコアを上げようとこつこつと善行に励む中国人が増えているらしい.
ただ,あらゆる側面の信用データが結び付けられたデータが一元管理される点は,中国発だけに特に心配だ.また,何らかの事情で悪い評価がされてしまった場合,影響の及ぶ範囲が大きそうだ.面白く,また有益なシステムなだけに,うまい方向に発展していってほしい.

関連リンク(検索エンジンでヒットした一部):
中国決済番犬 「信用スコアが中国人を変える 」
NEC「「信用」が中国人を変える スマホ時代の中国版信用情報システムの「凄み」」
山谷剛史「中国の社会信用スコア「芝麻信用」で高得点を狙うネットユーザー」
高口康太 「「信用の可視化」で中国社会から不正が消える!?」
柏木 亮二「信用のプラットフォーム「芝麻信用」 」
「中国の社会信用システム芝麻信用にみる「人工お天道様」の限界と未来」

「(いちからわかる!)中国人の旅行客、スマホで会計してるな」(朝日新聞11月30日)
「中国IT、異形のイノベーション 顔認証で買い物、帰りも手ぶら」(朝日新聞2018年2月18日)(個人情報が把握される危険性に対して,中国ではどうせ個人情報はお上に握られている,という意識があるようだ.)

追記:ヤフーが「ヤフースコア」を始めると発表したところ、プライバシー上の懸念から批判が噴出したという(朝日新聞2019-6-29)。ヤフオクの「評価」でさえあまりよく感じない私としては、「芝麻信用」のようなものが普及することに一抹の抵抗を覚える。


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