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リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

リベラルと保守,立憲と護憲

2017-11-04 | 政治
朝日新聞紙上で保守派の論者・佐伯啓思氏がリベラルと保守について論じていた(11月3日).当ブログでも「自民党は保守ではない」(10月15日),「リベラルって何だ?」(10月6日)と題して書いていることもあって,興味深く読んだ.
同意できる部分も多い.保守は「経済界に近い立場から経済成長路線をとり,戦後日本の基本的な社会構造をできる限り維持する」もので,リベラルは「経済成長の恩恵を得ない者の利益や社会的少数派の権利を擁護し,より社会民主主義的な方向へと社会を変革する」ものとされてきたが,そうした従来の解釈はほとんど意味を失っている;自民党は次々に「改革」を打ち出しており,従来のような「保守」とはいえない;それに対して「…を守れ」と主張するリベラルのほうが「もっとも『保守的』」など,ついうなづいてしまう.
だが,氏が自民党の「改革」を肯定的に捉えているところで私とは根本的に考えが違う..
氏が挙げる自民党の「改革」は,「技術革新」「人づくり革命」「生産性革命」「憲法改正」だ.このうち最初の三つはリベラルだって反対していないはずだ.(「残業代ゼロ法案」なども含まれるとしたらリベラル派は反対だろうが,それを「改革」として肯定的に捉える気にはなれない.結局,保守は「経済界に近い立場から経済成長路線をとり」リベラルは弱者の権利を擁護する,という構図は変わっていないのではないか.)だがそもそもこの三つは自民党のスローガン以上のものではないというのが私の印象だ.第二次安倍政権発足当初もアベノミクスの3本の矢などとぶち上げていたが,本命と言われた「成長戦略」はいまだ青写真すらできていないのではないか.経済成長のために安倍政権が今やっていることといえば,「異次元」金融緩和に象徴されるばらまきで景気を下支えすることだけではないか.これのどこが「改革」か.
見過ごしにできないのが「改革」に数えられている「憲法改正」だ.記事では挙げられていないが,特定秘密保護法,安保法制,「共謀罪」法なども氏は「世界状況の変化に対して,日本社会を大きく変えていかなければならない」との認識に基づく「改革」に数えているのだろう.自民党が「戦後日本の基本的な社会構造」を維持ではなく,変えようとしているとの点はそのとおりなのだが,これらの施策は国民を「お国のため」に駆り立てようとするものであって,「改革」として肯定する気にはなれない.
「憲法」について,「立憲」を名に謳う立憲民主党は「憲法擁護」を「最大のウリ」にしているという.そして日本の防衛をどうするのか,北朝鮮の脅威にどう対応するのか,など,お決まりの護憲派批判を並べ立てる.だが安倍政権はそもそも憲法に則って政治を行なうという姿勢が見られない.6月の野党の国会召集要求を無視したのもそうだし,従来「違憲」だと言っていた「集団的自衛権」をあっさり法制化したのもそうだ.守るつもりのない憲法の個々の条文に対して問題を提起しても,本当の狙いはそこではないと思わざるを得ない.「リベラルくずれでも安保法制が許せない理由」「日本人には改憲はそぐわない」などの記事でも書いたが,私は軍備も含め憲法改正そのものが悪いとは思っていない.だが,憲法に則った政治という立憲主義をないがしろにする安倍政権のもとでは,どんな改正も許す気にはなれない.
個々の評論にいちいちかみつく気はないのだが,今回は一見,私の思っていたリベラルvs保守観と同じように見えて実は根本の部分が正反対だったのでコメントした.もっとも,自民党が実質的な「改革」を打ち出していないという点で氏と見解が違う私も,「リベラル」のほうも有力な対案がない,「護憲」だけでは支持を得られないという点は耳が痛い指摘ではある.「保守」も「リベラル」もばらまきで票をつなぎとめようという姿勢から抜けきっていない.ポピュリズムの陥穽から抜けて真に長期的な国益に立った献策ができる政党はないものだろうか.


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