リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

子育て支援で人口増と経済活性化を実現した明石市の「無償化」とは?

2017-12-06 | 待機児童
兵庫県の明石市が積極的に子育て支援を行なって,人口増,出生数の回復のみならず,地域経済の活性化や税収増まで実現したこと(朝日新聞12月6日)を別稿で好意的に紹介した.だがその子育て支援の根幹は「所得制限なしの無償化」であり,その恵まれた環境のため子育て世代が急速に増えて待機児童も増えてしまっているという.明石市長・泉房穂氏は安倍政権が進める「幼児教育無償化」について,「少し前進しそう」とプラスに評価しているようだが,私は「無償化」よりも「待機児童解消が先」というのが持論だ(下記の関連記事参照).
明石市が行なったのは,「中学生までの医療費」,「第2子以降の保育料」,「市営施設の子どもの利用料」などをすべて所得制限なしに無料化するというもの.低所得層ではもともと保育負担が安くなっているので,明石市のやり方は,「世帯年収400万~600万円共働きの中間層の負担を一気に軽減した」点に特徴があるという.
このうち保育料無償化は,所得制限はないものの,「第2子以降」としている点が注目される.もちろん「完全無償化」のほうが保護者にとってはありがたいのだろうが,「第2子以降」とすることで「理想は子供2人(または3人)だけど負担を考えると1人」という世帯の後押しをすることになり,限られた予算を考えると出生数の回復に効果的であると思われる.
だが,国の「無償化」政策について「待機児童がいる家庭」と「無料保育の恩恵を受ける家庭」の不公平が増すという保護者からの声についてはどうだろう.明石市は次のような対策を取っているという.
・認可保育所の定員を毎年1000人増
・新たに働く保育士に最大30万円の一時金を支給するほか,家賃や給料も補助
・認可外保育所の利用者に月2万円を助成
・待機児童を在宅で育てる世帯に月1万円を助成
認可保育所の定員増は当然のこととして,保育士支援がはいっていることは慧眼だ.認可外保育所の利用者への助成は比較資料がないと私には判断できない.待機児童を在宅で育てる場合の助成については,今度は専業主婦(主夫)家庭との不公平の問題などはないのだろうか.
このように若干の疑問はあるものの,(第2子以降の)「無償化」を進めることはいいことのようにも思える.だが国レベルの政策とは根本的に異なる事情がある.
明石市で(第2子以降の)保育料無償化→人口増→経済活性化→税収増という好循環が生まれたのは,周辺自治体では同じことを行なっていないからだ.国レベルでの無償化を行なった場合,出生率の上昇を通じて長期的な効果はあるのかもしれないが,近隣からの人口流入によってすぐに人口が増えることはない.国にも「明石方式」はぜひ参考にしてほしいが,このような違いは考慮しておく必要がある.
そして財源についても市長は「借金を増やして将来の子どもにツケを回すやり方ではなく,予算シフトで子供への財源を確保」すべきと指摘している.「予算シフト」については上記別稿で述べたが,政府はこのことも肝に銘じてほしい.
関連記事:
「民主党政権が失敗した「コンクリートから人へ」を実践する明石市の挑戦」(「別稿」)
「企業も待機児童解消を求めている」(12月5日)
「幼児教育無償化を進めても待機児童解消はできるのか???」(11月26日)
「何でも「無償化」はいいことなのか?」(11月24日)(他の関連記事へのリンクあり)
※「待機児童」カテゴリーを設けたので,上記以外はカテゴリー一覧をご覧ください.

関連リンク:
「独自に無償化、悩む自治体 待機児童急増/対象施設の線引き」(朝日新聞12月13日)

追記:2019年10月から国レベルで幼保無償化が実施されることで明石市の魅力もなくなってしまうのかと思っていたが、国の無償化政策で市の財政負担が減って浮いた財源で、中学校給食の完全無償化に踏み切るという(朝日新聞2019-9-29)。


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