(この記事は2020年2月末の記事に追記したものです。なぜか新しい日付になってしまいました。)
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために政府はイベント自粛要請から始まって小中学校の突然の休校要請などを打ち出して混乱が広まっているが、そもそも新型コロナウイルスはどうやって感染するのか。早くから「飛沫感染」と報道されていたわりには感染力が強いように思う。
専門家会議は新型コロナの感染について、2月24日に見解を示した(朝日新聞2020-2-27;厚生労働省のQ&A)。
新型コロナウイルスの感染経路はやはり基本的には咳やくしゃみのしぶきを吸い込む「飛沫感染」と、そうした飛沫が付着したものを触った手で口や鼻を触ることによる「接触感染」。広いスペースにウイルスが漂う空気感染はないという。ただ、手を伸ばしたら届くような近距離での一定時間以上の会話は感染のリスクが高いという。
なお、ウイルスは基本的には生体外に出てしまえば生きられないはず。では、物に付着した飛沫のウイルスはどのくらい生き残るのだろう。たとえばインフルエンザでは1時間程度と昔新聞で読んだが、コロナウイルスの場合、それより長いという。今回の新型コロナの場合、WHOのQ&AのHow long does the virus survive on surfaces?という項目によれば、まだ不確かで、状況にもよるが「数時間から数日」という。数日だとしたらかなり厄介だ。
ウイルスの情報について最もはっきりしているのが横浜相原病院の吉田勝明院長に取材したウェザーニュースの記事(グーグルのキャッシュ、Rakuten infoseek Newsに転載されたもので、かつてのSARSとMERSのときのコロナウイルスの場合ではあるが、金属やプラスチックに付着したウイルスは「最長で9時間、感染力を維持する」という(ただし、これは今回の新型コロナウイルスにも当てはまるかどうかはわからない)。(重要な情報だと思うのだが、オリジナルの記事が削除されているのが気になる;参考資料として挙げられているのはCDC「2009 H1N1 Flu ("Swine Flu") and You」/Doultree J.C.,Druce J.D.,Birch C.J.,Bowden D.S.,Marshall J.A..Inactivation of feline calicivirus, a Norwalk virus surrogate. Journal of Hospital Infection 1999,vol.4,no.1/菱木はるか 他:小児看護 2005;28(5):603-10.【7897】/ Kampf G, Todt D, Pfaender S, Steinmann E, Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and its inactivation with biocidal agents, Journal of Hospital Infection, https://doi.org/10.1016/j.jhin.2020.01.022)だが、この手の正確な情報が求められる。ウイルスが本当に「数日」生き延びるなら、アルコール消毒などの徹底が求められるだろう。)
なお、同記事よれば、ウイルスの寿命は(いずれも状況によるが)インフルエンザは2~8時間、感染力が長く持続することで有名なノロウイルスは、気温20度だと1か月ほど、4度だと2か月という。RSウイルスは55度で5分、37度で24時間、4度なら4日で90%が感染力を失うという。
今回検索したところでは、久住英二・内科医師による「コロナウイルスは正しく知れば「防御」できる」(2020-2-1)がわかりやすくてためになった。
やっかいな問題として、新型コロナはかつてのSARSの場合と違って、潜伏期間中にも他者に感染させる可能性があるという。症状が出かなかったり軽症の人が多い一方、それでも感染力があるとなると、知らない間に感染させるということが多いことは容易に想像できる。
あと、石鹸による手洗いの意義が非常にためになった。コロナウイルスはエンベロープという膜に包まれているのだが、これが脂質を主成分としているため、石鹸で膜が壊れてウイルスを殺せるという。消毒用アルコールが品薄だと聞くが、手洗いについては石鹸でも効果があるのだ。
うがいについては、帰宅時のうがいよりも、こまめに水分補給して喉の粘膜を潤すことにより、「粘膜の異物排除機能を高める」ことがおすすめという。
それにしても、やはり政府の情報隠蔽体質が有効な対策の妨げになることがこわい。この医師の求める「迅速かつ徹底した情報開示」は、どんな問題にも重要だ。
追記:新型感染は飛沫感染にしては感染力が強い。新聞でも「強い感染力を持つとはいえ、多くは軽症で済む」(朝日新聞2020-3-5)とまとめられることが多い。ウイルスが長時間空気中を漂う「空気感染」はないものの、閉鎖空間では短時間空気中に浮遊して感染する可能性があるようだ(日本経済新聞2020-2-27)。だからこそ感染に十分気をつけているはずの医療関係者や検疫官にまで感染したのだろう。
これまでに集団感染が起こった例として、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テントがあり、これから共通点として、
・換気が悪い
・人が密に集まって過ごすような空間
・不特定多数が接触するおそれが高い場所
がわかってくる(朝日新聞2020-3-2)。
一方、WHOは、新型コロナウイルスは季節性インフルエンザより伝染力は高くないとした朝日新聞2020-3-4夕刊。ただし、多くの人が軽症だとはいえ、致死率3.4%はインフルエンザ(1%に遠く及ばない)よりはるかに高いから重症化を防ぐ手立てが必要だろう。
追記B:「(新型コロナ)ウイルス感染力、いつまで」(朝日新聞2020-4-10)は、新型コロナウイルスがボール紙の表面では24時間感染力をもち、ステンレスやプラスチックの表面では2~3日感染力をもつとしている。
追記2:新型コロナウイルスは、人の皮膚上では9時間ほど感染力を保つという研究結果が出た(朝日新聞2020-10-12夕刊)。インフルエンザウイルスの5倍だ。ガラス表面などでは28日以上残存する可能性があるという別の研究も発表された(同面)。WHOの「72時間」よりも長い結果だ。残存するとはいっても日々減っていくはずではあるのだが、用心するにこしたことはない。気温が高ければ「寿命」が短くなる傾向はあるようだ。
追記3:冬は乾燥してウイルスを含む飛沫が小さくなり、空気中を漂いやすくなる。だから感染症が広がりやすい。そう思っていたのだが、湿度が高すぎると逆に、しぶきに含まれるウイルスが感染可能な状況が長く続くという。そのため、湿度の目安は「40%以上」という。(朝日新聞2020-11-12)
追記4:感染者が使ったシーツや枕カバーについて、人にうつすだけの量のウイルスが残る可能性があるが(調べた中では13人中4人分)、普通に洗濯・乾燥すれば感染の可能性はほぼなくなるという(朝日新聞2021-5-12夕刊)。
追記5:飛沫感染なら3密を避ければいいが、付着したウイルスからの感染は過去1週間分くらいのウイルスが残存している可能性があるはずだからとても怖かった。たとえば電車。手すりを消毒していると言われても、最後に消毒してから何人もが触っていることは想像にかたくない。だが「1日1回の清掃でいい」という見解が米国のCDCから発表された(朝日新聞2021-5-23)。
公共の場所に新型コロナウイルスがあるかどうか調べた論文によれば、わずかでもみつかったのはゴミ箱のふたで25.0%、地下鉄駅のドア12.5%、レストランのドア3.3%などと続く。(より多くの人が触れると思われる「地下鉄の車内の手すりやつり革」の調査結果もほしいところだ。)
幸い、ウイルスは触っただけでは感染しない。手から口などの粘膜にウイルスが移り、それが細胞に取り込まれれば感染する。そういうことを加味すると、接触感染のリスクは1000万分の2~4で、インフルエンザやノロウイルスよりも低いという。
これらのことから、24時間以内に感染者や感染が疑われる人がいたのでない限り、1日1回の清掃で十分だという。
結局、「公共のものを触ったあとに自分の首から上の部分を触るのは避け、手洗いか手の消毒」をするというこれまで励行してきたことが重要らしい。
追記6:トイレではこれまで便座が気になっていたが、同じ記事によれば、流すときのしぶきが心配らしい。ウイルスは便とともに排出されるので、流すときにはふたをするのがいいとおいう。このことはもっと周知すべきではないか。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために政府はイベント自粛要請から始まって小中学校の突然の休校要請などを打ち出して混乱が広まっているが、そもそも新型コロナウイルスはどうやって感染するのか。早くから「飛沫感染」と報道されていたわりには感染力が強いように思う。
専門家会議は新型コロナの感染について、2月24日に見解を示した(朝日新聞2020-2-27;厚生労働省のQ&A)。
新型コロナウイルスの感染経路はやはり基本的には咳やくしゃみのしぶきを吸い込む「飛沫感染」と、そうした飛沫が付着したものを触った手で口や鼻を触ることによる「接触感染」。広いスペースにウイルスが漂う空気感染はないという。ただ、手を伸ばしたら届くような近距離での一定時間以上の会話は感染のリスクが高いという。
なお、ウイルスは基本的には生体外に出てしまえば生きられないはず。では、物に付着した飛沫のウイルスはどのくらい生き残るのだろう。たとえばインフルエンザでは1時間程度と昔新聞で読んだが、コロナウイルスの場合、それより長いという。今回の新型コロナの場合、WHOのQ&AのHow long does the virus survive on surfaces?という項目によれば、まだ不確かで、状況にもよるが「数時間から数日」という。数日だとしたらかなり厄介だ。
ウイルスの情報について最もはっきりしているのが横浜相原病院の吉田勝明院長に取材したウェザーニュースの記事(グーグルのキャッシュ、Rakuten infoseek Newsに転載されたもので、かつてのSARSとMERSのときのコロナウイルスの場合ではあるが、金属やプラスチックに付着したウイルスは「最長で9時間、感染力を維持する」という(ただし、これは今回の新型コロナウイルスにも当てはまるかどうかはわからない)。(重要な情報だと思うのだが、オリジナルの記事が削除されているのが気になる;参考資料として挙げられているのはCDC「2009 H1N1 Flu ("Swine Flu") and You」/Doultree J.C.,Druce J.D.,Birch C.J.,Bowden D.S.,Marshall J.A..Inactivation of feline calicivirus, a Norwalk virus surrogate. Journal of Hospital Infection 1999,vol.4,no.1/菱木はるか 他:小児看護 2005;28(5):603-10.【7897】/ Kampf G, Todt D, Pfaender S, Steinmann E, Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and its inactivation with biocidal agents, Journal of Hospital Infection, https://doi.org/10.1016/j.jhin.2020.01.022)だが、この手の正確な情報が求められる。ウイルスが本当に「数日」生き延びるなら、アルコール消毒などの徹底が求められるだろう。)
なお、同記事よれば、ウイルスの寿命は(いずれも状況によるが)インフルエンザは2~8時間、感染力が長く持続することで有名なノロウイルスは、気温20度だと1か月ほど、4度だと2か月という。RSウイルスは55度で5分、37度で24時間、4度なら4日で90%が感染力を失うという。
今回検索したところでは、久住英二・内科医師による「コロナウイルスは正しく知れば「防御」できる」(2020-2-1)がわかりやすくてためになった。
やっかいな問題として、新型コロナはかつてのSARSの場合と違って、潜伏期間中にも他者に感染させる可能性があるという。症状が出かなかったり軽症の人が多い一方、それでも感染力があるとなると、知らない間に感染させるということが多いことは容易に想像できる。
あと、石鹸による手洗いの意義が非常にためになった。コロナウイルスはエンベロープという膜に包まれているのだが、これが脂質を主成分としているため、石鹸で膜が壊れてウイルスを殺せるという。消毒用アルコールが品薄だと聞くが、手洗いについては石鹸でも効果があるのだ。
うがいについては、帰宅時のうがいよりも、こまめに水分補給して喉の粘膜を潤すことにより、「粘膜の異物排除機能を高める」ことがおすすめという。
それにしても、やはり政府の情報隠蔽体質が有効な対策の妨げになることがこわい。この医師の求める「迅速かつ徹底した情報開示」は、どんな問題にも重要だ。
追記:新型感染は飛沫感染にしては感染力が強い。新聞でも「強い感染力を持つとはいえ、多くは軽症で済む」(朝日新聞2020-3-5)とまとめられることが多い。ウイルスが長時間空気中を漂う「空気感染」はないものの、閉鎖空間では短時間空気中に浮遊して感染する可能性があるようだ(日本経済新聞2020-2-27)。だからこそ感染に十分気をつけているはずの医療関係者や検疫官にまで感染したのだろう。
これまでに集団感染が起こった例として、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テントがあり、これから共通点として、
・換気が悪い
・人が密に集まって過ごすような空間
・不特定多数が接触するおそれが高い場所
がわかってくる(朝日新聞2020-3-2)。
一方、WHOは、新型コロナウイルスは季節性インフルエンザより伝染力は高くないとした朝日新聞2020-3-4夕刊。ただし、多くの人が軽症だとはいえ、致死率3.4%はインフルエンザ(1%に遠く及ばない)よりはるかに高いから重症化を防ぐ手立てが必要だろう。
追記B:「(新型コロナ)ウイルス感染力、いつまで」(朝日新聞2020-4-10)は、新型コロナウイルスがボール紙の表面では24時間感染力をもち、ステンレスやプラスチックの表面では2~3日感染力をもつとしている。
追記2:新型コロナウイルスは、人の皮膚上では9時間ほど感染力を保つという研究結果が出た(朝日新聞2020-10-12夕刊)。インフルエンザウイルスの5倍だ。ガラス表面などでは28日以上残存する可能性があるという別の研究も発表された(同面)。WHOの「72時間」よりも長い結果だ。残存するとはいっても日々減っていくはずではあるのだが、用心するにこしたことはない。気温が高ければ「寿命」が短くなる傾向はあるようだ。
追記3:冬は乾燥してウイルスを含む飛沫が小さくなり、空気中を漂いやすくなる。だから感染症が広がりやすい。そう思っていたのだが、湿度が高すぎると逆に、しぶきに含まれるウイルスが感染可能な状況が長く続くという。そのため、湿度の目安は「40%以上」という。(朝日新聞2020-11-12)
追記4:感染者が使ったシーツや枕カバーについて、人にうつすだけの量のウイルスが残る可能性があるが(調べた中では13人中4人分)、普通に洗濯・乾燥すれば感染の可能性はほぼなくなるという(朝日新聞2021-5-12夕刊)。
追記5:飛沫感染なら3密を避ければいいが、付着したウイルスからの感染は過去1週間分くらいのウイルスが残存している可能性があるはずだからとても怖かった。たとえば電車。手すりを消毒していると言われても、最後に消毒してから何人もが触っていることは想像にかたくない。だが「1日1回の清掃でいい」という見解が米国のCDCから発表された(朝日新聞2021-5-23)。
公共の場所に新型コロナウイルスがあるかどうか調べた論文によれば、わずかでもみつかったのはゴミ箱のふたで25.0%、地下鉄駅のドア12.5%、レストランのドア3.3%などと続く。(より多くの人が触れると思われる「地下鉄の車内の手すりやつり革」の調査結果もほしいところだ。)
幸い、ウイルスは触っただけでは感染しない。手から口などの粘膜にウイルスが移り、それが細胞に取り込まれれば感染する。そういうことを加味すると、接触感染のリスクは1000万分の2~4で、インフルエンザやノロウイルスよりも低いという。
これらのことから、24時間以内に感染者や感染が疑われる人がいたのでない限り、1日1回の清掃で十分だという。
結局、「公共のものを触ったあとに自分の首から上の部分を触るのは避け、手洗いか手の消毒」をするというこれまで励行してきたことが重要らしい。
追記6:トイレではこれまで便座が気になっていたが、同じ記事によれば、流すときのしぶきが心配らしい。ウイルスは便とともに排出されるので、流すときにはふたをするのがいいとおいう。このことはもっと周知すべきではないか。