大阪弁護士会会長声明(緊急要請)

2006年01月25日 16時19分36秒 | Weblog
以下にコピペします。

大阪市による野宿生活者に対する強制立退きに関する緊急要請

 新聞報道によれば、大阪市は、近日中に、靱公園と大阪城公園にテント・小屋
を建てて生活している野宿生活者に対し、都市公園法、行政代執行法に基づく強
制立退きを予定しているとのことである。

 憲法第25条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利
を有する。」と規定し、「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利を生存権
として保障している。また、憲法第13条は、個人の尊厳及び幸福追求権を保障
している。
 さらに、わが国も批准している国際人権規約の「経済的、社会的及び文化的権
利に関する国際規約」(いわゆる社会権規約)第11条1項は、「適切な居住の
権利」を保障しているところ、この規定は、①高度の正当化事由、②真正な協議
等の適正手続、③適切な代替住居の提供という3要件を欠く強制立退きを禁止し
ている(国連社会権規約委員会の一般的意見4及び同7等)。また、わが国の生
活保護法第30条は、「生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする」
とし、居宅保護(アパート等での生活保護)を原則とし、施設や病院における収
容保護はあくまでも例外と位置づけているのであって、わが国における「適切な
代替住居の提供」は居宅保護の実施が原則とされるべきである。
 
 かかる、憲法、社会権規約、生活保護法等の規定に鑑みれば、強制立退きを進
めるにあたっては、当事者および関係者と事前に真正かつ十分に話し合うなどの
適正手続を尽し、適切かつ十分な代替住居を確保するなどの代替措置を講じるこ
とが必要であり、仮に、今回の強制立退きについて、大阪市が、適切かつ十分な
代替住居を確保するなどの代替措置を講じることなく、入所・設置期間が限定さ
れかつプライバシーが十分に保護されない集団生活を強いられるような自立支援
センター等への入所を勧奨しただけで執行しようとするのであれば、許されない
ものであると言わざるを得ない。

 当会は、これまで、人権救済申立てに関する警告、勧告及び要望の形で、大阪
市に対し、野宿生活者に対する生活保護の違法な適用制限を是正すること、公園
や河川敷に野宿している人々の違法な強制退去を避けることなどを繰り返し求め
てきている。

 今回予定されている野宿者に対する強制立退きに際して、大阪市が、これまで
当会が行った警告、勧告及び要望、並びに、本件要請の趣旨を十分に理解され、
かつ、憲法、社会権規約、生活保護法等の規定を遵守した対処をされるよう、要
請するものである。

  2006(平成18)年1月25日
                      大 阪 弁 護 士 会
                        会 長  益 田 哲 生

(雑感1)これから

2006年01月25日 11時51分10秒 | memo
大阪市が行おうとしている強制立退きは、
テレビで大阪市の職員が堂々と「世界バラ会議」の工事の期限が迫っていることを理由にするなどというとんでもないものである。
正直これはいえないだろうと思っていたので、テレビを見たときは多少驚いた。
これでは公園の適正な利用が「現に」妨げられているわけではないということになってしまうし、
こういうイベントを理由にした追い出しからはむしろ当事者を保護する義務を国・行政庁は負っているのである(社会権規約委員会一般的意見第7)。
そこで昨年名古屋のときも、どう考えても「万博」に向けた排除であることは明白だったのだが、名古屋市は口が裂けても「万博が理由です」とは言えなかったのだ。
これは「こちら側」をなめているのか?
仙台市など各地で進行している事態を思うと、「合法的」にことをはこぶというか、法にのっとって厳正に執行するという考え方がそもそも存在しなくてもいい流れになっているのか?

(雑感2)
それでこういう大変なときなので、目の前の事態にどう立ち向かうのかというのが大切なのだが、落ち着いたときに今後に備えて考えておきたいのは東京都「地域生活移行支援事業」をどう考えるのかということだ。この「事業」を他の施策と串刺しに批判することはこの「事業」の攻撃的な側面をないがしろにしてしまうことにもつながるし、「地域生活移行支援事業」を提起せざるをえなかったという施設収容中心の「自律支援事業」の破綻の自認をスルーしてしまうことにもなりはしないかと思うのである(これも最近よく話し合われてきたことだけど)。
結果として「移行支援事業」の全国化ではなく、「特措法」ですらおかまいなしの追い立てが全国化しつつあるかもしれないという局面なだけに、緻密な検討が必要のように思う。