「さらしはてな日記」の
唐突にマリみて話というエントリーがすばらしい。
「『パラソル』で他者性を獲得して以後、状況をフラットに見渡すことのできる客観の人となった祐巳は、思い込みを内部でループさせることによって読者を深みに連れていく、いわゆる文学的と言われるような内面語りには向かない視点人物になってしまった(コメディの語り手としては優秀なのだが)。」
「『妹オーディション』では、友人たちの心情を適確に見通し最善の方向に導いてみせる(かつての蓉子のような)祐巳よりも、不透明な状況に苦闘する由乃や乃梨子のほうが魅力的に映るのはやむをえない。
さて、こうして異様にものが見える人となった祐巳に対して、唯一の解くべき謎として残されたのが松平瞳子だ。『妹オーディション』において、乃梨子から瞳子の苦境を聞かされても「そうだよね。あの子、すごく繊細だもん」以上の言葉が出て来ない祐巳。「志村、後ろ後ろ」視点に立つ読者に祐巳の鈍感さは恐るべきものに見えるが、実際のところ彼女にとって、瞳子の内心を本気で探ろうとしたことはこれまで一度もなかったのではないか。祥子以来の最大の謎である瞳子に祐巳が本気で向き合うこと、それは祐巳がもう一度他者と世界に出会い直すことに他ならない。その時、主人公としての福沢祐巳もまた「妹」ではなく「お姉さま」と呼ばれる新しい祐巳となって、輝きを取り戻すのだと思う。」
『志村、後ろ後ろ』のところとかほんとうに面白いし、
こういうの書ける人を心から尊敬する。