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雀庵の「開戦前夜/13 “不透明戦争”が始まっている」

2022-01-28 07:32:58 | 日記
雀庵の「開戦前夜/13 “不透明戦争”が始まっている」
“シーチン”修一 2.0


【Anne G. of Red Gables/424(2022/1/28/金】1941年12月8日の日米開戦は大方の日本国民にとっては驚きだったが、軍事学者や識者は冷静に予測しており、「いよいよ始まった」と嘆息しつつも勝つ方策を考えていたろう。暗号が解読されていたこと、レーダー開発が遅れていたことは致命的な弱点だったが、それは敗戦後に分かったことである。


<「総力戦研究所」の存在を知っているだろうか。1941年=昭和16年4月に開所式があったばかりの組織である。集められたのは第一線で働いていた官僚、軍人、ジャーナリストらエリート36人である。彼らは30代ばかりで、その平均年齢は33歳だった。


当時の日本において最良にして最も聡明な彼らは模擬内閣を作り、一つのミッションを命じられた。「日本とアメリカが開戦した場合、日本はどうなるのか」――事実に基づく議論を積み重ね、1941年8月16日、一つの結論に到達する。「日米戦日本必敗」・・・>(石戸諭・ノンフィクションライター「30代は開戦前に敗戦を予測 歴史に埋もれた総力戦研究所から学ぶこと」2018/8/15)


この記事のベースは猪瀬直樹著『昭和16年夏の敗戦』だが、東條英機は総力戦研究所のレポートに反論したという。その思いは「3年間踏ん張れば停戦に持ち込める、このままではジリ貧で日本沈没だ、一か八かに賭けるしかない」だったろう。「3年間」というのは当時の熱戦=ガチンコは2年で停戦になるのが一般的だったこと、また実際、日清、日露の戦争でも2年だったから、対米戦=「米国本土が戦場にならないから疲弊しない!」戦争がまさか4年になるとは当時の常識からはまず考えられなかった。


日清、日露戦争も余裕があったわけではなく全力投球、必死で戦って辛うじて勝ったのである。清も露も米も当時の最強国家である、それでも戦わざるを得なかった、諦めて尻尾を巻いて逃げていたら今の日本はあり得ない、ということは知っておくべきだと思う。


冷戦から熱戦への「第3次世界大戦」・・・小生は「開戦前夜」と思っていたが、ジョナサン・マーカス氏(元BBC防衛・外交担当編集委員、英エクセター大学戦略・安全保障研究所名誉教授)によると既に戦争は始まっているようである。五輪ではないから「よーい、ドン!」で始まるわけではないのだ。今の時代は「宣戦布告」という儀式はなく、気がついたら戦争になっていた、というのが普通のよう。曖昧戦争、アングラ戦争の時代・・・マーカス氏の「ウクライナでの開戦、どうやって分かるのか」BBC 2022/1/27から。


<できる限り公平かつ独立した視点で分析すれば、ロシアは報道官が何と言おうと、ウクライナとの戦争に向けた準備を進めていることになる。


ロシアはまた別の手法を見せる可能性もある。例えば、サイバー攻撃や国家転覆だ。サイバー攻撃に関しては、ウクライナは間違いなく対象となってきた。つい1週間前にも、政府のいくつものサイトが襲われた。ただ、攻撃がどこから来たのかは、はっきりしていない。


イギリス政府は最近、ロシアが新たなウクライナ政府を形成するために関係者を選出していることを示す証拠があると主張した。だが、どんな疑いがあるにしろ、ロシア関係者がそうした活動に従事していることを示す、決定的かつ公的な証拠は明らかになっていない。


海軍分析センターのコフマン氏は、ロシアの攻撃において、サイバー関連は重要な要素になっていると話す。不可欠なインフラ機能を不全にし、ウクライナが軍の動きを調整できないようにできるからだという。


ロシアがクリミアを制圧したとき、「ハイブリッド」「グレーゾーン戦争」という言葉が飛び交った。軍服は着ていたものの記章は着けていなかった人々による作戦行動について、否定する言動もあった。


しかし、あの部隊がどこのものだったのかは明白だ。クリミアは複雑な策略ではなく、昔ながらの軍事行動によって制圧された。現在進行しているのは「グレーゾーン戦争」の本質部分だ。平和と戦争の境界があいまいにされている。西側では普通、そうした物の見方はしない。


だがロシア軍は、戦争と平和はひと続きのものだとする新たな信条を打ち出している。そうした状況では、段階に応じて異なる兵器が使われる。順々に使われることもあるし、一度に使われることもある。ただ戦略的な目的は一緒だ。


そしてそのことが、紛争はすでに始まっていることを示す究極の理由だ。現在の唯一の問題は、プーチンがどこまで「グレーゾーン」を進んでいくつもりなのかということだ>


戦争と平和の曖昧な中での開戦・・・プロでもこの21世紀的“不透明戦争”に困惑しているようである。「米、ロシアのNATO不拡大など要求拒否 ウクライナ情勢、一層不透明」2022/1/27から。


<【ワシントン時事】ブリンケン米国務長官は26日、国務省で記者会見し、ロシアが提案している北大西洋条約機構(NATO)の不拡大について、拒否する構えを改めて示した。米国は同日、こうした考えをNATOと共に書面でロシア側に回答。欧米とロシアの主張に深い溝が横たわったまま、ウクライナ情勢は不透明感を増している。


「NATO(加盟)のドアは開かれており、今後も開いたままだ」。ブリンケン氏は26日の会見でこう強調し、ロシアが求めているウクライナのNATO非加盟の確約を拒む考えを表明した。書面ではウクライナの主権を擁護する姿勢を示し、安全保障に関する判断は各国に選択する権利があると主張。欧州での軍事演習やミサイル配備の制限、新戦略兵器削減条約(新START)の後継体制に関しては協議の余地があることを伝えた>


プーチン・ロシアの同盟国である習近平・中共も、WinWinだったカザフスタンをロシアに奪われて困惑しているというから、小生が今の状況を上手く咀嚼できずにいるのは当然か。以下のナザレンコ・アンドリー氏の論稿「ウクライナ侵攻:戦争と領土拡大はロシアの“性”」(Daily WiLL Online2022/1/25)は分かりやすかった。主旨はこうだ。

<ロシアによるウクライナへの大規模侵攻が現実味を帯びている中、英米などが大使館職員やその家族の退避を始めた。南部のクリミア半島や東部のドンバス地方での紛争は8年間も続いているものの、今回の危機とは大きな違いがある。


今までロシア政府はロシア軍が直接介入していることを否定し、プーチン大統領自身、何度も「ロシアは当事者ではない」と言っていた。ウクライナ国境を越える際、ロシア兵は徽章を外し、「正体不明の覆面兵士」(リトル・グリーンメンという名前でも知られている)としてウクライナ政府軍と戦っていた。


もちろん、実際にロシア兵が捕虜に捕られたり、東部の親ロシア派テロ組織がロシアしか持っていない装備を使ったり、そのテロ組織のトップがロシア国籍保有者で元KGB関係者(例:イゴーリ・ギルキン、自称ドネツク人民共和国元最高司令官)だったりと、ロシア軍による介入の揺るぎない証拠はあった。


だからこそ、欧米諸国がロシアに対して経済制裁を課していたわけだが、ロシアは最後まで茶番劇を続け、限定戦争やハイブリッド戦争の範囲を超える行動を取ること避けていた。ところが今、ブリンケン米国務長官が指摘したように、その限定戦争が全面戦争になろうとしている。


しかし、私はロシアを批判してもあまり意味がないと思う。あの国はイソップの寓話「サソリとカエル」に出てくるサソリと同じだと考えているからだ。日本ではどれほど有名な寓話かわからないので、念のため紹介する。


《サソリとカエルが一本の川を前にしています。サソリ「川を渡りたいので、背中に乗せてくれないか?」、カエル「そんなことをしたら、その針で背中をぶすっと刺すんだろう」


サソリ「いやいや、おまえを刺したら、二人とも川に沈んでしまうだろう」、カエル「なるほど。たしかに」


カエルは背中にサソリを乗せて川を渡ることにしました。しかし川の中程まで来たときに、背中に鋭い一撃を感じます。


カエル「何でそんなことを? 二人とも川に沈んでしまうのに」、サソリ「それがサソリの性(さが)ってものなんだよ・・・」》


古い時代からあらゆる方面に戦争を仕掛け、他民族の領土を奪ってきたおかげでロシアが世界一広い国になったのは周知の事実だろう。これはロシアという国の「性」だと言っても過言ではない。


自分自身がいくら犠牲を払うことになるとしても、自国民の命や経済的繁栄より領土拡張の野望を優先してきたし、日本から3000億円の支援を受け取りながら、北方四島に新しい軍事基地をつくったり、そこに日本ではなく、中韓の資本を呼び込む政策を取ったりした恩知らずでもある。


今さら「やめて」とお願いしても、イソップの寓話にあるように、サソリに「針で刺さないで」と願うのと一緒。無防備になったら必ず刺されることを理解した上で、無駄な説得ではなく、針を使わせない抑止力に力を入れるべきだった。しかし、西側諸国はそれができなかった。中でも、特に酷いのはドイツだ。


日本ではなぜかEU諸国、特にドイツを人権先進国たる「弱者の味方」として見る傾向が強い。駐日ドイツ大使館もそのイメージを保つことに必死で、SNSなどで死刑やジェンダー問題について偉そうに説教している場面が多く見られる。はっきりいうが「口だけ番長」だ。


ウクライナとロシアの間では圧倒的な戦力の差があり、この8年間で1万4000人以上が実際に戦争で命を落とした。強者による弱者イジメそのものだろう。しかし、こんなことを許さないはずのドイツ政府は、ウクライナへの武器供与を拒否し、さらにエストニアによるウクライナへの武器供与を阻止しようと活発な動きを見せている。


つまり(ドイツは)弱者を守りに来てくれないどころか、弱者が自衛をする権利まで妨害しているのが実態なのだ。「ウクライナ人の命はロシアの天然ガスより軽い」とはっきり本音を言えばいいのに、「対話で平和を実現するのは望ましい」「過去の歴史から学んで武力では何も解決しない」など、自分の裏切り行為を美談にしようとしている。


民主主義を積極的に守るために動いている英米もドイツの本性を見抜き始め、先日、ウォールストリート・ジャーナルには「ドイツは信頼できる米同盟国ではない」(トム・ローガン氏)というタイトルの記事が寄稿された。行動を起こすべき時に平気に弱者を見殺しにするような国に他国の人権を語る資格があるか。私はそう思わない。


日本もウクライナ問題に無関係に見えて、実は大きな影響を与えている。ロシアは陸軍の3分の1の兵力をウクライナ国境周辺に集結させているが、多くは極東やシベリアから移動された部隊だ。なぜそれが可能になったのか。日本が北方領土を取り返しに来ないことがわかっているからだ。


たとえば、ロシアが西の国境に軍隊を集めるのに合わせて北海道に日米の兵力を集結させ、共同軍事演習を行なえば、それだけでも大きな牽制になるだろう。しかし、日本の政治家にはそれだけの決断力がないし、戦後教育に毒された世論もこうした行動を歓迎しないだろう。


しかし、日本が米国と共にロシアを牽制できず、ロシアが西側で戦争を起こしたらどうなるか。米英を含めてNATO勢力にとって欧州の前線防衛が最優先の課題になり、中国に対する圧力が弱まるだろう。そうしたら中国が台湾や尖閣を侵攻しても、迅速かつ適切対応ができなくなる可能性が高い。それによって困るのはまた日本だ。


結局、リベラルが崇拝している不戦主義とやら平和憲法とやらは、実際にはただ力のバランスを崩し、世界平和を脅かしているだけである。核兵器禁止条約を推奨する団体も、持っていた核兵器を全て廃棄したせいで核兵器保有国に侵略されたウクライナについては一切触れないし、誰一人助けに来てくれない。ウクライナの犠牲者は、ロシア軍の犠牲者であると同時に、綺麗ごと信奉者の犠牲者でもある>


欧米ではプーチンと喧嘩したくないドイツは“ヘタレ”と侮辱されている。「AFP=時事:ドイツは1月26日、ロシア軍侵攻の懸念が高まるウクライナに対し、武器ではなくヘルメット5000個を供与すると発表した。ドイツは対立を煽るとして、ウクライナへの武器供与を拒否している」


フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相はロシアに「緊張緩和のための明確な行動」を取るよう求めた。ただ、ショルツはウクライナや一部欧州諸国が求めているドイツ製武器のウクライナへの供与は行わないと改めて明言し、欧米ではドイツを「裏切り者」と罵倒する声が高まっている。


日本もいい子ぶりっ子していると世界から「西のドイツ、東の日本、ヘタレのダーティペア」とバカにされるに違いない。「ヘルメット5000個では顰蹙を買う・・・寒い戦場ではカップ麺が喜ばれるのではないか、よし、カップ麺50万個、大型ヤカン5000個、さらにゲーム機5万台を贈ろう! これが新資本主義だ!」と日本はやりかねない。


そう言えば日本は湾岸戦争(1990~91年)で参戦の代わりに1兆円払って逃げたが、徹底的に軽蔑されバカにされたっけ。第一次大戦では参戦して国威発揚、大いに感謝されたものだが、今は去勢された銭ゲバ蛙・・・対ロ、対中戦に汗と血と涙を流さなければ確実に日本沈没だ。ご先祖さまは泣いているぞ、日本を取り戻せ!
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