アンを探して Looking for Anne

「赤毛のアン」の島、プリンスエドワード島でオールロケ!第5回AFFF(シンガポール)で最優秀監督賞、グランプリを受賞!

モントリオールより映画感想文をお届け。

2010年10月30日 | 皆様の声
私宮平は、第二の故郷、モントリオールに来ています!秋のモントリオールは空気がいいぐあいに冷たく、気が引き締まる思いです。

写真は、朝の散歩の一場面。久々に、冬支度で忙しそうなリスたちにも会えました。

さてさて、以前ご紹介した、konsanさんの、音楽についての映画のご意見。とても読み応えがある感想文で、製作者一同「こんなにも映画を読み取ってくださっている方がいるなんて~」と感激しきりでした。でも、「映画感想文第2弾「音楽編」」とあったので、記事をお読みになった人の中には、ブログ中の「映画感想文第一弾」を探した方も多かったのでは?そう。あの感想文には、第1弾があったのです。音楽篇と同じく、こちらも読み応えのある文章だったのですが、ネタバレがあったため、掲載を保留していました。しかし!今回kosanさんにネタバレ箇所を伏せてもいいか、確認の上、掲載OKの御返事を頂きましたので、秋のモントリオールの風景とともに、掲載したいと思います。

甲斐市 konsan映画感想文第一弾


映画「アンを探して」は、いよいよ12月22日に有楽町・シネカノンでの上映が終わる、ということを知って、終わったら見る機会は極端に少なくなるだろうなぁ、と思いつつ、先週水曜日、エイヤッとばかりに、見に行きました。

いやはや、凄い映画でした。他であまり語られていない観点から、独断と偏見でこの映画を語ってみたいと思います。

まずひとつ、すごかったのは、穂のかさん。すごかったですね。日本にいる普通の女の子を見事に演じていました。しかも、最愛のおばあちゃんを亡くし、内気で大人しく、あまり感情の起伏をあらわさない、無表情のままの杏里役を上手くこなしていました。人と会話していても、喜怒哀楽のない陰気な娘になり切っていた のが印象的です。

これは、自分自身を表現できない、もしくは、しない、という今時日本人の若者特有の特徴を捉えていました。祖母のメル友・佐藤マリの経営する民宿にしばらく滞在しますが、そのマリさんにも、その隣の心理学の元教授・ジェフさんにも心を開こうとしません。島中の灯台を探しに自転車を走らせるのですが、その先々を 訪ね歩くシーンでも、無表情のまま人と接したり会話したりします。これでは、親切に教えようというカナダ人もとりつくしまがないでしょう。ブッチョ面の陰険な主人公をこのまま見続けなければいけないかと思うと、少々ウンザリしたのは確かです。

だから杏里が笑うシーンが出てくると、ホッとするのです。笑顔は3回ほど出て来ましたが、笑った顔が最も素敵に輝いていたのは、たった1回でした。それはそれは素晴らしかったですよ。あの杏里の笑顔を撮るために、全編無表情で演技させていたとすれば、これは演出効果抜群だったよな、と思います。監督の演技プラン 、采配はものの見事に的中したのかもしれません。クライマックス的なシーンで、こういった笑顔で盛り上がらせ、見る者を感動させることで、目に涙をあふれさせるような気がします。結果的にそうなっただけかもしれないけど、それにしても、宮平監督の演出は、すごい!

もっとすごいのは、演出力、演技力に加え、シナリオの確かさ。とくに7、80歳の祖母、5、60歳の団塊世代、20歳前後の若者、といった女性3世代それぞれの恋愛について語られていたのも映画に深み・厚みを加えていたね。まず、祖母の世代は戦争の敵対同士であっても、男女の恋愛感情は育ち、それが戦後、海を隔てて離 れ離れになり、一度も会わず仕舞いでも、一途に思う気持ちは失わないことだってあり得る、ということを再認識させられました。何て、純真無垢なのだろう、国、人種、時空間を超越してふたりの愛は永遠に結ばれ、死後でさえ、それがしっかり通じ合っていたのです。いわば心と心のプラトニックの愛は実るんだ、という古い世 代の価値観もしっかり盛り込まれていることに、凄さを感じました。

そして、団塊の世代の人たち。ジェフのマリに寄せる愛情も、歯がゆいばかり。死別した前夫の面影、思い出を引きずったマリは頑なにジェフの求愛を拒否します。印象的だったのは、ジェフの台詞(せりふ)。薄暗いマリの民宿の庭で、ジェフがマリに向かって、「君が過去に生きるなら、それは君の選択だ」というひと言。ジェ フの心情を察したらキュンと来たね。ジェフが自分の気持ちを伝えても、マリの思いは変わらぬことを悟ったのですが、そのやるせなさ。マリの曲げようとしない一途な生き方をも受け入れるのも、愛情のひとつの表現であることを訴えています。愛情は奪うだけではありませんね。マリの頑固なまでに貫き通す前夫への愛情が痛い ほど伝わってくるだけに、ジェフはジッと見守るしかないのでしょうか。恋は辛いよね。

そして杏里の初恋の相手となったジェフの義理の息子・ライアン。恋心を寄せますが、彼には恋人がおり、その恋愛はな成就できません。その真逆に登場したのが、マリの民宿に投宿するミユキとミカ姉妹のうちの妹ミカ。姉はフリーのジャーナリストで、アン嫌い。その取材に付いてきた妹は、好奇心旺盛。平気で男友達を漁 り、機会あらばベッドインもOKという、典型的な現代風若者で、恋愛は、半分遊びという恋愛観を持っています。そんな対照的な若者の恋愛感情が、まさに処女に対する考え方の相違を浮き彫りにしています。

終わり頃のシーンがよかったですね。マリの民宿の中庭で開かれた杏里のお別れパーティーの席上、杏里がおばあさんの手紙を読む独白のシーンがあります。これが第一波の感動的なシーンでした。アンからギルバートに宛てた手紙には、趣味のバラの話から相手を思いやる気持ちが綴られていました。そして、意外な人物の助けがあり、島全体にこの話が伝わり、情報が寄せられます。一気に映画はクライマックス。

冒頭、唐突に吉行和子さんのおばあ さんが庭でバラに水やりしながら、バラの説明をする携帯画面のシーンが出てきましたが、これを皮切りに何度もこのシーンが挿入され、そしておばあさんの大学ノートに描かれているピースのバラが出て来ました。それがここで、俄然輝きを増すのです。そしてその理由が明らかになりました。最初のシーン、何度かの挿入シーン 、これらがラストシーンに連なっていたのですね。凝ったつくりですよね。すごいですね。

ラストシーンまで行き着くのに、何度かハンカチを目にしたのですが、この第2波の感動で、一気に涙腺が解き放たれ、もう涙中顔だらけ。ハンカチはぐしょ濡れ。終わってもしばらく立てませんでした。とまぁ、オーバーな表現ですけど、やはり感激は大きかったですね。映像の暗さが気になったぐらいで、あとはいずれも ほぼ完璧だったんじゃないでしょうか。アジアの映画祭でグランプリを取っただけあります。テーマは、万国共通。世代も青少年からお爺さんお婆さんまで、幅広い支持が得られるのではないでしょうか。宮平監督、穂のかさん、それぞれの次回作が楽しみですね。

ともあれ、すごい!映画でした。以上、長めの映画感想文でした。ジャンジャン♪

甲斐市 konsan




映画『アンを探して』絶賛上映中です!映画を劇場で観ると、プリンスエドワード島の旅が当たるキャンペーンもやってますので、ぜひ皆さん映画館でご覧になってくださいね★

10月23日より~
長野 シネマライツ8(松本)(問)0263-24-0122
長野 トキワ劇場(飯田町)(問)0265-22-0742
北海道 シネマトーラス(苫小牧)(問)0144(37)8182

11月06日(土)より~
栃木 フォーラム那須塩原(問)0287-60-7227
長野 千石劇場(問)026-226-7665
岩手 一関シネプラザ(問)0191-23-2902

11月13日(土)より~
埼玉 川越スカラ座(初日監督挨拶あり。)(問)049-223-0733

「シネマの食堂」映画週間のイベント参加&高知で自由と地球を感じる!

2010年10月27日 | 『アンを探して』7000キロの旅<アン旅>
10月24日は高知で、今年3年目になる映画イベント「シネマの食堂ビストロ・デ・シネマ>」に参加しました。
食をテーマにした映画を上映し、食べ物の販売も行われる楽しい映画イベント。『アンを探して』は食以外のテーマですが、園子温監督特集等他6作品とならんで、取り上げていただきました★

高知入りしたその夜、食に関わるイベントということで(←あまり関係ない?笑)高知の食の髄を取り寄せた観光名所「ひろめ市場」を案内していただきました!

アン旅でもお世話になった四国文映社の田辺さん(中央右)、この映画イベントを一緒に支える横田さん(右端)、高知県映画上映団体ネットワーク(通称えいネー)代表の宇都宮さん(左端)とともに。

地元の人は、混雑を避けて土日は行かないそうですが、なるほど、超!混んでました。(背景の人ごみに注目)人気の理由はまさしく「安い!うまい!バラエティー豊富!」いわゆる台横丁風フードコートなんですが高知名物から英国のフィッシュアンドチップス、餃子、etc、美味しいものなら何でもござれで種類豊富。何を食べても美味でした。ちなみに、、いただいたものの一部を...。(お腹すいてきた~)

ちなみにその夜は市内唯一の単館系映画館「あたご劇場」にも寄りました。このような映画イベント以外で国内外の独立系の映画を見ることは非常に少ないとか。

只今、話題作『クロッシング』上映中!高知の皆様、ぜひ「あたご劇場」でお見逃しなく。
・・・・

翌朝、散歩ついでに高知城に向かいました。高知城は、お城好きの田辺さんによると、小ぶりだけれども美しく、空襲にも合わず、昔から残っている珍しいお城なんだだそうです。

朝早くいったので、城のすぐそこの広場でラジオ体操も目撃!このラジオ体操も、江戸時代から続いて、、、ません(笑)

城内に板垣退助像もありました!「板垣死すとも自由は死せず!」の名言を残し(その時は生き延びたのですが...)自由民権運動の草分け的存在として知られる板垣退助も、高知出身です。坂本龍馬といい、板垣退助といい、世界で二番目に女性参政権を実現させた民権ばあさんといい、まさしく自由は土佐の山間より~!

そして偶然にも(?)『アンを探して』が上映された会場も、高知自由民権記念館ホール。
後にwikkiで知ったのですが板垣退助が刺された短剣が保存されているそうです~。
一日限りの上映ですが、会場が映画一色にアレンジされていました!

ハガキのイラストもいい感じで活用されてて嬉しい!上映会当日は、しとしと雨で気温もグッと下がったのですが、それでも沢山の方にご来場いただきました。

アン旅でお世話になった筋金入りのアンファン、ラジオパーソナリティの井津葉子さんも来てくださいました。
そしてかなり嬉しかったのは、雨の日にも関わらずなんと松葉杖で会場に駆けつけてくれた方がいたこと!!

田辺さんいわく映画のイベントには殆どといっていいほど顔を出す映画好きの方だとか。頭が下がる思いで、思わず写真撮影をお願いしました!他にも、香川県在住の方が、お隣愛媛県今治のアイシネマでご覧になり、ネットで上映イベントを知り、わざわざ駆けつけてくださったという方、・・・「アン」を読んだことのない男子大学生二人が、いたく映画を気に入ってくれたり、、嬉しい声を沢山いただきました。

上映後は、イベントを支えるボランティアスタッフさんとお食事会も叶い、充実した高知滞在となりました!!


そして・・・高知といえば、今や坂本龍馬!ですが、天邪鬼な私は、もう一つの高知名物、いや、世界的名所へ行きました。

川中に浮かぶ摩訶不思議なモニュメント...


なんと東経133度33分33秒、北緯33度33分33秒地点!なのです。
同じ数字が12個続く場所は、地上に存在するのは世界的に約9ヵ所、
高知以外は砂漠などで人が中々行けない場所にあるそう。
なんかトクした気分になるでしょう?(単純すぎる?)
・・・
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・・大満足の高知の旅でした!
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たかこ

熊本・人吉は「町よし、味良し、人良し!」

2010年10月23日 | 『アンを探して』7000キロの旅<アン旅>
皆さまご無沙汰しております!
で上映中の『アンを探して』、
いよいよ初の長野、そして
北海道苫小牧での上映がスタートします。
さらに、明日10/24(日)は、今龍馬ブームで熱い
高知で、ホール上映があり、監督宮平も駆けつけます。
※高知市自由民権記念館
(上映開始時間 11時,14時,18時の3回上映 
監督舞台挨拶12:45,15:45 (問)四国文映社 088-822-7486
shikoku-buneisya@k4.dion.ne.jp 
ちなみに、私はその後カナダに2週間ほど飛び立つ予定。
中々ブログも更新できず、失礼しました!
先週の10月16日・17日は、
熊本県の人吉で『アンを探して』上映会があり、
舞台挨拶をさせていただきました!!
にっこり笑っているのは、人吉いち、いえ、熊本いち、熱い上田先生!
開口一言、「あんた、沖縄の人ね!?僕は沖縄には熱い思いがあるんだよ!」
上田先生はなんと20代のとき返還前の沖縄で
教育問題を中心に視察にいったこともあるんです。
その上田先生が手にしているのは
人吉のコミュニティーのメディア。
月刊・週刊・日刊!!
三つもあることに驚きました。
(上田先生のご尽力で『アンを探して』の記事は三誌で
とりあげていただきました。)
一番反響が大きかったのは日刊誌の読者の広場で
取り上げられた地元でうどん屋を営む、
いち『赤毛のアン』ファンの豊永さんの投稿だったとか!
豊永さんは上映会当日も沢山のアイデアをなげかけ、
積極的に関わってくださいました。大感謝です★
上の写真は、今回宿泊した温泉旅館のしらさぎ荘。
歩いて五分の場所に、球磨川があり、朝散歩したのですが、
野鳥が沢山見られました。うーん、羨ましいでしょう??
(写真は朝食の写真です!夕食は、
いつものとおり(恥、撮影し忘れました・・・)
美人な女将さん(左)と信念あるご主人(前列・真ん中)が
経営するしらさぎ荘は、上田先生御用達。
温泉は地元の人にも人気だそう。
写真にはおさめきれなかったのですが、
鯉の養殖を行っていて、その池も見事です。
ちなみに、、夕食に出された、栗の渋皮煮。
今まで食べたことがないぐらいの絶品でした!
青井阿蘇神社、古墳と、人吉城跡
他にも、西郷さんが西南戦争で陣地を構えた
永国寺(通称幽霊寺)を案内していただき、人吉を堪能しました。
しかし、今回の人吉では、一番に
「人の"賢さ"、"あったかさ"」を感じました。
ご尽力いただいた上田先生や映画センターの木村さん、
関係者、もてなしていただいた方々のあたたかさは
言うに及ばず、
実は今回ちょっとしたハプニングがあり、
バス会社さんにご迷惑をおかけしてしまったのですが
その際の迅速な対応に、
この町の人は「マニュアル」じゃなくて心で動いてる!!
と感動しました。・・・
・・・
人吉の『アンを探して』上映会では、
多くの方にアンケートに書いていただきましたので
またこちらのブログでご紹介したいと思います。
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中々ブログの更新が追いつかなくてすみませんが、
さて、今日はいざ、高知へ!行ってきます。
その後、我が第二の故郷、モントリオールへ...。
カナダの様子もアップしていきますので、お楽しみに。
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たかこ


「アンを探して」上映劇場(11/16追記&訂正)[全国]

2010年10月13日 | 「アンを探して」上映館・上映劇場
鑑賞後の半券で2011年のプリンスエドワード島の旅が抽選で当たる!
キャンペーンの応募は2010年12月31日(消印有効)で締め切らせていただきました。1月中旬に発表させていただきます。



★公開劇場★



From 7 to 13th of January atCity Cinema
64 King Street in downtown Charlottetown P.E.I.
Telephone at (902) 368-3669.

1月15日(土)から
青森 青森コロナシネマワールド
愛知 小牧コロナシネマワールド
愛知 豊川コロナワールド



2月5日(土)から
岐阜 大垣コロナワールド

★近日ホール上映★


2月20日(日)14:00~16:30 大田文化の森ホールで『アンを探して』上映イベント

内容:名作『赤毛のアン』の舞台、カナダのプリンスエドワード島でオールロケした映画『アンを探して』を上映、上映前に『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』の著者、村岡恵理による監督インタビューがあります。
定員:抽選で200名(1通4名まで応募可。同伴者名を明記のこと)□申込:2月6日必着
申し込み方法など詳細はこちらをご確認下さい

お問い合わせ:大田文化の森運営協議会事務局 Tel 03-3772-0770

プリンスエドワード島の旅が当たるキャンペーンは終了しました。沢山のご応募ありがとうございました。

2011年1月中旬に当選者の発表予定です。


プリンス・エドワード島州政府観光局のご協力により、キャンペーン第二弾が決定.

憧れのプリンスエドワード島へ旅をあてよう。
その他にも島のやさしい食べ物・アンシリーズゆかりの品が当たります

【応募方法】 下記の応募上の注意事項を必ずお読みください。『アンを探して』観賞後の半券を切り取って添付し、必要事項[代表者のお名前、年齢、職業、住所、連絡先電話番号] を記入しハガキで東京都港区南青山 2-11-13 南青山ビル4F 株式会社グランジュテ「2011年度プリンスエドワード島旅行係」 までご郵送下さい。★応募締め切り:2010年12月31日当日消印有効★ 


【応募上のご注意】 ※当選旅行はプリンス・エドワード島へのパッケージツアーをプレゼント予定。  詳細は当選者へ発表を持ってご連絡します。  旅行実施有効期間:2011年4月~10月を予定(ただし繁忙期除く) ※ご応募は渡航に健康上の心配が無い方で、渡航までに有効なパスポートをご用意できる方に限らせていただきます。※20歳未満の方の場合は保護者の同意が必要です。※また本応募の際に頂いた個人情報は、利用者本人の同意を得ないで、無断で第三者に提供することはございません。但し、訴訟、調査等法律により要求された場合には、御客様の承諾なく個人情報を開示することがあります。


音楽についてのご意見

2010年10月03日 | 皆様の声

宮平監督は奈良、綾部、美山、岡崎と上映挨拶をすませ、あとは熊本・人吉の上映と高知の上映に舞台挨拶に行きます。現在千葉、仙台、福島、盛岡、甲府、宮崎で上映中です。お見逃しなく!


ここでちょっと雰囲気をかえて。

日本中で映画「アンを探して」を観ていただいた方から多くの意見が寄せられブロガーのmetal_macさんにも触れていただきましたが、音楽についての素敵なご意見をご紹介したいと思います。

by Producer





映画感想文第2弾「音楽編」

 

あの映画全体を通して言えることは、基本的に自然の音を再現しようという姿勢が貫かれていたこと。現地ロケで拾った、風、雨、川、海の音を丹念に収録して、それを端々に使っていたのではなかったでしょうか。その音が映画のそこかしこに、主張するでもなく、喚(わめ)くでもなく、そっと忍び寄るように聞こえてい ました。映画から鮮やかに見聞できるのは、自然の中で織りなす人の動きと言葉です。これだけで、十分に説得力がありますが、さらに音楽が効果的に挿入されれば、言うことなし。まさに鬼に金棒です。音楽は、物語の展開にメリハリをつけ、情感を一気に高める効果をもたらしていました。

 

それも使われていた音楽は、派手な賑やかなものではありません。演奏スタイルも一本の楽器であったり、独奏であったり、せいぜい室内弦楽風であったり、小品がほとんどでした。映画の身の丈に合わせ、自然にマッチした音楽を、ここぞ、という場面に使っていました。のべつまくなしに、音楽が垂れ流されていたわけで はありません。しかも、あえてエレキなど電気楽器を遠ざけ、あくまでアコースティック・サウンドの素朴さ、単純さ、誠実さに重きを置いた音楽を中心に挿入されていました。当然、作品意図に相応しい音楽を厳選したとみられるだけに、これも見事な計算、というほかありません。

 

映画の冒頭シーン。プリンスエドワード島の空港待合室で、出迎えのマリ役のロザンナさんと杏里役の穂のかさんが出会って、マリの民宿に向かうシーンがありました。空撮による俯瞰風景、車を走らせながら過ぎ行く牧歌的な風景。これを背景に奏でられていたのがアコースティック・ギターによる曲でした。

 

当初、これを聞いて、僕は、このギターが、スラッキー(弦を緩めてチューニングする)ギターではないか?と思い、しばし聞き耳を立てました。スラッキ―・ギターは、ウクレレと並んで、僕の大好きな楽器です。何を隠そう、これはハワイ独特の奏法で、ハワイアンならではのノンビリ感、リラックス感を漂わせ、ユッタ リした気分にさせてくれる楽器です。同奏法の第一人者である山内雄喜さんが、この映画で弾いているのかと思い、最後のタイトルを確認したけど、全然違っていました(ガックリ)。現地のギタリストがつくり、弾いていた曲だったんですね。

 

曲そのものは、アルペジオを交えた軽快なテンポで、映画の導入部にうってつけでした。これから始まる物語に期待を感じさせたし、杏里の旅の始まりを予感させるものでした。何より、プリンスエドワード島の風景にピッタリマッチし、心地よい気分にさせてもくれました。

 

そして、夕暮れになって、隣のジェフさんが、庭でベンチに腰掛け、バスクラリネットを吹きます。これにはまいったね。ゾクゾクっときました。何の曲かは分かりませんでしたが、物悲しげな音色で、ジェフさんの心の奥底に仕舞っている心情をそのまま吐露しているように聞こえました。これをジッと聞いていると、誰も が優しくなれるのではないか、そんな気がしてくる、いい場面でしたね。

 

朝、ジェフ宅を訪ねてきた杏里に、ジェフは尋ねます。「昨晩は、うるさくなかったかね?」。杏里は、なんのことか分からず「エッ?」と聞き返します。ジェフが笑って見ています。このシーン、杏里が無愛想なため、ジェフが杏里の気を引こうと、わざと民宿の隣家に聞こえるように、大きな音を出して演奏して、それが 聞こえたかどうか杏里に確かめたのではなかったか、と思わせるカットでした。

 

これには伏線がありそうです。ジェフは、杏里に聞いてもらうために吹いたことは吹いたのですが、本当は、マリに聞いてもらいたかったのではないか、ということです。ジェフが自分自身に関心を持ってもらうべく、一生懸命吹きまくったのではなかったか、と推察しましたが、いかがでしょうか?

 

ジェフのバスクラリネットの演奏場面ひとつ語るだけでも、想像がグングン膨らみます。それだけ映画には、音楽の持つ意味が、重要不可欠です。あのシーンは、年寄りが道楽で吹いていただけ、と言われればそれまでですが、あの場面では、バスクラリネットを登場させることで、マリに対する恋慕の情はもとより、これま でジェフの歩んできた人生、ジェフの人間性までもが音楽を通じて見えて来ます。下手な台詞回しや通俗的な言葉より、バスクラリネット一本から発する音色によって、ジェフの心中が十分に伝わって来るから不思議です。

 

他にもダンスシーン、屋内外や心理描写の際に、音楽がタイミングよく使われていました。映画における音楽効果は、絶大なものがあります。音楽恐るべし!

 

僕は、この映画の全編貫き通したテーマをこう考えます。昔日の戦争は決して消えたわけではなく、現在も連綿と連なっている、という重いテーマを横軸に、その戦争が原因で、男女が出会い、相思相愛になりながら離れ離れになって、会いたい一心で孫に託した「尋ね人」を縦軸に、3世代にわたる女性の恋愛観を描き出し た、といっていいと思います。

 

主人公・杏里の表情の暗さ、プリンスエドワード島全体に覆う戦争の傷痕と相まって、雨季のドンヨリした薄暗さが、テーマに重厚感を与えた、という点で反戦映画と捉える向きもあるでしょう。しかし、この映画は、そんな大上段に振りかざした紋切型の枠に当て嵌めてはいけない、と考えた方が無難なようです。もっと当 たり前の泥臭い人間関係が大事だよ、と言っているような気がします。これは老若男女問いません。恋人同士、夫婦、親子、兄弟、地域住民の間それぞれに、本来持たなければいけないはずの、日本に失われつつある、人間的な隣人愛、優しさ、思いやり、人を信頼することが、何より必要だよ、と言いたかったのではないでしょう か?全ては、マリの民宿の「ピースローズの部屋」に詰め込まれているのです。

以上

 

甲斐市 konsan