私宮平は、第二の故郷、モントリオールに来ています!秋のモントリオールは空気がいいぐあいに冷たく、気が引き締まる思いです。
写真は、朝の散歩の一場面。久々に、冬支度で忙しそうなリスたちにも会えました。
さてさて、以前ご紹介した、konsanさんの、音楽についての映画のご意見。とても読み応えがある感想文で、製作者一同「こんなにも映画を読み取ってくださっている方がいるなんて~」と感激しきりでした。でも、「映画感想文第2弾「音楽編」」とあったので、記事をお読みになった人の中には、ブログ中の「映画感想文第一弾」を探した方も多かったのでは?そう。あの感想文には、第1弾があったのです。音楽篇と同じく、こちらも読み応えのある文章だったのですが、ネタバレがあったため、掲載を保留していました。しかし!今回kosanさんにネタバレ箇所を伏せてもいいか、確認の上、掲載OKの御返事を頂きましたので、秋のモントリオールの風景とともに、掲載したいと思います。
映画「アンを探して」は、いよいよ12月22日に有楽町・シネカノンでの上映が終わる、ということを知って、終わったら見る機会は極端に少なくなるだろうなぁ、と思いつつ、先週水曜日、エイヤッとばかりに、見に行きました。
いやはや、凄い映画でした。他であまり語られていない観点から、独断と偏見でこの映画を語ってみたいと思います。
まずひとつ、すごかったのは、穂のかさん。すごかったですね。日本にいる普通の女の子を見事に演じていました。しかも、最愛のおばあちゃんを亡くし、内気で大人しく、あまり感情の起伏をあらわさない、無表情のままの杏里役を上手くこなしていました。人と会話していても、喜怒哀楽のない陰気な娘になり切っていた のが印象的です。
これは、自分自身を表現できない、もしくは、しない、という今時日本人の若者特有の特徴を捉えていました。祖母のメル友・佐藤マリの経営する民宿にしばらく滞在しますが、そのマリさんにも、その隣の心理学の元教授・ジェフさんにも心を開こうとしません。島中の灯台を探しに自転車を走らせるのですが、その先々を 訪ね歩くシーンでも、無表情のまま人と接したり会話したりします。これでは、親切に教えようというカナダ人もとりつくしまがないでしょう。ブッチョ面の陰険な主人公をこのまま見続けなければいけないかと思うと、少々ウンザリしたのは確かです。
だから杏里が笑うシーンが出てくると、ホッとするのです。笑顔は3回ほど出て来ましたが、笑った顔が最も素敵に輝いていたのは、たった1回でした。それはそれは素晴らしかったですよ。あの杏里の笑顔を撮るために、全編無表情で演技させていたとすれば、これは演出効果抜群だったよな、と思います。監督の演技プラン 、采配はものの見事に的中したのかもしれません。クライマックス的なシーンで、こういった笑顔で盛り上がらせ、見る者を感動させることで、目に涙をあふれさせるような気がします。結果的にそうなっただけかもしれないけど、それにしても、宮平監督の演出は、すごい!
もっとすごいのは、演出力、演技力に加え、シナリオの確かさ。とくに7、80歳の祖母、5、60歳の団塊世代、20歳前後の若者、といった女性3世代それぞれの恋愛について語られていたのも映画に深み・厚みを加えていたね。まず、祖母の世代は戦争の敵対同士であっても、男女の恋愛感情は育ち、それが戦後、海を隔てて離 れ離れになり、一度も会わず仕舞いでも、一途に思う気持ちは失わないことだってあり得る、ということを再認識させられました。何て、純真無垢なのだろう、国、人種、時空間を超越してふたりの愛は永遠に結ばれ、死後でさえ、それがしっかり通じ合っていたのです。いわば心と心のプラトニックの愛は実るんだ、という古い世 代の価値観もしっかり盛り込まれていることに、凄さを感じました。
そして、団塊の世代の人たち。ジェフのマリに寄せる愛情も、歯がゆいばかり。死別した前夫の面影、思い出を引きずったマリは頑なにジェフの求愛を拒否します。印象的だったのは、ジェフの台詞(せりふ)。薄暗いマリの民宿の庭で、ジェフがマリに向かって、「君が過去に生きるなら、それは君の選択だ」というひと言。ジェ フの心情を察したらキュンと来たね。ジェフが自分の気持ちを伝えても、マリの思いは変わらぬことを悟ったのですが、そのやるせなさ。マリの曲げようとしない一途な生き方をも受け入れるのも、愛情のひとつの表現であることを訴えています。愛情は奪うだけではありませんね。マリの頑固なまでに貫き通す前夫への愛情が痛い ほど伝わってくるだけに、ジェフはジッと見守るしかないのでしょうか。恋は辛いよね。
そして杏里の初恋の相手となったジェフの義理の息子・ライアン。恋心を寄せますが、彼には恋人がおり、その恋愛はな成就できません。その真逆に登場したのが、マリの民宿に投宿するミユキとミカ姉妹のうちの妹ミカ。姉はフリーのジャーナリストで、アン嫌い。その取材に付いてきた妹は、好奇心旺盛。平気で男友達を漁 り、機会あらばベッドインもOKという、典型的な現代風若者で、恋愛は、半分遊びという恋愛観を持っています。そんな対照的な若者の恋愛感情が、まさに処女に対する考え方の相違を浮き彫りにしています。
終わり頃のシーンがよかったですね。マリの民宿の中庭で開かれた杏里のお別れパーティーの席上、杏里がおばあさんの手紙を読む独白のシーンがあります。これが第一波の感動的なシーンでした。アンからギルバートに宛てた手紙には、趣味のバラの話から相手を思いやる気持ちが綴られていました。そして、意外な人物の助けがあり、島全体にこの話が伝わり、情報が寄せられます。一気に映画はクライマックス。
冒頭、唐突に吉行和子さんのおばあ さんが庭でバラに水やりしながら、バラの説明をする携帯画面のシーンが出てきましたが、これを皮切りに何度もこのシーンが挿入され、そしておばあさんの大学ノートに描かれているピースのバラが出て来ました。それがここで、俄然輝きを増すのです。そしてその理由が明らかになりました。最初のシーン、何度かの挿入シーン 、これらがラストシーンに連なっていたのですね。凝ったつくりですよね。すごいですね。
ラストシーンまで行き着くのに、何度かハンカチを目にしたのですが、この第2波の感動で、一気に涙腺が解き放たれ、もう涙中顔だらけ。ハンカチはぐしょ濡れ。終わってもしばらく立てませんでした。とまぁ、オーバーな表現ですけど、やはり感激は大きかったですね。映像の暗さが気になったぐらいで、あとはいずれも ほぼ完璧だったんじゃないでしょうか。アジアの映画祭でグランプリを取っただけあります。テーマは、万国共通。世代も青少年からお爺さんお婆さんまで、幅広い支持が得られるのではないでしょうか。宮平監督、穂のかさん、それぞれの次回作が楽しみですね。
ともあれ、すごい!映画でした。以上、長めの映画感想文でした。ジャンジャン♪
甲斐市 konsan
映画『アンを探して』絶賛上映中です!映画を劇場で観ると、プリンスエドワード島の旅が当たるキャンペーンもやってますので、ぜひ皆さん映画館でご覧になってくださいね★
写真は、朝の散歩の一場面。久々に、冬支度で忙しそうなリスたちにも会えました。
さてさて、以前ご紹介した、konsanさんの、音楽についての映画のご意見。とても読み応えがある感想文で、製作者一同「こんなにも映画を読み取ってくださっている方がいるなんて~」と感激しきりでした。でも、「映画感想文第2弾「音楽編」」とあったので、記事をお読みになった人の中には、ブログ中の「映画感想文第一弾」を探した方も多かったのでは?そう。あの感想文には、第1弾があったのです。音楽篇と同じく、こちらも読み応えのある文章だったのですが、ネタバレがあったため、掲載を保留していました。しかし!今回kosanさんにネタバレ箇所を伏せてもいいか、確認の上、掲載OKの御返事を頂きましたので、秋のモントリオールの風景とともに、掲載したいと思います。
甲斐市 konsan映画感想文第一弾
映画「アンを探して」は、いよいよ12月22日に有楽町・シネカノンでの上映が終わる、ということを知って、終わったら見る機会は極端に少なくなるだろうなぁ、と思いつつ、先週水曜日、エイヤッとばかりに、見に行きました。
いやはや、凄い映画でした。他であまり語られていない観点から、独断と偏見でこの映画を語ってみたいと思います。
まずひとつ、すごかったのは、穂のかさん。すごかったですね。日本にいる普通の女の子を見事に演じていました。しかも、最愛のおばあちゃんを亡くし、内気で大人しく、あまり感情の起伏をあらわさない、無表情のままの杏里役を上手くこなしていました。人と会話していても、喜怒哀楽のない陰気な娘になり切っていた のが印象的です。
これは、自分自身を表現できない、もしくは、しない、という今時日本人の若者特有の特徴を捉えていました。祖母のメル友・佐藤マリの経営する民宿にしばらく滞在しますが、そのマリさんにも、その隣の心理学の元教授・ジェフさんにも心を開こうとしません。島中の灯台を探しに自転車を走らせるのですが、その先々を 訪ね歩くシーンでも、無表情のまま人と接したり会話したりします。これでは、親切に教えようというカナダ人もとりつくしまがないでしょう。ブッチョ面の陰険な主人公をこのまま見続けなければいけないかと思うと、少々ウンザリしたのは確かです。
だから杏里が笑うシーンが出てくると、ホッとするのです。笑顔は3回ほど出て来ましたが、笑った顔が最も素敵に輝いていたのは、たった1回でした。それはそれは素晴らしかったですよ。あの杏里の笑顔を撮るために、全編無表情で演技させていたとすれば、これは演出効果抜群だったよな、と思います。監督の演技プラン 、采配はものの見事に的中したのかもしれません。クライマックス的なシーンで、こういった笑顔で盛り上がらせ、見る者を感動させることで、目に涙をあふれさせるような気がします。結果的にそうなっただけかもしれないけど、それにしても、宮平監督の演出は、すごい!
もっとすごいのは、演出力、演技力に加え、シナリオの確かさ。とくに7、80歳の祖母、5、60歳の団塊世代、20歳前後の若者、といった女性3世代それぞれの恋愛について語られていたのも映画に深み・厚みを加えていたね。まず、祖母の世代は戦争の敵対同士であっても、男女の恋愛感情は育ち、それが戦後、海を隔てて離 れ離れになり、一度も会わず仕舞いでも、一途に思う気持ちは失わないことだってあり得る、ということを再認識させられました。何て、純真無垢なのだろう、国、人種、時空間を超越してふたりの愛は永遠に結ばれ、死後でさえ、それがしっかり通じ合っていたのです。いわば心と心のプラトニックの愛は実るんだ、という古い世 代の価値観もしっかり盛り込まれていることに、凄さを感じました。
そして、団塊の世代の人たち。ジェフのマリに寄せる愛情も、歯がゆいばかり。死別した前夫の面影、思い出を引きずったマリは頑なにジェフの求愛を拒否します。印象的だったのは、ジェフの台詞(せりふ)。薄暗いマリの民宿の庭で、ジェフがマリに向かって、「君が過去に生きるなら、それは君の選択だ」というひと言。ジェ フの心情を察したらキュンと来たね。ジェフが自分の気持ちを伝えても、マリの思いは変わらぬことを悟ったのですが、そのやるせなさ。マリの曲げようとしない一途な生き方をも受け入れるのも、愛情のひとつの表現であることを訴えています。愛情は奪うだけではありませんね。マリの頑固なまでに貫き通す前夫への愛情が痛い ほど伝わってくるだけに、ジェフはジッと見守るしかないのでしょうか。恋は辛いよね。
そして杏里の初恋の相手となったジェフの義理の息子・ライアン。恋心を寄せますが、彼には恋人がおり、その恋愛はな成就できません。その真逆に登場したのが、マリの民宿に投宿するミユキとミカ姉妹のうちの妹ミカ。姉はフリーのジャーナリストで、アン嫌い。その取材に付いてきた妹は、好奇心旺盛。平気で男友達を漁 り、機会あらばベッドインもOKという、典型的な現代風若者で、恋愛は、半分遊びという恋愛観を持っています。そんな対照的な若者の恋愛感情が、まさに処女に対する考え方の相違を浮き彫りにしています。
終わり頃のシーンがよかったですね。マリの民宿の中庭で開かれた杏里のお別れパーティーの席上、杏里がおばあさんの手紙を読む独白のシーンがあります。これが第一波の感動的なシーンでした。アンからギルバートに宛てた手紙には、趣味のバラの話から相手を思いやる気持ちが綴られていました。そして、意外な人物の助けがあり、島全体にこの話が伝わり、情報が寄せられます。一気に映画はクライマックス。
冒頭、唐突に吉行和子さんのおばあ さんが庭でバラに水やりしながら、バラの説明をする携帯画面のシーンが出てきましたが、これを皮切りに何度もこのシーンが挿入され、そしておばあさんの大学ノートに描かれているピースのバラが出て来ました。それがここで、俄然輝きを増すのです。そしてその理由が明らかになりました。最初のシーン、何度かの挿入シーン 、これらがラストシーンに連なっていたのですね。凝ったつくりですよね。すごいですね。
ラストシーンまで行き着くのに、何度かハンカチを目にしたのですが、この第2波の感動で、一気に涙腺が解き放たれ、もう涙中顔だらけ。ハンカチはぐしょ濡れ。終わってもしばらく立てませんでした。とまぁ、オーバーな表現ですけど、やはり感激は大きかったですね。映像の暗さが気になったぐらいで、あとはいずれも ほぼ完璧だったんじゃないでしょうか。アジアの映画祭でグランプリを取っただけあります。テーマは、万国共通。世代も青少年からお爺さんお婆さんまで、幅広い支持が得られるのではないでしょうか。宮平監督、穂のかさん、それぞれの次回作が楽しみですね。
ともあれ、すごい!映画でした。以上、長めの映画感想文でした。ジャンジャン♪
甲斐市 konsan
映画『アンを探して』絶賛上映中です!映画を劇場で観ると、プリンスエドワード島の旅が当たるキャンペーンもやってますので、ぜひ皆さん映画館でご覧になってくださいね★
10月23日より~
長野 シネマライツ8(松本)(問)0263-24-0122
長野 トキワ劇場(飯田町)(問)0265-22-0742
北海道 シネマトーラス(苫小牧)(問)0144(37)8182
11月06日(土)より~
栃木 フォーラム那須塩原(問)0287-60-7227
長野 千石劇場(問)026-226-7665
岩手 一関シネプラザ(問)0191-23-2902
11月13日(土)より~
埼玉 川越スカラ座(初日監督挨拶あり。)(問)049-223-0733
長野 シネマライツ8(松本)(問)0263-24-0122
長野 トキワ劇場(飯田町)(問)0265-22-0742
北海道 シネマトーラス(苫小牧)(問)0144(37)8182
11月06日(土)より~
栃木 フォーラム那須塩原(問)0287-60-7227
長野 千石劇場(問)026-226-7665
岩手 一関シネプラザ(問)0191-23-2902
11月13日(土)より~
埼玉 川越スカラ座(初日監督挨拶あり。)(問)049-223-0733
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