同じ劇場で毎日、違う演目がかかっているという夢のような日々に終焉が見えてきた。
今思えば遠い昔のような『CRUISING GENTLEMEN』初日の話。
その「男」はふと気付くと、いつもすぐ側にいた。
舞台袖では、出ハケ口から垣間見える舞台の一部分しか見えないのに。
裏に回ればモニター越しに全容を目に収めることが出来るのに。
何をするわけでもない。
ただ、壁により掛かり腕を組み、じっと自分の数m先の地面を見つめ、動かない。
ひょっとしたら転換の準備のために早めにスタンバイしているのかと思った。
しかし、明らかに転換のない所でも、袖で同じ姿勢を取っていた。
出番の前の役者の、コンディションに配慮してか、
目が合うことはなかった。
ただ、そこにいる。
そして、全身の意識はおそらく舞台上に飛んでいた。
モニターを通しての視界、マイクを通しての音声。
そんな間接的なものではなく、
舞台の空気を、息づかいを肌で感じているのか。
それどころか、舞台上に「いる」のではないかとすら感じた。
ある場面の出の直前、振り返ると彼がいた。
ふと、その意識が全て僕に向けられているように感じた。
その瞬間、理屈では分かっていた筈のことを、感覚として改めて理解できた。
一生の内で、「かけがえのない作品」にどれだけ出会えるだろうか。
今までも、これからも。
この先出会うだろう、沢山の「かけがえのない作品」。
その道の最初の「作品」。
そこに注がれた並々ならぬ想い。
形を変え、規模を変え、役者を変えて上演される、
その「男」にとっての「かけがえのない作品」。
もしかしたらそんなつもりで袖にいたのではないかもしれないし、
僕が勝手に諸々受け取っちゃっているのかもしれないが
彼はその時、出番がなくても確実に舞台上に「いた」。
彼に倣って、柄にもなく、出番のない時に袖の目立たないところに座り込んでみた。
見回すと、彼もやっぱりそこにいた。
舞台上で言葉を交わすことも、
目を合わせることもないけど
彼らとも一緒に同じ舞台を作り、
彼と一緒に同じ役を演じている。
彼と一緒に写真を撮った。
記念としてではなく、この想いを忘れないように。
力と想いを受け取りました。ありがとう。
あと3ステージ。
一緒に届けていきましょう。
よろしく。
今思えば遠い昔のような『CRUISING GENTLEMEN』初日の話。
その「男」はふと気付くと、いつもすぐ側にいた。
舞台袖では、出ハケ口から垣間見える舞台の一部分しか見えないのに。
裏に回ればモニター越しに全容を目に収めることが出来るのに。
何をするわけでもない。
ただ、壁により掛かり腕を組み、じっと自分の数m先の地面を見つめ、動かない。
ひょっとしたら転換の準備のために早めにスタンバイしているのかと思った。
しかし、明らかに転換のない所でも、袖で同じ姿勢を取っていた。
出番の前の役者の、コンディションに配慮してか、
目が合うことはなかった。
ただ、そこにいる。
そして、全身の意識はおそらく舞台上に飛んでいた。
モニターを通しての視界、マイクを通しての音声。
そんな間接的なものではなく、
舞台の空気を、息づかいを肌で感じているのか。
それどころか、舞台上に「いる」のではないかとすら感じた。
ある場面の出の直前、振り返ると彼がいた。
ふと、その意識が全て僕に向けられているように感じた。
その瞬間、理屈では分かっていた筈のことを、感覚として改めて理解できた。
一生の内で、「かけがえのない作品」にどれだけ出会えるだろうか。
今までも、これからも。
この先出会うだろう、沢山の「かけがえのない作品」。
その道の最初の「作品」。
そこに注がれた並々ならぬ想い。
形を変え、規模を変え、役者を変えて上演される、
その「男」にとっての「かけがえのない作品」。
もしかしたらそんなつもりで袖にいたのではないかもしれないし、
僕が勝手に諸々受け取っちゃっているのかもしれないが
彼はその時、出番がなくても確実に舞台上に「いた」。
彼に倣って、柄にもなく、出番のない時に袖の目立たないところに座り込んでみた。
見回すと、彼もやっぱりそこにいた。
舞台上で言葉を交わすことも、
目を合わせることもないけど
彼らとも一緒に同じ舞台を作り、
彼と一緒に同じ役を演じている。
彼と一緒に写真を撮った。
記念としてではなく、この想いを忘れないように。
力と想いを受け取りました。ありがとう。
あと3ステージ。
一緒に届けていきましょう。
よろしく。