アモルの明窓浄几

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「大飯原発」再稼働決まる

2012年06月18日 | まちのこと
政府は16日、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を正式に決めました。
野田佳彦首相が再稼働について『政府の最終的な判断とする』と表明、それを受けて、関西電力の八木社長は『原子力の安全・安心を確保しながら、お客様や世界の皆様のご期待にお応えするためにも、安全を最優先に一歩一歩慎重に再稼働を進めてまいりたいと考えています』と安全最優先を強調し、運転再開のための作業に入りました。
又、八木社長は『ぜひぜひ引き続き、安全が確認されたプラント(発電所)は再稼働させて頂きたい』と要望する事も忘れていませんでした。

皆さんがご存知のこの件をあえて今回取り上げたのは、野田佳彦首相の8日夕の記者会見での全発言を聞いて頂き、国政に携わる者の発言の重さを確認して頂きたいからです。
全発言文を下記に掲載しますが、次の「首相官邸」hpからも動画(10分程度)で、ご覧になれます。野田佳彦首相の顔を見ながらお聞きになるのもよいかと思います。
→ http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/2012/0608.htm

大飯原発再稼働と云った重大な決断をしたにも拘らず、野田佳彦首相は16日に「判断した」理由を自らの言葉で正式表明しませんでした。すべては8日の記者会見で述べているとの事がその理由のようです。

8日の表明発言の趣旨を私なりに首相の言葉を借りて整理すると、下記の様になります。
国民生活を守る。それがこの国論を二分している問題に対して、私がよって立つ、唯一絶対の判断の基軸であります。
② その具体的に意味するところは2つあります。
国民生活を守ることの第1の意味は、次代を担う子どもたちのためにも、福島のような事故は決して起こさないということであります。福島を襲ったような地震・津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています。これまでに得られた知見を最大限に生かし、もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています。
③ 国民生活を守ることの第2の意味、それは計画停電や電力料金の大幅な高騰といった日常生活への悪影響をできるだけ避けるということであります。豊かで人間らしい暮らしを送るために、安価で安定した電気の存在は欠かせません。これまで、全体の約3割の電力供給を担ってきた原子力発電を今、止めてしまっては、あるいは止めたままであっては、日本の社会は立ち行きません。
④ そうした事態を回避するために最善を尽くさなければなりません。夏場の短期的な電力需給の問題だけではありません。化石燃料への依存を増やして、電力価格が高騰すれば、ぎりぎりの経営を行っている小売店や中小企業、そして、家庭にも影響が及びます。空洞化を加速して雇用の場が失われてしまいます。そのため、夏場限定の再稼働では、国民の生活は守れません。

上記の太文字部分は、私によるものです。
①の『国民生活を守る』と云うフレーズはたびたび出てきます。マスコミの見出しにもこれが使われていますね。
②では、「安全性」が担保されているかのように言い切っています。マスコミ等の論調を見ると、当然ですがこの点に多く触れています。「暫定的安全基準」を前提とした安全性という事のようです。福島原発事故を踏まえた防災対策の見直しが無いままに、地震の時に必要な免震重要棟やフィルター付きベント装置の設置なども4年後に先送り、防波堤のかさ上げは2年後、オフサイトセンター見直しもこれからとの事です。
朝日新聞(6/17付)は、「大飯原発の再稼働で、政府が確認した安全性は『福島第一原発事故と同規模の地震や津波でも燃料損傷事故を起こさない』ということだけで、それを超える災害やテロは想定していない」と指摘していますが、そもそも大飯原発にどの様な地震や津波が襲う危険があるのかが解明されていません。解明されていないと云うのは、活断層ひとつをとってみても関電と専門家との間に大きな隔たりがあるからです。この点や炉心損傷などについては次回報告します。
③や④は、殆ど「脅し」ですね。同じく朝日新聞によると、「電力業界が再稼働に積極的になる背景には、電力不足の解消とは別に、経営上の懸念もある。各社はすでに、原発停止を補う火力発電の燃料費の急増などで、経営状態が急速に悪化。多くが2012年3月期決算で赤字となった」と伝えています。
原子力を全て停止しても、火力と水力を合わせた発電能力で最大電力を賄えてきた事が、国の統計データで証明されています。この件も次回紹介します。

最後に朝日新聞(6/2付)の「耕論」より、お二人の発言を掲載します。
先ず、京都大学教授の植田和弘氏は「関電幹部は大飯原発を再稼働させたい理由について『夏場に電力が足りないから』とは決して言いません。『安全だから』動かすと言う風に言うんです」と述べています。そして、「原子力を基幹電源として維持し、電力会社の経営を助けたい。経済界から出ているそんな声に今、政府が懸命に応えようとしているようにしか見えません」と云います。さらに原子力そのものについて、「私はごみ問題から環境経済学の道に入りました。学んだ一番の基本は、廃棄物の最終処分ができない技術は生産の資格がないということです」と締め括っています。
これに関連した、老朽化した原発の解体や処理については、2010年4月11日付の当ブログで簡単に触れています。

お二人目の小田原箱根商工会議所副会頭の鈴木悌介氏は「私たち商売人は銭勘定、損得で動きます。政府が『原発は再稼働させない』とはっきり宣言すれば一斉にソロバンがはじかれ、市場が動いたはずです。(中略)省エネ効果の高い製品開発にも力が入るでしょう。その結果、総電力使用量は下がるし、新しいビジネスチャンスも生まれる。なのに易きに流れる政府がその芽をつんでいる」と指摘しています。

最初に述べましたが、今回は政治家の言葉の重みを感じ取って頂ければと思います。

【野田総理発言】
 本日は大飯発電所3、4号機の再起動の問題につきまして、国民の皆様に私自身の考えを直接お話をさせていただきたいと思います。
 4月から私を含む4大臣で議論を続け、関係自治体の御理解を得るべく取り組んでまいりました。夏場の電力需要のピークが近づき、結論を出さなければならない時期が迫りつつあります。国民生活を守る。それがこの国論を二分している問題に対して、私がよって立つ、唯一絶対の判断の基軸であります。それは国として果たさなければならない最大の責務であると信じています。

 その具体的に意味するところは2つあります。国民生活を守ることの第1の意味は、次代を担う子どもたちのためにも、福島のような事故は決して起こさないということであります。福島を襲ったような地震・津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています。これまでに得られた知見を最大限に生かし、もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています。

 これまで1年以上の時間をかけ、IAEAや原子力安全委員会を含め、専門家による40回以上にわたる公開の議論を通じて得られた知見を慎重には慎重を重ねて積み上げ、安全性を確認した結果であります。勿論、安全基準にこれで絶対というものはございません。最新の知見に照らして、常に見直していかなければならないというのが東京電力福島原発事故の大きな教訓の一つでございました。そのため、最新の知見に基づく30項目の対策を新たな規制機関の下での法制化を先取りして、期限を区切って実施するよう、電力会社に求めています。
 その上で、原子力安全への国民の信頼回復のためには、新たな体制を一刻も早く発足させ、規制を刷新しなければなりません。速やかに関連法案の成案を得て、実施に移せるよう、国会での議論が進展することを強く期待をしています。

 こうした意味では、実質的に安全は確保されているものの、政府の安全判断の基準は暫定的なものであり、新たな体制が発足した時点で安全規制を見直していくこととなります。その間、専門職員を要する福井県にも御協力を仰ぎ、国の一元的な責任の下で、特別な監視体制を構築いたします。これにより、さきの事故で問題となった指揮命令系統を明確化し、万が一の際にも私自身の指揮の下、政府と関西電力双方が現場で的確な判断ができる責任者を配置いたします。
 なお、大飯発電所3、4号機以外の再起動については、大飯同様に引き続き丁寧に個別に安全性を判断してまいります。

 国民生活を守ることの第2の意味、それは計画停電や電力料金の大幅な高騰といった日常生活への悪影響をできるだけ避けるということであります。豊かで人間らしい暮らしを送るために、安価で安定した電気の存在は欠かせません。これまで、全体の約3割の電力供給を担ってきた原子力発電を今、止めてしまっては、あるいは止めたままであっては、日本の社会は立ち行きません。
 数%程度の節電であれば、みんなの努力で何とかできるかもしれません。しかし、関西での15%もの需給ギャップは、昨年の東日本でも体験しなかった水準であり、現実的には極めて厳しいハードルだと思います。

 仮に計画停電を余儀なくされ、突発的な停電が起これば、命の危険にさらされる人も出ます。仕事が成り立たなくなってしまう人もいます。働く場がなくなってしまう人もいます。東日本の方々は震災直後の日々を鮮明に覚えておられると思います。計画停電がなされ得るという事態になれば、それが実際に行われるか否かにかかわらず、日常生活や経済活動は大きく混乱をしてしまいます。
 そうした事態を回避するために最善を尽くさなければなりません。夏場の短期的な電力需給の問題だけではありません。化石燃料への依存を増やして、電力価格が高騰すれば、ぎりぎりの経営を行っている小売店や中小企業、そして、家庭にも影響が及びます。空洞化を加速して雇用の場が失われてしまいます。そのため、夏場限定の再稼働では、国民の生活は守れません。

 更に我が国は石油資源の7割を中東に頼っています。仮に中東からの輸入に支障が生じる事態が起これば、かつての石油ショックのような痛みも覚悟しなければなりません。国の重要課題であるエネルギー安全保障という視点からも、原発は重要な電源であります。
 そして、私たちは大都市における豊かで人間らしい暮らしを電力供給地に頼って実現をしてまいりました。関西を支えてきたのが福井県であり、おおい町であります。これら立地自治体はこれまで40年以上にわたり原子力発電と向き合い、電力消費地に電力の供給を続けてこられました。私たちは立地自治体への敬意と感謝の念を新たにしなければなりません。

 以上を申し上げた上で、私の考えを総括的に申し上げたいと思います。国民の生活を守るために、大飯発電所3、4号機を再起動すべきというのが私の判断であります。その上で、特に立地自治体の御理解を改めてお願いを申し上げたいと思います。御理解をいただいたところで再起動のプロセスを進めてまいりたいと思います。
 福島で避難を余儀なくされている皆さん、福島に生きる子どもたち。そして、不安を感じる母親の皆さん。東電福島原発の事故の記憶が残る中で、多くの皆さんが原発の再起動に複雑な気持ちを持たれていることは、よく、よく理解できます。しかし、私は国政を預かるものとして、人々の日常の暮らしを守るという責務を放棄することはできません。

 一方、直面している現実の再起動の問題とは別に、3月11日の原発事故を受け、政権として、中長期のエネルギー政策について、原発への依存度を可能な限り減らす方向で検討を行ってまいりました。この間、再生可能エネルギーの拡大や省エネの普及にも全力を挙げてまいりました。
 これは国の行く末を左右する大きな課題であります。社会の安全・安心の確保、エネルギー安全保障、産業や雇用への影響、地球温暖化問題への対応、経済成長の促進といった視点を持って、政府として選択肢を示し、国民の皆様との議論の中で、8月をめどに決めていきたいと考えております。国論を二分している状況で1つの結論を出す。これはまさに私の責任であります。

 再起動させないことによって、生活の安心が脅かされることがあってはならないと思います。国民の生活を守るための今回の判断に、何とぞ御理解をいただきますようにお願いを申し上げます。
 また、原子力に関する安全性を確保し、それを更に高めていく努力をどこまでも不断に追及していくことは、重ねてお約束を申し上げたいと思います。
 私からは以上でございます。


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