アモルの明窓浄几

芦屋・仕舞屋・三輪宝…生噛りの話題を机上で整理します。

旧山邑邸について

2007年03月21日 | まちのこと
旧山邑邸は、現在ヨドコウ迎賓館として又、国の重要文化財に指定されていることから広く一般に知られており、ここで改めて取り上げる必要もないのですが、是非触れておきたい事があります。

前回、私は初心に戻るときなどに此処を訪れるといいましたが、建物の中に入ることはめったにありません。勿論建物は素晴らしく何度も観てはいるのですが、今は空間を味わうために立ち寄るといったところです。阪急芦屋川駅側の芦屋川を少し北に行くと開森橋があります。開森橋から北の小高い丘陵地を望むと、稜線に沿って建っているのが旧山邑邸です。

ここから通称ライト坂を北に上がって行くのですが、この間は音楽でいう序奏にあたるでしょう。
ライト坂から構内に入ると、なだらかなアプローチが誘ってくれます。右手に外壁を写してはいるのですが、まだ玄関は現れません。しかし、まもなく大谷石のフラワーポットが現れ車寄せの入口が観えてきます。車寄せの側まで来れば、暫し佇んで下さい。

車寄せ入口の低い庇と上部2階応接室の大窓更に隣の給湯室の小窓のディテールに深い軒の出のファサードが側のフラワーポットと合間って、ライト特有の空間を醸し出しています。是非、この癒しの空間に身を委ねてみて下さい。

F.L.ライトは、基本設計のみで、工事の着工(1923年)を待たずして帰国(1922年)しています。
実施設計と工事監理は、愛弟子の遠藤新と南信両氏が引き継ぎ行ったそうです。
因みに、遠藤新は”東の帝国ホテル”、”西の甲子園ホテル”と並び称された旧甲子園ホテル(現・武庫川学院甲子園会館)を設計しています。

どちらも見学が出来ますので是非、訪れて下さい。どのような解説よりもその空間に身をおくことが作品を理解する最良の方法でしょう。

F.L.ライトは、1867年生まれなので、旧山邑邸が完成(1924年)した時は、57歳になります。
実は、かの有名なカウフマン邸(落水荘)、ジョンソン・ワックス本社ビル、グッゲンハイム美術館などは、この年代以降のものです。山口由美氏によると、「76歳から92歳までの16年間で、それまでの人生に手がけてきたのと同じだけの仕事をしたというのは、驚異的である。」といっています。要するに、1959年に亡くなるまでの16年間に500近くのプロジェクトを手がけたというのです。
今、我が国では『団塊の世代』の第2の人生設計が話題になっていますが、勇気づけられる話ではないでしょうか。


最新の画像もっと見る