アモルの明窓浄几

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「次長課長」で思うこと

2012年05月28日 | 万帳報
人気お笑いコンビ「次長課長」の河本準一さんの母親が生活保護を受給していた事で、謝罪会見をTVメディアが挙って取り上げ、揚句に、自民党の片山さつき参院議員がこの件で国会内にて記者会見を開いていたのには驚きました。

片山氏は「自民党に対して、この問題の追及を弱めないでほしいという反響がすごいんです。マジメに働いて、税金を納める気がしないというような類型がたくさん来ている。こういった類型に、きちっと穴を閉じていくような法改正、提言を自民党が他党に先駆けて打ち出したい」と発言。TV局の取材に対しては、不正受給者がいないか、地域で監視しなければならないと云った趣旨の発言まで飛び出していました。
「正直者がバカをみる社会ではいけないんです」と、問題追及の急先鋒者としての面目躍如と云ったところでしょうか。

当ブログ(4/16日付)でも紹介しました、生存権訴訟の原点である朝日茂さんのお兄さんは、今日にタイムスリップしたならば、河本準一さんの様にカメラの前で謝罪会見をする事になるのでしょうか。

これを受けての事なのか、スピーディ(SPEEDI:緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)は、スピーディー(SPEEDY)に運ばなかったが、25日の衆院社会保障と税の一体改革特別委員会で、小宮山洋子厚生労働相は、生活保護費の支給水準引き下げを検討するとスピーディーに表明しました。更に、生活保護の受給開始後に親族が扶養できると判明した場合は、積極的に返還を求めると共に、正当な理由もなく扶養を拒む場合には「家庭裁判所への調停申し立て手続きの積極的な活用を図る」と述べました。

勿論、私は不正受給を認めているわけではありません。念のために。
扶養義務は、三親等(叔父や甥など)にまで適用されるとの事ですが、首都大学東京の岡部卓教授(社会福祉学)は「近年は扶養意識が変化していて『積極的に助けよう』というケースも少ない。受給者自身が親族に知られたくないという意識もあるが、生活保護申請に至るまですでに親族と軋轢(あつれき)を抱えていることもあり、助けてもらえないことも多い」(産経新聞5/25付)と云う。

だから今回の件を、一般論に広げ一緒くたに論じるのは如何なものでしょう。
又、実名報道は行き過ぎではないのでしょうか。
扶養は当事者間の話し合いで決めて行くものでしょう。河本準一さんも役所側と、その方向で進めていたのではないのでしょうか。

河本準一さんの事に深く入り過ぎましたが、私の関心(驚いた)事は、実は片山さつき議員の発言が、橋下徹大阪市長からの流れに沿うものだと感じているからです。
5月21日にも福岡市の高島宗一郎市長が、飲酒による職員の不祥事続きに、全職員一か月の自宅外禁酒を決め、懲戒処分の基準も厳しく見直しをするとの「禁酒令」が話題になりました。
22日付朝日新聞紙上で、畑山敏夫佐賀大学教授(経済学)は、「公務員に厳しい『世間の声』を背景に、職員を締め上げに走る点は、大阪市の入れ墨調査にも共通している。気になるのは、リーダーシップを掲げる首長がためらいなくこうした行動に踏み切る風潮だ。市民が職員の飲酒を監視し、通報する。そんな息苦しい事態も懸念せざるを得ない」と云います。

産業能率大学の調べによると、春の新入社員の理想の男性上司として、橋下徹氏が一位に選ばれました。理由は「リーダーシップがありそう」が七割を占め、「自ら引っ張る行動力に期待が集まった」との事でした。(朝日新聞4/20付)

内田樹神戸女学院大学名誉教授は、先の大阪市長・大阪府知事両選挙の結果について次のように語っています。「有権者は政策の内容を見て、その適否を吟味して投票したわけではありません。『社会を変える』という言葉に期待を託したのです。(中略)市職員や教員たちがその『特権』なるものを奪われて右往左往するさまを見る『嗜虐的な愉楽』だけは、間違いなく新しい二人の首長たちが『弱者』たちに提供してくれるものです。(中略)『苦しむ者に取り敢えず何の救いももたらしはしないが、苦しむ者の頭数だけは増える』という政策に有権者たちは支持を与えたのです」。(週刊金曜日2011.12/9号)

片山さつき議員の不正受給者がいないか、地域で監視しなければならないと云った趣旨の発言は、これらの延長線上にあるのではないでしょうか。


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