アモルの明窓浄几

芦屋・仕舞屋・三輪宝…生噛りの話題を机上で整理します。

「孤立死」とは何だ

2012年03月26日 | 万帳報
3月20日のNHKテレビ「追跡!真相ファイル」をご覧になった方も多いと思いますが、そうでない方に簡単にご紹介します。
北海道滝川市から都会の札幌に移り住んだ姉妹が相次いで亡くなった『孤立死』事件。
42歳の姉は病死し、後を追うように40歳の知的障害者の妹は凍死する。その死に誰も気付かなかったと云う。
番組は、助けを求める姉妹の声が届かない『生活保護の現実』、『行政の縦割り』、思わぬ壁になっていた『個人情報保護法』、これらを追跡する。

『孤立死』とは、内閣府の高齢社会白書(2010年版)では「誰にもみとられることなく息を引き取り、その後、相当期間放置されるような悲惨な孤立死(孤独死)」と表現され、朝日新聞の「主張」によると、「近隣の人たちにも気付かないうちに自宅で亡くなり長期間たって発見される『孤立死』や『孤独死』」と呼ばれる。

姉は区役所の生活保護の相談窓口へ出かけている。生活保護を受けるには『懸命なる求職活動』が必要だと担当者に言われ、「自分は生活保護の条件を満たしていない。まだまだ仕事探しをがんばらいといけない」と友人に話していた。

遺品のノートには、びっしりと求職活動の記録が残っていた。預金通帳の最後の記載は、平成23年12月15日付の残高3円。電気・ガスが止められ暖房のない真冬の札幌で、姉は脳内血腫で病死する。

姉は区役所の生活保護窓口へ3回相談に行っており、面接受付票には、所持金千円、ライフライン滞納あり、国民健康保険未加入と記載、窓口は生活保護受給資格が有る事を認識していたにも関わらず、「本人が保護申請の意思を示さなかった」事を理由に放置する。
更に、妹が知的障害であることも知りながら、その情報は障害福祉に共有されなかった。
元検察官の堀田力氏は、「孤立死を個人情報保護法が強いている」と云う。
姉の死を追うように凍死した妹の携帯電話には、「111」の発信記録だけが残っていた。
姉妹の遺体は、今年の1月20日に発見されている。

先月13日に発見された東京都立川市での母子孤立死事件でも、45歳の母親は、知的障害のある4歳男児を抱え、同市の障害福祉課、子育て推進、保育、健康推進の各課へ相談していた。札幌市の姉妹と同じく、誰にも何処にも相談せずに孤立していたわけではない。
又、今月7日に発見された同じく立川市の都営住宅に住んでいた親子は、娘63歳、認知症の95歳の母を介護していた。「うちの収入は年金だけなので、(介護サービスは)無理。自分で頑張る、と言っていた」と云う。
ジャーナリストの竹信三恵子さんは、「女性が家計を支える世帯に貧困が集中している」と云う。

朝日新聞の「主張」(3/17日付)では、「死後4日以上経過して遺体が見つかった65歳以上の高齢者は年間1万5,600人にものぼります。毎日約40人の高齢者が誰にみとられることもなく息を引き取る社会は、普通ではありません。(略)孤立死・孤独死が増え続ける背景にあるのは、貧困問題の急速な進行です」と云う。

京都府宇治市では、生活保護の申請に来た人に人権侵害とも受け取れる「誓約書」に署名・押印をさせていた事が、日本共産党の宮本繁夫市会議員の市議会追及で明らかになった(しんぶん赤旗3/20日付)。
例えば、「母子世帯には『異性と生活を伴にしない』、『妊娠・出産したら保護に頼らず養育する』ことなどを約束させています」と云う。又、「生活保護費削減のために積極的に就労活動を行い」などは、札幌市の姉妹に対する「生活保護を受けるには懸命なる求職活動が必要」となんらかわらない。
生活保護が最後のセーフティーネットになっていないことが明らかになりました。

NHKテレビ「追跡!真相ファイル」は、地域での「見守り」に解決策を見出そうとしているが、それは本質の解決にはならないだろう。路上生活者等の単身者に止まらず、家庭(家族)に侵食している現状の問題は、非正規労働者を含めた雇用の不安定さと貧困にある。

先に紹介した竹信三恵子さんは、「そこに『孤立死』と云う名が貼り付けられれば、『人間関係の希薄さ』に問題がすり替えられ続け、地域の監視体制ばかりが強化されていくだろう」と云う。そして、「そんな事態を防ぐために、まず叫ぼう。『孤立死って言うな、貧困死と言え』と。

『貧困死』と認識すれば、貧困対策をすればよい。
貧困対策なら、直ぐにでも出来る簡単な方法がある。



最新の画像もっと見る