クラシック音楽徒然草

ほぼ40年一貫してフルトヴェングラーとグレン・グールドが好き、だが楽譜もろくに読めない音楽素人が思ったことを綴る

モーツァルト 「レクイエム」鈴木優人指揮BCJ@2022.10.28 所沢アークホール

2022-11-03 17:20:39 | 演奏会感想

本日の曲目は
 交響曲第39番 変ホ長調 K.543
 レクイエム ニ短調 K.626
アンコールとして 「アヴェ・ヴェルム・コルプス」 ニ長調 K.618

レクイエムの独唱者は
 森麻季(Sop) 藤木大地(Alt)櫻田亮(Ten)ドミニク・ヴェルナー(Bas)
でした。

最初に優人さんが出てきてあいさつ。
レクイエムと組み合わせる曲は「魔笛」と同じ変ホ長調ということで39番にしたとのこと。
レクイエムはアーメン・フーガ付の鈴木優人版。
基本はジュスマイヤー版だがアイブラーの補筆も取り込んだそうで、ランドン版にスタンスが似ている。
アーメン・フーガが書かれていた楽譜は、上半分にレクイエムに関するメモ書き、下半分にフーガが書かれているそう。
ならばこのフーガはレクイエムのために書かれた可能性が非常に高い。
モーツァルトはラクリモサ、すなわちセクエンツィア全体を壮麗なフーガで締めくくるつもりだったのは間違いない。

演奏はたいへん素晴らしかったです。
39番は木管楽器が活躍するが、ファゴットの音色がとりわけ鄙びていてなんだか癒し系。演奏は大変そうですが。
第2楽章はシリアスな弦楽器群とほんわかした管楽器群が対照的で面白かった。
第3楽章は遊び心たっぷり。クラリネットが遊んだトリオからダ・カーポする時の一瞬のゲネラル・パウゼは意表をつかれて思わず(笑)。
第4楽章展開部の激しい転調もやりようによっては激烈な雰囲気になるでしょうが、あくまで上機嫌。
とにかく人生すばらしい、と思えてくるところがモーツァルトなのです。

「レクイエム」もどこか明るさが感じられた。
視点が「彼ら」から「私」に転じるCum vix justusやsalva meは胸が締め付けられるところだが、そうでもない。
まだ39番の気分が残っていたのかな?
Recordareもしゃかしゃか進んで、焦点はLacrimosaとアーメン・フーガにあったようだ。
アーメン・フーガは短かったが、特にバスが雄弁でバロック的。
最後の年にK.608のような凄いフーガを自動オルガンのために書いたモーツァルトである。
もしレクイエムを完成していたら、壮麗なフーガが展開されていたに違いない。

レクイエムの後に「アヴェ・ヴェルム・コルプス」を演奏していただけたのはたいへん良かった。
モーツァルトはレクイエムの終曲にどのような曲を考えていたのだろうか?
キリエのフーガをそのまま使うのはあり得ないと思う。
冒頭が再帰しても、その後はニ長調に転じて永遠の安息を与えてくれる静かな終わりにしたはずだ。
「アヴェ・ヴェルム・コルプス」はニ長調だし、果たされなかった終曲をイメージできるわけです。

BCJはすでにバッハの全カンタータ録音という偉業を成し遂げた。
次はアーノンクールのようにモーツァルトに大進出して、全宗教音楽の演奏・録音にまい進してほしい。
もちろん場所は所沢で、というのがわたくしの我田引水的希望であります。
ピアノ・フォルテとともに演奏するピアノ協奏曲も聴いてみたいなあ~~

(追記)
本公演の2日後の東京公演のライブ動画がYouTubeで公開されていました。(現在は非公開)
演奏は所沢公演よりこなれていて、レクイエムのRecordareなど情感がグッと増しているように感じました。
Ne perenni cremer igni の哀願も痛切。
「アヴェ・ヴェルム・コルプス」はやっぱり素晴らしい。





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