不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Angeli di Citta'

2004-06-08 00:53:35 | うんちく・小ネタ
「そらいろのドア」~その人の愛読書

「りんぐりんく」~人間観察2

ぐるぐるぐるぐるまわってまわって
「くらぶアミーゴblog」~フリー・フローティング~に
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道路といわず広場といわず、
ちょっとした場所にマイスペースを確保して暮らす人々。
フィレンツェの街にも結構たくさんのSenza Tettoな人々がいます。
短期でフィレンツェから姿を消す人、
フィレンツェ市内でも頻繁に場所を変えている人、
そして長年いつも同じ場所で集っている人々。
その暮らしの形は様々。

話は遡って11年前。
演劇関係のイタリア人
Paolo Coccheri(パオロ・コッケリ)氏が主催して
la Ronda della caritaという慈善団体が発足。
発足当時は主催者自身が夜な夜な薄暗い通りを歩いては
路上生活者をたずねてまわったのだそう。
そうして彼らの生活を知り、彼らの叫びを聞き
できることから手を貸していく。
なかなかできることじゃない。
やがてこの団体に付随するようにして
Angeli di citta'と呼ばれるボランティア活動が開始。
この活動にはフィレンツェの若者も多く参加していて、
この辺が「イタリア」だなと感じたりもします。
基本的にボランティア活動が活発な国です、イタリア。

ちょうどla Ronda della caritaの発足から10年経った昨年10月。
パオロ・コッケリ氏は新たなアイディアを提案。
バール経営やレストラン経営をしている友人に声をかけ
路上で暮らす人々に朝のコーヒーのサービスを開始。
システムは古くナポリで受け継がれてきた
Caffe sospesoというやり方。
にくいシステムなんですよ、これが。
普通にバールに行ってコーヒーを飲むのですが、
このとき二杯分を支払って、自分は一杯だけ飲む。
そして残りの一杯分は、そう、誰かが無料で飲むことができる。
これを呼びかけて、路上で生活する人々のためにコーヒーを確保。
素敵なことですよね。

そして毎週水曜日のお昼には
旅先へ向かう、もしくはフィレンツェに降り立った観光客で賑わう
フィレンツェ中央駅の大時計の下に
ぞろぞろと路上生活者が集まってきます。
ボランティアグループAngeli di citta'がお昼ご飯の提供。
バールやレストランでの残り物を集めてのお昼ごはん。
売り物としては出すことができなくなったけれど、
捨てるわけにはいかない食べ物たち。
そういうものに混じって、中には
このサービスのためにわざわざ用意される
数十人分の温かい料理も。
これを提供しているのはフィレンツェの共和国広場にある
カフェCaffe Giubbe Rosse。
ジュベ・ロッセは昔から芸術家が集まって
熱い議論を傾けるので有名なカフェです。
なかなか粋な計らいをするものだと思います。

これ以外にも街外れの、ある建物では内部を改修して
路上生活者や生活に苦労している人々のために毎日お昼を用意。
なんと毎日300人以上の人が
お腹をすかせて集まってくるのだそうです。

夜になればなったで20時頃から
そろそろシャッターを閉めようかという、
昼だけ営業するバールやカフェなどをボランティアが周り歩いて、
やはりその日の残りを回収。
これを集めて今度はカンポ・ディ・マルテの駅へ。
20:30から夕食の振る舞いが始まるのです。

こういった活動が、地道に、しかし確実に
受け継がれて続けられています。
恥ずかしながら、
私の知らない世界がここにもあるわけです。


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
>ロココさん (albero4)
2004-06-08 13:48:51
>ロココさん
ほんの小さな気遣いで
誰かと小さな幸せを分かち合える。
人間の基本なんでしょうけれどね、忘れがちです。
世界には、本当にいろんな生き方がありますよね。
さて自分はどんな生き方ができているのか。
考えさせられることがたくさんありますよ。

>まゆみーなさん
ね、素敵だよね。
それに我々でもできそうなところが。
Caffe Giubbe Rosseに
私は深夜2時頃に出没したりはしないので(笑)
知らなかったけれど、そうだったのね。素敵。

>キヨミーナさん
そう、日本のコンビニ、ファミレスなどの
あの処分はどうかと思うよね。
うちもその昔コンビニだった時代、
父は本当に心を痛めてましたよ。
だって彼自身は食べ物の不自由な時代に育ち
目の前には明日の食べ物に困る人々がいるのに
みすみすまだ食べられるものを
捨てなくちゃいけないのだもの。
何とかならないのかしらね。
それにしてもS氏の本棚、
すばらしい輪廻転生続けているのね。いい話。

>j-tentenさん
そう、今の時代はモノが溢れすぎてしまって
分かち合うことをする前に自分のものを手に入れてしまう。
寂しいことではありますよね、便利だけど。
イタリアのこうした土台には、確かに宗教心もあります。
貴族社会の名残も多少はあるかもしれないですよね。
私はそういったものが本当に複雑に絡み合って出来た
国民性だと思いますよ。
困っている人は助けてあげようっていうのが
普通にできる人たち。
でも外国人だとそういう枠から外れることもしばしばで
それを感じると辛いですけどね。

>Mさん
私もパン屋さんで働いていたときは
たくさん持って帰りましたよ。
その頃はまだ今ほど「衛生問題」とかうるさくなかったし。
日本の基準はいつも厳しすぎるよねと思います。
確かに持ち帰ったものを食べたことで
食中毒などが発生したら一大事ですが
普通に買って帰ったパンだって
家で2.3日放置されているんだから、
問題ないと思うんですけどね。

>ハヤトさん
また素敵な話につなげてもらえて嬉しいです。
なんだかとても幸せな気分。

>Doraねえさん
救急隊員にスカウトされたの?
いろんなこと経験しているねぇ。
私もスカウトされてみたいぞ!
ボランティアの根付いた国です、イタリア。
返信する
ここは、キリスト教の国ですね (ODRA)
2004-06-08 13:06:14
ここは、キリスト教の国ですね

ボランティア活動であふれていますよね

救急車の隊員たちも、
みんなボランティアの若者だしね

私も救急隊員に誘われたことがあるけれど
あの、乱暴な運転では車酔いするわ・・・
と尻込みしました(笑)

返信する
いいねいいね。とっても粋なことをする。 (ハヤト)
2004-06-08 08:02:35
いいねいいね。とっても粋なことをする。
ぐるぐる~っと一周したのはみんなの思いを集めた立派なトリップでしたね♪
今度は“粋”でちょっと小話しトラックバックしようっと。
返信する
>できることから手を貸していく。 (M)
2004-06-08 06:54:12
>できることから手を貸していく。
>古くナポリで受け継がれてきた Caffe sospeso

すばらしいですね。(受け継ぐ人も受け継いでいく人も)

私は今なにができるか?考えたくなりました。
学生の頃パン屋で働いていた時、やはり残ったパンは1日で捨ててしまうので店員だった私は辛かったです。
その頃学生だったので、できるだけ持って帰って学校の友達にあげたらたいそう喜ばれました。お金がない学生のころは、いろいろ工夫していたのかもしれません。
返信する
いいな、イタリア。 (j-tenten)
2004-06-08 05:40:52
いいな、イタリア。
人は、貧しいほうが他人に優しくなれる、貧しい人のほうが分かち合えると思ったことがありました。後は、助け合うのは当たり前と言う空気なのかなあ。バックにあるのは、宗教心ですか?貴族社会の名残ですか?国民性、なのかな?また、albero4さんの見解を教えてください。
返信する
ジュベ・ロッセはそういうことやってたのですね。 (キヨミ~ナ)
2004-06-08 03:58:13
ジュベ・ロッセはそういうことやってたのですね。
すばらしいわ。
日本はコンビニやその他多くのレストランや食品店が
毎日大量に食料を捨てていますよね。
もったいない。

「そらいろのドア」~その人の愛読書~
に似た話ですが、
ある日、うちのアパートの前に並ぶ大量のごみ容器の近くに
Sが子供の頃使っていたという本棚が捨てられていました。
その本棚はお父さんが木で作ったもので、たいそう気に入っていたらしいのですが、Sが大きくなってからのある日、お母さんがご近所さんにあげてしまったらしいのです。
Sは「~さん、こんなに長い間使っていたんだ、でもまだ使えるよ」と言い、買い物に出かけるところだった私たちは、「戻ってきた時にまだそこにあれば、もって帰ろうか」などと話していました。しかし、戻ってみるとごみ収集はまだ来た様子もないのに、木の本棚はなくなっていました。
誰かもっていったんだねぇ。
こうやって、この本棚はずっと誰かの役に立っているのだと思う。

他に、捨てたのに何度も見かける靴の話もあるけどまた今度。
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>普通にバールに行ってコーヒーを飲むのですが、 (まゆみーな)
2004-06-08 03:22:24
>普通にバールに行ってコーヒーを飲むのですが、
>このとき二杯分を支払って、自分は一杯だけ飲む。
>そして残りの一杯分は、そう、誰かが無料で飲むことができる。

なんて素敵なことなんでしょう。
こんな小さなことだったら私でも出来そうです。

共和国広場のCaffe Giubbe Rosseは夜中の2時頃になると
残りのパン類を誰でも持って帰れます。
もちろん路上生活者がたくさんやって来て、持ち帰ってますが・・・



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おはようございます。 (ロココ)
2004-06-08 02:23:20
おはようございます。
誰かと分かち合う一杯のコーヒー、捨ててしまうのがもったいない残り物を復活させたディナー。さすが、イタリアは粋ですね。
世界中で、いろんな人がいろんな人生を送っている。なんだか、じんときます。素敵な記事をありがとうございました。
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