ライフ、健康

元気で幸せで暮らすため いい生活習慣を身に付けまましょう

山田英生:幸福に満ちた人生100年を

2014-05-16 09:34:34 | 高齢社会
自立と前向きな生き方で、

幸福に満ちた人生100年を。

豊かな老後を目指して

 医療の進歩で平均寿命が延び、「人生100年時代」が近づいてきました。今、健康長寿を謳歌する人がいる一方で、寝たきりにつながりやすい認知症や骨粗しょう症、がんなどに罹る人が増えています。たった一度の人生であれば、「自分らしく健康で幸せに生きたい」というのが、多くの人の願いでしょう。それには、食生活や運動を中心とした正しい生活習慣の積み重ねと心の健康が欠かせません。「健康長寿を目指す生き方」をテーマに、寿命、老化研究の第一人者で順天堂大学大学院教授の白澤卓二教授(55)と予防医学に基づく心身の健康を企業理念に掲げる山田養蜂場山田英生代表(56)の長期連載対談も、今回が最終回。老化は誰しも避けられませんが、健康への日ごろの取り組みで、豊かな老後を実現したいものです。

百寿者に学ぶ生き方

山田 日本人の平均寿命が延び、100歳を超える人は、ついに5万人を突破しました。今後、100歳を超える人がさらに増えるのは確実で、2050年には約70万人に達する、との予測もあります。今後の医療技術の進歩を考えると、「人生100年時代」は、必ずしも夢ではなくなりました。
白澤  「人生50年」といわれた約60年前から比べると、今は女性が86.41歳、男性が79.94歳と日本人の平均寿命は、約30年延びました。デンマークの研究では、「日本など平均寿命の高い国の2000年以降に生まれた新生児の多くは、100歳の誕生日を祝えるだろう」と予測しています。さらに、自分はどんな病気に罹りやすく、どうすれば予防できるかを遺伝情報から摑める時代も目前に迫っています。また、人類がアルツハイマー病を克服できる日もそう遠くはないでしょう。100歳へのハードルはどんどん低くなっていますね。

山田 日本では100歳以上の人を「百寿者」、外国では「センテナリアン」とも呼んでいます。最近の研究などによれば、百寿者には必ずしも長寿家系の人や遺伝的に恵まれた人だけがなれるのではなく、心身ともに弱い人、大病を経験した人でも日々の努力しだいでなれると聞きました。こうした人生の先輩たちの生き方は、後に続く私たちにとっても大変参考になり、そのライフスタイルから学ぶべき点もたくさんありそうです。先生はこれまで、老化・寿命などの研究を通じて多くの百寿者の方に会っていらっしゃいますが、皆さんに共通する特徴はありましたか。

白澤 百寿者を対象にした調査では、男性は「ひょうひょうとマイペースで生きていく人」「凝り性でとことん追求する人」、女性では「一家の中心として家族や周りの人のことを常に思いやり、一生懸命に世話をする人」という結果でした。さらに、男女に共通していたのが「依存心がなく、人生を肯定的にとらえている人が多い」という点ですね。私の印象も、この調査とほぼ同じような内容でした。些細なことでクヨクヨしたり、思い悩まず常に前向きな人が多かったように思います。また、一生を通じて太っている人は少なく、動きは実にしなやかで、軽々とされていました。というのも、食事は1日3回しっかり摂り、バランスのとれた食生活を心掛けるなど生活習慣がきちんとされているからでしょう。高齢になっても仕事を続けるなど実に体をよく動かしています。その結果として健康長寿を謳歌されているように思いますね。


人生はQOLが大切

山田 その一方で、健康長寿を妨げるがんや心臓病、脳卒中をはじめ、寝たきりにつながりやすい認知症や骨粗しょう症などのほか、糖尿病などの生活習慣病も増えています。せっかく、長生きしても認知症になったり、寝たきりになっては、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)が保てません。たった一度の人生であれば、健康で幸せに生きたいものです。

白澤 人生は、寿命の長さではなく、QOLが大切ですね。その人がいかに人間らしく、自分らしい、幸福な生活を送れるかが、その尺度になるでしょう。たとえば、心身の健康、生きがい、良好な人間関係などですね。特に健康は、人間が幸福な人生を送るうえで、もっとも基本的な条件といってもよいでしょう。高齢期になれば、筋力の低下や関節の変形、免疫機能などの低下は避けられません。また、認知症につながりやすい認知機能の低下や、うつになりやすい心の老化が現れる場合もあるでしょう。そうした病気にならないためには、日ごろからの健康への取り組みが重要になってきます。90歳、100歳と単に寿命を延ばすだけでは、幸せな長寿とはいえません。健康で自立した人生が送れるかが重要になってきます。

山田 いつまでも前向きにポジティブに生きたいものですね。先生は、老化のスピードをスローダウンさせ、高齢期のQOLを保つ加齢制御的なアンチエイジングの研究を進めておられますが、そこでカギとなるキーワードは何ですか。

白澤 これからのアンチエイジングを考えた時、「食事」「運動」「メンタルケア」の3つが重要なカギになると思いますね。食べたいものがあふれている飽食の時代にあって、食事のカロリーを制限し、食べたい気持ちを抑える強い意志が必要です。車や家電製品の普及で運動不足に陥った現代人には、適度な運動が欠かせません。さらに、ストレス過剰の社会にあって、ストレスに負けない前向きな考え方ができるようにコントロールすることも重要でしょう。この3つはどれも大切で、どれか1つ欠けても老化を遅らせ、長生きすることはできません。


治療中心の医療現場 

山田 糖尿病やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病はもちろん、がんやアルツハイマー型認知症も、食事や運動などによってある程度は、予防できることが最近の研究でわかってきたそうですね。今、医師による薬物投与や手術よりも自然治癒の力を利用することで免疫力を高め、病気にならない体をつくる予防医学が世界的に注目されています。一つは高齢化に伴って医療費が急激に膨張していること、もう一つは、今の西洋医学の力をもってしても治せない複雑な病気が増えていることが背景にある、と聞きました。しかしながら医療現場では、いまだに治療中心の医療が行われ、予防医学が抜け落ちているように思えてならないのです。

白澤 そもそも、日本には予防医学のインフラがありません。だから、非常にやりづらいのです。今の外来患者担当の医師は予防のための医療をほとんどやっていませんし、やろうとするモチベーションも低いのではないでしょうか。診療報酬の保険点数がつかないため、そのためのトレーニングがされていないのです。大学医学部の教育でも、教えているのは、西洋医学に基づく治療医学で、予防医学の教育と実践指導はほとんど行われていないのが現状です。
山田 確かに、西洋医学による治療は、感染症や臓器移植などに大きな力を発揮してきました。しかし、その先端技術をもってしても人体の精巧なメカニズムの一部しかまだ解明できていないと思います。特に人間の体や健康をトータルに診るという点で、どうでしょうか。生活習慣病や加齢に伴って起きる更年期障害や老化などは治療中心、対処療法中心の西洋医学で対応するのは、向いていない、と指摘する専門家もいます。増え続ける認知症や生活習慣病、がんなどは一度罹ると、完治しにくいケースも多く、それなら病気にならないよう予防するのが一番ではないでしょうか。今後、ますます、予防医学は重要になってくると思われます。先生も健康長寿や老化防止などいろいろ研究されていますが、具体的にどんな研究をされていますか。


認知症 克服の日も

白澤 一つは、前月号でお話ししたテロメアの研究ですね。染色体の末端にキャップのようにくっついていて、DNAを守る役目を果たしている構造体ですが、このテロメアは、若い人ほど長く、加齢とともに短くなる特徴があります。だから、採血してみて、テロメアが短かったら、一般的に「長生きできない」ということになりますね。テロメアが「寿命のバイオマーカー」ともいわれる所以ですが、それならテロメアの長さを検査し、長寿の可能性が高いか、低いかを調べたらどうでしょう。もし低かったら、自分の生活習慣の悪い点を改善していく必要が出てきます。まだ、研究段階ですが、私はこの検査を、国民レベルでできるようにしたいと考えています。これが可能となれば、予防医学の新しい道が開けてくるでしょう。
山田 そうなるよう期待しています。

白澤 アルツハイマー型認知症を例にとっても、残念ながらこの病気を治す治療法は、いまだに確立されていないのが現状です。しかし、食事や運動などで、ある程度は予防できることが最近の実験などからわかってきました。予防できれば、発症しなくなるので治療の必要はなくなります。私は「予防医学でアルツハイマー型認知症は解決できる」と考えています。あと何年かすれば「アルツハイマー病は生活習慣病だ」といわれる日が確実に来るでしょう。生活習慣病であれば、食事や運動などの生活習慣を見直せば、防ぐことも可能になります。アルツハイマー型認知症を予防することで、人類はこの病気を克服できるのではないでしょうか。


健康は自己責任

山田 生活習慣病の原因の多くは、食生活の乱れや運動不足、喫煙、ストレスなど間違った生活習慣にある、といってもよいかも知れません。先生がおっしゃるように、食事なら腹七分目、3食きっちりと規則正しく食べ、栄養をバランスよく摂る。適度な運動と十分な睡眠をとり、タバコを止める。そうすれば病気の多くは予防が可能になるでしょうね。

白澤 そう思いますね。特に高齢期では、年齢によって罹る病気が変わってきます。介護が必要になった原因として、65歳~74歳までの前期高齢者では脳卒中などの「脳血管疾患」が最も多いのに対し、75歳以上の後期高齢者では「転倒・骨折」や「高齢による衰弱」「認知症」などが増えてきます。こうした病気は、寝たきりの原因にもなりやすいので注意が必要ですが、予防も十分可能です。それと大事なのは心の持ち方ですね。「もうトシだから」とあきらめずに、何ごとにも積極的にチャレンジしていただきたいですね。

山田 私たちの暮らしが豊かになり、平均寿命が延びた今、「いつまでも健康で若々しくいたい」「自分らしく長生きしたい」と誰しもが願っています。健康や病気は、病院や医師にすべてを任せる時代ではなく、自分で管理する自己責任の時代といってもよいでしょう。

白澤 生き生きした豊かな老後を送るためには、若い頃からの日々の正しい生活習慣の積み重ね、毎日の健康長寿への取り組みが重要になってきます。一緒にサクセスフルエイジング(豊かな老後)を目指そうではありませんか。

(おわり)

ご愛読ありがとうございました。

山田英生:長寿遺伝子の秘密、人間の寿命

2014-05-16 09:26:15 | 不老長寿
「不老長寿」の扉を開くカギは、

腹七分目、ほどよい運動。


長寿遺伝子とテロメア

 「いつまでも歳をとらずに、長生きしたい」―。そんな不老長寿への夢が、必ずしも夢ではなくなってきました。最近の研究で、老化を遅らせ、寿命を延ばす「長寿遺伝子」の存在が明らかになったためです。この遺伝子は誰もが持っており、上手に働かせれば寿命が延びる可能性も秘めています。この遺伝子のスイッチをオンにするには、私たちの生き方が重要なカギを握っているといっても過言ではありません。延び続ける人間の寿命。最新の生命科学への期待は高まるばかりです。老化と長寿研究の第一人者で、順天堂大学大学院教授の白澤卓二さん(55)と山田英生山田養蜂場代表(56)が、長寿遺伝子の秘密や人間の寿命などについて語り合いました。

夢でない不老長寿

山田 最近、テレビや新聞、雑誌などで「長寿遺伝子」が話題になっていますが、この遺伝子は、どんなもので、どんな働きをしていますか。

白澤  長寿遺伝子とは、一言でいうと、「操作をすれば、老化を遅らせ、寿命を延ばす遺伝子のこと」です。人の細胞の中には、老化や寿命をつかさどる長寿遺伝子が50個から100個ぐらいはあるといわれています。この長寿遺伝子は、普段は眠っていて働いていませんが、そのスイッチをオンにすると、老化のスピードが緩やかになり、寿命を延ばす働きがあります。

山田 長寿遺伝子は、人間なら誰でも持っているのでしょうか。

白澤  皆、持っています。人間だけでなく、酵母菌、ハエ、サルなど地球上のほとんどの生物が持っているといってもよいでしょう。長寿遺伝子の研究は以前から行われていましたが、今テレビなどで取り上げられ、話題になっているのが「サーチュイン(Sirtuin)遺伝子」です。この遺伝子の中で、最初に発見されたのが、「サーツー(Sir2)」と呼ばれる遺伝子で、米国・マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ教授が8年の歳月をかけて2003年に酵母菌の中から発見しました。Sirとは、「サイレント・インフォメーション・レギュレーター」の略で、「静かなる情報を規定するもの」という意味です。ガレンテ教授は、サーツー遺伝子を取り除くと、酵母が早死にし、逆に増やすと長生きすることを解明しました。

山田 ガレンテ教授の動物を使った実験では、遺伝子操作によって実際、どのくらい寿命が延びたのですか。


老化の進行にも関与

白澤 ショウジョウバエで約30%、線虫では約50%寿命が延びました。さらに、ガレンテ教授は、マウスにも、人の体の中にもサーチュイン遺伝子があることを発見しています。この遺伝子は、寿命だけでなく、老化の進行にも関与していることがわかっています。老化をもたらす要因としては「活性酸素による酸化ストレス」や「免疫細胞の暴走」などが考えられますが、サーチュイン遺伝子が活性化すれば、こうした老化の要因を抑え、進行を遅らせることができるようになります。

山田 老化は、人間が生きている限り避けられませんが、サーチュイン遺伝子によって進行を遅らせ、長生きにつながれば、これほど画期的なことはないでしょう。

白澤 サーチュイン遺伝子には、3つの特徴があります。1つ目は「暖かい環境では活動しない」、2つ目は「取り除くと早く死に、増やすと長生きする」。そして3つ目は、「活性化しないと効果がない」というものです。特に、寿命を延ばすためには、活性化、つまりサーチュイン遺伝子のスイッチをオンにしてやることが必要になりますね。

山田 サーチュイン遺伝子は、普段はスイッチオフの状態になっていますが、これをオンにするにはどうすればよろしいのですか。

白澤 カロリー制限、つまり摂取カロリーを減らすことですね。これによって長寿遺伝子は活性化します。以前、この対談でアカゲザルを使ってカロリー制限が寿命にどのような影響を与えるかを追跡調査した米国・ウィスコンシン大学の研究の話をしたことがあるかと思います。この調査では、エサを7割に制限したグループのほうが通常のエサを与えたグループより生存率が高く、毛並みにツヤがあり、全体的に若々しかった、との結果が出ました。この調査によって、カロリー制限をするだけでも寿命や見た目などに大きな影響が出ることがわかったのです。


カロリー制限でオン 

山田 寿命が延びたアカゲザルは、カロリー制限によって長寿遺伝子のスイッチがオンになった、ということですね。このようなケースは動物だけでなく、人間にも当てはまるでしょう。やはり、食事は「食べたいから」といって食べたい分だけ食べるのではなく、腹七分目か八分目に抑えておくことが大切ですね。

白澤 それと、赤ワインに含まれるポリフェノールの一種、「レスベラトロール」が長寿遺伝子を活性化させ、老化を防ぐ働きのあることもわかりました。実験を行ったのは、ハーバード大学准教授のデービッド・シンクレア博士。博士は、カロリー制限をしていないマウスにレスベラトロールを投与したところ、サーチュイン遺伝子が活性化され、寿命が延びたといいます。レスベラトロールは赤ワインの原料に使われるブドウの皮や種子のほか、最近では御社でも研究されているインドネシアの植物「メリンジョ」にも含まれていることがわかり、注目されています。

山田 肉などの動物性脂肪を多く摂っていながら、フランス人に心臓病が少ないのは赤ワインを通じてレスベラトロールを日常的に摂取しているから、といわれていますが。


テロメアは細胞寿命

白澤 そういわれていますね。これまでの実験結果などから、サーチュイン遺伝子がオンになると多くの老化要因を抑え、肌、血管、脳などが若く保たれ、寿命が延びると考えられています。メタボリックシンドロームなどの治療にも有効との指摘もあります。
 「テロメア」という言葉をお聞きになったことがあると思いますが、ギリシャ語で「末端の部分」を意味し、染色体の末端にキャップのようにくっついていて、DNAを守る役目を果たしています。今、医学や生命科学に携わる研究者らが健康長寿のカギを握るものとして、注目しているのがこのテロメアなんです。テロメアは赤ちゃんの時が最も長く、加齢とともに短くなっていきます。

山田 なぜ、テロメアが健康長寿と関係あるのですか。

白澤 ご存知のように、私たちの体は、細胞が分裂し、新しく生まれ変わることによって正常な機能を維持しています。しかし、細胞が分裂できる回数には限度があり、50回~70回くらい分裂すると、それ以上は分裂できなくなるといわれています。これは、テロメアがすり減っていくためで、細胞分裂を繰り返すたびにテロメアは短くなり、ある一定の長さまでいくと、細胞分裂ができなくなってしまいます。そんな性質から、テロメアは細胞の寿命を示す「寿命の回数券」とか「老化時計」などと呼ばれています。

山田 テロメアの回数券がなくなると、細胞が分裂できなくなり、若い細胞が生まれなくなってしまいますね。


見た目の若さも重要

白澤 これまでテロメアは、「すり減れば再生は不可能」と考えられてきました。しかし、最近の研究では、サーチュイン遺伝子にテロメアがすり減るのを抑える働きがあることがわかってきました。たとえば、顔の皮膚。テロメアの回数券を使いきってしまうと、老化がどんどん進み、顔にシワやタルミ、シミなどができて老け顔になってしまいます。ところが、サーチュイン遺伝子が働いて、テロメアがすり減るのを抑えれば細胞分裂も可能になり、見た目の若さをキープすることが可能になります。

山田 そうしますと、テロメアの長い人ほど若々しく、短い人ほど老けて見えるということでしょうか。

白澤 その通りです。見た目の年齢差は、そのまま内臓や血管などの年齢差でもあるからです。顔の老け具合を見れば、その人の寿命がわかります。その意味からも、テロメアは「寿命のバイオマーカー」といってもよいでしょう。テロメアの長さを検査し、長寿になれる可能性が高いか、低いかを調べ、もし低かったら、自分の生活習慣のどんな点が悪いのか、足りない部分は何なのかをつかみ、それに合わせて自分の生活習慣を変えていけばよいのです。

山田 では、テロメアが短い人というのは、どんな人ですか。

白澤 まず、肥満の人ですね。2005年にイギリスの医学雑誌「ランセット」に「テロメアは生活習慣によって変わる」という趣旨の論文が掲載されました。それによると、ロンドンに住む18歳~76歳の女性1,122人のテロメアを調べたところ、肥満の人はそうでない人に比べテロメアが8年分、短かったそうです。また、タバコを1日に1パック、10年間吸っている人は、吸わない人に比べ2年分もテロメアが短いことがわかりました。それと、運動不足ですね。運動していない人は、している人よりもテロメアが短いことが明らかになっています。

山田 であれば、肥満を解消し、タバコをやめ、運動を積極的に行うことによってテロメアの長さを保ち、いつまでも若々しく健康でいたいものです。

山田英生:生きがいと心の健康、老化に及ぼす影響

2014-05-16 09:13:07 | 高齢社会
生きがいとは「何かにときめくこと」。

心の若さが、身体の若さもつくります。


健康長寿とメンタルケア


 90歳、100歳になっても健康で生き生きと暮らすには、バランスのとれた食事や適度な運動、そして生きがいを持つことが大切といわれています。「年だから」などとあきらめず、いつまでも夢や希望を失わない心の健康が欠かせません。ストレスと上手に付き合いながら「生涯現役」の気概を持って前向きに仕事や趣味、ボランティア活動などにチャレンジすることが生きがいにもつながるでしょう。老化は単なる年齢の積み重ねではなく、心のあり方と生き方しだいで、その進行に大きく影響するといわれています。老化と寿命研究の第一人者で、順天堂大学大学院教授の白澤卓二さん(55)と山田英生山田養蜂場代表(55)が生きがいと心の健康、老化に及ぼす影響などについて語り合いました。

何事もプラス思考で

山田 現代社会は、ストレス社会ともいわれ、多くの人が心の病に悩んでいます。若者はもちろんのこと、高齢者も定年退職で肩書が外れ社会的役割を失ったことで生きがいをなくし、うつ病になる人が増えている、と聞きました。

白澤  特にストレスに弱い人ならば、退職で生活環境が変わったところへ家族や親しい友人らとの死別などの心理的ショックが重なれば、いつうつ病になっても不思議ではありません。

山田 逆に妻にしても、定年退職で家にいることが多い夫と毎日、顔を突き合わせ、3度の食事の準備もしなければならない人もいるでしょう。そんな夫の存在は、妻にとっては大変なストレスで、場合によっては心身に変調をきたす「主人在宅ストレス症候群」を発症するケースもあると聞きました。

白澤  症状が悪化すれば、うつ病になるリスクだって、ないとはいえません。そうならないためにも、何事にも前向きに取り組み、常に「ポジティブ・シンキング」を心がけることが必要でしょう。閉じこもりは、心の老化を進めるだけです。仕事を辞めて、家事は妻任せ、これといって趣味もなく、朝からパジャマ姿でテレビばかりを見ているような生活は、あまり感心できませんね。こんな生活を続けていたら、すぐに心身の機能が衰えてしまいます。

山田 頭や体を使わなければ、そうなりますよね。

白澤  健康な人でも一日じっと寝ていると、足の筋力が1週目で20%、2週目で40%、3週目で60%低下する、とのデータがあります。さらに、体中の関節がスムーズに動かなくなり、体を起こそうとすれば血圧が下がってめまいがする「起立性低血圧」になると、座ることや歩くこともできなくなります。もっと進めば、「廃用症候群」となり、骨が弱くなるだけでなく、心臓や肺の機能も低下し、抑うつなどの精神症状も出てきます。それを元の状態へ回復させるには、予想以上に時間がかかります。そのまま放っておけば、寝たきりになる恐れも出てきます。

山田 怖いですね。


長寿を呼ぶ心の健康

白澤 そうならないためにも、自分でできることは自分でやり、足や指、首など動かせるところはどんどん動かすことで機能が低下しないよう心がけることが大切ですね。年をとると、筋肉の量が減ったり、機能が低下する「サルコペニア」を発症するリスクが高くなります。この病気は寝たきりにもつながりやすいので、運動などを積極的に行うことで筋肉量を維持することが大切ですね。最近、山田さんのところで助成されている研究で、高齢マウスにローヤルゼリーを投与したら筋肉量が増えたそうですが、注目に値する研究成果ですね。

山田 まだ、マウス実験の段階ですが、将来人に対しても有用であることがわかれば、寝たきりのリスクを減らすことにもつながると思っています。「手は外部の脳である」という有名な格言があります。手にはたくさんの神経が集まっていて、指先を動かせば脳に刺激を与えることができるという意味ですね。脳を活性化するには、それくらい手を動かすことが大事だということでしょう。そういえば、手をよく使う彫刻家や画家には長生きの人が多いですね。旺盛な創作意欲が長寿パワーの源となっているのでしょうか。

白澤 それに加え、画家や彫刻家は日頃から描くテーマを持っていることが大きいですね。これは、生きがいでもあり、一生持ち続けることが長生きにつながります。また、読んだり、書いたり、考えたり、どんどん頭を使えば使うほど脳は活性化し、認知症予防にもつながります。

山田 よく100歳を超えたお年寄りが、テレビなどで長寿の秘訣を聞かれると「クヨクヨしないこと」と答えていますよね。

白澤 私がこれまでお会いしてきたお元気な百寿者の中には、クヨクヨと思い悩むような人は一人もいませんでしたね。戦争や災害、大病、肉親の死などたくさん辛い経験をされてこられたのに、誰一人として苦労話はしたがりません。むしろ、自分の成功談や自慢話をされる方が多く、自分の人生を肯定的にとらえておられます。

山田 こうした心の健康も、長寿には欠かせない要因ですね。


社会参加で生涯現役 

白澤 その通りです。特に仕事や、ボランティア活動は、人のため、社会のためにもなり、その人にとっても生きがいになるでしょう。百寿者の方を対象にしたいろんな調査を見ても70代まで仕事を続けた人が最も多く、100歳になっても畑仕事や店番など、できる範囲で仕事を続けている人が少なくありません。

山田 定年後の生きる目的を失った人や自分の居場所をなくした人は、まず仕事探しから始めてみるのもよいかも知れませんね。現役時代に比べれば、収入もささやかで、単純な仕事が多いかも知れません。それでも、働けば健康にもよいし、新しい仲間ができる可能性もあります。仕事を通じて社会に貢献できれば、それが生きがいにもつながるでしょう。

白澤 生きがいとは、「何かにときめくこと」でもあります。その点、趣味もときめきを与えてくれますね。趣味や習い事に没頭する、資格に挑戦する、韓流スターを追いかけるのも、心がときめくでしょう。趣味に没頭することは、脳に刺激を与え、脳の老化を防いでくれます。実際、趣味や目標のある人は、ない人に比べ脳に新しい神経細胞が5倍も多くつくられる、というデータがあります。どんなにささやかなことでも心から楽しめば、心はいつでも若々しくいられるでしょう。

山田 新聞で「趣味のある人は、ない人よりも認知症になりにくい」という記事を読んだことがあります。趣味やボランティア活動などを通じて積極的に外へ出て、いろんな人との交流を広げることは大切ですね。

白澤 高齢になれば、外に出て歩くだけでも脳と五感への刺激が増します。読書が好きなら町の書店や図書館に行ってみる、絵を描くのが趣味なら写生や画廊めぐりもよいでしょう。


料理、歌で若返る

山田 旅行が趣味という人がとても多いようですね。仕事や子育てから解放され、時間的にもお金の面でも比較的ゆとりのあるシニア世代にとっては、見知らぬ土地への旅は、心がワクワクするでしょう。

白澤 「あそこへ行きたい」、「あの料理を食べたい」などと、考えただけでも心が躍ります。そんなときめきと好奇心は、脳に刺激を与え、寿命を延ばす「長寿遺伝子」を活性化させてくれます。

山田 料理も脳のアンチエイジングには最適のようですね。「男子厨房に入らず」という言葉があるように、昔は男は炊事に手を出すべきではない、という風潮がありましたが、最近は料理をする男性が増えました。

白澤 料理は、非常に頭を使う、奥の深い世界です。まず、何の料理をつくるか献立を考えることから始まり、メニューが決まったら食材を集め、調理する。創意工夫やアイデアが必要な、実に創造的な作業です。

山田 それと、カラオケが健康にとてもよいともいわれていますね。

白澤 お年寄りたちが歌うことによって心身ともにリラックスし、脳が刺激されて認知機能の低下予防に役立っているからです。おなかの底から大声を出して歌えば、適度な緊張とリラックスのバランスが脳下垂体を刺激し、自律神経を整えるのによい影響を与え、ストレスを発散させてくれます。

山田 老人ホームのお年寄りがボランティアの美容スタッフから化粧をしてもらい、見違えるように明るく元気になったという話が新聞に出ていました。化粧によってリハビリ効果も高まり、「寝たきりの人が歩けるようになった」「オムツを外せた」などの話もよく聞きます。化粧やおしゃれには、それくらい大きな効果があるのですね。

白澤 ありますね。化粧をする、マニキュアを塗る…。おしゃれは高度なコミュニケーションが図れます。身なりに気を使わなくなったら、心も老いやすくなってしまいます。

山田 それと、近年「笑う」ことが健康法の一つとして注目されています。笑いが心や体によいことが医学的にも実証されつつあり、「笑い」を病気の予防や治療の一つに加えている医療機関もあると聞きました。

白澤 毎日笑う人は、ほとんど笑わない人に比べ認知機能の低下が少ない、との調査結果もあり、よく笑う人ほど認知症にはなりにくい、ともいえますね。また、がん細胞などを攻撃してくれる「ナチュラル・キラー細胞(NK細胞)」も、笑うことによって増えるとの報告もあります。

挑戦する気概を持つ

山田 アメリカの詩人、サミュエル・ウルマンは、かの有名な「青春の詩」の中で「青春とは人生のある期間をいうのではなく、心の様相をいう。歳を重ねただけで人は老いない。理想を失ったときに初めて老いる」と謳っています。いつまでも若々しくあるためには理想や希望を持つことが、いかに大切であるかを彼はいいたかったのでしょう。

白澤 それと、いくつになっても新しいことにチャレンジする気持ちを失わないことが大切ですね。この前、冒険家、三浦雄一郎さんが史上最高齢の80歳で、世界最高峰のエベレストの登頂に成功され、多くの人に夢と希望を与えました。老いは、単に年をとるのではなく、心の持ち方しだいで老化の進行は早くも遅くもなるものです。「もう年だから」とあきらめないで、どんどん新しいことにチャレンジしてほしいですね。

山田英生:肉と魚の効用、健康や老化への影響

2014-05-16 08:48:12 | 健康な食べ方
良質なたんぱく質で若々しく。 肉食系長寿のススメ。

高齢者こそたんぱく源を 肉と魚の食べ方

 年をとると、肉を避け、魚や野菜中心のあっさりしたものを好む傾向があるようです。「肉はコレステロールが高いのに対し、魚は逆に低く、中性脂肪を下げる」との思いがあるからでしょうか。しかし、肉を控えたほうがよいのは、太りやすい40代、50代の話。反対に「食が細く、栄養不良に陥りやすい高齢者は、動物性たんぱく質をできるだけ摂ったほうがよい」と肉食を勧める専門家も少なくありません。肉には転倒による骨折や貧血を防ぎ、老化を遅らせる働きがあります。肉と魚は、1対1の割合で1日おきに、交互に食べるのが理想的な食べ方といわれています。老化と寿命研究の第一人者で、順天堂大学大学院教授の白澤卓二さん(55)と山田英生山田養蜂場代表(55)が肉と魚の効用、健康や老化への影響などについて語り合いました。


粗食は老化を早める

山田 人間、年をとると、若い頃のように肉や脂っこいものをあまり食べなくなりますね。どちらかといえば低カロリー、低脂肪で塩分控えめのあっさりした粗食を好む傾向があるようです。やはり、肉はコレステロールが高く、健康によくないと思われているからでしょうか。でも粗食ばかりで肉を食べないと、逆に栄養が不足しがちになり、かえって老化を早めてしまうことにならないか、心配になります。

白澤  「年をとったら粗食がいい」と思っている人は、意外と多いかも知れませんね。でも、それは、誤解ではないでしょうか。肉やコレステロールを抑える食事が必要なのは、メタボリックシンドロームに陥りやすい40代、50代の話であって、65歳以上の高齢世代では、そうした粗食は、むしろ老化を早める原因になる場合もありますね。確かに高齢になると、若い頃に比べて活動量が減り、その分エネルギー消費量も落ちてきます。しかも、臭覚や消化力も衰えて食欲が低下しますから、必要なだけの栄養さえ摂れなくなる恐れも出てきます。栄養状態がよいか悪いかは、その人の血液中のアルブミン濃度を測ればわかります。

山田 アルブミンは、肝臓でつくられるたんぱく質のことですよね。私たちにとって健康を保つだけでなく、若々しさや長寿にもつながる大切な成分と聞きました。

白澤  そうです。アルブミンの測定は、栄養状態を判断するだけでなく、老化の進行状況をチェックするうえでも欠かせません。たとえば自分で衣服が着れる、自分で食事が摂れる、トイレにも一人で行ける―など、自分の身の回りのことができる人は、アルブミンの量が十分足りている証拠。アルブミンの量が不足している人は、たんぱく質の摂取が少ない、といってもよいでしょう。おっしゃる通り栄養が足りなくなると、老化が進みます。老化をできるだけ遅らせるためにも、良質な肉を適量摂ることが大切です。
山田 「コレステロールが健康によくない」という考えは単なる誤解だったのですね。

お勧めは豚のヒレ

白澤 はい。肉から得られる良質なたんぱく質は、免疫力をつけるのにも役立ちます。肉を食べずに、血中コレステロール値が低くなり過ぎれば、血管が弱くなり、脳卒中が起きやすくなります。低栄養に陥らないためにも、肉はしっかり食べたいですね。

山田 肉にも、牛肉、豚肉、鶏肉など種類がたくさんあります。特に牛肉や豚肉では、「肩ロースがおいしい」「ヒレ肉がいい」など、人によっては部位ごとに好みも異なるようです。高齢者が老化を防ぐにはどんな肉を、どのように食べればよいのでしょうか。

白澤 何といってもお勧めは、豚のヒレ肉でしょうね。豚肉には、食ベ物の中でもトップクラスのビタミンB1が含まれ、牛肉と比べてもその量は、約10倍あるともいわれています。豚肉を100g~150g食べるだけで、1日のビタミンB1の必要量が確保できるほどです。

山田 ヒレ肉は豚肉の中でも最高級で、とても柔らかく、トンカツなどによく使われますよね。

白澤 豚のヒレ肉は、同じ豚のバラ肉と比べても、ビタミンB1の量は約2倍。しかも、脂肪やカロリーも少ないため、肥満や生活習慣病などの予防にもよいとされています。ビタミンB1には、ご飯やパンなどに含まれている糖質をエネルギーに変える働きもあるので疲労回復には、もってこいの食材ですね。

山田 豚肉料理といえば、すぐに頭に浮かんでくるのが沖縄です。沖縄の食文化を考える時、豚肉料理抜きには考えられません。「豚に始まり、豚に終わる」といわれるぐらい庶民の間に浸透し、その消費量は全国平均の約1.4倍と聞きました。それでいて、高齢者の生活習慣病は少なく、つい最近まで長寿県といわれてきました。その矛盾を、沖縄では「動物性たんぱく質の摂取が多いのに心臓病が少ない」というフランス人の「フレンチパラドックス」になぞらえて、「オキナワンパラドックス」と呼ぶ専門家もいます。やはり、豚肉を茹でこぼして食べる沖縄独特の調理方法や、いろんな食材と組み合わせたバランスのよい食生活が沖縄の長寿の一因だったのでしょうね。

肉と魚は1日置きに

白澤 茹でこぼして食べるのは、実に理にかなった調理法だと思いますね。それと、蒸したり、網焼きにするのも、余分な脂がカットできる点でお勧めできます。しかし、豚のヒレ肉にも、ビタミンB1が汗や尿からすぐに排出されやすいという欠点があります。ビタミンB1の体内への吸収率を高めるためには、タマネギやニラなどに含まれる「アリシン」というイオウ化合物と一緒に摂るのがよいでしょう。ただ、豚肉や牛肉に含まれる動物性脂肪は、中性脂肪やコレステロールを増やす「飽和脂肪酸」が多く、その摂り過ぎは、肥満や動脈硬化の一因にもなりかねません。その点、脂肪が少なく、肥満を防ぐのによいのが鶏肉ですね。特に胸の部分には、「カルシノン」という栄養成分が含まれ、これが筋肉の疲労物質である乳酸を中和してくれるため、疲労が抑えられ、元気でいられるのです。肉は一種類だけでなく、いろんな種類をバランスよく食べていただきたいですね。

山田 高齢になっても元気で暮らすには、肉を食べることも必要だということですね。適量の肉は、加齢による筋肉の低下に伴う転倒やビタミンの欠乏による貧血を防ぎます。でも、同じ動物性たんぱく質でも年齢を重ねるにつれ、「肉より魚のほうがいい」という人も私の周りには結構います。実際、70歳以上になると、魚と肉の摂取比率は約2対1といわれ、高齢になるほど魚介類を食べる人が増えているようです。魚はできるだけ食べたほうがよいのでしょうか。

白澤 そう思いますね。最近になって魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの栄養素が注目されるあまり、「魚がよくて肉はダメ」と思っている人は、意外と多いようですね。確かにDHAやEPAには動脈硬化を防ぎ、老化を遅らせる働きがあるため、「魚は健康によい」と思っても無理はありません。実際、魚をよく食べる人に認知症の人が少ないことも最近の研究でわかっています。でも、見逃してほしくないのが、たんぱく質の量です。魚といえども、その量においては、肉にはかないません。

山田 魚と肉では、どのくらいたんぱく質の量が違うのですか。, 白澤 たとえば、牛肉の場合、すき焼き用の肉200gでたんぱく質は60g摂れますが、魚ではアジ1匹(約170g)を塩焼きにして、わずか15gしか摂れません。年をとってくると、脂っこいものは苦手という人が増えてきますが、いつまでも元気で長生きするためには、肉などの動物性たんぱく質も必要でしょう。できれば、魚と肉は1対1の割合で摂り、1日おきに交互に食べていただきたいですね。

抗酸化作用強い鮭

山田 魚にもタイやヒラメなどの白身魚、イワシやサバなどの青魚、カツオやマグロなどの赤身魚などがあります。かつて国民的アイドルだった長寿の双子姉妹「きんさん、ぎんさん」も魚が好物で、毎日のように刺身などを食べておられたと聞きました。魚が健康によいのは、誰でも知っていますが、先生がお勧めになる一番の魚は何でしょうか。

白澤 何といっても鮭ですね。「野菜の王様」がブロッコリーなら、魚の王様は、文句なしに鮭でしょう。鮭には強力な抗酸化作用があるだけでなく、ビタミンA、B2、Dなどのビタミン類のほか、コレステロール値を下げるDHAやEPAも豊富に含まれており、生活習慣病を防ぐにはピッタリの魚といってもよいでしょう。鮭の赤い身の色素成分は、「アスタキサンチン」という天然色素で、「海のカロテノイド」 とも呼ばれています。

山田 今、「鮭は抗酸化力が強い」といわれましたが、どのくらい強いのですか。

白澤 抗酸化力の強さでは、ビタミンEが代表格ですが、アスタキサンチンは、「ビタミンEの約500倍の抗酸化力がある」、といわれています。また、抗酸化力の強い野菜として知られるトマトの赤い色素「リコピン」と比べても数倍強いとの指摘もあります。この抗酸化力の強い鮭は、アンチエイジングにもピッタリで、朝食だけでなく、昼も夜も食卓に載せていただきたい魚の一つですね。

病気と縁遠い魚好き

山田 「魚好きの人は、認知症になりにくい」「魚をよく食べる男性には、糖尿病の人が少ない」などとも聞きます。まさに魚は、健康によい食べ物の代名詞のようにいわれていますが、中でもイワシ、サバ、アジなど青魚が持てはやされているのは、なぜですか。

白澤 北極圏に住む先住民、イヌイットの人たちは、アザラシの肉を主食にしています。ほかにクジラや鮭などもよく食べますが、野菜や果物はほとんど口にしないようです。脂質の多い食事の割には、心筋梗塞や脳梗塞の人が、ほとんどいない、といわれています。その理由は、主食のアザラシの肉に含まれるDHAやEPAなどの「不飽和脂肪酸」にあります。牛肉などに多い「飽和脂肪酸」の摂り過ぎは、血液がドロドロになりやすいのに対し、魚の脂に多いDHAやEPAには、血液をサラサラにする働きがあり、血液中のコレステロール値や中性脂肪を下げ、動脈硬化などの生活習慣病や脳血栓、心筋梗塞などの予防にもよいとされています。このDHAとEPAが特に多く含まれているのが、イワシやサバ、サンマなどの青魚なのです。健康のためにも、青魚を1日に1切れぐらい食べてはいかがでしょうか。

山田 こうした魚は、「比較的安くて、おいしくて、栄養満点」。この3拍子そろった大衆魚をできるだけ食卓に添えたいものですね。