ライフ、健康

元気で幸せで暮らすため いい生活習慣を身に付けまましょう

山田英生野菜や果物の持つ力、健康との関係

2014-05-15 11:05:08 | 健康な食生活
野菜中心の食卓には、何千種類もの

長寿を支える成分が含まれています。


病気を治す野菜の力 フィトケミカル


 私たちの食生活と切っても切れないのが、野菜と果物。このところ、ファストフードやコンビニ弁当を利用する人が急激に増える一方で、野菜や果物を摂る人が減ってきました。もともと、野菜や果物には私たちが健康を維持するために必要なビタミンやミネラル、食物繊維などが豊富に含まれています。近年、健康との関係から、にわかに注目されているのが野菜の持つ植物性化学物質「フィトケミカル」です。その多くは、色素や香り、苦みなどの成分ですが、今後アンチエイジングやがん予防などの面で大いに効果が期待されそうです。老化と寿命研究の第一人者で、順天堂大学大学院教授の白澤卓二さん(55)と山田英生山田養蜂場代表(55)が野菜や果物の持つ力、健康との関係などについて語り合いました。

目立つ野菜離れ

山田 最近、家庭菜園や市民農園で野菜や果物を作る人が増えてきました。野菜は、生活習慣病やがんの予防など健康によいといわれていますが、気になるのが日本人の野菜摂取量です。厚生労働省は、1日当たりの野菜摂取量の目安として350g以上を摂るよう勧めていますが、日本人の野菜摂取量は、増えるどころか逆に減っているようですね。私が聞いたところでは、1968年当時の摂取量は、1人あたり1日394g程度でしたが、2011年には277gと大幅に減っています。共働きの増加で、調理に時間のかかる野菜の煮物などが敬遠されたのも一因でしょう。もともと、日本食は、野菜を多く取り入れている点が特徴で、日本人は野菜をたくさん食べて世界トップクラスの長寿国家を築いてきたともいえます。野菜を食べなくなると、今後の日本人の健康が心配になってきますね。

白澤 日本人が野菜を食べなくなったのは、食生活の欧米化が進んできたことが大きいですね。元来、日本食はコメを主食に野菜をふんだんに使い、魚介類や海藻、豆類などを多く取り入れているのが特徴です。それが肉類中心の食生活に変わった頃から、野菜の摂取量が減ってきました。欧米と比べても、すでに10年以上前から日本人の野菜摂取量はアメリカ人のそれを下回っています(農林水産省「食料需給表」)。かつて心臓病やがんなどの急増に悩んだ米国は、「デザイナーフーズ・プログラム」や「1日に5皿以上の野菜と果物を食べよう」という『5 A DAY運動』を推進してきました。高カロリー、高脂肪の食生活を見直し、野菜、果物を中心とする食生活に切り換える運動に国をあげて取り組んだ結果、国民の野菜摂取量が飛躍的に増えたのです。

山田 日本人が野菜を食べなくなった背景には、食の欧米化に加え、ファストフードや加工食品・冷凍食品などが次々登場したこともあるでしょう。こうした食品は、確かに手間ひまかからず、早くて便利なのですが、なぜか野菜など伝統的な日本の食の原点を忘れているような気がしてなりません。野菜は、私たちの命を支える大切なビタミンやミネラルを豊富に含んでいますが、最近、健康との関係で話題になっているのがフィトケミカルです。私も注目している一人なのですが。

「第7の栄養素」

白澤 最近、そういう人が増えてきましたね。フィトケミカルは、ギリシャ語で「植物」を表す「フィト=Phyto」と英語の「ケミカル=Chemical(化学)」を組み合わせた造語で、野菜や果物の中に含まれている植物性化学物質のことをいいます。これは、タンパク質や炭水化物、脂肪などの栄養素以外の成分であり、薬のような働きが十分期待できます。3大栄養素やビタミン、ミネラル、食物繊維に続く「第7の栄養素」として注目されています。まだ、そのすべてが解明されているわけではありませんが、野菜や果物の中には、5000種類から1万種類のフィトケミカルがあるともいわれています。

山田 代表的なものには、どんなものがありますか。

白澤 たとえば、最近、話題になっているポリフェノールやカロテノイドのほか、フラボノイド、セサミン、カプサイシン、β-グルカンなどもフィトケミカルの一種です。

山田 ポリフェノールといえば、赤ワインやブルーベリーに含まれるアントシアニンやお茶のカテキン、大豆のイソフラボンなどがよく知られています。カロテノイドはニンジンやカボチャのβ-カロテン、トマトのリコピンなどですよね。フィトケミカルは、私たちの健康にとって重要な働きをしている、とよく聞きますが、実際、どんな働きがあるのですか。

■第7の栄養素  「フィトケミカル」
1糖質  2脂質  3タンパク質  4ミネラル  5ビタミン  6食物繊維 7フィトケミカル


抗酸化作用に注目

白澤 一つひとつの野菜や果物に含まれているフィトケミカルの成分は微量ですが、私たちが健康を維持していくうえで、とても大切な役割を果たしています。その中でも、代表的なのが、抗酸化作用でしょう。たとえば、鉄は時間が経つとサビ(酸化)ますが、私たちの体も鉄と同じように細胞にサビが生じ、老化が進みます。その原因が活性酸素で、時々細胞の機能を低下させたり、DNAを傷つけるといった悪さをします。これが積み重なると、さまざまな臓器が動かなくなったり、動脈硬化やがんが発生するきっかけにもなります。この活性酸素を避けるには、できるだけ添加物の多い加工食品を避けると同時に、抗酸化作用の強いフィトケミカルを多く含んだ野菜や果物を積極的に摂ることです。中でも抗酸化作用が強いのは、ポリフェノールですね。

山田 抗酸化作用の強い野菜と果物をたくさん摂ることが、アンチエイジングにつながるのですね。

白澤 そうです。そのほか、フィトケミカルにはがんの発生やがん細胞の増殖を抑える作用もあります。

山田 大豆に含まれるフィトケミカルのイソフラボンが大腸がんや乳がん、前立腺がんの予防にもよい、と聞きました。

白澤 その通りです。それと、フィトケミカルのもう一つの働きは、炎症を抑える抗炎症作用ですね。以上の3点がフィトケミカルの主な作用ですが、こうした働きをすべて持っているのがポリフェノールの一種、レスベラトロールです。赤ワインやインドネシア原産の樹木「メリンジョ」の実に含まれています。

山田 メリンジョのレスベラトロールといえば、当社でも早くから注目し、商品化しており、好評をいただいています。

白澤 それと、フィトケミカルを語る時、忘れてはならないのがブロッコリーですね。約200種類以上のフィトケミカルを含み、この中には抗がん作用が期待できるスルフォラファンやその前駆体(生成する前の段階の物質)である「グルコシノレート」や抗酸化作用のあるカロテンなども含まれています。

山田 さすが「野菜の王様」といわれるだけあって、ブロッコリーには有効成分がたくさん含まれているのですね。

白澤 ブロッコリーは、フィトケミカル以外にも活性酸素を除去してくれるビタミンCやE、貧血を防いでくれる鉄、インスリンの働きを助けるクロムなどのミネラル類も豊富に含んでいます。ブロッコリーは、老化を防ぐ食材として食卓には欠かせない野菜の代表といってもよいでしょう。それと、私がお勧めしたいのが、香辛料のショウガとトウガラシですね。ショウガは、冷え症によいとして漢方薬にも使われていますが、このショウガの持つ栄養成分の代表的なものが辛み成分の「ジンゲロール」です。体を温め、血行をよくするほか、味覚を刺激して自律神経を活性化させ、脂肪を燃焼させる働きもあります。発汗や利尿、排便作用のほか、体内に蓄積された有害物質を分解するデトックス(解毒)効果があるともいわれています。

山田 当社でも国産のショウガを使って「しょうがはちみつ漬」や「はちみつしょうが湯」などを扱っていますが、健康に対する意識の高まりのせいか、お客様の人気が高く、生産が追いつかないくらいです。

白澤 一方、トウガラシに含まれているのが「カプサイシン」という辛み成分。体の中に入ると、血液を通して脳に運ばれ、自律神経の中の交感神経を刺激します。そのため、交感神経からアドレナリンが分泌され、体が熱くなって汗が出てきます。

山田 確かに、カプサイシンを摂取すると、アドレナリンの分泌が促されるせいか、新陳代謝が活発になり、ダイエットや肥満予防にも好影響を与えるそうですね。

不足気味の食物繊維

白澤 与えますね。それと、日本人に不足しているのが食物繊維です。厚生労働省は成人で男性は1日19g以上、女性は17g以上の食物繊維を摂るよう勧めていますが、日本人の摂取量は14g程度に過ぎません。食物繊維は腸の活動を刺激して便通を整える一方で、腸内の有害物質を排泄し、糖質やコレステロール、塩分の吸収を緩やかにします。このため、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病や大腸がんの予防などにもよいといわれていますから、食物繊維を多く含む玄米、ゴボウ、ニンジン、山芋、ダイコンなどの野菜を積極的に摂るよう心掛けていただきたいですね。

山田 日本人に足りないものといえば、果物もそうですよね。厚生労働省は、1日当たり200gの果物を摂るよう勧めていますが、実際の摂取量は約110g程度。先進国の中では最低レベルと聞きました。果物は、ビタミンをはじめミネラル、食物繊維などを多く含み、肥満、糖尿病などの生活習慣病予防や美容にもよいそうですね。

白澤 はい。果物は糖度が高く、肥満の原因になるとの誤解もあってか日本では食べる人が少ないようです。ところが、健康・体力づくり事業財団が100歳以上を対象に行った「百寿者のくらし調査」では、果物が「刺身」や「甘いもの」を引き離してダントツにトップでした。しかも、男女とも約6割が「ほとんど毎日」果物を食べている、と答えていました。果物に含まれているビタミンCや食物繊維などの健康効果を百寿者たちは本能的にわかっていたのかも知れません。

百寿者の「一番好きな食べ物」
1位果物 18.5%
2位魚 12.3%
3位甘いもの 10.7%
4位刺身 9.5%
5位寿司 6.4%
※健康・体力づくり事業財団調べ


リンゴを食べよう

山田 では、先生のお勧めの果物は何ですか。

白澤 何といってもリンゴですね。「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」という言葉もあるように、リンゴには健康によい成分がたくさん含まれています。その代表がポリフェノールですね。リンゴにはプロシアニジン、カテキン、ケルセチンなど何種類ものポリフェノールが含まれ、これらを総称して「リンゴポリフェノール」と呼んでいるほどです。こうしたポリフェノールには、脂肪の蓄積を抑え、中性脂肪を減らす働きがあります。特にプロシアニジンにはがん細胞を自死させる働きのあることがわかっています。

山田 いろんな栄養素や抗酸化作用を持つリンゴは、「果物の王様」ですね。1日1個は食べて健康を維持したいものです。

山田英生:健康な歯の保ち方や目の老化対策

2014-05-15 10:53:37 | 高齢社会
健康長寿のカギを握る、歯と目。

毎日の手入れと正しい生活習慣で若々しく。

老化と歯、目の健康

 「最近、硬いものが食べられなくなった」「新聞の活字が見えにくい」―。こんな兆候が出たら、歯や目の老化のサインかも知れません。年をとるごとに増える体の変調。中でも大切なのが、歯と目の健康ではないでしょうか。「いくつになっても、自分の歯で食べたい」「できるだけ長く目の健康を保ち、快適な生活を送りたい」。こんな思いは、高齢者なら誰でも抱くはず。歯と目は、生きる力であり、噛む力と視力が十分であれば、活動意欲はさらに高まるでしょう。寿命と老化研究の第一人者で、順天堂大学大学院教授の白澤卓二さん(55)と山田英生山田養蜂場代表(55)が健康な歯の保ち方や目の老化対策などについて語り合いました。

80歳でも20本の歯を

山田 食事は、よく噛んでゆっくり食べることが大切ですね。でも、噛みたくても歯がないと、うまく食べることもできません。年をとるごとに自分の歯が減っていくことは、とても寂しいことです。いくつになっても自分の歯で好きなものが食べられることほど、幸せなことはないでしょう。
 私たちの歯は、親知らずを除くと28本ありますが、自分の歯が20本以上ある人は、60歳で8割弱といわれています。それが70歳になると、約5割に減り、80歳になると3割弱というように、加齢とともに減っていく、と聞きました。いつまでも元気に暮らすためには、自分の歯を維持することが、とても大事なことですよね。

白澤 歯と全身の健康は密接につながっており、歯の健康を損なうと、心身にも悪影響を及ぼしかねません。厚生労働省や日本歯科医師会が推進している「8020運動」は、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という国民運動ですが、なぜ20本以上の歯が必要かといえば、20本以上あれば、 ほとんどの食べ物を噛み砕くことができるからです。実際、「20本以上の歯が残っている高齢者は、残っていない人より活動的で、寝たきりになる人も少ない」との報告もあります。

山田 自分の歯がたくさん残っていれば、それだけ食べる楽しみも増えて、活動意欲もわいてくるというわけですね。

白澤 はい。この報告を裏付けるような興味深い研究もあります。東北大学大学院の歯学研究グループが健康診断を受けた70歳以上の高齢者を対象に認知症の程度と残存歯数との関係を調べた調査です。それによると、「正常な人たち」は平均で14・9本、「軽度認知症を疑われる人たち」は13・2本、「認知症が疑われる人たち」は9・4本の歯が残っており、健康な人ほど自分の歯を多く持っていることがわかりました。つまり、自分の歯が少ない人ほど、認知症になりやすいといえますね。


侮れない歯周病

山田 それは、私も聞いたことがあります。高齢になって歯が何本残っているかは、寿命とも関係があり、「残っている歯が多い人ほど寿命が長い」との調査結果もあるそうですね。歯を失うのは、歯周病とむし歯が主な原因といわれています。でも、最近では歯周病が全身疾患の引き金となったり、糖尿病や心筋梗塞などと深く関わっていることがわかってきた、と聞いたことがあります。歯周病は、細菌が原因で歯茎が炎症を起こし、悪化すれば歯を支える骨まで溶ける怖い病気だそうですね。

白澤 その通りです。歯周病は加齢とともに増える病気で、高齢者が歯を失う原因の90%を占めるとのデータもあります。歯周病は初期の段階では痛みがほとんどなく、歯がぐらついて抜けそうになるまで気がつかないこともあります。歯周病を予防するには、食後や寝る前にしっかり歯を磨き、歯垢を取り除くことが大事です。
 それでも歯茎が腫れたり、出血するなど歯周病の前段階である歯肉炎になったら要注意です。そうならないためにも、3ヵ月から6ヵ月ごとに定期的に歯科検診を受けてほしいですね。歯が抜けても放置せず、自分に合った義歯(入れ歯)を作ることをお勧めします。しっかりと噛み合った義歯なら、硬いものも噛むことができ、自分の歯に近い効果が得られます。しっかり噛めれば、全身の栄養状態もよくなって脳も活性化されます。

山田 義歯が合うか合わないかは、とても重要なことで、合わないために食べたいものが食べられなければ、その人のQOL(生活の質)が著しく損なわれますね。

白澤 義歯は、ただ作ればよいというものではなく、歯科医院で何回も噛み合わせ具合を調整し、違和感がなくなるまでピタッと合うようにするのが一番です。101歳で亡くなられたプロスキーヤーの三浦敬三さんも総入れ歯でしたが、その調整も、かかりつけの歯科医によくやってもらっていたようです。そのせいか、生前、圧力鍋で丸ごと煮た鶏を、ひと口60回噛んで骨まで食べておられました。


心がけたい口腔ケア 

山田 それともう一つ、年をとると、噛む力が衰えると同時に、食べたものを飲み込む力が低下してきます。食べ物をのどに詰まらせて死亡する事故も年間約4000件ほど起きているそうです。私どもでも、数年前からローヤルゼリーやカプサイシン(トウガラシの辛味成分)を使い、嚥下力を回復させるサプリメントの研究開発に取り組み、ようやく完成させたところです。

白澤 そうですか。高齢になると、食べたものが飲み込みにくくなる嚥下障害に陥ることがよくあります。これが原因となって起こるのが、「誤嚥性肺炎」です。食べたものや飲んだものが食道ではなく、気道に流れ込んで起きるのですが、口の中の歯周病菌などが感染して炎症を起こします。ご高齢の方で、肺炎で亡くなる方も少なくないようですが、その多くが誤嚥性肺炎といわれています。特に寝たきりの方は、要注意ですね。

山田 口の中の健康が全身の健康にも影響を与えることを考えれば、日ごろから口の中を清潔に保つ口腔ケアが欠かせませんね。ハチミツには、歯石予防効果のあることが当社の最近の研究結果で明らかになっていますし、口腔内の善玉菌としての乳酸菌の働きなども口の中の健康に大きく関わっていることがわかっています。歯も含めたトータルでの口腔の健康が大切ではないでしょうか。

白澤 その通りです。日ごろから歯の手入れをきちんとすることは、とても重要です。歯は「生きる力」の一つといっても過言ではありません。

山田 今は、私たちが子供だったころに比べると、むし歯もだいぶ減ったような気がします。逆に「80歳で20本以上の歯を持つ人は、3人に1人と、8020運動がスタートした約20年前に比べると、大幅に増えた」と新聞で読んだことがあります。やはり、時々歯科医に歯石を取ってもらったり、定期的に歯科健診を受けるなど歯の健康に関心を持つ人が増えてきたからでしょうか。

白澤 そう思いますね。高齢になっても、ものをおいしく食べるには、日ごろから歯の手入れを怠らないだけでなく、歯の診察や相談に乗ってもらったり、自分に合った義歯を作ってくれる身近な歯科医を持つことが大事です。かかりつけの内科医を持つと同時に、かかりつけの歯科医も、ぜひ持っていただきたいですね。


緑黄色野菜を摂ろう

山田 年をとると、歯と並んで困るのが視力の低下です。加齢に伴う目の病気としては、水晶体が白く濁る「白内障」や目の圧力で視神経が傷つき、視野が狭くなる「緑内障」などがよく知られています。こうした病気も、最悪の場合は、失明につながる恐れもあるだけに注意が必要ですね。

白澤 年齢を重ねると、老眼が進行し、涙の分泌量も減ってきます。涙は目の表面を覆って角膜や結膜を保護してくれますが、分泌量が減ると、目の表面が乾燥し「ドライアイ」になりやすくなります。「目が疲れやすい」「しょぼしょぼする」などの症状があれば、ドライアイの可能性が高いですね。それと、最近、増えているのが「加齢黄斑変性症」です。

山田 私もその病名はよく知っております。この病気は、病名に「加齢」が付く点からいっても、老化と関係がありそうですね。

白澤 網膜の中心部にある「黄斑」と呼ばれる部分に異常が起こり、目が見えにくくなる病気です。おっしゃる通り、加齢に伴う病気で、日本でも寿命の伸びとともに近年、急激に増えてきました。ドライアイをはじめ、こうした目の老化を防ぐには、「目のビタミン」といわれるビタミンAがとても威力を発揮します。目の粘膜や角膜の乾燥を防ぎ、目の疲れや視力の回復に効果があります。たとえば、ニンジンやコマツナ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜には、「β-カロテン」が豊富に含まれていますが、これを摂取するとβ-カロテンは、体内でビタミンAに変化します。目の老化対策にはこうした野菜を積極的に摂っていただきたいですね。

山田 高齢になると、老化現象のせいか体のいろんなところに違和感が生じます。中でも、気になるのが心身の疲れですね。若い時は一晩も眠れば、すぐ回復したものですが、年をとると、なかなか疲れが取れません。疲労が重なり、体が弱ってくれば、他にもいろんな病気が出てきたり、持病が悪化する恐れも出てきます。


疲れた体にアミノ酸

白澤 疲労を溜め込まないためには、早めに休息を取ることです。それには睡眠が一番で、7時間ぐらいはぜひとも確保してほしいですね。実際、「睡眠時間が7時間の人が一番長生きする」との報告もあるほどです。加えて、時間だけでなく、質のよい睡眠をとることも重要です。それには、入浴が効果的です。少しぬるめのお湯にゆったりつかれば、自律神経の副交感神経が優位となり、心身ともにリラックスできます。

山田 そうすれば、寝つきも早く、質のよい睡眠が得られ、快適な目覚めが期待できる、というわけですね。

白澤 はい。それと、疲れた体には「アミノ酸」を補給するのもよいでしょう。アミノ酸がいくつか結合したものを「ペプチド」といいますが、これが豊富に含まれている大豆やモヤシなどを積極的に食べれば、疲労回復にも効果があります。

山田英生:健康によい食べ方や食卓での工夫

2014-05-15 10:36:24 | 健康な食べ方
野菜を先に。早食い、夜食は控える。


食べ方も、肥満を防ぐ大切な習慣です。


健康的な食スタイル

 万病のもとである肥満を防ぐには、食事の量を減らすだけでなく、その食べ方も重要になってきます。朝食は抜かずに、朝・昼・夜と3食きちんと摂り、夜食はなるべく控える。早食いはやめ、よく噛んでゆっくり食べる。できれば、すぐに満腹感の得られやすい野菜から先に食べ、主食のご飯やパンは後回しにする。食べることは、まさに食文化であり、食習慣や食スタイルは健康とは切っても切れない大切な関係にあります。寿命と老化研究の第一人者で、順天堂大学大学院教授の白澤卓二さん(55)と山田英生山田養蜂場代表(55)が健康によい食べ方や食卓での工夫などについて語り合いました。

1日3食を規則的に

山田 肥満は老化を早め、生活習慣病や認知症、がんなどを発症しやすい、といわれています。前回の対談で先生は、「肥満を防ぐには、『20歳の時の体重+5kg以内』に維持することを目標に、食事の量は『腹七分目』に抑えることが大切だ」とおっしゃいましたが、そのためにはどのような食生活を心がければ、よろしいのでしょうか。

白澤 食事は1日3食、規則正しく摂ることが大切です。「痩せたいから」といって食事を抜くのは、感心できませんね。特に若い人の中には、「食べなければ痩せられる」と思い込んでいる人が実に多いようですが、これは大きな間違いです。人間の体には、飢餓の状態に対応する仕組みがあります。1食でも抜けば、体は飢餓状態がやってきたと思って、次の食事の時に食べたものをできるだけ溜め込もうとする習性があり、これが肥満の原因になりやすいのです。

山田 「痩せよう」と思って1食抜いたのに、逆に太ってしまっては本末転倒ですね。最近、若い人を中心に朝食を抜く人が増えてきました。食べたとしても飲み物にお菓子とか、サラダ程度の軽食で済ませている人が多いようです。朝食抜きは、ダイエット目的の若い女性の間で特にはやっているようですが、男性でも最近メタボを意識してか、食べない人が目につきます。やはり朝食を食べないのは、健康上悪いですか。

白澤 よくありませんね。朝食を抜くと、前夜の夕食から翌日の昼食まで半日以上も時間があき、胃腸は次の昼食を待ち構えていたかのように最大限にカロリーを溜めようとします。こんな時に昼食を食べれば、糖質(ブドウ糖)の吸収が早まり、血糖値が急激に上昇したり、脂質が吸収されやすくなるのは、一目瞭然です。血液中の余分なブドウ糖やコレステロールが中性脂肪に換えられ、脂肪細胞に蓄積されやすくなります。
 こうした朝食を抜く食生活が習慣化すれば、肥満にとどまらずインスリンの分泌量が減ったり、働きが悪くなって糖尿病や高血圧を引き起こすリスクが高くなります。また、食事を抜くことは栄養不足にもつながり、老化を早めることにもなりかねません。ですから、1日3食、それもできるだけ均等に食べることが老化予防や肥満対策には重要なのです。


避けたい深夜食

山田 でも、最近は夜遅くまで仕事をしたり、遊んだりする夜型人間が増え、深夜に食事を摂る人も少なくありません。こうした人は、朝早く起きられず、食欲や時間がないからといって朝食を食べずに、慌てて家を飛び出している人が多いようです。「夜遅く食事を摂ると、太りやすい」ともいわれていますが、深夜に食べるのは控えたほうがよいですか。

白澤 夜遅く食べるのは、避けたほうが無難ですね。夜は昼間のように活動しないので、夜遅く食べるとエネルギーが消費されず、食べたものが中性脂肪となって脂肪細胞に蓄積されるため、太りやすくなるのです。「BMAL1(ビーマル・ワン)」という言葉をお聞きになったことがあると思います。脂肪を取り込むために働くタンパク質のことで、体内時計とも関係しています。日本大学の榛葉繁紀先生によると、時間によって分泌量が変わり、昼間は少なく夜になってから増え始め、特に午後10時から午前2時にかけて最も多く分泌されるそうです=左はイメージ図。この時間帯に食事をすれば当然、脂肪を溜めやすくなり、太りやすくなりますね。ですから、夕食は遅くとも夜8時から9時ごろまでには食べ終えるようにしたいものです。
山田 そうすると、BMAL1の分泌量が少ない時間帯の昼食や朝食をしっかり食べ、夕食は夜の午後6時とか7時の早い時間帯になるべく軽めに食べるのが、太らないための最も効果的な方法ですね。

白澤 はい、そうです。


早食いは肥満のもと 

山田 それと、最近気になるのは、早食いの人が増え、食事にかける時間が短くなってきたのではないか、ということです。外食の場合は、ハンバーガーショップや牛丼、カレー店などファストフードの店が増え、客の回転を速くしたい店側の仕掛けもあってか10分以内で食事を済ませる人が多いようです。自宅で食べる場合でも、手軽に食べられる出来合いの総菜などを、デパ地下などで買ってきては、限られた時間の中で食事を済ませる人が増えている、と聞きました。

白澤 確かに食事に時間をかけ、ゆっくり食べる人は以前に比べ確実に減ってきているようです。例えば朝食の場合、早い人なら5分もかけていないでしょう。朝、駅の立食いソバ屋では、注文して出てきたソバを3分くらいでかき込んで食べ終えている人もいます。家でもパン食なら10分もかけていないかも知れません。昼食だって、せいぜい15分くらいでしょう。比較的時間をかける夕食にしても30分ぐらいが普通ではないでしょうか。

山田 よく「早食いは太る」といいますが、本当ですか。

白澤 本当です。食事を始めてから満腹感を覚えるまで20分から30分かかります。ところが、よく噛まずに飲み込むように食べると、脳にある満腹中枢が「そろそろお腹がいっぱいだ」という信号を出す前に食べ過ぎて、太ってしまうのです。早食いを防ぐには、時間をかけてゆっくり食べるために、ひと口食べたら箸を置くような習慣をつけるのもよいですね。また、旬の野菜や果物、魚などの美味しさをじっくり味わって食べれば、早食いにはなりません。最低でも1回の食事に20分から30分はかけるようにしたいものです。


よく噛んで食べよう

山田 ゆっくり食べるには、よく噛んで食べるのがよい、ともいわれています。よく噛んで食べればそれだけ消化もよくなり、胃腸にも負担がかかりません。

白澤 100歳を超えても現役のプロスキーヤーだった故*三浦敬三さんも、総入れ歯ではありましたが、ひと口60回は噛むことを日課とし、圧力鍋で煮た鶏を骨まで食べておられました。三浦さんのように60回噛めれば申し分ありませんが、少なくとも30回は噛んでほしいですね。

山田 ヨーロッパではビールやワインを飲みながら食事に2時間、3時間かけるのも珍しくないといわれています。一方、日本では家庭での食事にせいぜい30分かければよいほうでしょう。親しい人と会話を楽しみながらゆったりと食事をするのは、豊かさの証しかも知れませんね。

白澤 まさに食べることは、その国の文化の一つといってもよいでしょう。ただ、お腹を満たすためだけに食べるのは、とても文化的とはいえません。ゆっくり味わって食べれば素材の持つ味や料理の味も、しっかり知ることができます。また、噛むことは、歯茎にある神経を通して脳に直接刺激を与え、脳の血流や代謝がよくなって脳の活性化にもつながります。よく噛むためには時々、ゴボウやニンジン、スルメやタコといった歯ごたえのある食材を選ぶのも一つの方法です。食材を大きめに切れば、自ずとよく噛むようになります。


食事はまず野菜から

山田 食事をする時、好きなものから先に食べる、それとも好きなものは取って置いて最後に食べる。人によって食べ方も千差万別です。お腹が空いていると、ご飯から先に食べたくなりますが、肥満を防ぐには「先に野菜を食べるほうがよい」との記事を新聞で読んだことがあります。

白澤 その通りです。肥満を防ぐには、何から先に食べたらよいか、その順番も重要です。ご飯やパンなどの主食から先に食べると、糖質の摂り過ぎになることがあります。肥満防止のためには、まずサラダやおひたし、煮物、汁物など野菜から食べ始めるとよいでしょう。そのあと、肉や魚などの主菜を食べ、最後にご飯などの主食を食べるのが、太らない食べ方です=左はイメージ図。野菜や汁物の具には食物繊維を豊富に含む食材が多く、すぐに胃が膨らんで満腹感が得られやすいうえに、肉や脂っこい料理の脂質の吸収を抑えてくれます。しかも、ご飯などの糖質の吸収も緩やかにし、血糖値の急激な上昇を防いでくれます。

山田 食べる順番を変えるだけで肥満が予防でき、糖尿病予防にもつながれば、こんなによいことはありませんね。

白澤 それと、一度にたくさん食べる「ドカ食い」や、食べられる時に集中的に食べる「まとめ食い」、テレビを見たり、新聞を読んだりしながら食べる「ながら食い」も肥満予防の大敵であり、よくありません。また、食事の味付けが濃いと、ついつい食が進んで食べ過ぎてしまううえに、塩分の摂り過ぎで高血圧を招く恐れだってないとはいえません。ただ、いきなり塩分を極端に減らすと、食事がおいしくなくなりますので、少しずつ薄味に慣れるようにしていくことです。薄味に慣れれば、素材そのものの味も感じられるようになります。

山田 あと、食卓ではどんな工夫をしたらよいですか。

白澤 毎日の食事では、なるべく1人に1皿を盛り付けるようにしたほうがよいでしょう。大皿から取り分けて食べると、つい食べ過ぎてしまうこともあるからです。また、茶碗も小ぶりのものに換えたり、主菜にキャベツやレタスを添えればボリューム感も増し、少ない量でも食べた気がします。できれば、ご飯をひと口分、少なめによそう習慣も身につけたいですね。それと、リビングなどの目に見えるところにお菓子やケーキなどを置かないことです。

山田 毎日の暮らしの中でも、ちょっと工夫するだけで肥満防止につながるアイデアが結構ありますね。

*三浦敬三さん (1904~2006年)。99歳でモンブランの氷河をスキー大滑降。プロスキーヤーで登山家の三浦雄一郎さんの父親。