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山田英生:―複数種類の蜂蜜の併用で効果が高まる可能性―

2014-06-10 11:36:07 | 健康な食べ方
株式会社山田養蜂場(本社:岡山県苫田郡鏡野町 代表:山田英生)は、このたび、「山田養蜂場 みつばち研究助成基金」にてイタリア・東ピエモンテ大学のエリア・ランツァート博士を助成し、山田養蜂場が提供した、完熟生蜂蜜が、傷ついた皮膚の“再上皮化(さいじょうひか)”を促進して治癒を促すこと、さらに、蜂蜜の種類によって再上皮化を促進するメカニズムが異なることを確認しました。今回の研究から、伝承的に用いられてきた蜂蜜の創傷治癒効果に関わる作用機序の一端が明らかとなりました。
なおこの成果は学術誌“Wound Repair and Regeneration”にて発表されました(詳細は3ページ目をご覧ください)。

【背景と目的】
山田養蜂場は創業以来、加熱しない天然の蜂蜜の中に未知の有効成分があると考え、熱の影響を避けるために45℃以下で管理した完熟生蜂蜜を販売しています。
蜂蜜は古来より、創傷治癒やスキンケアを目的として世界各地で伝承的に利用されてきた天然素材であり、医療現場での使用を目指した研究も数多く行なわれています。一方で、治癒に至るまでのメカニズムや、蜂蜜の種類、すなわち蜜源植物※1)による効果の違いについては不明な点が多く残されています。
そこで弊社は、イタリア・東ピエモンテ大学のエリア・ランツァート博士らの研究グループを助成し、蜂蜜が創傷を治癒するメカニズムとはどのようなものか、また蜂蜜の種類によって効果やメカニズムに違いがあるかどうかを、傷ついた皮膚の“再上皮化”に注目して検証しました。再上皮化とは、傷の周辺の上皮細胞(体の表面の細胞)が移動して傷をふさぎ、元の状態へ戻そうとする過程のことです。この研究では、山田養蜂場が販売する非加熱の完熟蜂蜜を用いました。

【方法】
①シート状に培養したヒト皮膚細胞に引っかき傷をつけ、蜂蜜を添加しない状態、あるいはアカシア蜂蜜、ソバ蜂蜜、マヌカ蜂蜜※2)をそれぞれ0.1 %の濃度で細胞に添加した状態で24時間培養。再上皮化促進の指標である“再上皮化率”を算出し比較。
②再上皮化に関わる細胞内のメカニズムを明らかにするため、蜂蜜を添加した皮膚細胞における関連遺伝子の発現量やタンパク質の活性を評価。

【結果】
①すべての蜂蜜が同様に、無添加よりも著しく高い再上皮化率を示しました(上図)。
②蜂蜜の種類によって、再上皮化に関わる遺伝子の発現やタンパク質の活性に違いが見られました。

【まとめ】
非加熱の完熟蜂蜜が、傷ついた皮膚の再上皮化を促進して治癒を促すこと、さらに、蜜源植物によって異なるメカニズムで再上皮化を促進することが、試験管内試験によって示されました。この結果は、複数種類の蜂蜜の併用によって、より高い治療効果が得られる可能性を示唆しています。今回の研究成果が、日常的な怪我はもちろん、重篤な皮膚症状の治療に役立つことが期待できます。

本リリースに関するお問い合わせ) 株式会社山田養蜂場 文化広報室 関、寺田 〒708-0393  岡山県苫田郡鏡野町市場194
TEL:0868-54-1906 (月~金 9:00~17:30、土日祝除く) / FAX:0868-54-3346 / ホームページ:http://www.3838.com
みつばち健康科学研究所ホームページ:http://www.bee-lab.jp / 公式ツイッター:@yamadabeelab

 参考資料

【背景と目的】
1)蜂蜜には傷を治す力があるが、どのようなメカニズムで治癒するのかは不明だった
加熱しない天然の完熟蜂蜜は、エネルギー源となる糖分をはじめ、栄養の代謝を促すビタミン類や、体の調子を整えるミネラル類、必須アミノ酸、酵素、フラボノイドなど、実に180以上の成分を含んでいることが知られており、他にも未知の成分があると考えられています。
古来より、貴重な栄養源として重宝されてきた蜂蜜は、同時に、創傷治癒やスキンケアを目的として世界各地で伝承的に利用されてきました。医療の現場においても、傷や火傷の治療に役立つ天然素材として期待を集めており、絆創膏や湿布の薬剤など、臨床での使用を目指した研究も数多く行なわれています。一方で、治癒に至るまでのメカニズムや、蜂蜜の種類、すなわち蜜源植物による効果の違いについては不明な点が多く残されています。

2)創傷治癒に至る重要な過程: “再上皮化(さいじょうひか)”
創傷を治癒する際に、皮膚は“再上皮化”を起こします。再上皮化とは何か、模式図を使って説明します。


 つまり再上皮化とは、傷の周辺の上皮細胞が移動して、傷を元の状態へ戻そうとする過程のことです。


3)試験の目的: 蜂蜜による創傷治癒に“再上皮化”が関わっているか明らかにする
以上の点を踏まえて、弊社は、イタリア・東ピエモンテ大学のエリア・ランツァート博士らの研究グループを助成し、加熱しない天然の完熟蜂蜜が創傷を治癒するメカニズムとはどのようなものか、また、蜂蜜の種類によって効果やメカニズムに違いがあるかどうかを、“再上皮化”に注目して検証しました。


【試験概要】
試験1) 蜂蜜は、傷ついた皮膚の“再上皮化”を促進することによって治癒を促す
シート状に培養したヒト皮膚細胞に針状のチップを用いて引っかき傷をつけ、蜂蜜を添加しない状態、あるいは、アカシア蜂蜜、ソバ蜂蜜、マヌカ蜂蜜をそれぞれ0.1 %の濃度で細胞に添加した状態で24時間培養しました。陽性対象として、強力な創傷治癒促進剤である血小板溶解液を20 %の濃度で添加しました。そして、引っかいた直後の傷の幅と、培養後の傷の幅から再上皮化率を算出しました。その結果、すべての蜂蜜が同様に、無添加の状態よりも著しく高い再上皮化率を示しました(図)。再上皮化率を高める成分は再上皮化を促す働きを持つと判定できるため、蜂蜜は、傷ついた皮膚の“再上皮化”(前ページ模式図③④⑤)を促進することによって治癒を促すと考えられます。

試験2) 蜂蜜の種類によって異なるメカニズムで再上皮化を促進する
さらに詳細な創傷治癒メカニズムを解析するため、アカシア蜂蜜、ソバ蜂蜜、マヌカ蜂蜜をそれぞれ添加したヒト皮膚細胞における、再上皮化関連遺伝子の発現および関連タンパク質の活性を調べました。その結果、蜂蜜の種類によって違いがあることがわかりました。特に、アカシア蜂蜜とソバ蜂蜜が上皮間葉転換(前ページ模式図③)を制御するさまざまな遺伝子の発現を著しく変化させたのに対して、マヌカ蜂蜜では顕著な変化がほとんど認められず、アカシア蜂蜜およびソバ蜂蜜と、マヌカ蜂蜜とでは、再上皮化を促進するメカニズムが異なることが推察されました。この違いは、蜜源植物に由来する成分の違いによるものと考えられます。

【まとめ】
今回の研究によって、非加熱の完熟蜂蜜が、傷ついた皮膚の“再上皮化”の促進によって治癒を促すこと、さらに、蜜源植物によって異なるメカニズムで再上皮化を促進することが明らかとなりました。この結果は、複数種類の蜂蜜の併用によって、より高い治療効果が得られる可能性を示唆しています。今回の研究成果が、日常的な怪我はもちろん、重篤な皮膚症状の治療に役立つ可能性があります。

【出典】 ※本リリースでご報告した研究成果は、下記の論文で発表されています。
Ranzato E, Martinotti S, Burlando B., Epithelial mesenchymal transition traits in honey-driven keratinocyte wound healing: comparison among different honeys. Wound Repair and Regeneration, 20(5), 778-785, 2012.
【用語解説】
※1)蜜源植物・・・蜂蜜の原料となる花蜜を求めて、ミツバチが訪花する植物。例えばソバ蜂蜜は、ミツバチがソバの花蜜を集め、自身の消化酵素でショ糖をブドウ糖と果糖に分解し、糖度を79 %以上に高めた蜂蜜である。
※2)マヌカ蜂蜜・・・ニュージーランドとオーストラリア南東部に自生するフトモモ科の植物・マヌカ(ギョウリュウバイ)を蜜源とする蜂蜜。強い殺菌力を持つことが知られている。

【山田養蜂場 みつばち研究助成基金について】
「山田養蜂場 みつばち研究助成基金」は、予防医学的健康観に基づいて、蜂産品を初めとする天然素材を対象とした研究を活性化し、その成果を皆さまの健康や美容に活かしたいとの思いから、2008年、創業60周年を機に設立した基金です。これまでに、医学、薬学、生物学、機械工学などの幅広い分野における国内外の研究を支援してまいりました。2013年度も募集を行ない、現在、選考を行なっているところです。本基金も6年目を迎え、その成果は、国内外の学術誌や学術大会などで続々と発表されております。今後も、ニュースリリースやホームページ、セミナーなどで成果をお知らせしてまいります。どうぞご期待くださ

山田英生:ブラジル産プロポリスに脂肪肝予防効果の可能性

2014-06-10 11:34:27 | 脂肪肝予防
株式会社 山田養蜂場(本社:岡山県苫田郡鏡野町、代表・山田英生)「みつばち研究助成基金」採択者である小川(おがわ) 智(とも)弘(ひろ) 助教(近畿大学工学部)は、助成研究の結果「脂肪肝や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対するプロポリス※2の予防効果の可能性があること」を明らかにしました。本研究では、プロポリスの継続摂取は、肝臓の脂肪化や線維化※3を抑制し肝臓を保護する可能性が示唆されました。
また、この結果は、2013年12月6日(金)に行われた第40回日本肝臓学会西部会(於岐阜都ホテル)にて、発表されました。
【発表概要】
■演題:プロポリスの脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に対する予防及び
治療効果の検討
(小川 智弘/近畿大学工学部教育推進センター 助教)
■成果:マウスに8週間NASH病態(肝臓の脂肪化、炎症、線維化)を引き起こす飼料を与えながら、プロポリスを与えたところ、肝臓の組織障害を調べるために使われるALT※4値の上昇が有意に抑えられ(右図)、また、肝臓の小脂肪滴※5が減少しました。さらに、脂質代謝に関連する遺伝子の発現が正常化され、脂肪酸の生合成抑制や、細胞中の脂肪酸含量の減少に繋がり、
プロポリスによって肝臓の脂肪化が抑制されていることがわかりました。
細胞培養試験では肝臓の線維化を引き起こすヒト活性化星細胞※6の増殖や、線維化関連遺伝子の発現も有意に抑制し、プロポリスが肝線維化も予防する可能性が明らかとなりました。
これらのことから、プロポリスは脂肪化や線維化から肝臓を保護し、脂肪肝に対する予防効果があることが期待されます。


【小川 智弘先生のコメント】
自然食品の肝障害の予防や治療への可能性を明らかにすることを目的として研究を進めています。プロポリスは様々な肝障害モデルに対して肝障害抑制効果があることが報告されてきましたが、本研究により、脂肪肝やNASHに対してもプロポリスの予防効果が示されました。
今後は詳細なメカニズムを解析し、プロポリスの効果を示すことで、ヒトにおける肝臓の脂肪化や線維化の予防に応用できればと思います。


【背景】
肥満は高血圧、糖尿病、動脈硬化、肝障害の引き金になるとされています。特に肝臓の脂肪化や線維化により肝臓の機能が正常に働かなくなる肝障害は、自覚症状がないことが多く、肝臓の脂肪化や線維化が進むと肝炎・肝硬変・肝臓がんに進行する恐れがあり、予防や早期の治療が大切です。肥満による肝障害の一つに、非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis:NASH)があります。NASHは、アルコール非摂取者に起こる肝炎で、肥満、糖尿病、長期静脈栄養などによる過剰栄養が原因と考えられています。国内患者数は約100-200万人とされ、今後も患者数の増加が予想されています。
しかし、その発症機序や有効な治療法は未だ見出されていません。インスリン抵抗性改善薬の一つであるピオグリダゾンが、糖尿病を合併したNASH患者に改善効果をもたらしたとの報告もありましたが、この薬はアメリカ食品医薬品局(FDA)により、服用による膀胱がんの危険性が示唆されました。
このように一旦発症してしまうと、薬剤の副作用も考慮しなければならないため、予防することが大切です。ミツバチ産品の様な自然食品がNASHの予防に有効であることが明らかとなれば、副作用も少なく安心して食生活に取り入れることができるでしょう。
そこで、抗腫瘍や抗菌、抗炎症、免疫力強化などの多様な効果が報告されているプロポリスが、NASHと類似した肝病態を示すモデルマウスに対してどのような効果を示すかを調べました。

【試験方法】
◆モデルマウスを用いたNASH予防効果の検証
方法:NASHモデルマウスにプロポリス100 mg/kg、300 mg/kgの用量で8週間投与しました。
 ①肝障害の程度を調べるために血清ALT値を測定しました。
 ②肝臓に蓄積した脂肪量を評価するためにHE染色※7を行いました。
 ③肝臓の脂質代謝や線維化を調べるために各関連遺伝子の発現量を比較しました。
◆培養細胞を用いた線維化への影響の検証
方法:ヒト活性化星細胞にプロポリス0-0.1 mg/kgを添加しました。
 ①線維化への影響を調べるために、線維化をもたらす星細胞の増殖への影響を調べました。
 ②線維化への影響を調べるために、各関連遺伝子の発現量を比較しました。

【結果】
 ◆モデルマウスを用いたNASH予防効果の検証
  ①プロポリス非投与のNASHモデルマウス群では肝臓の組織障害を調べるために使われるALTの値が103.7±42.2 U/Lに上昇したのに対して、プロポリスを100 mg/kgおよび300 mg/kgの濃度で投与したマウス群では、ALT値がそれぞれ57.8±66.1 U/Lと23.6±10.2 U/Lに有意に抑えられました(右図)。
②HE染色による病理診断の結果、NASHモデルマウスに対してプロポ
リスの投与による肝臓の小脂肪滴が減少し、脂肪化抑制効果が示されました。
③肝臓の脂質代謝に関連する遺伝子の発現がプロポリスの投与(300 mg/kg)によって正常状態にまで改善しました。
◆培養細胞を用いた線維化への影響
①プロポリスを0.1 mg/mlの濃度で培養ヒト活性化星細胞に添加したところ、細胞の増殖が抑制され、細胞死を誘発しました。
②線維化関連遺伝子の発現もプロポリスの添加により抑制されました。

【まとめ】
 プロポリスの継続的な摂取は、脂肪化や線維化から肝臓を保護し、脂肪肝や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を予防する可能性があることが示唆されました。脂肪化や線維化により引き起こされる肝硬変や肝臓がんへの予防にも繋がることが期待されます。

≪用語説明≫
※1 みつばち研究助成基金…2008年山田養蜂場創業60周年を機に設立した基金。ミツバチ産品(ローヤルゼリー、プロポリス、蜂蜜、花粉荷、ミツロウ、蜂の子、蜂毒など)や世界の機能性素材の新たな可能性を求め、「予防医学」や「ミツバチ・養蜂」に関する研究の支援を目的とし、2013年度公募で第6回目となる。
※2 プロポリス…ミツバチが採集した植物の新芽や樹皮などに、ミツバチ自身の分泌物などを混合して作る暗緑色から暗褐色の樹脂状の天然物質。産地によって起源となる植物や有用成分が異なる。ブラジル産プロポリスは、アルテピリンCなどの桂皮酸誘導体を豊富に含有し、抗炎症作用、抗ウイルス作用、抗酸化作用、抗アレルギー作用および抗腫瘍作用などを示すことが報告されている。
※3 線維化…細胞で過剰にコラーゲンが産生され、硬化した状態。
※4 ALT…アラニンアミノ基転移酵素とも呼ばれ、ピルビン酸とグルタミン酸をアラニンと-ケトグルタル酸に相互変換する酵素。人体のほとんどの組織に含まれているが、なかでも肝細胞への分布が圧倒的に多く、肝細胞の破壊あるいは細胞膜の透過性亢進の際に血中濃度が上昇する。
※5 脂肪滴…細胞内に蓄積された脂肪の塊。ほぼすべての細胞中に存在する。
※6 星細胞…肝臓のビタミンA貯蔵細胞。正常時と炎症時で性質が異なる。肝星細胞の機能の一つはビタミンAの貯蔵で、体内のビタミンAの80%が脂肪滴に貯蔵されている。もう一つの機能は肝障害時に線維化を引き起こす。コラーゲン線維を産生することで、肝炎が慢性化すると、肝星細胞が活性化して貯蔵ビタミンAが放出され、過剰のコラーゲン線維を造るようになり、肝障害による壊死局所において線維化を引き起こす。
※7 HE染色…ヘマトキシリン・エオシン染色の略語で、組織学において組織薄片の観察に使われる染色法。ヘマトキシリンは青紫色の色素であり、細胞核、骨組織、軟骨組織の一部、漿液成分が染まる。エオシンは赤~ピンクの色素であり、細胞質、軟部組織の結合組織、赤血球、線維素、内分泌顆粒が染まる。脂肪滴はHE染色で染まらず白くなる。

山田英生:―インドネシアの105人分の尿を解析―

2014-06-10 11:32:02 | 動脈硬化予防
株式会社山田養蜂場(本社:岡山県苫田郡鏡野町、代表:山田英生)は、インドネシア原産のメリンジョ※1)に豊富に含まれるポリフェノール類「レスベラトロール」に着目した研究に取り組んでいます。このたび、武庫川女子大学 国際健康開発研究所の家(や)森(もり) 幸男(ゆきお)所長および森(もり) 真(ま)理(り)講師との共同研究により、メリンジョ由来のレスベラトロール摂取量と健康状態との関連を科学的に検証することができるようになり、レスベラトロールを豊富に含むメリンジョの摂取によって動脈硬化が予防された可能性があることが示されました。メリンジョ摂取量は、尿中に排泄されたトランス-レスベラトロールおよびイソラポンチゲニン※2)の量を測定することによって、推定しました。今後、この方法を生かして、メリンジョ由来レスベラトロールの健康効果の検証を続けていきます。
この成果は、第49回日本循環器病予防学会※3)(2013年6月14日, 15日、金沢、来場者約230名)で口頭発表されました。

◆演題: メリンジョの有用性と尿中バイオマーカー
◆発表者(○演者): ○森 朱美1,2, 森 真理2, 谷 央子1, 木村 友香1, 橋本 健1, 立藤 智基1,2, 家森 幸男2
1 株式会社山田養蜂場本社 みつばち健康科学研究所, 2 武庫川女子大学 国際健康開発研究所
◆要旨
①尿中に排泄されたトランス-レスベラトロールおよびイソラポンチゲニン※2)の量から、メリンジョの摂取量を推定できることを明らかにしました(図)。
②インドネシアの村人105人から得た尿の分析結果とメリンジョ摂取頻度調査結果の相関関係を解析し、尿中からトランス-レスベラトロールまたはイソラポンチゲニンが検出された人は、メリンジョの種子を潰して油で揚げた「ウンピン」というチップスを多く食べていることを明らかにしました。
③尿中からトランス-レスベラトロールが検出された人のうち、50歳未満では総コレステロールと動脈硬化指数が低値の傾向を示しました。一方、50歳以上では高値の傾向を示し、調理で用いた油が、メリンジョの効果を打ち消した可能性が示唆されました。


◆まとめ
 本研究によって、メリンジョ由来のレスベラトロール摂取量と健康状態との関連を科学的に検証できるようになり、メリンジョの摂取によって動脈硬化が予防された可能性があることが明らかとなりました。また、効果を発揮するためには、調理法も重要であることが示唆されました。
今後、新しい解析方法を活用してメリンジョ由来レスベラトロール類摂取の有効性をより明らかにし、健康の維持・
増進に最大限に役立てられる調理法や摂取法についての研究を進めていきます。

<本リリースに関するお問い合わせ>
株式会社山田養蜂場  文化広報室  関、寺田 〒708-0393  岡山県苫田郡鏡野町市場194
TEL:0868-54-1906 (月~金 9:00~17:30、土日祝除く) / FAX:0868-54-3346 / ホームページ:http://www.3838.com
みつばち健康科学研究所ホームページ:http://www.bee-lab.jp / 公式ツイッター:@yamadabeelab

 参考資料

◆背景と目的
メリンジョはインドネシア原産の植物で、スープの具として、また、種子を潰して油で揚げた「ウンピン」というチップスとして古くから食されてきました。レスベラトロールをはじめとしたポリフェノール類を豊富に含むことから、近年、健康効果に関する研究も進められており、2008年に武庫川女子大学の家森幸男教授がインドネシアのマジャレンカ村で実施した調査でも、メリンジョを多く食べる人は血圧が低いとの結果が得られています※4)。しかしこれは食物摂取頻度調査票(FFQ)への回答をもとに比較した結果であり、本人の記憶に依存して過大・過小評価される可能性があることから、メリンジョの摂取量を客観的に推定する方法が求められていました。
そこで今回の研究では、尿中に排泄されるメリンジョの成分のうち、トランス-レスベラトロールとイソラポンチゲニンに注目し、尿中の各成分の量がメリンジョの摂取量を反映するか、また、健康状態を示す数値(動脈硬化指数など)と相関するかを検証しました。これらに相関があれば、尿中の各成分の量からメリンジョの摂取量を推定でき、メリンジョの健康効果を、確かな数値を用いて探ることができます。

◆試験① 尿中のトランス-レスベラトロールおよびイソラポンチゲニンの量から、メリンジョの摂取量が推定できる
健康な成人10人を5人ずつ2グループに分け、一方にメリンジョエキス粉末を1 g、もう一方に5 g摂取してもらいました。そして、摂取から24時間後までの尿を集めて、尿中に排泄されたトランス-レスベラトロールとイソラポンチゲニンの量を測定しました。その結果、メリンジョエキス粉末の摂取量が多い方が、尿中のトランス-レスベラトロールおよびイソラポンチゲニンの量が多くなることが示され、尿中のトランス-レスベラトロールおよびイソラポンチゲニンの量を測定することで、メリンジョの摂取量が推定できることが分かりました。トランス-レスベラトロールは、ワインやブドウなどメリンジョ以外の食品からも容易に摂取できるため、これらを摂取する地域でメリンジョ摂取量を調査する際にはイソラポンチゲニンを指標とすることが望ましいと考えられます。


◆試験② 尿中からトランス-レスベラトロールやイソラポンチゲニンが検出された人は、「ウンピン」を多く食べている
 2008年にインドネシアのマジャレンカ村で採取した105人分の24時間尿※5)におけるトランス-レスベラトロールおよびイソラポンチゲニンの量を測定し、採尿と併せて行なった食習慣の調査結果との相関を調べました。その結果、尿中からトランス-レスベラトロールまたはイソラポンチゲニンが検出された人は、ウンピンを多く食べていることが分かりました。メリンジョスープの摂取量は、尿中のトランス-レスベラトロールおよびイソラポンチゲニンの量には関係しませんでした。調理法によって、成分の含有量や体内への吸収のされ方が異なると考えられます。

◆試験③ メリンジョの摂取量と、総コレステロールおよび動脈硬化指数との関係
メリンジョの摂取量と健康状態との関連を調べるため、試験②で測定した尿中のトランスレスベラトロールおよびイソラポンチゲニンの量を、採尿と併せて行なった健康診断の結果とともに解析しました。その結果、尿中からトランス-レスベラトロールが検出された人のうち、50歳未満では総コレステロールと動脈硬化指数が低値の傾向を示す一方で、50歳以上では高値の傾向を示すことが明らかとなりました。年齢や摂取期間による動脈硬化指数の差は、調理法によってメリンジョの効能が異なる可能性が示唆されました。

◆まとめ
本研究によって、メリンジョの摂取量と健康状態との関連を科学的に検証できるようになり、メリンジョの摂取によって動脈硬化が予防できる可能性があることが明らかとなりました。また、摂取する人の年齢や摂取期間による効果の差は、調理法によって、メリンジョの効能が異なる可能性も示唆されました。
今後、新しい解析方法を活用してメリンジョ摂取の有効性をより明らかにし、健康の維持・増進に最大限に役立てられる調理法や摂取法の提案できるよう検討していきます。


◆解説
※1)メリンジョ・・・インドネシア原産のグネツム科植物の一種。インドネシアでは古くから栽培され、種子や葉、花が食糧として利用されている。特にドングリ大ほどの種子は栄養価が高く、炭水化物、タンパク質、レスベラトロール類(グネチンC、グネモノシドA、グネモノシドD、トランス-レスベラトロール、イソラポンチゲニンなど)を豊富に含む。有効性として、肥満予防作用、血管老化抑制作用、抗酸化作用、抗炎症作用、抗菌作用などが報告されている。
※2)イソラポンチゲニン…レスベラトロールのひとつで、メリンジョの他にも、一部の漢方薬や、南アメリカの北部に分布するヤシ(オビレハリクジャクヤシ)の種に含まれる。
※3)日本循環器病予防学会・・・国民の健康増進に寄与するため、循環器疾患の疫学・管理・予防に関する研究と応用発展を目指し、昭和41年に発足した、(社)日本循環器管理研究協議会が主催する学術集会。医師だけでなく、臨床と公衆衛生関係者が同じ目的のために集う(詳細は、日本循環器管理研究協議会ホームページをご参照ください:http://www.jacd.info/)。
※4)2008年11月に開催された”The 4th International Niigata Symposium on Diet and Health Integrative functions of diet in anti-aging and cancer prevention”にて森真理講師らが発表した。
※5)24時間尿・・・まる一日、24時間に排泄された尿を集めたもの。今回の試験では家森幸男所長が考案した「ユリカップ」という部分採尿カップを用い、ワンタッチで1回の尿の2.5%が溜められる簡便な方法で採取した。