朝鮮半島と中国と世界の動き

最新の週刊誌及び月刊誌などの拾い読み 朝鮮半島での出来事及び中国の政治経済などテレビ新聞が
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民進党幹部から聞こえる改憲の声

2017-05-14 21:05:25 | 政治


その流れを汲むかのように、民進党にも憲法の改正を主張する有力議員がいる。先に離党を表明して除名された長島昭久議員は、昨年の代表選立候補を検討した折、掲げた方針の一つが憲法改正であったと述べている。

また代表代行であった細野豪志氏は自衛隊について9条に書かなければならないという考えを持っていたようであり、現蓮舫代表の憲法改正「絶対反対」という頑迷固陋を嫌って代表代行を辞任したという。

前原誠司元外相も昨年の代表選に出馬した際、「9条1、2項は変えず、3項に自衛隊の位置づけを加える」ことを表明していた。

同様に、現在、党の憲法調査会長である枝野幸男議員も平成25(2013)年に、9条の1、2項に追加して、「自衛権の行使」を明文化した私案を発表している。

このように、今回安倍首相が自衛隊の憲法における位置づけに意欲を示した視点は、民主党の主要な幹部たちの思いとも一致している。日本国家の安全を真剣に考えるならば、憲法に記述がない方がおかしいという当然の帰結ではないだろうか。

PKOなどで海外派遣が頻繁になったが、憲法違反のレッテルを貼られる状況では海外に行きたくないという隊員も時折いると聞いたことがある。その心情を政治は我が事としてしっかり汲み取る必要がある。

5月3日、首相がビデオメッセージで打ち出した改正事項についても、蓮舫代表は「首相は『憲法を変える』というが、口を開くたびに、どこを変えるかを変えてくる。首相の、首相による、首相のための憲法改悪には絶対に反対しないといけない」と語っている。

その後で「未来志向の憲法を、国民の声を何よりも大事に構築していきたい」と願望を述べるが具体性がない。それもそのはずであろう。「国民の声」を真剣に聞けば、緊急事態対処や自衛隊の憲法での位置づけの必要性を求めていることがはっきりしている。

民主党時代は真っ当に聞こえてきた9条改正の必要性も、民進党には「必要なし」とでも聞こえてくるのであろうか。そうであるならば、我田引水もいいところである。

JBpressからの引用記事

慰安婦問題の再交渉を、要求してくる可能性は高い、それと盧政権が行った「太陽政策」

2017-05-14 20:03:35 | 政治


こうした動きを受け、北朝鮮も厳しい状況に直面している。北朝鮮の朝鮮中央通信は3日、中国が米国に同調し北朝鮮に圧力をかけているとして、「親善の伝統を抹殺しようとする容認できない妄動だ」と非難する論評を掲げた。反面、米国に対しては対話を促すような行動をとっている。
 
核ミサイル開発を決して放棄しない姿勢を見せてきた北朝鮮、北朝鮮に対する武力行使は犠牲が大きすぎるとして慎重になってきた米国。そうした中で局面を打開していくためには、現在の米国主導による「北朝鮮包囲網」が成功することを期待するのが最も現実的だ。
 
しかし、文氏が北朝鮮を訪問したり、南北対話や経済協力を開始したりすれば、韓国が北朝鮮包囲網を壊すことになりかねない。韓国が北朝鮮と対話すれば他の国は協力しないだろうし、韓国から北朝鮮に援助が渡っていれば、中国は制裁を強化しないだろう。

そう考えると、現在の北朝鮮包囲網が成功し、北朝鮮の非核化を実現させるためには、文政権の対北朝鮮政策がカギとなりそうである。

文氏は、選挙遊説の終盤の演説で、「慰安婦合意は間違っている」と述べた。この合意を検証し、再度提起する構えである。その場合、日韓関係は深刻な打撃を受けることにならないのだろうか。
 
結論から言えば、慰安婦問題は再交渉を要求してくる可能性が高い。しかし、韓国にとって国内の格差是正は急務である。韓国経済も苦境にあえいでいる。そうした中で、日本との関係を冷え込ませることは得策ではない。

そこで、歴史問題とその他の問題とを切り離したいと考え、李氏を任命したのかも知れない。
 
しかし、本当に慰安婦問題を切り離して日韓関係を進めることができるのか。韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)は、一筋縄ではいかない政治活動家団体である。これまで韓国政府は朴政権時を除いて挺対協に振り回され、日本との関係を後退させてきた。
 
また、日本にとって朴政権下で行われた慰安婦問題に関する日韓合意は、初めて日韓の懸案解決に当たって、双方が譲歩する形で妥結したものである。それまでは、韓国の国民世論を静めるため、日本がはるかに多くの譲歩をしてきたが、いつまでもこうしたことを繰り返すことは日本の国民世論が許さない。

慰安婦に関する合意は、そうした意味で今後の日韓間での問題解決のモデルケースとなるものであり、これを再交渉することなどあり得ない。

週刊ダイヤモンドからの引用記事
 

打ち出の小槌にされた自衛隊

2017-05-14 19:22:20 | 政治


こと自衛隊の運用に関してみれば、日本の安全を損なうような状況が展開されていたとも仄聞した。というのも、充分な考慮もなく総理が一方的に2万人の災害派遣を命じ、防衛などに対する態勢が十分取れないままにさらに7万人に拡大され、数日後には10万人の派遣が下命された。

政権に就くまでは、無用の長物でもあるかのように見なしていた自衛隊を災害派遣では次々に送り出し、本来自衛隊が担っている日本の安全を蔑にするような運用を平然として恬と恥じない民主党政権であった。便利な打ち出の小槌として使ったのである。

自衛隊は一方で災害派遣への対処をしつつ、他方では国防という本来の任務遂行の態勢に迅速に移行する必要があった。周辺では中露の軍事活動が活発化していたからである。

侵略されるようなことはなかったが、社民党などが主張してきたように憲法9条で不戦を宣言している日本を侵略する国があるはずがないとして、万一自衛隊という国家防衛の任に当たる武力組織が存在していなかったならば・・・と思うだけで、目の前が真っ暗になる。

政権党は、自衛隊の必要性を強く認識したと思われたが、憲法に位置づける必要性までは意識しなかったとでも言うのだろうか。そんなことはない。心ある政治家は一様に、憲法に明記する国軍の必要性―それがどんな名称になるかはともかくとして―を感じ取っていたのは明らかである。

民進党の前身である民主党は大震災の6年も前の平成17(2005)年に「憲法提言」を発表し、9条を改正し、自衛権(の制限)について書くべきだとしていたのである。

JBpressからの引用記事

「条件が整えば平壌へ」と演説、筋金入りの北朝鮮融和策

2017-05-14 18:38:45 | 政治


文氏は5月10日、ソウルの国会議事堂で行った大統領就任演説で「必要であれば、ワシントン、北京、東京に行く。条件が整えば平壌にも行く」と語った。

文氏の基本的な考えは、対話通じ北朝鮮との緊張関係を改善していこうとするものであり、その姿勢を反映した発言だ。 文氏はテレビ討論会で、核問題では「凍結措置を優先し、十分な検証を経て完全な廃棄に移る段階的アプローチが必要」としていた。
 
これより先の5月1日、米国のトランプ大統領も「環境が適切なら、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と会ってもいいだろう」と述べた。トランプ大統領の言う「環境が適切なら」というのは、北朝鮮の核放棄が前提という意味である。

つまり、北朝鮮の非核化は、トランプ氏にとっては対話の「入り口」であるが、文氏にとっては「出口」だということで、その意味合いは全く違うのだ。
 
また、北朝鮮も1日、外務省報道官談話で、「われわれの強力な戦争抑止によって、朝鮮半島情勢がもう一つの峠を越えた」と述べた。それとともに、北朝鮮は4人の米国人を拘束した。

過去、拘束された米国人を釈放するために、カーター元大統領やクリントン元大統領が北朝鮮を訪問した経緯があり、今回の拘束も北朝鮮が米国に対し、「米朝対話を始めるため元大統領などの大物を派遣してほしい」とのメッセージとも受け取れる。
 
それでは今後、北朝鮮問題は対話による平和的解決の方向に向かうのか。重要なことは、同じ対話といっても「非核化の位置付け」が違うことである。同時に、忘れてならないのは、金正恩氏は非核化の意志など全くないということである。
 
金大中(キム・デジュン)政権や盧政権が行った「太陽政策」は、北朝鮮の核ミサイル開発を助長したとの見方が多い。他方、北朝鮮にとって強硬な姿勢をとった李明博(イ・ミョンバク)政権でも朴槿恵政権でも北朝鮮は核ミサイル開発を継続した。
 
しかし、北朝鮮の核ミサイル開発が最終段階に来た現在、トランプ政権は中国が北朝鮮に対する制裁に本腰を入れるよう、硬軟両様の構えで働きかけている。

そればかりか、朝鮮半島周辺海域には原子力空母「カール・ビンソン」や原子力潜水艦「ミシガン」を配置して軍事的圧力を加え、ロシアやASEAN諸国、オーストラリアを動かして北朝鮮に対する外交的包囲網を形成している。

これは文政権の誕生を見越して、韓国が勝手に北朝鮮に近づかないように牽制したともみることができる。米国が本腰を入れ、中国が制裁を強化したのは初めてのことだ。

週刊ダイヤモンドからの引用記事

東日本大震災時の法の不備を忘れた?

2017-05-14 16:05:27 | 政治


日頃は「日本人の、日本人による、日本人のための」憲法の必要性、すなわち憲法改正の必要性を認めながら、「安倍首相の下では・・・」というのは論理矛盾も甚だしいといわなければならない。

国家と国民のために憲法改正が必要と思いながらも立憲主義を蔑にする暴挙だと主張する野党とその煽動に乗る国民に遠慮したために、拉致被害者の救出はいうまでもなく、想定される突発事案に対してすら十分な対処ができない法体系になってしまっている。

それが、日本国憲法、より具体的には第9条に基づく制約である。折しも、民主党政権の時、政権に天が試練を科すかのように、千年に一度とさえ言われた東日本大震災が発生した。

非常事態時の自衛隊の在り方とその運用、地方行政の中心の損壊から思い致すべき政府や立法府の緊急時の対応処置、廃屋などの処理と財産権の問題、緊急時の警察・消防などの地方行政組織と国家組織の自衛隊の協力関係などなど、憲法記述の不備故にすんなりと解決できない事案が続出し、多くの教訓を肌で感じたのはほかならぬ当時の民主党政権ではなかったか。

政府の超法規的な動きや、困窮した被災民への医薬品や衣食住などの不足、あるいは原発事案やそれに基づく電力不足への政府の対応など、従来考えもしなかった、いわゆる想定外の状況に遭遇した政府は、数えきれないほどの法制の不備などを感じたはずである。

筆者の目にはあたふたした政府の姿が彷彿と浮かぶ。そして、首相をはじめ、閣僚たちは何をもたもたしているのかと腸が煮えくり返るような怒りを覚えた記憶が蘇ってくる。

だからこそ、当時政府の要職にあった者たちは、自賛と共に免責も意図して、自己の正当性を主張する本などを競うように上梓したのではなかったか。

JBpressからの引用記事

前政権批判に終始し、見えない具体的政策   

2017-05-14 10:56:50 | 政治


文氏は当選を受け、準備期間なしに5月10日大統領に就任したが、文政権の韓国の姿はまだ見えてこない。文氏への支持が変わらなかったのとは対照的に、洪氏と安氏の得票は大きく動いた。

最初は反文の受け皿として安氏が得票を伸ばしたが、保守系の支持者が安氏では頼りないと見ると、支持が洪氏に移った。選挙直前の世論調査では、洪氏と安氏の合わせた支持率は文氏に及ばなかったが、選挙結果は文氏の得票を超えた。

これは、韓国の国民は文氏に対し、より慎重な北朝鮮への対応を望んだものと見ることができる。今回の大統領選挙は、朴前大統領の弾劾を受けて行われたため、準備や選挙運動の期間が短く、テレビ討論などでもお互いを誹謗中傷したり、個人攻撃したりするものが多かった。政策提言についても反朴の姿勢を示すことが中心となり、具体的な政策の中身に踏み込むものは少なかった。
 
とはいえ、文氏の過去を振り返ると、おぼろげながらその姿勢は見えてくる。文氏は故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の側近であり、盧政権では通常、個別の外交案件には携わらない秘書室長であったにもかかわらず、北朝鮮の問題となると自ら盧元大統領をサポートした。これは、文氏の南北朝鮮に関する政策が、盧元大統領と重なり合うものであることを意味している。そればかりか、竹島問題や慰安婦問題についても盧氏の立場と近似している。
 
したがって、選挙運動中の大統領の発言だけで具体的な政策を知ることは難しいが、盧元大統領の発言や政策などと照らし合わせて、文政権の今後を占うことはできる。そうした視点に立ってみると、文政権の対北朝鮮政策、日韓関係への取り組み、国内経済政策のいずれをとっても韓国の将来に不安を与えるものしかない。
 
ただ、5月10日、国務総理内定者として知日派の李洛淵(イ・ナグヨン)全羅南道知事が指名された。韓国の首相は、基本的には国内の政治・経済を担うものであり、外交は直接、大統領が主導するものである。とはいえ、対日関係に詳しくない文政権においては、李氏の日本との関係という要素も勘案した任命とも考えられ、李氏が日本との関係で重要な役割を果たすことが期待される。このように今後文政権の具体的な人事や政策が出てくるにしたがって、より現実的な方向性が出てくるのではないか期待する。

週刊ダイヤモンドからの引用記事
 

学習効果のない民進党が日本を危うくする

2017-05-14 10:07:33 | 政治


日本が理不尽な脅威にさらされているにもかかわらず、憲法の制約によって思うような対処の手立てができない、これほど馬鹿げた立憲主義はない。

周辺の核・ミサイル(さらには生物・化学兵器)保有国によって、日本の安全が危機に直面しても、日米同盟に依存せざるを得ない日本は、真に独立国と言えるのだろうか。

米国のジミー・カーター元大統領の特別補佐官を務めたズビグネフ・ブレジンスキー氏は、日本を「保護国」(protectorate)と称したが、残念ながら当を得た表現である。

安保法制では野党の反対を押し切って、もはや解釈拡大の余地がないといわれるギリギリまで憲法解釈を拡大し、これ以上は憲法の改正しかないところまできている。

挑発的な北朝鮮の核とミサイル開発 今の北朝鮮の挑発的な行動は、戦争勃発の危険性を排除していないとみられている。この国難に対処するには、国際基準で活動できる自衛隊を認める改憲以外にないというのが国民の1人としての筆者の見解であり、下記に見るように一部の調査結果でもある。

災害大国日本では緊急事態条項や自衛隊の憲法上の位置づけの必要性が若者には認識されていた(日本青年会議所が平成29年4月、18~40歳の一般市民と討論会を開いて調査した結果、討論前には緊急事態条項50.3%、自衛隊の明記62.6%が必要と回答)が、討論後の調査ではそれぞれ68.3%、73.8%に増大している(「産経新聞」平成29年4月28日、「阿比留瑠比の極言御免」)。

そもそも、「国情に即していない法体系」という認識は戦後日本の当初からあり、特に憲法については「制定当時の事情と、これが実施の結果に鑑みて、国情に即した修正を施す必要がある」とは、独立を果たした数年後の昭和30(1955)年1月の施政方針演説で鳩山一郎首相(当時)が述べたことである。

しかし、国会で改正に必要な議席がとれないで70年を閲してしまったわけで、社民党や共産党などの護憲政党が言うように、「70年間も慣れ親しんできた」から改正の必要はないと国民の多くが思っているわけではない。
?改正したくない護憲派が「慣れ親しんだ憲法」「違和感なく国民に浸透」などと勝手に言い募っているだけである。

憲法改正は現実に立法に関わる大方の為政者たちの認識でもあるであろう。そうと分かっていながら、民進党や共産党などの野党は「安倍晋三首相のもとの改憲だけは許さない」と主張してやまない。

JBpressからの引用記事

韓国文在寅政権、元駐韓大使が占う「不安だらけの船出」

2017-05-14 09:22:28 | 政治


5月9日、朴槿恵前大統領の弾劾を受けた韓国大統領選挙が行われ、革新系の「共に民主党」文在寅(ムン・ジェイン)氏が41.08%の得票で当選した。

保守系「自由韓国党」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏24.03%は、中道系「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)氏21.41%を抜いて2位となった。
 
文氏の当選は予想通りの結果であったが、私が注目したのは、洪氏と安氏の得票の合計が、文氏のものを上回ったことである。

これは韓国の国民が、必ずしも文氏の北朝鮮に融和的な姿勢を支持したものではない結果を示すものだと考えることができる。
 
今回の大統領選挙のテレビ討論などで見ると、最大の争点の一つは北朝鮮の脅威にいかに対処するかであった。しかし、事前の支持率の推移を見れば、文氏の支持率は常に40%前後であり、ほぼ一定していた。
 
これまでの大統領選挙では、北朝鮮の挑発行動などがあれば保守系の候補に支持が流れたが、今回は北朝鮮の激しい挑発行動があったにもかかわらず、文氏への支持は変わらなかった。

これは、文氏を支持した人が北朝鮮の脅威を理解せず、朴槿恵(パク・クネ)前大統領を弾劾に追い込んだ、韓国社会の格差の現状に不満を抱く若い人々だったことを物語っていると考える。

週刊ダイヤモンドからの引用記事

高官たち亡命多発の背景

2017-05-14 07:19:34 | 政治


北朝鮮には、海外で外貨を稼ぐために「外貨稼ぎ組」という専門の人々がいた。彼らは、外交官や貿易商などの身分で外貨を稼ぎ、北朝鮮に送った。

彼らへの外貨送金要求は苛烈で、毎年、金正日の誕生日である二月十六日になると、世界各国に散らばった外貨稼ぎ人たちは、外貨を大量に持って、党財政経理部の金庫に集まる。

ノルマを満たせない人々は本国に召還され、調査と批判を受ける。そのとき韓国政府と接触があったことが発覚し、銃殺されたケースもあった。

二〇一六年八月、イギリス駐在北朝鮮公使が韓国に亡命し衝撃を与えたが、二〇一三年十二月の張成沢の処刑以降、外交官だけでなく、サイバー戦の海外責任者など高官の亡命は相次いでいる。

なかでもロシア駐在大使館書記官のケースは興味深い。金正恩秘密資金の海外管理人のひとりだったからだ。米韓両国は、こうした亡命高官の情報によって、金正恩の秘密資金の総額や、北朝鮮へのカネの流れを掌握したに違いない。

このように、北朝鮮の高官たちの亡命が多発するようになった理由のひとつも、やはり外貨不足にある。高官といえど、一部を除いて、国からの外貨の支給は滞り、むしろ給料さえ自分で稼ぎ出さなければならなくなっているのだ。

しかし制裁によって、そうした外貨稼ぎの手段も、もっぱら人力輸出に限られているのが現状である。いま中国、ロシアそして中東とアフリカに「労働力」として送り出されているのは、合計数万名から十数万名と推計されている。

さらに駐英公使の亡命が衝撃だったのは、彼が太炳烈の息子だったことだ。太炳烈とは、金日成とともに抗日ゲリラ闘争を戦い、後に北朝鮮軍の大将にまで上り詰めた「建国の英雄」である。

北朝鮮の体制は、首領である金日成を中心に、抗日ゲリラ闘争の仲間たちが取り囲む同心円状をなしていた。忠誠の強い者ほど、同心円の中核に位置する。

その同心円は、金日成から金正日へ、さらに金正恩へと受け継がれていったのだが、本来であれば、もっとも忠誠心の高いはずの人物が亡命したのである。この公使亡命が、金正恩体制内部に強い衝撃を与えたのは間違いない。

文春 からの引用記事

専門家は中国外交の失敗を指摘

2017-05-14 06:22:25 | 政治


人民解放軍の研究では世界ナンバーワンの識者として知られる軍事評論家・平可夫氏とお会いする機会があったのだが、同氏は「(中国の狙いについてはさまざまな意見があるが)外交は目的が達成されたかどうかで判断するべきだ。

核ミサイルの開発を許し地域の緊張を高めたという意味で、中国の外交は明らかに失敗している」と率直に指摘していた。

同様の指摘をしているのが、米シートン・ホール大学ジョン・C・ホワイトヘッド外交国際関係大学院のワン・ジョン准教授だ。2013年、米ニューヨーク・タイムズ紙のコラム「Does China Have a Foreign Policy?」(中国に外交政策はあるのか?)において次のように語っている。

一国の外交政策を判断するには言葉だけではなく、行動もみる必要がある。中国の政策と行動を子細に研究したならば、中国の外交政策は矛盾に満ちたものであり、さらにはきわめて薄弱であることが理解できる。島嶼領有権争いから北朝鮮問題、さらには気候変動まで、中国は多くの問題において明確で成熟した政策を持っていない。

平可夫氏、ワン・ジョン氏ともに中国の対北朝鮮外交の失敗を指摘しているわけだ。これを前提として考えると、今度はなぜ中国がこれまで失敗を甘受してきたのか、そして今になってついに外交方針を変化させようとしている理由は何かが、考えるべきポイントとなる。

なぜ失敗を甘受してきたのか。その答えは、「北朝鮮問題は中国にとって重要課題ではなかったから」だ。中国は巨大な官僚制国家である。一度決まった方針は粛々と実行される一方で、方針を変更するには膨大な努力が必要となる。

一応、社会主義陣営の一員であり仲間であった北朝鮮に対する外交方針を転換し、実効的な圧力をかけるためには相当なリソースが必要だ。中国には他に優先すべき政策課題があり、北朝鮮問題に充てる政治的なリソースが不足していたため、「北朝鮮を庇護する」という従来方針が延々と延長されてきた......というのが実情ではないだろうか。

ニューズウィークからの引用記事