鵜木は忘れられた町の様にくすんで見えた。
昔のアパートも洒落たマンションにはなっていたが、地付きの人が多いせいか、40年の歳月が嘘に思えるほど変わらない。
小沢と別れた小公園は奇跡の様に残っていた。
ブランコに滑り台、砂場、木のベンチ。
ベンチに大柄な老人が座っていた。
今時流行らないベレー帽を被り、遠くを見ている。
明日香は目を凝らした。
そのまま、ジッと見続けた。
ひょっとしたら。
「ひょっとしたら、金城さんではないか?」
老人の低い声が明日香の耳に届いた。
小沢の声だった。
「先生!」
明日香の中で眠っていた熱い血が一気に噴き出す気がした。
二人は再びベンチに座って昔語りをした。
今どんな境遇であろうと構わない。
小沢も明日香も独り身である。
明日香が押さえつけていた甘やかな感情が嘘の様に溢れる。
小沢はこの辺りの旧いマンションで住むという。
「汚ないけど、コーヒーでも飲むか?」
「先生、それより大掃除のし直ししま
しょ。本当に綺麗にしちゃおう」
明日香は笑いながらポロポロと涙をこぼしていた。
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