実際、作品が掲載された為に知られたくない秘密を暴かれた同人は5人いる。
選考したのはメンバーと違う編集者だから、事前に見る事が出来なかった。
皆同人誌の主力メンバーだった。
男性は織田、柴田、毛利の三人、女性は筒井、細川の二人である。
そして、『蛍有情』の掲載後、細川智恵が自殺したのだった。
自宅で首を吊った彼女を弟が発見した。
これほどのショックを与える『蛍有情』は題名とは裏腹に、人の心の闇を抉ったものだった。
『蛍有情』はある大学の文学部の仲間が蛍の里を訪ねる夏を描く。
勿論実名は避けているが、人物設定は本人そのものだった。
ここでは、小説上の名前でなく、実名を記す。
智恵は織田拓也と付き合いながら、柴田吾郎と連絡を取り合っている。
毛利剛は智恵に気があって、織田との仲が壊れないかと思っている。
筒井成美は柴田とステディの関係にあるのだ。
成美は智恵の自由気ままな行動をかなり警戒している。
智恵は繊細な美貌と奔放な感性を持ち、成美はふくよかで安心感を与える女性だった。
美しい蛍の里を描写しながら、主人公たちのドロドロとした気持ちを容赦なく書いていた。