読書の森

ダイヤモンドだね その4



大森玉代は加野小夜子と仲が良かった。
スーパーのレジ打ちのアルバイトで小夜子と知り合ったのである。

夫と離婚し、20歳の娘と暮らす。
玉代は自分の事をベラベラ話すが、小夜子は話さない。

しかし、ふと漏らす言葉で彼女の窮状を知ると、同じような生活に苦しむ玉代は親近感がわいた。
たわいないおしゃべりをしながら、通じ合うものを感じると幸せだった。

彼女が亡くなる一ヶ月くらい前に、アパートに見舞いに行った。
意外とイキイキした表情で小夜子は喜んだ。



その時玉代は小夜子にダイヤモンドのネックレスを貰った。

「なあに、本当にこんな高いもの貰っていいの?ご主人の形見よね」

「確かに本物よ。主人が私の為に買ってくれた唯一のものです。
でも、こんなおばさんが持ってるより、娘さんの奈々さんが持つ方がよほどふさわしいわ。きっと主人も喜ぶと思うの」

気が狂ったのかと玉代は小夜子の痩せた顔をまじまじと見つめた。

ごく当たり前の表情をしている。
「あなたが来なかったら、私がそちらに持って行こうと思ったの。
ねっ、私の一番の心残りは、主人の倒産じゃない、二人の間に子どもがいなかった事なのよ。
誰かの子の為に役に立ちたいの。
奈々ちゃんはとても優しい子どもだわ。
片親がなくて不自由な事があったら、ネックレスを売ってちょうだい」



信じられぬまま貰って帰ったが、玉代はいつでも返そうとネックレスを大事にしまった。

小夜子が死んで、あの時の言葉が遺言だった事を知った。

ひどく切ないけど、何故か小夜子がとても幸せに亡くなったと思える。
ネックレスはお金に替えようと思う。

奈々の将来の為に。

読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「創作」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事