読書の森

アンソロジー『秘密の手紙箱』



1999年、つまり21世紀になる前に出版された『秘密の手紙箱』は、女性推理作家の傑作を集めている。

未だ21世紀への漠然とした期待が満ちていた頃、これらの作品はびっくりする程に昔懐かしく感じる。

昭和中期の作品も入って、図書館で手に取ったこの文庫はちょっと古典的な印象があった。



この中の、乃南アサと宮部みゆき、初期のミステリーの主人公には身につまされた。

自分がその立場だったら、よく考えもせずこんな行動してしまうかも知れない、と思ってしまった。


乃南アサの『津軽に舞い翔んだ女』は占い師の言葉を信じて、その日の夜行で雪降る青森に旅立つ独り身の女性の話である。

重く哀しい別れを経験して、飛び立つ様に会社を辞めた27歳の女性、かなり衝動的である。

何とその頃27歳だと婚期を逃したと思われていたのである(!)


焦った彼女は「本州の北の果てで会った人が運命の人だ」という占いを信じて、即北への旅に向かうのである。

吹雪舞い散る青森で、彼女は事件に遭う。
一貫して少しおっちょこちょいで情に脆い彼女の個性が事件後明るい結末を生んだようだ。
ただし、運命の人の影もなく恋には遠かった。



次は、宮部みゆき『弓子の後悔』である。

主人公は32歳の生真面目な美人の会社員、独り身である。
始まりは彼女にきた高校のクラス会の招待状だった。

そこで彼女はかって付き合った同級生が結婚しているのを知る。
付き合うといっても、ごくごく浅い付き合いで、冴えない彼を彼女が振った形である。

そのクラス会で彼女は見違える程成長して、有名人になった彼と会う。
そして彼の妻はよく知ってる友達、決して美人ではないが、ハイクラスの人が持つオーラに満ちていた。

未だ気が有りそうな彼の素ぶりに彼女の心は揺れる。
自分が妻の座で輝いていたかも知れないのだ。
もう一回昔に戻りたいと見っともなく焦るのである。




二作品とも、この手のシチュエーションでは目出度くゴールインの展開にはならないと普通に分かる。
どこも欠陥の無さそうな女性が何故か非常に結婚願望が強く、変に焦ってる。

それでも、一生懸命で後先見ずに実らぬ恋に打ち込む のを、今は「バッカみたい」と言うのかも知れない。
私も冷静に考えて「馬鹿」と思う。

ただ、見るからに鋭敏で、面白さをこれ見よがしに出す如何にモテモテの人は、反感を持たれやすいようだ。
現代的な「癒し」の要素が欲しいと思う。

私自身も最早多くは望まないが、癒し系のばあちゃんになりたいなと思う。
ただし、「バッカ」じゃないね。

(°▽°)
天の暴力とも思える気候が続きます。
どうか天の神様が少し容赦してくれます様に。
そして、どうか皆(自分も含めて)無事でいられますように!
定めなき世などと口に出しません。
優しい凪いだ気候を心から望みます。
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