読書の森

有川浩 『ストーリーセラー』

ちょっと少年ぽくて、素朴であったかい感じ、それが作者有川浩の印象だった。

『旅猫シリーズ』、『三匹のおっさん』ユーモラスな物語から読み始めたせいだろう。

彼女が既婚者で、しかも売り出す前の過去に一切触れず、ベタ甘のラブストーリーを書く人だと『ストーリーセラー』を読んで初めて知った。

と言ってもこの小説、メロドラマなんかじゃ全然ない。
正直言って、私はどっきりして言葉も無いと言う既視感のある物語ではあった。

売れっ子の作家を妻に持つ平凡で大の読書好きの男。
その夫婦に一大悲劇が襲う、降りかかるストレスに耐え兼ね発狂状態になった妻。
病院で診察を受けた、ついた病名は彼女一人だけのためのもの。
「致死性脳劣化症候群」
即ち考えれば考えるほど、脳が劣化する。
と言っても認知症ではなく、頭脳明晰のまま、生命体としての脳の機能が衰え死に至ると言う事だ。

「死にたくなかったら、書くのはおやめなさい」と医者は助言する。
書くのが大好きな妻も、彼女の作品を読むのが大好きな夫も、殆ど絶望する。

しかし、妻は書き続ける。
二人の出会いから今日までのストーリーを。

(続き)
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