麗奈は機敏な動作と会話とチャーミングな表情を持った女性である。
大学の法学部で翔と同クラスになった。
翔は正義感と行動力抜群の男だが、エンジンが掛るのは遅い。
いかにも男らしい翔だ。
しかし、女っぽく見える麗奈の方が実行力があるのかもしれない。
ともあれお互いにないものに惹かれ合って、二人は恋を育んだ。
会う度に新鮮な喜びがあった。
ただ、仕事が極端に忙しく結婚式するタイミングを測るのが難しかった。
一流商社に勤めていた麗奈は、連日海外との取引に忙殺されていた。
彼女が今の会社に転職を決めたのは、ひとえに翔との結婚を考えたからである。
業績も順調で人間関係も緩やか、ノルマも以前ほどでないと見えたその会社には裏がある感じだった。
それが禁じられた取引ではないかと思える。
仕事の出来る美しい麗奈はびっくりするほどチヤホヤされた。
特に、一見上品な中年紳士の社長はことある毎に麗奈に仕事を割り振り、特別手当を出した。
そして入社早々の彼女に社長秘書を命じたのである。
社長はあくまでも麗奈をひどく大切なお客様扱いをしているだけだ。
麗奈は微かな疑念が湧いた。
「おかしいの、あの会社。どこがどうって言えないけど。
強いていえば待遇が良すぎて気持ち悪いのよ」
久しぶりに会った翔を前にして麗奈は訴えた。
会社の組織、仕事、それに裏と表がありそうな事も全て。
露西亜料理店の赤いランプが辺りをボンヤリ照らしていた。
翔は眉根に深いシワを寄せ、じっと考え込んでいた。
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