読書の森

下村湖人『次郎物語』前編



私が初めて読んだ長編小説が『次郎物語』である。
小学6年の時、反抗期に差し掛かっていた私にとって殆どバイブルの様なものだった。

次郎は文字通り次男、優秀な兄と要領の良い弟に挟まれ、何故か不器用な生き方しか出来ない。

彼は幼児期に乳母の家で育てられた。

母親が身体が弱く、乳が満足に出ないので、彼一人別に育ったのである。
お濱という乳母は次郎を我が子以上に慈しんだ。

格式の高い家柄に生まれた彼が、貧しい庶民の家で育った。
それは又生家に戻った彼にかなりの無理を強いる事になる。



次郎は母親や祖母の目から見ると行儀もめちゃくちゃ、言葉遣いも乱暴、「坊ちゃん坊ちゃん」と甘やかされたので恐ろしく我儘だった。

これを無理矢理矯めようとする大人に次郎は悉く反抗する。
たまに顔を合わせる父親だけが次郎の純粋で一途な魂を認めるのである。

波乱を含む物語は次郎が大人として目覚める迄展開して行く。

私はこの文庫本全巻を何回も何回も読み直した。
どれほど慰謝と平安が得られた事だろう。

次郎が持つ理不尽な運命に対する激しい反抗心、これは私も持っていた。
小説の世界に感情移入する事で私は本当に救われたのである。
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