読書の森

桜木紫乃『ホテルローヤル』

昨日のblogからお休み頂こうと思ってたのですが、懲りずに又書いてます。
ヤバイblogを出して削除する繰り返しを今自分に禁じてます。個人の誹謗や極端な思想を広めるもので無い限りです。
昨日の意見は単に婆の妄想としていただければ幸いです。

これ書いたら人にどう思われるだろうとか、こんなのマズイとか考えてると、私の場合、殆ど何も書けないです。幸い迷惑をかけてるようなfollower さん居ないらしいので(いらしたらごめんなさい)、臆面無くも続ける事にしました。

昭和末期、勤務先の剽軽な営業マンが「これに当たったら目黒エンペラーの招待券計上するよ」とか課員に冗談言ってた事があります。その時カマトトじゃなく、目を白黒させてた私、後で「え〜^^」と思いました。
この目黒エンペラーなるものはつまり有名なラブホテルなのでありました。
そんな時代がバブルと重なるのですね。

作家桜木紫乃はお父様がラブホテルの経営者だったそうです。

退職後、影山博人なる魅力的な人物を描いたオール読物の短編を読んでひどくて心惹かれました。
荒涼とした北海道の大地を舞台にして、アウトローの男の生き方を描く作品が良かったのです。

その作者が桜木紫乃という名で、2002年にオール読物新人賞を取ったのを知りました。惹かれるものがありました。
そして2013年『ホテルローヤル』で直木賞を取ったのです。

なんらかの事情で親がラブホの経営者である事が若い日の彼女にとってかなりの負い目になっていたのかも知れない。それを吹っ切りたい為に小説を書き出したのかも知れません。

そんな理屈抜きにして作品は見事でございます。
その中の一編はバブル崩壊によって景気が悪くなった市井の夫婦が、狭いアパートで老親を引き取った悲喜劇を描いたものです。子供二人を抱えて生活ギリギリ、親を入れた為に子供と同室で寝起きする。
歓びの声を上げる事もままならない夫婦、偶然浮いたお金5000円を手にホテルに入るのです。さて、、。
ときめく大恋愛がある訳でない、当たり前の男女のやり取りを場末の廃業寸前のホテルを舞台に描いたものです。

バブル後のこの時期だったからこそ受けた訳で、これより後のかなりストイックな時代になると、「ちょっと」という作品になるかと思います。





桜木紫乃さんは私生活は主婦で母親でもあります。その生活は一切作品に出してません。

非日常的な作品の方がお得意だったと思います。
しかし、非日常的なラブホという空間でごく日常的な男女が登場するこの小説は、多分彼女の生い立ちが100パーセント生かされたものなのでしょう。

つまらない灰色の日常の中のささやかなときめきがキラキラしてる作品です。

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