読書の森

ホワイトデーの殺意 その5



愕然としたカナは若年層の乳癌について医学書やネットを読み漁った。
若年層ガンの特徴として自覚し難く、進行が早いそうである。
特に乳癌は自覚症状があってからでは遅いと言う。
カナは震え上がった。

彼女は大学病院の精密検査を受けるのがひたすら怖いと感じた。
紘が愛しんだカナの乳房が、メスを入れられ無惨な姿になる恐怖である。
死の恐怖以上に、女として終わる恐怖はカナに耐え難かった。

幸いと言うべきか不幸にもと言うべきか、精密検査のスケジュールが混んでいて、半月後に受ける予定になっている。



先の見えない苦しみと閉塞感がカナを襲った。
その中で芽生えたのが、希美に対する説明し難い殺意だった。
彼女が二人を陥れたと言うのはカナの根拠のない疑いに過ぎないと分かっている。
風の噂に聞くと、彼女は相変わらず営業課の大輪の花の様に活躍していると言う。
彼女は希美が妬ましく憎い思いにかられ、殺意を育てたに過ぎない。

あれ程美しく才能を発揮してる美希に比べ、自分ばかりが冴えない生活をしている。
今は絶望的な病気の宣告を受けた。
「今のところ、ガンの疑いですが、その可能性はかなり高いです」優しい声で告げた医師の目が光っていたのだ。

どうせ死に向かう命であれば、希美を道連れにして自分から死にたい。
狂った思いがカナを支配していた。

カナは致死量の毒物を用意した。
場所は銀座のパーラー、そこで希美と会う。
時は3月14日土曜日3時である。
カナは正直希美が断ると思っていた所がある。
矛盾してるがそれならそれで仕方ないとも思っていた。

カナは手帳に記していた希美の携帯に電話を掛けた。
「ああ、幸田さんお久しぶり!お元気?」
意外に気さくな希美の声だった。

「幸田さん、私も会ってお話したい事があるの」

カナは自分が大変な感違いをしていた事に気づいた。
希美が、紘を陥れる筈はなかったのである。
好意を抱いたなら、その相手を陥れるより、狙うのはカナである筈である。

^_^
心残りですが、今日はここまでに致します。

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