沙耶は自分を傷つけた大輔を憎まず、エリカに強い恨みを持ったのである。
彼女はSNSでも自分の作品を載せて、動画操作などお手の物だった。
偽の映像を流したのは初めてだったが、罪悪感より爽快感があった。
わざわざ富野崇を出したのはお遊びだと言い逃れする余地を残したかったからだ。
しかし、当然世間に広がり一部マスコミが取り上げて、彼女は狼狽した。
大輔が問い詰めた時、彼女は泣きながら全てを告白したのである。
「それで彼女を許すの」
「許すも許さないもないよ。特別に思っていないもの。付き合いったって、映画見に行ったりコンサートに行ったりする位の付き合いだ。
まだ自分の人生決めたくない。
色んな人と仲良くしたい。
誤解招くかな」
「誤解しない」
百合がキッパリ言って、エリカにウインクした。
エリカは笑ってみせたが、心は別の事を考えていた。
大輔は沙耶に代わってエリカに謝っているのだと、誰も特別に思ってないという事はエリカに対しても思っていない訳だと。
遅い桜の花が咲く頃、エリカは暫く実家に帰省した。
両親にも兄にもあのスキャンダルの事は何も言わなかった。
それでも、生まれ育った家をエリカはこれ程有難いと思った事は無い。
世間にとっては取るに足らないスキャンダルに傷ついた心を故郷の家は温かく包み込んでくれた。
大輔の言った様に、まだ自分の人生を決めるのは早いとエリカは思う。
桜の様に散り急がず、ゆっくり生きていこうと舞う花びらを見ていた。
読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️
最新の画像もっと見る
最近の「創作」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事