■仙台空港に着陸前、おそらく名取市閖上地区の近辺だろう、海岸線に沿った並木という並木がなぎ倒されている上に雪の衣がかぶせられている光景をみて、半ば言葉を失った。本当はその前にもう1つそういう光景が海上にあったのだけれど、陽の光の反射が随分と沖合のはずなのに変な方向から目に入ってきた、という表記にとどめておく。さすがに。とにかく、これが震災の爪痕なのだという事だけは初めて、生で強烈に認識した。
■今回の東北行きの1つの目的は、せんだい演劇工房10-BOXでの演劇公演、若伊達プロジェクトの「桃の花を飾る」を観ることで、本日お邪魔してきた。明日も公演があるので多くは記さないが、ほとんど音楽を使用しない2時間余りの上演で、ところどころで観ていた私の頭の中にBGMがすっ、と入り込んできた瞬間が何度もあった。あれ、何だったんだろうかと考えていた。すると、引き続いて行われたアフタートークに登壇されたトライポッドの森忠治さんが、「テキストの強度が強く出来てる作品でしたね」というニュアンスの事を言われてはたと思い当たったのだった。
■戯曲としての構造がしっかりしていても、俳優の力量によって見え方、聞こえ方が明瞭でなくなる場合も、その逆もある。さらにその原因が両者いずれにもなく、演出に求められる場合だってあるからなお厄介だ。作者の山本政典さんが「(初演の)大阪では音をどんどん入れてテンポを高めてやりまして」という方向とはまるで違うプランで上演された今回においても、初演のニュアンスが観る側にじんわり伝わってくるというのは、土地を変えて、人を変えても揺るがない脚本の力がもともと備わっているものであったというものなのだろうと思った。
■山本さんの主宰される「コトリ会議」の本拠地は前述したように大阪。C.T.T.の試演会を通じて、全国に名前が知れ渡ってほしいカンパニーだ。そして、若伊達プロジェクトを率いる仙台の俳優陣もまた、今月末に名古屋での試演会にお越し頂く事になっている。楽しみが、また増えた。
■さて、明日は陸前高田市に入ります。私の朗読を収録してくる予定です。