黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

電子債権の発生登録申請の方式等

2006-03-15 18:46:07 | 司法一般
 今回は,「1-2 電子債権の発生」のうち,発生登録申請の方式,白地式発生登録の可否,発生登録事項の変更について触れます。

3 発生登録申請の方式
 発生登録申請の方式については,次の2種類の意見があるようです。

(1)法令上の規制は設けず,各電子債権管理機関取り扱いに委ねるべきである(多数説)。
・将来の技術発展の可能性に柔軟に対応することができる。
・パソコンやインターネットを十分に使いこなせないような人も電子債権を利用できるようにすべきである。
・電子債権管理機関の事務処理の便宜や,一括決済方式等の既存のシステムの改変の費用負担をもたらさないようにする等の観点からすれば,いかなる申請方法を認めるかは,各電子管理機関が任意に選択できるようにすべきである。

 なお,(1)の意見を採用した場合には,電子債権取扱機関が認めれば,インターネットを介する方法以外の方法による申請,例えばFAXや窓口に来訪しての申請等も可能ということになります。

(2)電子署名の付された電子的手段による申請に限るべきである。
・電子債権はIT社会における新たな債権として純化すべきである。
・過誤の発生の可及的防止という観点からも,ファックス等でされた申請を電子債権管理機関がコンピューターに入力することを認めるべきではない。
・電子的手段による申請を自ら行うことができない者が申請を行うことができるようにするための手段としては,そのような当事者からの電子的手段による申請を代行する経由機関を設けることで対応すべきである。

 黒猫としては,現状における電子署名の普及率を考えると(2)ではあまり利用されなくなるおそれがあり,(1)が妥当ではないかと考えられます。
 なお,登録申請等がいかなる方法による場合であっても,電子債権管理機関は十分な本人確認措置を行わなければならない義務があり,これを怠った場合には,民事上の責任を負うことになるほか,行政処分を受けることにもなります。本人確認措置をどのような方法で行うかについては,(1)と同様の観点から,電子債権管理機関の任意の選択に委ねるべきであるとの意見が多数であり,黒猫もこれを指示します。

4 白地式による発生登録
 電子債権の発生登録事項の一部の補充を債権者に委ねる,白地手形類似のものを認める必要があるかという点については,次の意見があります。

(1)認めるべきとする意見
 電子債権の登録事項について金額の確定性を要求する場合,金額未確定の段階で電子債権を発生させて資金調達に利用しようとする場合など,金額を登録せずに電子債権の登録を行うことを認めるニーズがある。

(2)認めるべきでないとする意見(多数説)
・白地手形類似のものは, 電子債権の内容が電子債権原簿の登録内容によって定まるとすることと調和しない。
・電子債権管理機関は,白地部分について後日登録申請された内容が白地補充権の範囲内のものであるかどうかを判断することはできない。

5 発生登録事項の変更
 電子債権の発生登録事項の変更については,債務者の支払口座や債権者の支払先口座を発生登録事項とする場合には,これを変更することを認める必要があるのではないか,コベナンツを登録する場合にはその内容の変更を認める必要があるのではないかとの指摘があります。
 発生登録事項の変更を認める場合,どのような要件で変更を認めるかについては,発生登録事項の変更について
① 電子債権原簿上利害関係を有する者である債権者
② 電子債権について電子債権原簿への登録によって債務を負っている者(発生登録をした債務者,電子債権原簿に登録することによって保証債務を負担する保証人及び担保責任を負う譲渡人等)
の同意が必要であり,かつその範囲で十分であると考えられているようです。