黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

「育てる側」の論理

2007-12-26 02:07:21 | 弁護士業務
 クリスマスも(黒猫にとっては何の実感もありませんでしたが)終わったので、みかんのテンプテートに変えました。
 今年は、エレクトーン教室のクリスマスパーティーにも体調不良で出られなかったので、例年にも増して意味のないクリスマスでした。

 そんなことはどうでもいいのですが、今回は、法律事務所の人材育成について、最近黒猫が思っていることをまとめてみることにします。
 一般に、弁護士の仕事はかなり忙しいので、弁護士が人を雇うときは、それが事務員であるにせよ新人弁護士であるにせよ、お金を払ってでも自分の負担を減らしたい場合に雇うのが普通です。
 ただし、法律事務所の仕事は、言うまでもなく様々な専門知識が必要なので、普通の人を雇ってすぐ使い物になるはずもなく、当然ながらある程度の教育を施す必要があります。
 もっとも、弁護士はもともと忙しいのですから、その上さらに新人教育に多くの時間を割いている暇などありません。よって、教育をするにも費用対効果を考える必要があり、素質があって高度な仕事でもやれそうな人であれば、高度なこともいろいろ教えてじっくり育てようかという気になりますが、素質もなく勉強する意欲もなさそうな人であれば、この人の能力は大体このへんまでだというラインを見切って、そのラインの仕事をするのに必要なことだけを教えればよく、それ以上のことは教えるだけ時間の無駄だという判断をすることになります。

 そして、弁護士が人を雇って仕事をさせようとする場合、その仕事のレベルを大まかに分けると、以下の4段階に分けられるのではないかと思います。

1 雑用レベル
 お茶汲み、コピー取り、事務所の掃除や電話番など、法律事務所に限らずオフィスならどこでも必要になるような仕事で、専門知識はほとんど必要ありません。

2 初級事務処理レベル
 訴状に必要な金額の印紙を貼って予納郵券を用意して裁判所に提出したり、準備書面をFAXで相手方や裁判所に送付したりするなど、それほど高度ではないものの、ある程度の実務知識がなければできない仕事です。

3 上級事務処理レベル
 これは、ある程度定型化された裁判文書を作ってもらうというもので、具体例としては破産事件や執行事件の申立書類作成、定型的な訴訟事件の訴状や答弁書の作成などがこれにあたります。
 定型的な訴訟事件というのは、クレサラ弁護士であれば、依頼者が受任中に貸金業者から訴えを提起された場合の答弁書や、過払い金返還請求訴訟の訴状(特別な問題があるものを除く)などがこれに当たります。金融業者側の弁護士であれば、特に問題のない貸金返還請求事件や保証債務履行請求事件の訴状がこれに当たるかもしれません。
 ある程度定型化されているとはいえ、裁判所に提出する文書を書かせるのですから、日本語の文章能力に加え、ある程度の法律知識も必要になります。むろん、これらの文書を裁判所に提出する前には、弁護士がチェックをすることになりますが、チェックをして直すところがたくさん出てくるようでは、いっそのこと自分で書いた方が早いということになりかねませんから、相当の能力がある人でないと任せられない、というより任せる気にはなれないわけです。
 そして、このレベルになると、その裁判文書を作成するにあたり法律上の問題点などが生じることもあり、それらについていちいち弁護士の判断を仰がないと仕事を進められない人と、ある程度自分で考えてこれでいいですかという案を持ってくる人とでは、当然弁護士の評価は違ってくるわけです。
 もちろん、後者の方が弁護士の負担は減りますから、自ずと評価は高くなるわけで、特に執行事件や破産事件などについて経験を積み、自分である程度の判断が出来る事務員は、弁護士にとっても重宝しますから、通常安易にそういう人を手放そうとはしません。

4 協働レベル
 これは、定型的な書面作成という枠も超えて、準備書面などの作成を手伝ってもらったり、判例の調査をしてもらったり、事件処理の方針を考える上での相談相手になってもらったりするなど、もはや完全な法律事務を手伝ってもらうというレベルです。
 ここまで来ると、もはや事務員に任せられるレベルではなく、弁護士資格を持っている人でないと無理かな、というレベルになります。
 また、準備書面などの誤字や脱字のチェックなども、このレベルに属します。誤字や脱字のチェックなど誰でも出来るのではないかと思うかもしれませんが、誤字や脱字を発見するには相応の日本語能力が必要ですし、準備書面の意味内容を理解できなければ、法的な意味での誤りがあるかどうかまでは判断できませんから、細かい法律用語の知識なども必要であり、実は結構高度な仕事なのです。

 こんな風に、弁護士が他人に任せようと思う仕事のレベルを一応4レベルに分けてみましたが、これ以外にも、事務所の経理、パソコンなどの管理、事務員が多数いる場合にはその人事労務管理など、必ずしも法的ではないが専門的知識が必要な仕事もあります。これら法律以外の専門知識等が必要な仕事についての話は、ここでは省略します。
 そして、上記4レベルの仕事のうち、事務員に任せるのは1~3、弁護士に任せるのは2~4といったところです。
 弁護士がレベル2の仕事をすることなどあるのかと言われるかもしれませんが、破産事件の免責審尋などは、はっきり言って何の専門的知識も必要ではなく、それでいて必ず弁護士が出頭する必要がありますから、弁護士がやらなければならないレベル2の仕事に相当します。
 個人の債務整理事件を多数やっている法律事務所が、まだ質も分からない新司法試験出身者を結構採用しているのは、最近東京地裁の破産事件について管財事件にされる比率が増えているからです。
 同時廃止事件だと、弁護士が出ていく必要があるのは裁判所での即日面接と免責審尋の2回のみ、しかも両方とも1回で依頼者複数名分の手続きを一挙に済ませてしまうことができますが、管財事件だと、弁護士は即日面接、管財人面談、債権者集会兼免責審尋(注:債権者集会というのは通称で、正式名称は財産状況報告集会兼何とかというやたらと長い名称なのですが、面倒なのでここでは敢えてき債権者集会とします。)と、最低3回出てこなければならず、しかも管財人面談以降は、夫婦や親子、兄弟などの関連事件を除き、1回で依頼者複数名分の手続きを済ませてしまうことはできません。
 つまり、個人債務整理の業界では、弁護士がやらなければならないレベル2の仕事が以前より大幅に増加しているので、質の分からない新司法試験出身者でも採るべき需要があるわけです。
 ちなみに、なぜ東京地裁で管財事件の比率が増えているかといえば、それは大量の破産事件を処理すれば結構なお金儲けになるのをいいことに、この分野に参入してくる弁護士(法律事務所)が急増し、その中にはいい加減な事件処理をしているところも少なくないということを裁判所が問題視し、従来なら問題なく同時廃止で済んだような事件についても、何かと理由を付けては管財事件に持ち込もうとしているために他ならないのだと思います。

 話が逸れましたが、人を雇う側の弁護士にとってみれば、要するに雇うのが事務員であろうと弁護士であろうと、基本的な考え方にあまり差はありません。
 仕事のレベルについては、大雑把にレベル1からレベル4までに分類しましたが、当然個別の事情により同じレベルでも難易度の高低は当然ありますので、実際には雇った人の素質を見て、この人はレベル3の中程度まで伸びそうだなと思ったらそこまで教えますが、この人はレベル2が精一杯だなと思ったら、そのレベルまでしか仕事を教えず、当然重用もしないことになります。
 弁護士であれば、普通はレベル4の仕事に加え、簡単な事件なら自力でやらせることも出来ることを前提に考えて雇うでしょうが、あまり高度な仕事は任せられないと判断してしまうと、それ以上仕事を教える気になれず、別に他の人でも代わりは効くので、やがて独立を勧めるという形で事務所から追い出してしまうことになります。
 もっとも、最近は簡単な事件なら自力でやらせるどころか、比較的簡単なレベル4の仕事をさせるにも不安を感じるような新人弁護士が増えているようで、たしか2年くらい前にも、黒猫が業界では結構なやり手で知られる某弁護士の事務所へ個人再生委員面談に行ったとき、新人弁護士を(普通は事務員がやるような)レベル3程度の補助事務に使っているのを見て、内心驚いたことを覚えています。
 弁護士として雇われながら、こいつはレベル3くらいの仕事しかできないと判断されてしまったら、弁護士人生としてはお先真っ暗でしょうね。
 そして、人を使う側の弁護士にとって見れば、素質があるかどうかはかなり早期に判断しなければいけないので、実際に書かせてみた文章の出来具合などのほか、法律の話をしてその人がどのくらい真剣に話を聞くかなど、法律の仕事に対する意欲や関心の程度なども重要な判断材料になるわけです。
 これは、弁護士になってからの話に限らず、実務修習でも同じようなことが言えます。指導担当の弁護士や裁判官、検察官から資質に見切りを付けられてしまったら、適当に流されてあまり熱心に教えてくれなくなりますから、特に最初の起案は必死でやる必要があるわけです。
 ところが、最近の司法修習生の中には、起案の課題を与えられても平気で「分かりません」などと書いてきたりする人がいるらしいのですが、要するにそういう人は自分で、自分の素質に見切りを付けてくれと言ってしまい、法律の専門家としてのスタートラインに着く前に自滅してしまっているわけです。

 ちなみに、黒猫が今いる事務所で、黒猫の秘書として付けられている女性は、決して嫌いなわけではなく、むしろ性格的には良い子だと思いますが、資質としてはレベル2止まりかなあという印象を持っています。ちょっと、法律的な文章などを作らせるのはやめた方がいいかなあという感じです。
 ただ、それだけならばそれでいいのですが、問題はその子が黒猫の秘書だけではなく、ほかにもいろんな仕事を掛け持ちしているらしくて、今の事務所のボスは、その子の資質を勘違いしているのか、それともスタッフが多すぎて個人の資質など見ていられないのか理由は分かりませんが、平気でその子にレベル3、下手をすればレベル4くらいの仕事を割り振っているのです。
 しかも、その仕事の中には、黒猫が現に抱えている事件に関するものも含まれているので、この子が潰れたら自分にも害が及ぶし、かといって自分の仕事も忙しいので構っている暇もないし、結局どうすることもできず不安とストレスがたまるだけ、という日々を過ごしています。
 おまけに、アルバイトの中にこれは使える、と思った女性が1人いたのですが、聞けばその子は今年の旧司法試験に合格していて、秘書に使うどころか、来年4月からは司法修習、再来年には黒猫と同じ弁護士先生です。その子にも黒猫の仕事を手伝ってもらっていて、時々感心することもあるくらいのレベルなのですが、なまじそんな子が近くにいたりすると、どうして世の中というのはこうもうまく回らないのだろうかと、よけいに嘆きの種を増やしてしまうことになります。
(注:以上は、あくまで仕事の段取りがうまく行かないなあというグチに過ぎませんから、くれぐれも変な意味に解釈したりしないでください。)

2 コメント

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Unknown (Unknown)
2008-01-05 13:45:37
今回は、愚痴にすぎないという注書があるので、2回試験のコメントとは異なり、全く反論されなかったのだろう。注書がなかった方がいろいろと反論されて勉強になったと思うが。
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はじめまして (ミュウ2)
2008-02-11 21:17:49
2chにスレたってますね。遊びにきました。
最後の1/4まできて、なんだ言いたいのはコレだったのか・・という感じす。失礼ですが、天才に多いというアスペルガー傾向ですか? 知人の東大卒3人、京大卒1人は、アスペルガーに鬱の二次障害で、時々会社に行けなくなります。

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