黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

日弁連会長選挙,前回とほぼ同じ展開に?

2012-02-10 22:54:56 | 弁護士業務
 本日,日弁連の会長選挙が行われ,その投票結果に関する速報が公表されています。
 今回の会長選挙には,現職の宇都宮健児氏のほか,山岸憲司氏と尾崎純理氏,森川文人氏の4人が立候補しており,最多得票は山岸氏の7958票でしたが,会長に当選するには全国52の弁護士会(単位会)のうち3分の1超(18会以上)で最多票を獲得しなければならず,最多票を取った弁護士会の数は宇都宮氏が37会で山岸氏が12会という結果となったため,宇都宮氏と山岸氏の2人で決選投票が行われることになりました。
 日弁連の会長選挙は,国政選挙のように明確な政党といったものがなく,政策における争点や支持勢力などの実態が非常に把握しづらいのですが,黒猫が現時点で把握している情報及び各候補者に対する感想は,大体以下のとおりです。もっとも,個人で把握できる情報には限りがありますので,派閥内部の事情などに詳しい方がおられましたら,適宜コメント欄で補足や訂正のご指摘をして頂ければ幸いです。
 なお,本文中で引用している得票数はいずれも仮集計段階のものであり,正式な得票数は2月17日の選挙管理委員会による決定を経て,日弁連のホームページで公表されることになります。

・宇都宮氏
 現職の会長。日弁連において,現職の会長が2期目に挑戦するのは極めて異例だが,宇都宮氏はもともと無派閥の出身で,おそらくは引退しても自分の政策を引き継いでくれる適当な候補者がいないために,自ら「あと2年かけてやり遂げなければならないことがあります」と訴えて2期目の立候補に及んだものと推測される。
 宇都宮氏が会長を務めた日弁連は,従来に比べ市民運動を重視する性質が強くなり,従来であれば絶対不可能であろうと思われた貸与制施行の1年延期,東日本大震災に伴う相続放棄の熟慮期間延長措置などを勝ち取っている。ただし,多くの弁護士が注目していた法曹人口問題では,任期終了間際になってやっと「日弁連の方針」を減員に持っていくのが精一杯だった。この点については,十分な成果を挙げられていないとの批判もあるが,派閥の支持もなく単身で日弁連執行部に乗り込んだ立場としては致し方ないと考えることも出来る。
 前回の選挙でも,宇都宮氏は対立候補の山本氏に総得票差では一旦敗れながら,会員数の少ない地方の単位会で多くの票を獲得したため再投票となり,再投票で逆転勝利したという経緯がある。前回の選挙は両氏の一騎討ちだったが,今回は4名が立候補している乱戦であり,再投票になれば少なくとも森川氏支持者の多くは宇都宮氏に流れることが予想されるため,黒猫の個人的予想としては,宇都宮氏が再選できる可能性は高いように思われる。もっとも,再選しても満足できる改革の成果を挙げられるかどうかは難しいところだが。

・山岸氏
 東弁の会長経験者で,おそらくは宇都宮氏以前に日弁連の実権を握っていた有力派閥(最近は「旧主流派」と呼ばれる)の代表。掲げられた政策を読んでも従来の司法制度改革を概ね堅持しようとする方向性に過ぎず,それでも最多票を獲得できたのはおそらく有力派閥の支持があったからと思われる。
 もっとも,有力派閥の求心力は会長をはじめとする日弁連の有力ポストを大規模単位会の持ち回りで獲得できることにあり,そのような恩恵を受けられない地方単位会の多くは,旧主流派が推進した法曹人口の激増による実害も都心部に比べて深刻であることから,既に旧主流派を見離していると思われる。そのため,都市部では強いが地方では弱いという山本氏(旧主流派)の傾向をそのまま引き継ぐ結果になった。
 再投票を行った結果,山岸氏が再度最多得票を獲得できる可能性もゼロではないが,地方の単位会が山岸氏支持に回る可能性はそれほど高くない(尾崎氏の支持者がことごとく山岸氏支持に回るなら話は別だが)。場合によっては会長が決まらず何度も再投票をやる羽目になり,最悪の場合には日弁連が分裂ないし機能不全に陥るおそれもなくはない。

・尾崎氏
 東京第二弁護士会(二弁)の出身で,旧主流派の中でも山岸氏に反発する勢力として立候補した模様。山岸氏に比べると政策は若手会員を意識した内容となっており,法科大学院との連携強化や若手会員の支援などを強調していた。しかし,最多票を獲得できたのは出身の二弁と鳥取県の2単位会にとどまり,総得票数も3318票にとどまった。再投票では,尾崎氏の支持層が宇都宮氏・山岸氏のどちらに流れるか,これが勝負の分かれ目になるだろう。

・森川氏
 従来から司法制度改革に反発していた高山俊吉氏の流れを汲む候補者で,弁護士増員政策反対や法科大学院の廃止を主張するのはよいとしても,司法支援センター(法テラス)や裁判員制度の廃止など(理屈としては正しいと思うが)やや過激な主張も見られ,全原発の即時停止や憲法改悪反対の主張に関しては,黒猫もさすがに支持できない内容である。
 高山氏は過去の会長選挙で旧主流派相手に善戦した経歴の持ち主だが,その後継者である森川氏はまだ知名度も低く,従来から不利だと言われており,宇都宮氏の再出馬により旧主流派に対する批判票の受け皿ともなり得なかったことから,今回の選挙では1805票を獲得するにとどまり,最多票を獲得した単位会はゼロという結果となった。

※ 全国52単位会のうち,高知弁護士会は宇都宮氏と山岸氏が20票の同数。なお,黒猫自身は誰に投票して良いか判断が付かなかったので,今回は投票しませんでした。

1 コメント

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どうなるんでしょうね。 (的場真介)
2012-03-07 07:21:55
法曹養成についてのご発言には注目しております。
今後もご活躍下さい。
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