黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

性犯罪や性の紛争はなぜ起こるか?

2006-11-11 04:38:06 | 司法一般
 先日書いた痴漢関係の記事について、東西南北さんからコメントを頂きましたが、どうも当たっているようないないような、という印象を受けました。
 本題に入る前に、当該コメントで指摘された個別の問題提起について考察してみようと思います。

> 女性から男性への迷惑防止条例違反、強制わいせつ罪、強姦罪はないのですか?ないとして何故ですか?あるとして何故ですか?

ということですが、刑が重い方から検討してみると、まず強姦罪は、明らかに男性が行うことを前提とした犯罪類型です。もっとも、女性が男性と共謀し、女性が被害者を縛るなどして身体の自由を奪い、男性が挿入行為を行うといった形で、女性が強姦罪の行為主体となるケースがないわけではありませんが、これは極めて例外的なケースです。
 次に、強制わいせつ罪は、行為の性質上女性が男性に対して行うことも物理的に不可能というわけではありません。ただ、行為類型として現実的にあり得そうなのは、男性の性器にむりやり触る行為か、男性に性行為を強要する行為くらいでしょうが、いずれにしろ事件となったケースは聞いたことがありません。
 前者の行為については、そもそもこのような行為をして性的快感を覚える女性はあまりいないと思われます。男性は、女性の身体を触ることで性的興奮や快感を覚えるようにできていますが、女性の性欲は一般的には受身であり、男性の身体を触ること自体によって性的興奮や快感を覚えることはあまりないでしょう。恋人に対する愛情表現として男性の身体に触りたがる女性はいるようですが、少なくとも性犯罪を行う動機にはなりえないと思われます。
 一方、後者の行為については、男性より件数としては少ないでしょうが、無いとはいえません。細木数子氏がテレビで発言していたところによれば、自分の息子を性欲のはけ口にしてしまう母親は結構いるそうですし、最近は女性が男性を「買春」するためのお店もあるくらいですから、実際に女性が男性に性行為を強要する社会的事象もないとはいえないでしょう。
 ただ、女性が意に沿わない性行為を強要されればほぼ例外なく多大な精神的苦痛を受けるのに対し、男性の場合は性的興奮と快感を覚えなければ性行為自体が成立しないので、性行為を強要されても一般的に被害意識は希薄であり、少なくとも刑事告訴までしようとする気にはなかなかならないでしょう。また、性行為に免疫のない若年の男性が、性行為を強要されて精神的にショックを受けたとしても、女性によるセクシャルハラスメントで訴訟が起こるアメリカなどと違い、「据え膳食わぬは男の恥」なんて格言もある日本社会のもとでは、女性に性行為を強要されて法的手段をとるという発想自体がなかなか出てこないかもしれません。
 迷惑防止条例違反は、都道府県によって各自構成要件が規定されていますが、例として東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(迷惑防止条例)5条1項を挙げると、同項は「何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。」と規定しており、法定刑は6月以下の懲役または50万円以下の罰金(盗撮行為については、1年以下の懲役または100万円以下の罰金)とされています。
 条例によっては、たしか被害者を「婦女子」などに限定しているところもあったと思われますが、少なくとも上記東京都の条例については、女性が男性を著しく羞恥させるような卑わいな言動をすることも処罰の対象とされています。しかし、実際にそのような行為が立件されたという例はやはり聞いたことがありません。
 こうした条例で実際に処罰されているのは、ほとんどの場合「言動」というより「行為」と表現した方が適切な事案ですが、前回の記事で挙げた3類型の行為を仮に女性がやる場合を考えてみると、まず女性が衣服の上から男性の陰部を触って喜ぶといった話は聞いたことがありません。そのような行為によって快感を覚える女性自体ほとんどいないと考えられる上に、百歩譲ってそのような欲求を持った女性が仮にいたとしても、通常はわざわざ性犯罪を行うよりは風俗で働く方を選ぶと思われます。
 次に、女性が性器等を露出する行為をしたり、公衆の面前で自慰行為をしたりすることがあるかと言われると、女性の中には性的興奮を得る目的でわざと下着を着けずに外出する人もたまにいると聞いたことがありますので、絶対にいないとは言い切れません。女性がストリーキングをやって公然わいせつ罪で捕まったという珍事件もたしか昔あったような気がします。しかし、そのようなことをやる女性自体、男性に比べれば圧倒的に少ないでしょうし、仮に行われても、正直なところそれを見た男性のほとんどは単に喜ぶだけで、そもそも男性を著しく羞恥させる行為といえるかどうか問題があるような気がします。
 なお、盗撮については、男性の衣服の構造上そもそも不可能と思われますが、女性が営利目的で、女性の下着や脱衣姿などを盗撮することならあり得るでしょう。
 後に続く文章から推測すると、東西南北さんは、性欲自体ではなく性犯罪の衝動を抑えられない状況を作り出す社会的環境が性犯罪の原因だとおっしゃりたいようですが、女性に前記のような犯罪がほとんど見られないのは、主にそもそも女性にそのような類型の性的欲求自体があまりないからであり、東西南北さんの論証は完全に失敗していると思われます。

 やっと本題に入れますが、「性欲ではなく社会的環境が性犯罪の原因だ」というような趣旨の、一見もっともらしくも見える東西南北さんの主張に黒猫が同意できないのは、人間も動物の一種であり性的本能があるということ、性犯罪が社会秩序維持の観点から人間の性的欲求に基づく行為のうち一定の不適切なものを取り締まっているものであるということが看過されているからです。
 人間の性欲だけが性犯罪の原因というわけではもちろんありませんが、社会的環境云々以前に、そもそも人間に性欲がなければ性犯罪など起こるはずがなく、性犯罪の原因に人間の性欲が深く関係していることを否定することはできないはずです。
 したがって、性犯罪対策を考えるときには、まず性犯罪を志向する人間の性的欲求がどのようなものであるかを正しく把握し、それを性犯罪にならない方向に導く方法があるかどうかを検討するのが重要な作業であり、それを無視して社会的背景といったものばかりを考察しても、性犯罪抑止の効果はあまり期待できないと考えられます。言い換えれば、人間の性欲に関する議論をタブー視するから、性犯罪への対策がなかなか効率的に進まないんだ、ということです。黒猫が批判を受けるのを覚悟で、ボツネタの管理人さんが喜びそうなことを敢えて延々と書いているのも、このような問題意識が背景にあるからです。
 もっとも、性犯罪を誘発する社会的背景という要因も、当然ながら無いわけではありません。例えば、男性は、基本的に女性が性的快感に喜ぶところを見たがるので、エロ本やらエロ漫画の類では、通常の女性は性的快感をほとんど感じないであろう、性行為の初体験や強姦、痴漢といった行為でも、最終的には女性が快感に満足しているように描かれますが、これを見た男性がこれらの行為によって女性が性的快感を得られるものと勘違いし、それが痴漢などの性犯罪を助長する一因になっている可能性は否定できません。ただし、すべての問題を論じようとするとなかなか話が先に進まないので、こうした社会的背景に関する問題について詳論するのは別の機会にしようと思っています。

 タイトルでは性犯罪のほかに「性の紛争」という言葉も入れていますが、法曹実務の世界では、性犯罪事件以外にも、性の問題と向き合わざるを得ない事件の類型が存在します。性生活の不満を原因とする離婚事件等がそれで、「性の紛争」とはこういった事件を指すものです。
 性に関する離婚原因のうち主なものを挙げれば、夫の不貞行為、妻の不貞行為、夫の性交拒否、妻の性交拒否、夫の性的不能、その他のセックスレス、及び性の不一致といったところに分けられるでしょうか。

1 夫の不貞行為
 夫の不貞行為は、法律上の離婚原因の代表選手と言ってよいほどの典型的なケースであり、件数も多いです。世の中には、「風俗は浮気ではない」と誤解している男性もいるようですが、風俗を利用した場合でも不貞行為は成立します。
 戦前の民法では、そもそも夫が妻以外の女性と性交渉を行っても、法律上の離婚原因にはならず、妻の不貞行為(姦通)だけが離婚原因とされていたのですが、男女平等の観点からこれでは不公平ということで、戦後の家族法改正によって、夫の不貞行為も離婚原因に加えられ、夫も貞操義務を負うようになったという経緯があります。
 なぜ夫の不貞行為が多いかといえば、それは男性の性欲の性質が原因であるとしか言いようがないですね。例外もありますが、一般的には男性は多様な遺伝子の組み合わせによる子供を作るため、いろいろな女性と性交渉をしたがる傾向があり、しかも妻の妊娠時などにも夫の性欲は止まってくれませんから、夫が一生貞操義務を守り通すには、多くの場合かなりの我慢を強いられることになります。某アンケート調査の結果によると、浮気をしたことのある夫は全体の約7割にのぼるとか。
 夫の不貞行為の話は書いていくときりがないのでこの辺で打ち切りますが、法というものが社会一般の行為規範から外れた人に制裁を加えるものであることを考えると、むしろ守れない人の方が多いような義務を課すのは法制度として妥当なのかという気もしないではありません。

2 妻の不貞行為
 妻の不貞行為は、夫の不貞行為に比べると件数は少ないと思われますが、決してないわけではありません。戦前は、妻の不貞行為には姦通罪が適用され刑事罰の対象になっていましたが、戦後になり姦通罪は廃止され、夫の場合とは逆に法的制裁は戦前より軽くなっています。
 夫に比べ妻の不貞行為の件数が少ないのは、女性の性的嗜好としてあまり複数の男性と性交渉を行うことを好まない傾向があるのかと従来は思っていましたが、今時の若い遊び好きの女性が男をとっかえひっかえしているのを見ると、必ずしもそうは言えず、実際には社会的風潮により女性の性欲が抑圧されているだけではないかという気もします。
 歴史的に、女性の不貞行為が男性のそれより問題視されてきたのは、女性が不貞行為をしてしまうと、生まれてくる子供が夫の子供だかそうでないのか分からなくなってしまうというのが実質的理由でしょう。夫の不貞行為にはこのような問題は無く、現代でも夫の風俗などによる単発的な不貞行為には比較的寛容な女性も少なくないのに対し、妻の不貞行為はたとえ1回であっても許せない夫が多いというのも、このあたりが原因かと思われます。
 もっとも、このような問題が生じない社会も歴史的には存在しており、例えばカエサルが征服する以前のブリタニア人(現代のイギリスに住んでいた人々)は、兄弟間や息子同士、親同士で複数の妻を共有するのが通常であり、女が処女ではじめて交わした男を子の親とするルールになっていたそうです。
 これはカエサルの『ガリア戦記』に書かれていることです。カエサルは「ローマ帝国第二の建国の父」と言われるほど偉大な将軍・政治家であり、欧米では知らぬ人はいないほどの偉人ですが、『ガリア戦記』ではゲルマニア人の性習慣も詳細に記述しており、また大変な女性好きで一説には元老院議員の妻の約3分の1を寝取ったとも言われており、凱旋式では兵士たちに「市民たちよ、女房を隠せ!禿の女たらしのお出ましだ」と連呼されたという逸話が残っているくらいですから、おそらく下ネタも相当好きだったのでしょう。
 カエサルの著作のうち、『ガリア戦記』と『内乱記』を除くものの大部分は、彼の後継者アウグストゥスによって「神君カエサルに相応しくない」という理由で焼き捨てられてしまったそうですが、おそらく焼き捨てられた著作には、相当面白い下ネタも多数含まれていたでしょうね。残念なことです。
 そんなカエサルでさえも、妻の浮気には厳しく、妻ポンペイアの不貞疑惑事件が起きたときには、「カエサルの妻たるものは、疑われることさえもあってはならない」と言って、さっさと妻ポンペイアを離婚してしまっています。
(話が大幅に脱線してしまいました。ごめんなさい)

3 夫の性交拒否
 夫の性交拒否は、そもそも妻の側から性交渉を求めること自体が社会的にタブー視されてしまっている傾向がある(このような傾向自体、黒猫は好ましいことではないと思いますが)ので、表面的には後述する「その他のセックスレス」の事件になってしまうことが多いですが、ここでは便宜上、夫が性交渉を求めないことに妻が不満を持つケースも「夫の性交拒否」に含めて論じることにします。
 夫の性交拒否は、婚姻後しばらくしてから起こるケースが多いですが、婚姻当初からというケースもあります。婚姻当初から夫が性交渉を拒否するというのは、正常な性欲を持った男性には理解し難い行為ですが、世の中にはもともと性欲がかなり乏しく、結婚したのは単に妻に家事をやってもらいたかっただけという男も結構いるようなのです。
 また、最近は性欲がないわけではないものの、結婚してもアダルトビデオを観て自慰行為に耽るばかりで、妻との性交渉に全く関心を示さない男もいるようです。
 こういった婚姻当初からの性交拒否は、法律上の離婚原因として認められ、慰謝料も比較的高額の請求が認められる傾向にあります。
 一方、婚姻後しばらく経ってからの性交拒否については、妻とのセックスに飽きることがあっても仕方ないと考えられているのか、簡単には法律上の離婚原因として認められません。
 
4 妻の性交拒否
 妻の性交拒否は、なぜか妻が婚姻当初から性交渉に応じる気がないという極端なケースもあり、このようなケースであれば法律上の離婚原因としても認められ、離婚慰謝料請求も認められる傾向にありますが、大半はむしろ夫の方に原因があると思われます。妻の気持ちも考えず、むやみに暴力的な性行為や、妊娠中・生理中の性行為などを強行したり、妻を労るための前戯や後戯を怠った結果、妻が性交渉そのものを嫌がるようになったのではないかと考えられるケースでは、妻の性交拒否も法律上の離婚原因とは認められません。もっとも、性行為は一般的に密室の中の話であり、女性は性行為に関する不満をなかなか正直に言ってくれないケースが多いので、赤裸々に真相が明らかになるケースはむしろ少ないですが。
 なお、妻が病気等により性交渉に応じられないといった性交拒否に相当の理由がある場合には、当然ながら法律上の離婚原因にはなりませんが、特に何の理由もないのに性交渉に応じないというのであれば、法律上の離婚原因として認められる場合もあります。
 
5 夫の性的不能
 夫の側の性交能力に問題があるため、満足な性交渉ができず、それが原因で離婚に至ってしまうというケースがあります。夫が性交渉を行うには、性的興奮により性器を十分に硬く勃起させ、それを女性器に挿入し、勃起状態を維持したまま両性器をこすり合わせ続け、女性器内に射精するという行為が最低限必要となります(もっとも、妻をセックスによって満足させようとするのであれば、他にもいろいろなことをする必要があります)から、このうちどれかの行為がうまく出来なければ、性交渉は失敗に終わるわけです。一方、妻の方は、夫を満足させようとするのであればともかく、単に性交渉をするだけであれば夫のされるがままにしていればよいので、妻の性的不能が問題にされることは基本的にありません。
 離婚訴訟などで夫の性的不能が主張される場合、本当に性的不能であるかどうかが問題となります。全く勃起しないとか射精しないか、医学的にも明らかに病気と思われる事案であれば離婚原因となる性的不能と認めてよいと思われますが、実際に問題になる事案のほとんどは、夫も性欲はありオナニーはするという事案です。
 セックスの経験がない人は、セックスは正常な人であれば簡単に出来ると安易に考えがちですが、特に男性にセックスの経験がない場合には、セックスはそうスムーズにはできません。緊張のあまりうまく勃起しなかったり、うまく腰を動かせずに萎えてしまったり、挿入前に射精してしまったりすることもあります。
 男性の性欲のピークは大体20代前半までとされており、初体験が若いうちであれば、うまく行くまでセックスに挑戦することもそう難しくないのですが、初体験が遅いと、既に性欲が減退期に入ってしまっているため、セックスを成功させるのはさらに難しくなります。今年の大河ドラマ「功名が辻」の主人公・山内一豊は、妻・千代と結婚するまでセックスの経験がない真面目な男でしたが、「功名が辻」の原作では、結婚生活13日目にしてようやく千代とのセックスに成功したなどと書かれています。さすがに大河ドラマではそんなことは言っていませんでしたが。
 さらに現代では、独身男性がアダルトビデオなどを観て頻繁にオナニーをするのが当然になっており、そういったオナニーに慣れた人が性欲絶頂期を過ぎてからセックス初体験ということになると、妻の身体を見ただけでは十分な性的興奮が得られず勃起しないとか、何とか勃起させてもそれを維持できないということになってしまったり、手での強い刺激に慣れてしまっているため女性器での刺激ではうまく気持ちよくなれず、射精まで漕ぎ着けられないといったことになってしまったりします。そして失敗が続くと、やがてセックスへの意欲もなくなり、アダルトビデオを観ながらのオナニーに逃げてしまうことになります。
 こういう場合でも、例えば事前に(オナニーは我慢しながら)アダルトビデオを観て極限まで興奮させてからセックスを始めるとか、妻にも協力してもらい相互にオナニーを見せ合って十分に興奮してからセックスを始めるとか、精力剤などで足りない性欲を補うとかいろいろな工夫をして、かつ失敗してもくじけずにオナニーでの射精を我慢して挑戦を続ければ、おそらくいつかはセックスに成功すると思うのですが、妻にはそのような性的知識はない、夫はアダルトビデオで得た性知識はあっても実践の知識は無いのでどうしたらよいか分からない、その結果妻は夫が性的不能だと決め付けてしまう・・・。
 このような場合に、果たして性的不能と認定してよいのでしょうか。
 これを読んでいるロースクール生の皆さん、笑ってる場合じゃありませんよ。将来弁護士や裁判官になったら、本当にこんな感じの事案が持ち込まれて、性的不能かどうか判断しなければならないことがあり得るんですから。

6 その他のセックスレス
 上記3から5のいずれかにも当てはまらないか、あるいはいずれとも断定できないが、セックスレスが離婚原因として主張されることはよくあります。
 夫婦生活が長期にわたると、大体セックスの回数は次第に減少していくものであり、いつの間にか夫婦いずれもセックスを望まなくなり自然にセックスレスになっていくこともありますが、こういった類のセックスレスが直ちに法律上の離婚原因と認められないことは言うまでもありません。セックスレスが法律上の離婚原因と認められるためには、少なくとも夫婦のどちらか一方が、セックスレス状態に不満を持っている必要があります。
 夫が不満を持っている場合については、概ね4で書いたことがそのまま当てはまりますが、問題は妻が不満を持っている場合です。 
 男性の性欲は10代後半から20代前半ころまでが絶頂期と言われている一方、女性の性欲は20代後半から30代前半ころまでが絶頂期と言われています。また、男性の性欲は同じ女性が相手だと次第に衰える傾向がある一方、女性の性欲は性経験を重ねるごとに増していく傾向があります。その結果、婚姻当初は夫が積極的にセックスを求め、妻はしぶしぶこれに応じていたが、次第に立場が逆転し、むしろ妻の方がセックスを求めるようになるケースがよくあります。そのとき、妻が正直にセックスを求められればよいのですが、実際にはなかなかそんなことはできないことが多いです。また、妻が勇気を出して一度セックスを求めてみても、夫が面倒くさがってそれを断ったりすると、妻もプライドがあるので再度の要求などはできず、セックスレスに対する不満がどんどん溜まっていく。しかし夫はそんなことは露知らず、妻が何も言わないので不満はないと勝手に思い込む。
 そして、ある日妻の不満が爆発し、離婚を要求されたり、あるいは突然家を出て行かれたりする。その後になって夫が気付いても大抵はもう手遅れで、たとえ法律上の離婚原因があるとまではいえない場合でも、妻が戻って来なければ夫には婚姻を続ける意味は無く、結局離婚に応じざるを得なくなる。
 最近こんな事例が多発しているようです。こうならないためにも、夫たる者、断じて妻を欲求不満にはさせないというくらいの気概を持って欲しいものです。

7 性の不一致
 上記以外の紛争類型としては、夫の性欲が過剰で妻がセックスに応じ切れないとか、夫があまりにも異常なプレイを要求してくるとか、夫が同性愛にはまってしまったなどというものがあります。妻が、というのはあまり聞いたことがありませんが。

 最後にまとめをすると、こういった紛争が生じる原因の大半は、性に関する知識の不足や、相手の性状態をきちんと把握していないことにあるといえます。
 近年、性経験については二極分化が激しくなっており、早い人は高校生、ひどい場合は中学生くらいのうちからセックスを始めてしまい、妊娠や性病などの問題を引き起こす一方で、晩婚化が進んでいる中で結婚まで童貞・処女を守り続け、その結果結婚後の性生活に支障を来してしまう人もいます。性行為に関することは、実際に体験してみなければ分からないことが多く、結婚まで貞操を守り続けることが美しいといった概念は、いい加減捨てた方がよいと思うのですが。
 黒猫が、変態呼ばわりされるのも覚悟の上であえてこのような記事を書いたのは、性の問題に正面から向き合おうとしない人があまりに多く、それによって生じると思われるトラブルが後を絶たないからです。これでも書き足りないことはまだいろいろありますが、司法に携わる人は、性に関係する事件の適切な解決を図る観点からも、性に関する問題を決してタブー視せず、正しい性知識を身につけてほしいと思います。

10 コメント

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Unknown (人生幸朗)
2006-11-11 09:35:01
よくぞこれだけ論述されました。何かの役に立てたいと存じます。
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主張の趣旨には同意であります (東西南北)
2006-11-11 10:13:17
 つまり、男女ともどもが、異性の性に対する知識を増やしていくことが性犯罪とか性の紛争解決に資する、ということでせう。結局、それが自制心というか、人間らしい性関係を阻害する社会環境を変えていく解決力となるのでせう。

 そこで、あるべき性関係と申しましょうか、正確な性の知識と言いましょうか、それは人間の性交渉には子孫繁栄の面と快楽面があるという事実関係につき、僕の認識方法及び認識を述べてみるものです。

 まず、事実関係に対する認識方法であります。人間と動物を同視するというか、人間を動物に還元していく「後ろ向き」な事実誤認がありますので指摘しておきます。

 確かに人間は物体であり生命体であり、人類でありますから、人間は動物であり物体であるという誤認が発生する根拠はあります。しかし、人間は物体ではないし、動物ではないのです。つまり、人間は物体から生命が生まれ、生命が進化して人類が発生してきたという事実があります。つまり、物体と生命は次元が違うのですから、物体を生命とは言えないし、物体は生命ではないのです。両社は質的に異なるのであり比較の対象にはならないのです。で、動物と人類ですが同様であります。両者が質的に異なる存在であることは進化論、医学等で明白です。歴史学でも明らかですね。つまり、動物と人類は質的に異なる存在であるから、比較の対象とはならず、人類は動物が高次元に発展・進化した社会的な存在だという事実です。人類が人類である所以は、①二足歩行②道具を使用し改良しながら、自然環境を改造する労働を行う③言語を使い、目的意識を持つ。以上の3要件を総合的に満たしている存在は人類だけだということです。ゆえに、人間の本能についての事実認定をする場合に、他の動物の本能と比較して論ずるという方法は事実誤認に立脚した立論であり、事実認定の方法としては失敗しているのです。

 さて、そこで、「人間らしい」性関係とは何か、であります。先ほど申しましたような2側面の統一が人間の性であります。すなわち、①子孫繁栄②快楽。であります。

 ゆえに、人間らしい性の事実関係を認識するということは人間らしい子育ての形態、すなわち一夫一婦制から多夫多妻制までを射程とする家族論及び男女の快楽論を統一的に論ずることに他ならないのではないでしょうか。

 そして、快楽論を全面に出せば、それは避妊が前提となるのであり、子育て論なり家族論を全面に出していけば妊娠論なり、授精、出産論となるのであります。

 しかし、両者は統一されているわけですから、子育て論なり、家族論抜きに人間の性関係を認識することは事実誤認であるし、他方、快楽論、避妊論抜きにしても同様であります。

 現実は避妊しながら、SEX(妊娠・授精行為)をするのであります。こうして両者は切り離して認識することは事実誤認に直結する危険な思考回路であります。

 こうして一夫一婦制が人間らしい家族の形態であるのであれば、不貞行為は人類社会からは消滅させねばならないし、多夫多妻が人間らしい家族の形態であれば、法律を改正せねばならないのです。

 次に、快楽面ですが、これは精神面であるので、男女共々、個人個人で多様なものでよいのではないでしょうか。レズもよし、ホモもよし、バイセクシャルもよし、ですが、レズ、ホモは人間らしいとはいえません。このような性関係では人類の子孫は繁栄しないからであります。なんらかの医学的な治療が必要となってくるでしょう。もちろん、病気ですから保険の対象とすべきであるし、差別してよいものではなく、むしろ、病気であるから暖かくケアする社会環境が必要でしょう。

 では、ホモ、レズの性的な関係ではない、男女の性関係における快楽面ですが、先ほど述べましたように多様であるというのが人間の事実ではないでしょうか。ゆえに、「変態」という概念は差別だと言えましょう。そもそも、「変態」を含めて快楽面は多様性が実現するところに発生するわけであり、画一化されて快楽など生じないのです。

 しかし、問題は性交渉には相手が必要となり、相手も多様な人間なのです。これが黒猫さんのいう性の不一致問題ですが、この問題を解決するにはお互いが相手の多様性を受け入れるかどうかであり、お互いがどうしても受け入れなくて自分自身のイメージの多様性を崩せないのであれば、解決する必要もないのであり、イメージの違いというお互いの多様性に寛容である男女の性関係においては、永久に解決しないし、自分のイメージに合うような相手を見つける自由がある以上、なんらの社会問題でもないのであります。

 以上からして、性犯罪、性の紛争が起こる原因は人間の性欲自体にあるのではなく、このような性知識または性知識を認識する方法論を確立しにくい社会環境にあるのだと言えましょう。

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Unknown (?)
2006-11-11 11:55:14
強姦も、女が主体となることは可能でしょ。
男の身体の自由を奪って、無理やり勃起させて、挿入すれば。
まさか、「抗拒不能なら勃起するわけないから、勃起したということは、和姦だ」なんて、言うわけじゃないんでしょ。どこかの国の「女が濡れたら、和姦」神話じゃあるまいし。
勃起も濡れるのも生理現象。気持ちは拒否してても発生しますよ。
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Unknown (?)
2006-11-11 12:07:52
(補足)
日本の現行法上は、文言からして、男は被害者にはなり得ないんですね。この発想自体が、「女が男を征服できるはずがない」という、男尊女卑の発想だと思いますが。もちろん、無理やり性行為をさせられた男性の性的自由を、不当に軽んじているのは言うまでもありませんが。
あと、「男性の場合は性的興奮と快感を覚えなければ性行為自体が成立しない」という観念は、間違ってますよ。相手が男だって、しごかれれば勃起するし、射精もします。大体、精神が拒否していれば、身体的に気持ち良くなったかどうかなんて、関係ないでしょ。
テクニシャンの強姦魔が、被害者の女性をイカせれば、罪は軽くなりますか?
発想が貧困ですよ、先生。
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Unknown (nuki)
2006-11-11 14:27:13
?さんの
>相手方男だって、しごかれれば勃起するし、射精もします
との認識こそ「発想が貧困」なのではと愚考いたします。
それはさておき、黒猫先生の「性に関する問題をタブー視しない」というご意見には同意致しますが、セックスに関する問題はある程度隠れているからこそ機能するという側面もあるのではないでしょうか。
今回のテーマを含み笑いをしながら読んでしまったことの自分に対する弁解でもあります。
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Unknown (Unknown)
2006-11-11 16:41:12
あの黒猫の写真を観たあとじゃ、説得力はないね。
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Unknown (女性の性犯罪)
2006-11-11 17:19:12
>女性が意に沿わない性行為を強要されればほぼ例外なく多大な精神的苦痛を受けるのに対し、男性の場合は性的興奮と快感を覚えなければ性行為自体が成立しないので、性行為を強要されても一般的に被害意識は希薄であり

満員電車内で少年が女性から痴漢行為の被害を受けることは実際にあるんですよね。もちろん、女性の被害に比べれば圧倒的に少ないと思いますが、聞いた範囲でも無視できる数ではないという感じです(ソースを示しようがないのですが。)。
で、体験したことのない男が痴女被害を聞くと、「うらやまし~」とか言って深刻に受け止めない例が多いわけですが、被害にあった当人は、かなり大きな恐怖や困惑、羞恥を被っているんですよね。それはそうでしょう。身動きできない中で得体の知れない相手から大事なところを触られるわけですから。
ご参考まで。
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Unknown ()
2006-11-11 17:30:21
今一度、読み直すと、引用箇所の「性行為」は、限定的な意味で使われているようですので、引用は不適切でしたね。
むしろ、引用するなら「女性の性欲は一般的には受身であり、男性の身体を触ること自体によって性的興奮や快感を覚えることはあまりないでしょう。」を引くべきだったな。これ、犯罪問題から離れても、率直に言って,そうかなあーと首をひねりました。ただ、間違いだと言う根拠はないので、当否は決めつけません。
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あくまで比較論なので (黒猫)
2006-11-11 21:06:29
本文中に書いた女性の性的嗜好(男性の身体を触ることで快感を覚えるか)や男性の被害者意識(性行為を強要されたことで精神的苦痛を受けるか)については、あくまで両性の比較の問題として書いているので、男性の身体を触ることで快感を覚える女性がいないと書いたつもりはありませんし、男性が精神的苦痛を受けないと書いたつもりもありません。黒猫のオリジナルも、おばさんに身体をべたべた触られて不快感を感じた経験はあります。
しかし、この記事をきっかけに、今までろくに議論されてこなかったと思われる「女性の性犯罪」といった問題も議論が深まるということであれば、それだけでもこのような記事を書いた意義はあるように思います。
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Unknown (エイ)
2008-01-28 18:20:48
体を触られて被害者が被害を感じた時点で性犯罪ですよ。犯人にわいせつな気持ちが有ったか無かったなんて関係ないですよ。じゃあ、50口径の拳銃で被害者の頭を撃って、犯人が殺すつもりは無かったと言ったら傷害罪や傷害致死罪になるんですか?
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