黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

UBS「契約無効」で返上打診 誤発注巡る巨額利益 (朝日新聞)

2005-12-19 18:26:20 | お知らせ
UBS「契約無効」で返上打診 誤発注巡る巨額利益 (朝日新聞) - goo ニュース

 この事件,法曹界のブログでもいろいろ議論されているようですが,仮に誤発注を錯誤で無効とする場合には,巨額の利益を得た証券会社に対して無効を主張できるだけでなく,誤発注により売却されたジェイコム株式で利益を得たすべての投資家(個人を含む)全員に対し無効を主張できる,無効を主張できるのであれば回収を図らなければみずほ証券が株主代表訴訟で訴えられてしまう,ということになってしまいます。
 一方,利益を得た証券会社の方も,利益を法律上返す必要はないのに返してしまえば,やはり株主代表訴訟の対象になってしまうというような感じで,事態打開はそう簡単なことではないでしょう。
 
 そもそも,全国レベルの大規模証券会社が,まず法的にどのような結論になるかを前提に対応策を決めるのではなく,世論の圧力を基準に対応策を決めてしまうということ自体,まだ日本は法治国家じゃないところが残っているんだなあ,と感じてしまうところです。
 落合先生のブログで,「「法的には問題ないが、日本は神秘と謎に満ちあふれた国なので、この利益を強欲に保持していると、日本国民や日本政府の支持を失い、今後、神秘と謎の中で営業活動が困難になる可能性が高い。」とか何とか言ったほうが、かえって理解が得られるかもしれません。」というコメントがありましたが,まさしくそのとおりですね。
 日本は法治国家ではなく,このような利益を強欲に保持していると,法的に問題はなくても国会議員から「火事場泥棒」などとあらぬ非難を受け,政府や国民の支持を失い事実上営業活動が困難になってしまうという特殊な事情があるため,やむなく利益を返還することとした,と説明すれば,あるいは外国の裁判所でも行為の正当性が認められるかも知れません。

↓落合先生のブログへのリンクです。
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/